メディア投稿に一般ユーザーからの指摘が殺到する時代

すでにネットで大いに話題になっていますが、米メディア『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』が報じた『トランプ氏、台湾巡り日本に抑制求める 習氏と会談後/日本の当局者はトランプ氏のメッセージに懸念を示す』と題する記事を巡り、日本政府が公式にWSJ報道の内容を否定したにも関わらず、いくつかのメディアがこのWSJ報道を前提として記事を配信し、Xなどで誤りを指摘するコメントが殺到しているようなのです。興味深い時代になりました。

WSJの報道

当ウェブサイトでは昨日、『中国が対日制裁で米国巻き込み台湾問題国際化の大失点』で、産経新聞の元記者でもある矢板明夫氏が発したXポストをもとに、例の「高市-トランプ会談」は中国にとっての盛大な失点だったとする仮説を取り上げました。

これは、中国側が数少ない手持ちのカードを使い果たしただけでなく、「台湾問題の国際化」という観点から、大変大きな失点を記録した可能性がある、とするもので、正直、「敗北」したのは中国側だったのではないか、とする見立てです。

ただ、この見立てとはまったく違った評価も出て来たようです。

すでにネットでは大変な話題となっていますが、米メディアの『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』が27日までに報じたこんな記事が、さまざまな波紋を呼んでいるようです。

Trump, After Call With China’s Xi, Told Tokyo to Lower the Volume on Taiwan/Japan, a U.S. ally that had angered China on Taiwan, found the message worrying

―――2025/11/27 02:34 am ET付 WSJより

また、上記記事は日本語版でも読むことができます。

トランプ氏、台湾巡り日本に抑制求める 習氏と会談後/日本の当局者はトランプ氏のメッセージに懸念を示す

―――2025年11月27日 18:11 JST付 ウォール・ストリート・ジャーナル日本語版より

日本政府は速攻で否定=木原官房長官

内容についてはすでにネットでも取り上げられている通りですが、大雑把に要約すると「高市早苗総理大臣の中国による台湾攻撃の可能性に関する発言を巡って、習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席がドナルド・J・トランプ米大統領に対し怒りを表明」し、「トランプ氏が高市氏に自制を求めた」、といったものです。

Chinese leader Xi Jinping expressed anger to President Trump regarding Japanese Prime Minister Sanae Takaichi’s comments on a potential Chinese attack on Taiwan.

WSJによると「事情に詳しい複数の関係者によれば」、高市総理の答弁から数日後に米中首脳が1時間程度電話で会談し、同日、トランプ氏が高市総理に電話して、「台湾の主権に関する問題で中国政府を挑発しないよう助言」したとしています。

ただ、これについては当ウェブサイトにて詳しく取り上げる前の段階で、すでに木原稔・内閣官房長官から否定する声明文が出てきています。

誤り(の可能性)指摘する子も円とが殺到する

すなわち日本政府が即座に否定したわけですから、その時点で、この記事については信憑性がどの程度あるのか、という問題になり得ます。

もちろん、記事を委細に読んでいくと、記事の内容が一概に間違っている、という話ではありません。

「複数の日本政府当局者やブリーフィングを受けた米国の関係者」は「トランプ氏の助言は直接的なものではなく、高市氏に発言を撤回するよう圧力をかけるようなことはなかった」、などとしているため、トランプ氏が日中関係を巡って「日本を叱った」という単純な図式の報道でもないからです。

ただ、このWSJの報道が国内外のさまざまなメディアに、(日本政府が否定しているにも関わらず)あたかも事実であるかのごとく引用されていることは間違いないのですが、それ以上に個人的にもっと興味深いのが、ネット上の反響です。

WSJの報道を引用する形でいくつかのメディアがこの件を(ケースによっては事実かどうかを検証することすらせずに)Xなどで情報を拡散しているのですが、これらに対し一般のXユーザーが誤り(の可能性)を指摘するとともに、メディアの報道にもコミュニティノートが提案されるなどしているのです。

