複数のメディアが時事通信の経営不安を相次いで報じる
ダイヤモンド、FACTAという2つのメディアが株式会社時事通信社の経営状態について、相次いで報じました。どちらも「株式会社電通の赤字・中間配当見送りが時事通信社の収支に悪影響を与えた」とする解説に加え、「役員報酬・給与カット」、といった経費削減策を取り上げているほか、FACTAは時事通信社が同業他社に経営支援を打診しているとの風評を取り上げています。
目次
株式会社時事通信社が経営難?=ダイヤモンドが報じる
当ウェブサイトでは、可能な限り、個別企業に関する話題は取り上げない方針をとってきました。
ただ、社会的な影響が大きいケースに関しては、やはり話題として取り上げざるを得ません。
こうした観点からは、当初、取り上げるかどうか少し悩んだ話題があります。それが、株式会社時事通信社の経営状態に関する一連の報道です。この話題、やはり社会研究の一環として、「マスメディア論」を取り上げてきたという立場からは、簡単に触れておきたいと思います。
ひとつめが、これです。
【内部資料入手】時事通信が役員報酬と幹部給与をカットし社員の異動凍結も…電通の赤字が波及、「もうこの会社にはいられない」社員が嘆く深刻事情
―――2025年10月28日 5:22付 ダイヤモンドオンラインより
ダイヤモンドオンラインが先月28日付で報じた記事によれば、時事通信の収支状況が悪化している、というのです。
なんでも2025年3月期には10億円を超える赤字を計上したのに加え、株式会社電通が2025年12月期の中間配当を見送ったことで、電通株を3.47%保有する5番目の大株主である時事通信の収支がさらに悪化する可能背負いがある、ということです。
FACTAは「メインバンクが同業他社に経営支援」と報道
しかも、似たような話題を報じたのは、ダイヤモンドに限りません。紹介しておきたいもうひとつの記事が、これです。
スクープ/時事通信の主力銀行が読売新聞、朝日新聞、共同通信らに経営支援を打診
―――2025/11/04 18:30付 FACTA ONLINEより
FACTAが4日付で『号外速報』と銘打って報じたところの要旨は、こんな具合です(無料で閲覧できる部分のみを要約)。
- 経営不振の時事通信社がメインバンクを介して、読売新聞社、朝日新聞社、共同通信社など同業他社に経営支援を打診しているとの風評が広がっている
- 株式会社電通が3期連続赤字により無配(※)に転落し、資金繰りが悪化する懸念に直面しており、経費節減策を打ち出している
- 朝日や共同は経営支援による資金負担と比べメリットが少ないと腰が引けており、メディア関係者は「手を挙げるとしたら読売くらいしかない」と述べる
…。
要約のうち、「※」で示した部分は、2025年12月期の中間配当のことを指しているものと思われます。
新聞部数は急速に落ち込んでいる
こうした時事通信社の経営状態に関する報道が事実であるかどうかについて、本稿で断定することは控えたいと思います。
ただ、ダイヤモンド、FACTAと2社ほぼ同時に出てて来たことに加え、(あくまでも報道ベースですが)「同業他社への経営支援要請」という話が出てきたのには、著者としては素直に驚きしかありません。これまでの当ウェブサイトにおける指摘内容が、正しかったことが示されているように思えてならないからです。
そもそも、新聞、テレビを中心とするメディア業界は、いまや一種の「斜陽産業」と化しています。
とくに新聞業界の場合、一般社団法人日本新聞協会が毎年公表している新聞部数データで見ても、見事に「右肩下がり」であり、部数は最盛期と比べて半分以下に落ち込んでいて、とりわけコロナ禍以降は新聞部数が毎年数百万部というレベルで落ち込み続けています(図表1)。
図表1-1 新聞部数の推移(セット部数を1部とカウントした場合)
図表1-2 新聞部数の推移(セット部数を2部とカウントした場合)
(【出所】一般社団法人日本新聞協会データをもとに作成【※1999年以前に関しては『日本新聞年鑑2024年』、2000年以降に関しては『新聞の発行部数と世帯数の推移』】。「合計部数」は朝夕刊セット部数を1部とカウントした場合、2部とカウントした場合の両方のパターンで示している)
デジタル版契約が増えている形跡は見られない
また、新聞部数の落ち込みに対し、ウェブ版が順調に伸びているとも言い難いのが実情です。最大手の一角を占める株式会社朝日新聞社ですら、デジタル版有料会員数は30万人台にとどまっており(図表2)、紙媒体の部数の落ち込みを全然カバーできていない格好です。
図表2 朝日新聞朝刊部数とデジタル版有料会員数
