野党第1党なのに「石破首相続投」を願う奇妙なホンネ
過去には自民党が参院選で30議席台の獲得に留まり、当時の民主党に惨敗したこともありましたが、政党支持率で見て、現在の立憲民主党が過去の民主党なみに躍進できるというのは考えづらいところです。もちろん国民民主党の躍進も見込まれるにせよ、同党もかつての民主党なみに議席が取れるというものでもありません。こうしたなか、立憲民主党のホンネは「自民党で首相おろしの動きが出てきたら困る」、なのでしょうか?
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SNSで渦巻く自民への不満…参院選敗北が意味するもの
いわゆる「年収の壁」騒動などを巡って、自民党内ではそこそこ危機感が高まっているように見受けられます。
事実上の「減税潰し」が少なくない保守層・SNS層・若年層・勤労層を激怒させ、今夏の参院選では自民党に投票しない、などと公言する人が、Xなどでも増えているからです。
当ウェブサイトではこれまで何度も繰り返してきましたが、正直、自民党が国政選挙で敗北することが、日本の政治にとって良いことかどうかは微妙なところです。
とりわけ衆参同日選にでもならない限り、今夏の参院選は「政権選択選挙」ではないため、仮に自民党が惨敗したとしても(衆院で内閣不信任決議案でも可決されない限りは)今後も自民党政権が続き、おそらくは石破茂首相が続投する可能性が高いです。
ということは、参院選の結果次第では、国政が大きく停滞する可能性があるのです。
とりわけ、参院の場合は「解散総選挙」という仕組みがなく、3年ごとに半数が改選される(つまりいったん当選したら6年間の任期が保障されている)という意味では、政治の停滞の大きな原因となりかねないことに注意が必要です。
かつて安倍総理が参院選に惨敗したことも!
その具体例を考えてみましょう。
たとえば2007年7月の参院選では、いわゆる「消えた年金問題」などが争点化され、安倍晋三総理大臣率いる自民党は比例、選挙区あわせて37議席しか取れずに惨敗し、その安倍総理は持病の潰瘍性大腸炎が悪化するなどし、在任たった1年で同年9月に辞任しています。
その一方、当時の民主党は60議席を獲得して大躍進したこともあり、非改選議席と合わせた選挙後勢力は自民党83議席、民主党109議席と「第1党・第2党」が逆転。勢いに乗った民主党は2年後の2009年の衆院選で政権を奪取することにも成功しています。
そして、この2007年の惨敗により自民党が参院第2党に転落するという状態は、なんとか6年で終わりました。安倍総理自身が自民党総裁に再登板を果たし、2012年12月の衆院選で自民党を圧勝に導いた勢いもあってか、2013年の参院選でも自民党は65議席と改選議席の過半数を獲得したからです。
また、「3年に1度半数が改選される」という仕組みを取っている参院では、当時の岸田文雄首相のもとで行われた2022年の通常選挙で自民党はそこそこの勝利を収めたこともあり、非改選議席は統一会派ベースで61議席あります。
連立を組んでいる相手である公明党の非改選議席が13議席あることを考慮すれば、自公あわせて非改選議席が74議席であるため、今夏の参院選では自公合わせて51議席取れれば、改選後勢力は125議席となり、参院側でも引き続き、過半数を制することができます。
しかし、もし自民党が2007年なみに37議席の獲得に留まってしまったならば、また、公明党が2022年並みの13議席の獲得に留まってしまったならば、参院側でも与党が過半数割れを起こすことになります。
この点、厳密にいえば、参院の議長は自民党から出ているため、「議長票」を考慮すれば、ギリギリ過半数を維持している格好ですが、それでも自民党政権が厳しい状況に置かれることは間違いありません。
かつて麻生総理に辞任を迫ったのに…居座る石破首相
もちろん、くどいようですが、参院選は「政権選択選挙」ではありませんし、また、すでに衆院側で自公は過半数を割っているにせよ、石破政権が日本維新の会の協力を得て2025年度予算案を通したという実績もあるわけですから、維新の協力を取り付ければ、なんとか政権運営していけるかもしれません。
その意味では、参院選で自民が敗北したとしても、それにより石破首相が(党内外からの批判が高まるのは脇に置くとして)引責辞任しなければならない、という法的義務はありません。
個人的に「石破派」といえば、2009年の衆院選の直前、麻生太郎総理大臣に対し辞職を迫った人間だ、という記憶が鮮烈に残っていますが(たとえば産経の次の記事参照)、その石破氏は自身が昨年の衆院選で敗北しながらも辞任せずに首相職に居座っているというのは、非常に新鮮な衝撃を覚える次第です。
石破茂元幹事長の過去つつく麻生太郎副総理 「麻生降ろし」の恨みか…
―――2018/09/17 01:00付 産経ニュースより
いずれにせよ、自民党が参院選で苦しめられてきたという歴史があることを思い出しておくと、また、第一次安倍政権時代に自民党が37議席しか獲得できず惨敗した過去があることを踏まえると、今夏の参院選の結果次第では、自民党が再び長期低迷期を迎える大きなきっかけとなり得ることは間違いなさそうです。
当時との違い:自民批判票の受け皿が存在しない