ファクトチェックなしに読めないメディア報道

著者個人としては、トランプ氏が高市総理に対し、「同盟国の友人として」、台湾問題であまり中国を刺激し過ぎるな、といったアドバイスする可能性はゼロではないと見ているのですが、少なくとも日本政府の公式声明や高市総理が答弁を撤回していない事実からすれば、やはりWSJ報道は正しくない可能性があります。

というよりも、正直に感想を申し上げるならば、①メディア報道がファクトチェックなしには読めなくなってしまった、②一般人がメディア報道を読んでその信憑性を深く議論できる時代になった、という2点が、このネット化社会を読むうえでの非常に重要な論点だと思います。

とりわけ、メディア報道に対する批判はXという公開空間で完全に可視化されており、一般ユーザーからのたくさんのツッコミが何の気なしにメディア報道を読んだXユーザーの目にも留まるわけですから、もうメディアが印象操作で人々を動かせる時代でもないといえます。

いずれにせよ、報道がファクトチェックなしでは読めない時代になってしまったことを嘆くのか、私たち個人のレベルでも報道の正確性が検証できるようになったというのは素晴らしいと歓迎するのかは、読者の皆さまにもお任せしたいと思います。

しかし、少なくともメディアが垂れ流す情報を受け取るだけだった私たち一般人が、いまやメディア報道を批判的に検証できる時代になったことは間違いなく、その意味では時代も変わったものだ、などと思う次第です。

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

読者コメント欄はこのあとに続きます(コメントに当たって著名人等を呼び捨てにするなどのものは禁止します)。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    毎度、ばかばかしいお話を。
    朝日新聞:「一般ユーザーから誤りの指摘があろうと、コア読者に知らせなければ問題ない」
    これって、笑い話ですか。
    蛇足ですが、日本のマスゴミにとっては、アメリカのメディアが(信じたいことを)報じたことが重要であって、それが事実かどうかは問題ないのでは。(トランプ大統領自身が否定しない限り、マスゴミは、信じたいことにしがみ付くでしょう。北朝鮮の日本拉致という前例もありますし)

  2. 駅田 より:

    複数の新聞社が引用を繰り返し
    ソースの隠蔽を図るソースロンダリングの手口です。

    なんだよ元ソースの自称関係者って
    一次ソースをたどれない怪情報に意味はあるのでしょうか?

    また今回は非常に細かいニュアンスや文脈が求められますが、ちゃんとできているのでしょうか?
    元ソースがあったとしても記者によってねじ曲げられないのでしょうか?
    朝日新聞のように

    甚だ新聞への信頼が揺らいでいます

    1. 引きこもり中年 より:

      >複数の新聞社が引用を繰り返し
      >ソースの隠蔽を図るソースロンダリングの手口です。
      マネーロンダリングがソースロンダリングを真似たのか、ソースロンダリングがマネーロンダリングを真似たのか。

  3. 七味 より:

    ど〜でも良いことなんだけど・・・

    子も円と

    「円」だけが目に入って、「なんとかまどか」さんというという人が指摘をしたのかと思っちゃいました

  4. 匿名 より:

    見出しの「子も円と」は「コメント」の間違いですよね?

  5. 引っ掛かったオタク より:

    まーナンですナ、
    オールドメディアさんらも“含意一にする他社記事のツマミ喰い”ノミで“後追い取材”や“周辺掘り起こし”等『ファクトチェック』もせず自社記事1本上げるなら、
    記事の末尾に「知らんけど」を忘れたらあきまへんナ
    知らんけど

    1. 農民 より:

       真剣にこれやってほしいです。だいぶ許せるようになりそう。知らんけど。

    2. 匿名 より:

      全記事の見出しと本文の後ろに小っちゃく「か」とでもつけとけばいいですね。

    3. はにわファクトリー より:

      小さいヵというとこうですゕ
       「首相辞任 ゕ」
      かつては駅プラットフォームにはあまねく売店があり、夕刊紙・スポーツ紙は移動のついで、帰宅途上の暇つぶし商品として商機をつかんでいました。店頭ではたたまれた状態でライバル新聞たちと店頭に並べられます。折り目の向こう側に「ゕ」があって「首相辞任」の大活字がまず目に触れるように工作されている。手に取ると初めて「ゕ」と読めて、なーんちゃって、とか、だよーん、とか編集部がかましたボケを味わう仕掛け。
       「参院選大敗 引責
        首相辞任 へ」
      黒々とした大きな活字で号外を打ってバツの悪い思いをした読売新聞という例がありますが、ちゃーんと末尾に「へ」と付けてありますから、極端に間違っているわけでもない(だがそれでいいのだろうか)

  6. Masuo より:

    韓国によくやられた手口ですね。
    所謂、情報ロンダリング。

    朝日新聞が小さく報道

    韓国の新聞社が取り上げる

    日本の新聞社がこぞって韓国の記事を取り上げる
    (この時点で既成事実化)

    日本のネット民は何年このやり方にやられたと思っているんでしょうね。
    日本のネット民舐めすぎです。通用するはずもない。

  7. Sky より:

    海外マスコミメディアは記名記事の割合が多めなのでまだマシなのですが、その記名者を確認すると、欧米系メディカルセンターの場合でも東アジア系のニュースは中国韓国系と思われる名前記者が多い印象です。日系の記者は見当たらない。
    この事実も日本にとって不利なバイアスがかかる状況と言えそうです。
    日本人でジャーナリスト希望の人って内弁慶なんですかねぇ?

    1. Sky より:

      単語変換が。。。
      誤:欧米系メディカルセンター
      正:欧米系メディア

    2. はにわファクトリー より:

      英語で記事が書けないからです。書いてないので評価されない。
      様式ってのがあります。訓練しないと書けるようにはなりません。
      日本を扱う記事の場合は、ブルームバーグも、AP も、ロイターも日本人記者が書くことは珍しいです。結果として「白人相手の通俗記事」しか英文になって世界に出て行かないのです。能登半島地震のときは気鋭の?女性 BBC 記者が被災地に乗り込んで腕を揮っていました。あれには当方は驚きました。BBC は普段シンガポール在住がコタツ記事なんか作ってお茶を濁しています。

    3. 匿名 より:

      例の記事は 中国人系記者Wei Lingling氏が執筆しているようですね
      海外ニュースを利用した政治工作でしょうか

      アメリカのメディアは政治スタンスが中立ではないことは周知の事実なのですが、日本人はメディアは中立だ(と思い込まされてきた)先入観があるからか、結構な人が信じてしまうんでしょうね。

  8. u-hoge より:

    マスコミって記事で飯食う職業ですが、スポンサーの意向には逆らえないサラリーマンなんです。なので多少は曲解してでもネタになる記事を書かないと食って行けない実情があります。
    ポイントはその活動が国益になっているか?ですが彼等は生きる為にも知ってても継続的にやる資本主義の奴隷と思われます。
    そこをSNS賢い民衆に突かれたので、結構ヤバい立ち位置にあると思います。
    世論が日本側か中共側か?どっちなのというゲームになってオールドメディアの彼等も困惑してると思います😊

  9. 名無しで結構 より:

    今から50年以上前の総理が退陣表明をする時に、「テレビカメラはどこか。国民に直接話したいので、新聞記者は退席してくれ。」ということを新聞は、「1人きりのさみしい最期」などとはやしたてましたが、この頃から新聞て信用が無かったんすね。芸能・スポーツニュースは信用をなくしまくった結果、今ではイベント周知以外のニュースは「〜さんのホームベージによりますと〜」が接頭語につきますしね。

