子供部屋おじさんに見る…生活費の負担と受益の関係性
親子関係は負担と受益の関係があいまいになりがちですが、そうであるならばこそ、むしろ親御さんは「子供部屋おじさん」や「子供部屋おばさん」に一定の生活費を請求した方が良いのかもしれません。成人しても実家で暮らす人の事情は一般にさまざまですが、こうしたなかで、ちょっと気になる話題が目につきました。
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知恵も工夫も配慮も足りない家族
週末の『お父さんがおにぎり2個で…一家に足りない工夫と意識』は、記事の前半部分は普段の「日本は税、社保が高すぎて額面と手取りの関係がおかしい」とする議論と思わせておきながら、後半部分で知恵と工夫と配慮が足りない一家に関する、非常に脱力する話題を取り上げました。
コンビニおにぎりと会社のウォーターサーバーが命綱…月収40万円・小遣い月額1万円の40代地方在住サラリーマン、歯を食いしばり教育費捻出も、有名私大に通う娘の将来展望に「納得できない」ワケ
―――2025/03/28 11:02付 Yahoo!ニュースより【THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン)配信】
改めてざっと振り返っておくと、「中国地方に暮らす40代後半の鈴木さんは長女を東京の有名私大に通わせているため経済的に苦しく、昼食はコンビニのおにぎり2個と会社のウォーターサーバーで済ませている」、といった内容です。
記事から判明する内容と、部分的に当ウェブサイト側にて想像・補足した内容を総合すると、鈴木さんご一家の経済状況はこんな具合です。
- 鈴木さん…年収600万円弱(手取り460~480万円程度)
- 鈴木さんの奥様はパートタイム勤務の専業主婦(年収103万円以下)
- 鈴木さんの長女は学生でアルバイト状況等は不明
- 奨学金は借りておらず、学費や仕送りで毎月18万円を使っている
- 鈴木さんがお父様から相続した1000万円は長女の学費等でほぼ残っていない
- 長女は大学を卒業しても就職せず結婚すると宣言している
…。
改めて振り返る:永久就職という甘い考え
記事の中で計算が全然合っていないという点もさることながら、これについては当ウェブサイトの読者コメント欄、あるいはYahoo!ニュースのコメント欄などでもわりと盛り上がっているようですが、鈴木さんと奥様と長女に対して同情的な意見はほぼ皆無です。
良い年をしてしみったれた生活をする鈴木さん、専業主婦なのに夫に弁当すら作らない奥様もさることながら、長女の「どうしても東京に行きたい」と泣いて懇願するくらいの精神的な幼稚さ、大卒すぐに就職せずに結婚するという人生に対する見通しの甘さなどを踏まえると、それも当然かもしれません。
できるだけ控え目な言い方をすると、知恵が足りない、工夫が足りない、そして思いやりが足りないからです。
教育というものは経済学的にみれば未来への投資です。
一般的に高卒よりも大卒の方が生涯年収も多く、学校を卒業してから65歳まで働くと考えると、高卒ですぐに就職するよりも、大学で4年間しっかり勉強してから22歳(※浪人も留年もしていない場合)から働いた場合の方が、トータルで見た給料は高いといえます。
つまり、高卒ですぐ働かずに4年間の学生時代を過ごすことで、大学の学費、高卒後すぐに働いた場合に得られたであろう4年分の給与所得、高卒ですぐ働ければ身についたであろう実務スキルなどを犠牲にすることになりますが、これがいわゆる機会費用です。
大変申し訳ないのですが、「大学を卒業したらすぐ、いま付き合っている社会人の彼氏と結婚して子供を産み、子育てが終わったらパートの範囲でのんびり働く」というライフスタイルで、わざわざ東京の有名私大を卒業する価値があったのかは疑問です。
つまり、鈴木さんが年間、昼食をコンビニおにぎり2個で済ませるなどの涙ぐましいほどにけち臭い努力をしたわりに、娘さんはその教育の効果を享受するでもない、ということです。
負担と受益の関係がずれている
ただ、これも結局のところ、学費の負担者と受益者が異なっている、という点に、大きな問題があるのかもしれません。