もっとも、2007年と現在の状況に大きな違いがあるとすれば、当時存在した「民主党」という自民党批判票の受け皿が、現時点では存在しないことかもしれません。
いちおう民主党の事実上の後継政党といえば立憲民主党であり、その立憲民主党は衆参両院で第2党の地位を占めていますが、各種世論調査で判断する限りは、立憲民主党に対する支持が広範囲に広まっている形跡はありません。
それどころか、衆院で第4会派、参院では第5会派に過ぎない国民民主党に、(とくに若年層を中心に)政党支持率で完敗している状況にありますし、一部調査だと立憲民主は国民民主と比べ、倍近い差をつけられてしまっています。
それでは国民民主党が2007年の民主党なみに、参院選で60議席を獲得するという大躍進を遂げるのかと問われれば、おそらくそれもあり得ません。
著者自身としては、勢い次第では国民民主党が比例で1000万票超を獲得するなどして、15~20議席程度を獲得することはあり得ると考えているのですが、さすがにそれ以上の議席を獲得するためには各地できちんと候補者を立てたうえで地盤を固めることが必要であり、さすがに現実的にその時間はありません。
そうなると結局、自民党は参院選でかなりの苦戦を余儀なくされながらも(場合によっては2007年並みの敗北もあり得るにせよ)、最大野党・立憲民主党も国民民主党に票を食われて躍進できず、国民民主党もある程度躍進するにせよ、選挙準備の時間が足りずに党勢の大幅拡大も難しいところです。
透けて見える立憲民主党の「ホンネ」
こうしたなかで、ちょっと考えておく価値がある話題があるとすれば、それは立憲民主党の思惑かもしれません。
これに関連して産経ニュースが2日、こんな記事を掲載しています。
参院選は「石破首相で」 野党、石破おろしに警戒感 今も残る「菅おろし」のトラウマ
―――2025/04/02 20:25付 Yahoo!ニュースより【産経ニュース配信】
産経によると野党は今夏の参院選に向け、石破政権が継続することを強く期待しているフシがあり、また、自民党内の「石破おろし」を強く警戒しているのだそうです。
これは、いったいどういうことでしょうか。
これには現在の与野党の国会における勢力がかかわっています。
本稿冒頭でも述べたとおり、衆院側では自公は過半数を割っているわけですが、これについて産経はこう指摘します。
「後半国会の最大の焦点は、野党による内閣不信任決議案の扱いとなる。衆院で過半数を持つ野党が団結すれば、不信任案は可決される」。
まったくそのとおりでしょう。
実際、記事によると立憲民主党の重徳和彦政調会長は2日の記者会見で、不信任案提出に向けた野党連携の必要性を問われ、次のように述べたのだそうです。
「野党8党派がしっかりと結束し、一つ一つの法案や政策を通していくことが大事だ。非常に高度な政治判断になる」。
不信任決議案が通ると却って困る?
この発言について産経は、「不信任案提出の環境を整えるのは立民だけの責任ではなく、野党全党派の姿勢が問われるとの考えを示したもの」だと指摘しているのですが、それと同時にもし不信任案が可決されてしまえば、それはそれで(野党にとって)厄介です。
というのも、憲法の規定上、石破首相の側としては10日以内に総辞職か衆院解散を選ばなければならないからです。
日本国憲法第69条
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない
産経はこれについてこう述べます。
「不信任案の提出は辞任リスクを誘発するため、慎重にならざるを得ない」。
なんとも情けない話ですね。
憲政の常道として、本来、最大野党というものは、いつでも政権を担い得る体制を整えておかなければならないはずです。ところが、現在の立憲民主党は、昨年秋の衆院選以降、すっかり存在感がなくなってしまい、各種世論調査でも(高齢層を除けば)ほとんど支持がありません。
立憲民主党には国民に訴えるべき核となる政策が、おそらくは有権者からほとんど支持されていないのでしょう。
だからこそ、石破首相に総辞職を選ばれても、衆院解散を選ばれても、立憲民主党としては困ってしまう、というのが実情なのではないでしょうか。
もちろん、立憲民主党は昨秋の衆院選で勢力を50議席増やしているのですが、冷静に得票を分析してみると、比例代表では前回(2021年)と比べ、得票を数万票増やしたに過ぎず、小選挙区ではむしろ得票が147万票減っていたりもします。
つまり、立憲民主党が衆院で議席を増やしたのは、「立憲民主党が支持されたから」ではなく、「自民党がズッコケたから」であり、また、小選挙区主体の衆院選の特徴によるメリットを生かすことができたからです。
衆院選と違って参院選では、小選挙区(一人区)は改選124議席のうち32議席しかなく、それ以外は比例代表(50議席)と中選挙区(42議席)で構成されるため、自民党がズッコケたとしても、立憲民主党は衆院選ほどに議席を増やすことはできません。
かかる状況で、たしかに自民党で新首相(たとえば高市早苗「総理」あたり)が誕生することになれば、自民党にも刷新感が出てくる一方で、「手取りを増やす」で勢力を強める国民民主党にもサンドイッチされることで、立憲民主党がますます埋没しかねません。
自民党は変わるのか?