  10. CRUSH より:

    左系のマッチポンプは、昔からの定番ですね。

    AERAやハフポストやレコチャイが反日記事を書いて、それを朝日新聞が引用して
    「こんなに嫌われてる私たち」
    という記事を仕立て上げる。

    資本関係は不明ですが、誰かに引用してもらおうと日刊ゲンダイや女性自身オンラインが悪意を含む根拠なし記事を量産してますね。

    なぜいつまでも自分達の記事が、よろこんで引用される前提で(=自分達が好かれている前提で)行動を組み立てるのやら。

    業界としては、自浄作用がはたらくポイントオブノーリターンはとっくに越えていて、あとはユーザー側が一気に離れる閾値にいつ頃に到達するのか?という現状かと。

    1. nanashi より:

      >資本関係は不明ですが、誰かに引用してもらおうと日刊ゲンダイや女性自身オンラインが悪意を含む根拠なし記事を量産してますね。

      どちらも音羽グループ系の企業ですね。
      音羽とは東京都文京区の町名で、ここに本社を構える講談社を中心としたグループ企業を総じて音羽グループと言います。
      日刊ゲンダイ、そして女性自身の発行元である光文社は、何れも講談社系の企業であり、総じて左寄りで反権力思考であるのが特徴です。
      ところで講談社の社長は、有名な陸軍軍人のお孫さんなのですが、その話をすると脱線してしまうので、ここでは語りません。

  11. 丸の内会計士 より:

    新聞社は、未上場企業なので、新聞事業は趣味的な位置づけで不動産屋に業態転換中。不動産屋として給料が出る水準の会社は、突っ込みどころ満載の報道を続ける可能性大。紙の新聞は無くなると思いますが、ネット配信記事は、しぶとく生き残りそうです。
    一方でテレビ局は、公共の電波を使っているということもありますが、各社上場会社であるところが、新聞社とは異なります。想像ですが、突っ込みどころ満載の報道については、それこそ株主総会で突っ込みどころ満載になります。株主総会前の株主総会での質問への準備、すなわち想定問答集の作成も大仕事になりそうです。流石にテレビ局の経営陣も「これって無駄じゃね」とやっと気づき、報道の正常化が実現されるかもしれません。今は、まだ慣性の法則で、仕事のやり方を変えられないということかもしれません。

  12. CRUSH より:

    念のため似た様な話をメモ。

    https://news.yahoo.co.jp/…/7137150f0b46087c0fb0d34157c9…
    共同通信の“スクープ”に外務省が猛反発!
    「水産物の輸入停止」報道が招いた大混乱
    《日中対立の裏側、官房長官も否定した》
    文春オンライン2025/11/24(月)

    「経済報復が始まった!」
    「さあ、どうするどうする日本人」
    「数兆円が消し飛ぶぞ」

    モチの論でみんな外務省にコメントを求めに行ったら、
    「そんな話は1つも来てないよ」

    顔を殴るとWTO違反になるから腹を殴ってきた、みたいな?
    言ってる風で、言ってない芸風。

    そういえばトランプと習近平が直談判して、中国はアメリカから大豆を1200万トン買う約束をしているのに、8月9月と輸入実績ゼロでブラジルからアホみたいにたくさん買い付けてる、とか。
    これまた言ってる風で、言ってない芸風。

    ようするに、うそつき。

  13. 都市和尚 より:

    いつも楽しみに拝読しております。
    よく出る「マスゴミ」という表現、もうネットスラングではなくて正しい日本語になったようですね。

  14. めたぼーん より:

    中国寄りのメディアです、と宣言したいのかな。
    もしくは高市総理を何としてでも下ろしたいか。

  15. はるちゃん より:

    >「トランプ氏が高市氏に自制を求めた」

    私は中国の工作だと思います。
    中国の工作機関が、アメリカのマスコミにインチキ記事を書かせて、日本のマスコミがその記事を取り上げて大騒ぎする。
    マスコミの信用が失墜している今、それなりのまともな人なら容易に想像が付くと思います。
    アメリカも日本も中国の工作機関に取り込まれていると思います。
    中国工作機関に対する何らかの対策を急ぐ必要があります。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。また、著名人などを呼び捨てにするなどのコメントも控えてください。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告