学費を負担するのはお父様である鈴木さんですが、その恩恵を享受するのは娘である長女だからです。
長女にとってみたら、自分で働いて稼いだカネで大学に通っているわけではないため、卒業せずにさっさと永久就職、という選択肢が平気で出てくるのかもしれませんが、これがもし奨学金で進学していた場合は、就職しないという選択肢はないでしょう。
4年間で1000万円以上ともみられる学費・生活費を自分で稼いでいないからこそ、このような行動につながるのかもしれません。
こうしたなかで、親子の経済関係について考えさせられる話題がもうひとつあるとしたら、それは「子供部屋おじさん」、「子供部屋おばさん」と呼ばれる現象かもしれません。
これは、成人しても実家で暮らし、子供時代に使っていた部屋ををのまま使い続けている社会人らのことをさす用語です。
実家暮らしの事情はさまざまだが…
もちろん、実家暮らしにはそれぞれの事情があります。
たとえば、何らかの事情があって実家から出られないケースもあるでしょう(なかには『人生に挫折はつきものだが…どこまで公的支援すべきか』などでも触れた「親の貯金を食い潰す50歳の放蕩娘」のように、正直、あまり同情できないような事例もありますが…)。
また、「きちんと働いているけれども、経済的に実家で暮らした方が安上がりであるから実家で過ごしている」というケースもあれば、「親が病弱で働きながら親の面倒を見るために実家暮らしをしている」というケースもありますので、「子供部屋おじさん」などと一律で決めつけるのはかなり一面的であるようにも見受けられます。
ただ、一般論としては自立できる年齢に達していながら自立していないというのは、やはり目立つ現象でもあります。
こうしたなかで、『Yahoo!ニュース』には31日、現代ビジネスが配信したこんな記事が掲載されていました。
「家賃」だと思って親に10万円を渡した月も…元「子供部屋おじさん」が「実家に1円も入れない子供部屋おじさん」に思うこと
―――2025/03/31 08:03付 Yahoo!ニュースより【現代ビジネス配信】
年収600万円ほどの30代男性が実家で暮らしているとき、大学の学費や家賃相当額として毎月6~10万円を家に入れていた、などとするものですが(※この男性は現在は実家を出て婚約者と同棲しているそうです)、なかなかに興味深い事例です。
というのも、実家を出ていくときに両親がこの男性のためにコツコツと貯めてくれた300万円が入った通帳を渡された、というのです(※相続税法や贈与税法などに照らして問題があるきがしますが、この点についてはとりあえず脇に置きます)。
この男性が大学を22歳で卒業してから8年ほど実家で暮らしていたと仮定すると、その期間、この男性が実家に入れていたおカネの半額近くが贈与された格好であり、結局、この男性は実家で暮らす費用を、月3~5万円ほどしか負担していなかった計算です。
年老いた親御さんにとっては若い息子が同居してくれることは非常に心強く、それに対する対価、という側面もあるのかもしれません。
請求されなかったからおカネを払わなかったという人も
ただ、税法云々は別として、この記事のケースだと(少額であるとはいえ)男性が実家におカネを入れていたこと、結婚を視野に家を出たのは良かったと思われる反面、実家暮らしが快適過ぎるためか、いくつになっても家から出ていかず、生活費もほとんど家に入れていない、というケースもあるようです。
この記事と同一の著者が2月6日付で『マネー現代』に寄稿した次の記事によると、33歳、年収550万円の「子供部屋おじさん」が12年以上実家に1円も支払っていない、という事例があります。
親のスネをかじる「イージーモード」人生でもいいじゃん…33歳年収500万円「子供部屋おじさん」が12年以上、実家に1円も入れない理由
―――2025.02.06付 マネー現代より
これによると、記事の著者に対し、取材に応じた人物がこう答えたそうです。