| 時点 | 朝刊部数 | 有料会員数 | 合計 |
| 2022年12月末 | 383.8万 | 30.5万 | 414.3万 |
| 2023年3月末 | 376.1万(▲7.7万) | 30.5万(±0.0万) | 406.6万(▲7.7万) |
| 2023年9月末 | 357.3万(▲18.8万) | 30.3万(▲0.2万) | 387.6万(▲19.0万) |
| 2024年3月末 | 343.7万(▲13.6万) | 30.6万(+0.3万) | 374.3万(▲13.3万) |
| 2024年9月末 | 334.9万(▲8.8万) | 30.3万(▲0.3万) | 365.2万(▲9.1万) |
| 2025年3月末 | 326.7万(▲8.2万) | 30.2万(▲0.1万) | 356.2万(▲9.0万) |
| 2025年9月末 | 320.0万(▲6.7万) | 30.8万(+0.6万) | 350.8万(▲5.4万) |
(【出所】株式会社朝日新聞社ウェブサイト『「朝日新聞メディア指標」を更新』および同社の過年度発表値をもとに作成)
しかも、株式会社朝日新聞社はまだ優良資産の蓄積があるため、新聞業界のなかでは比較的経営に余力がある方ですが、こうした資産の蓄積がない新聞社などの場合だと、状況はさらに厳しいであろうことが想像に難くありません。
しかも、デジタル版に関しても契約数を公表しているのは朝日新聞や日経新聞など一部のメディアに限られており、多くのメディアがデジタル版契約数を公開していないという事実自体が、「なにか契約数を公開できない事情でもあるのか」と疑わざるを得ない状況証拠でもあります。
次はメディア業界再編か?
株式会社時事通信社を含めた多くのメディア各社は非上場会社であり、私たち部外者が同社の正確な財務内容を気軽に調べることは難しいところですが、ただ、業界の状況を踏まえれば、メディア各社がいずれ大規模な人員削減や経営支援要請を余儀なくされるであろうことは、十分に予想されることでもあります。
ただ、案外近い将来、メディア業界を巡っては、単なるうわさ話だけに留まらず、本当の意味での業界再編が生じる可能性もありそうです。
正直、ここまでインターネットが発達した世の中で、内外のさまざまな話題を私たち一般国民のレベルでもリアルタイムで把握できるようになりつつあることを踏まえれば、専業メディアが経済社会で生き延びていく道は、かなり限られていることは間違いないからです。
その意味で、「次に大きく動くのはメディア業界である」、などと考えるのは、あながち間違った発想ではないのではないか、などと思う次第です。
本文は以上です。
金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
| 自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
![]() | 日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |






これは銀行が直接支援しないで、仲介という名で不良債権を切り離したがっているという話なのでしょうか?
そもそも押し付けられる方も、仲介する方も体力がないというか、ちょっと無理すると自らも自滅しそうと思われるところが一番面白いところで、今後どうなるか見てみましょう。
下がったのは高市政権の支持率ではなく、時事通信社の信用の方だったようですね。
座布団3枚差し上げます
なーんか海の向こうから資本流入アリそう…
知らんけど
どうせ情報源はお互い相部屋の記者会見場で顔見知り同士。
おまけに共同や朝日はお互い左派バイアス記事同盟。
単に脱落者が出るだけで、これではシナジー効果など望むのは無理というものでしょう。
電通が風邪をひいたのが発端であるというのは味わい深いです。
インターネット世界中心のB2C市場では電通の存在意義が失われつつ証左なのかもしれません。
カメラマンの「支持率下げてやる発言」は、自社が左前になっている事の苛立ちから出た発言なのかもしれませんが、高市首相への八つ当たりだったとすれば、随分みっともない言動ですね。その一言で墓穴を掘ったのですから。
因果応報とか思います。
既にああいう発言をする時点で、それを厳重注意で終わらせる時点で、
もう終わっていたのかもしれませんね。
「4んでしまえばいい」発言は、言論界、そうゆう職業・産業がこの国にあるならば、ですが、を破滅させました。言論に誰もカネを支払わなくなるのです。
新聞社・テレビ局等マスメディアにニュース配信社が
読売新聞・朝日新聞に経営支援要請って!