なお、自民党についてもヒ指摘しておきましょう。
まず、著者自身は昨日の『「泥船」と化す石破体制を自民党はしっかり支えるべき』でも指摘したとおり、とりわけ昨年秋の自民党総裁選で石破氏に投票した189人を中心とする自民党国会議員らは、かりに現在の自民党が「泥船」なのだとしても、最後までしっかりと石破首相を支える道義的責任があります。
たとえその「泥船」が途中で分解し、無残に海底に沈むことになっても、です。
しかし、それと同時に本当に日本の外交安保と国民生活が大切だと思うのであれば、自民党を中から変える動きをすべきですし、場合によっては高市早苗氏のように公然と執行部を批判するのが自然ではないでしょうか(『減税に後ろ向きな自民税調インナーを高市氏が公然批判』等参照)。
これについては本日をもって西村康稔、萩生田光一の各氏らを含めた旧安倍派の処分期間が満了することで、自民党内で新たな「火種」が生まれるのかどうかは注目したいところです。
旧安倍派処分満了で石破おろしの火種の可能性も 西村氏「喪明け」初日に麻生氏が講演へ
―――2025/04/02 20:32付 産経ニュースより
次に、先日の『「高学歴官僚は間違いを犯さない」と信じて良いのか?』でも取り上げたとおり、、最近、Xなどでは一部の熱心な自民党支持者(というか、石破氏に対する支持者)が先鋭化し、人格攻撃やブロックなどに走る事例も散見されます。
しかしながら、本当に熱心な自民党支持者であれば、むしろ石破首相に辞任を迫るのが筋でしょうし、自民党の至らないところを指摘するのが本当の支持者ではないかと思います。
少なくとも著者自身を含めた多くの国民は、「政党」を支持しているのではなく、「政策」を支持しています。
もちろん、石破首相を「政策で」支持しているとおっしゃるのであればそれは自由になさればよいと思いますが、彼らの多くは事実認定がそもそも誤っており(たとえば減税論がその典型例でしょう)、まともにマクロ経済学や会計学、税法などの知識もないことが多いのです。
その意味では、客観的事実と正しい考察に基づいて政策を議論することの重要性が、ますます高まっていることだけは間違いないといえるでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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立憲としては、民主党政権の経験から、下手に政権をとると大変なことになると思っているのでしょう。特に、今はアメリカのトランプ大統領と対峙しなければなりませんから。
先日、櫻井よしこ氏が石破茂総理を痛烈批判をしたばかりですが、自民党議員は何も言わないのは、自民党が既に終わっているからです。
旧安倍派議員が、3日に処分満了で萩生田、西村議員が復帰するとのことですがいつまでも同じことを繰り返しているのぱかりです。さっさと議員辞職してもらいたい。
安倍晋三の子分たちでないと、トランプから口もきいてもらえない(石破ならなおさら)という現実に直面してようやく、独房から出されたように見えますね。
どなたか言ってましたが、高市早苗派から内閣不信任を出したらよいのではないでしょうかね。
踏み絵を踏ませる訳です。
誰が敵で誰が味方か、ハッキリさせて進むことだけが、勝ち目だと思います。
志村喬 「そうかそうか。おぬし生きておったか」
加東大介「二の丸が焼け落ちて頭の上に崩れ落ちてきたときには、これまでかと思いました」
志村 「実は … カネにも出世にもならん難しい戦がある。ついて来るか」
加藤 (不敵な笑い)
志村 「今度こそ … 死ぬかもしれんぞ」
名シーンでしたね。
「ついてくるか?」
「はい。」
加東が間髪入れずに即答。
ためらわず表情も変えず。
志村への絶対的な信頼が伝わります。
無駄なSEもカット割りもせず淡々と長回し。
背景では青二才の勝四郎が息を飲んでこのベテラン二人の静かなやり取りを見つめているのが、観客の気持ちの代弁者。
しびれる~
六韜:有能なら何一つ与えず帰せ、無能ならば大いに与え歓待せよ!
立憲民主党は〇ソだと思ってましたが(〇には「ク」が入る)、ここまでとはね。
ご都合主義ここに極まれりという感じです。
本当に政権取りたくないし、野党のままで週刊誌片手に与党の批判だけしてお気楽に、そして官僚に対して威張って王様気取りしたいだけなんだと思います。
不信任出して、ダブル選挙にならないかな・・・