「僕が家に1円も入れてない理由は、親から請求されたことが一度もないからです。こう言うと『社会人なら普通は言われなくても入れるもんだ!』みたいな批判があるようですが、いやいやいや、請求が来ない限りは普通払わないでしょ。税金で例えると分かりやすいです。もしも所得税や住民税が給料から天引きではなく、自分で払ってもいいし払わなくてもいいって制度になったら、その人たちは払うんですか?」
税金のたとえ話のくだりも含め、なんだか何が言いたいのかよくわからない発言です。
この点、あくまでも一般論ですが、実家暮らしにはそれぞれ理由があり、また、親御さんの側も子供部屋に住んでいる息子に生活費を請求していないことは間違いないので、これもひとつの考え方なのでしょう。
ただ、あくまでも個人的な感想を申し上げるなら、親御さんとしても息子さんから生活費を徴収した方が良いのではないか、といった気もします。
本来、家賃や食費、生活費といった諸費用は、(それを負担しているのがだれであるかは別として)必ず発生するものであり、可処分所得はそれら諸費用を控除したあとの概念であるということを知っておく必要もあるからです。
このあたりも、負担と受益の関係があいまいになりがちな親子関係で気を付けるべき点なのかもしれません。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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社会人彼氏は、おそらくそれなりの若さで専業主婦を扶養するということに同意していると思われるので、非常に潤沢な収入と将来性をお持ちなのでしょう。鈴木さん夫妻もおそらくはそれを既にあて込んでいるからこその方針であるように思えます。大学進学自体も社会人彼氏が同意なり推奨なりしているかもしれません。また結婚が成らなかった場合に将来の選択肢を増やすという、料金が些か高額なものの保険になります。(大学が学びの場というよりただの将来へのステップ、保険となってしまっている現状はどうかと思うのですが。)
都合よく今現在の負担のみを殊更に強調して見せているだけに思えてきたので、多分鈴木さんは大して”正解のわからない問題”など抱えておらず、なんなら義理の息子に老後を預けることがほぼ決まってでかした娘よガハハとニッコニコでパフェでも食ってそう。
「親の背中を見て子は育つ」と言います。
娘さんの選択はお母様の生き様なのかも。
これのアメリカ版があったとしたら、Smith一家になる。
そんな印象を記事から感じました。
この母親、裕福な家庭で育ったのでは。亭主は惚れた弱み、承知のうえ結婚し
頭が上がらぬのでは?
あきえ様を連想いたしました。m(_ _)m
現代版「ゴリオ爺さん」でしょうか
「人はそれぞれ、人生さまざま」と誰かがのたまわりましたっけ
いくつもの外部・内部要請という
プラスもあればマイナスもある紐にぶら下がって
彼の家庭の状況は現在の安定ポジションにあるわけです
そこで満足しているなら他人に迷惑を及ぼさない限り
他人からとやかく言われる筋合いは無い
もし現状を変えることを望むなら
しかるべき人に相談するなり、自分で工夫して
いずれかの紐の張力を変えようと試みればいい
端から傍観する者の身としては
他山の石の、学べるケースとしてわが身を振り返ろう
なかなかに生きづらい世の中であります
中・高・大学費無償化したうえ給食無料にしたらもっと悲惨になりますよ。
なんらかの学生であり続ける事が目標にすらなりうる。
私たいした経歴じゃないですし家が極貧でもないですが公立高校から先大学(複数)は学費も生活費も自分で稼ぎましたもん。
やりくり出来ない程度なら進学するレベルに無いと思ってます。
貧しかったかも知れないけど困った記憶が皆無なので貧困ではありませんでした。
単なる貧乏です。
今の物価と学費を考えても楽勝で生きていけますよ、私。
ワザとこういう記事を作って人々を分断していると思います。
生活保護を量産させない事の方が大事なんです。
税金払うの嫌がる人達はこういう人達であるという誘導でしょう。
日本政府がビタ一文自分の処遇を削りたくない事を考えてみるといいです。
>一大疑獄事件に発展か。自民党が繰り返す「ネット工作」の汚いやり口
https://www.mag2.com/p/news/515846/2