電通の悪事やインチキは数知れませんからねえ。ネット時代に躍進するのはサイバーエージェントかも知れません。
時事通信が経営不安になったから、社内にレベルの低い記者しか残らなかったのか、それとも、レベルの低い記者しかいないから経営が不安になったのか。
蛇足ですが、(別に時事通信に限った話しではありませんが)経営不安になった時、支援の手がさし伸ばされるかで、その業務がお客様(?)から必要とされているかが分かるのではないでしょうか。
「乗って残そう◯◯線」
「読んで残そう◯◯新聞」
「視て聴いて残そう◯◯放送」
この中で耳にしたことがあるのはどれでしょう…
国策通信社の 「同盟通信社」 がGHQによって解体されて、「共同通信社」 「時事通信社」 「電通」 となった話は有名ですね。そのため、今でも電通とはただならぬ関係にあり、時事通信社の業績は電通の業績に引きずられます。
時事通信社 – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%99%82%E4%BA%8B%E9%80%9A%E4%BF%A1%E7%A4%BE
>設立の経緯から、同盟通信社の母体の一つである電通の大株主となっており ~ 2001年に電通が東京証券取引所に新規上場したときには、保有していた電通株の一部を売り出しその売却益が東京・銀座に新本社を建設するための原資となった。
>以前は筆頭株主であったが、近年は財務上の理由から株式の売却を進めており、~
同業者に経営支援を要請とか、全然考えてないのか、銀行のアドバイザーが間抜けなのか、何か秘策があるのか。普通は、大手不動産会社しかないと思っていましたが、時事通信のビルが小さいので、相手にされなかったのか。
買い手がいるのかどうか。読売新聞が買うのか??
業界構造から見れば、20年前から現状を予測できたはず。時事通信自体の経営者が意味不明ですね。やってることが。
買収できるのは、トヨタイムズ?時事通信を買収する意味があるのかどうか?
ファンドも厳しいですね。会社更生法で銀行に泣いてもらっても、本業もアウトで、業界構造もアウトでスポンサーがつかない。何か秘策があるのでしょうね。経営陣の方々。
中国中央電視台傘下に正式に入って日本支局として再出発ですかね?
ご指摘の通り、経済合理的に説明可能なまともなスポンサーではなく、政治的意図を持ったC国関係の企業が登場しそうですね。いざという時は、C国に助けてもらえるから、別に経営陣は、お馬鹿でも良いという感覚なのかもしれませんね。
もしかして、大手町の隣駅の新聞社もそうですかね。こちらは、割と良い不動産を持っていると思いますので、不動産で食べて行くのかもしれません。
C国関係に取られるまいとして、既存オールドメディアの覚え目出度くない企業、たとえばM社長のAホテルが買収しようとしたら既存オールドメディアは目を剥いて怒りそうな悪寒。
3人集まれば軽量快速経営でいい仕事ができます。稼ぐ仕組みはネットが提供してくれる。
輪転機は要らない、配達網も要らない、かっこいいオフィスはしばらく先だ、スマホ転送で PBX(内線交換機)は要らない、オンライン会計ソフト・労務ソフトで楽々経営、法人銀行口座をさくっと開設、無番号法人クレジットカード・法人デビットカードを社員に持たせて経費支出細目・経費構造を実時間把握、購買はオンライン通販サイト法人アカウントに集約、管理者向けダッシュボードのグラフィック表示に涙ちょちょ切れ、業務活動はすべて slack / Google Workspace / MS365 / Adobe Cloud の中に完結、servicenow でビジネスフロー・業務フローを設計可視化、本当にいい時代になったものです。