「割合」で見る広告費…マスコミのシェアは過去最低に
当ウェブサイトで先週取り上げたとおり、株式会社電通が公表した『日本の広告費』の最新レポートによれば、マスコミ4媒体広告費は新聞広告費を除いて微妙に拡大しました。ただ、総広告費に占める「割合」で見ると、マスコミ4媒体広告費のシェアは2000年の64.98%から2024年には30.45%にまで落ち込んでおり、これに対しネット広告費のシェアは2000年の0.97%から2024年には47.59%にまで拡大しています。
マスコミ4媒体広告費は小康状態に
先週の『新聞広告費がさらに減少…ネット広告費はさらに伸びる』えも取り上げたとおり、株式会社電通が2月27日に公表した『日本の広告費』の最新レポートによれば、ネット広告費がさらに伸びる一方、新聞広告費がさらに落ち込みました。
マスコミ4媒体(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ)については全体として微妙に拡大しましたが、新聞については例外的に2.71%の減少となり、また、折込広告費についても5%あまりの減少を記録しています(図表1)。
図表1 広告費前年比較
媒体 | 2023年→2024年 | 増減 |
総広告費 | 7兆3167億円→7兆6730億円 | 1.05倍に拡大 |
マスコミ4媒体 | 2兆3161億円→2兆3363億円 | 1.01倍に拡大 |
新聞 | 3512億円→3417億円 | 2.71%の減少 |
雑誌 | 1163億円→1179億円 | 1.01倍に拡大 |
テレビ | 1兆7347億円→1兆7605億円 | 1.01倍に拡大 |
ラジオ | 1139億円→1162億円 | 1.02倍に拡大 |
ネット | 3兆3330億円→3兆6517億円 | 1.10倍に拡大 |
PM | 1兆6676億円→1兆6850億円 | 1.01倍に拡大 |
折込 | 2576億円→2442億円 | 5.20%の減少 |
(【出所】株式会社電通レポートをもとに作成)
「割合」で見るとまた違った姿が見えてくる
ただ、新聞業界のひとり負け、といった状況ではありますが、その一方でテレビ、ラジオ、雑誌広告については、前年比でプラスとなっています。
一見すると順調です。
ただ、「量」と「割合」は、じつはどちらも大事だったりします。
ここで少し興味深い視点を紹介しましょう。
じつは、マスコミ4媒体広告費が広告費全体に占める割合は、最近、急速に低下しているのです。
総広告費に占めるマスコミ4媒体の広告費の割合は、2000年時点で64.98%、つまりざっと3分の2を占めていた格好ですが、総広告費全体が(とくにここ数年は)力強く伸びる一方、マスコミ4媒体広告費は横ばいが続いており、2024年ではついに30.45%にまで落ち込んでしまいました(図表2)。
図表2 総広告費に占めるマスコミ4媒体広告費の割合
(【出所】株式会社電通『日本の広告費』レポートおよび当ウェブサイト読者「埼玉県民」様提供のデータをもとに作成)
ちなみにこの「30.45%」というのは、著者自身がデータを持っている2000年以降に関していえば、割合としては過去最低です。
これに対し、ネット広告費については右肩上がりで上昇を続けており、広告費全体に占めるシェアも2024年では47.59%と過去最大を更新しました(図表3)。
図表3 総広告費に占めるネット広告費の割合
(【出所】株式会社電通『日本の広告費』レポートおよび当ウェブサイト読者「埼玉県民」様提供のデータをもとに作成)
テレビ広告費も新聞広告費もシェアが低迷
また、各オールドメディアの広告費も低迷が続いており、たとえばテレビに関しては2000年に34.03%を占めていたのが、直近の2024年においては22.94%と、これも2000年以降で過去で最低となった格好です(図表4)。
図表4 総広告費に占めるテレビ広告費の割合
(【出所】株式会社電通『日本の広告費』レポートおよび当ウェブサイト読者「埼玉県民」様提供のデータをもとに作成)
また、新聞広告費に関しても、2000年の20.42%だったシェアが、なんと2024年には4.45%と、シェアでは4分の1以下に落ち込んでいる格好です(図表5)。
図表5 総広告費に占める新聞広告費の割合
(【出所】株式会社電通『日本の広告費』レポートおよび当ウェブサイト読者「埼玉県民」様提供のデータをもとに作成)
新聞、テレビの広告費は「高すぎる」のでは?
なんとも興味深いことです。
新聞部数については毎年数百万部レベルで消失し続けている一方、テレビ視聴時間についても減少し続けていることで知られていますが、「広告費」という観点からは、新聞、テレビを中心とするオールドメディアがどんどんと影響力を失っていることがよくわかります。
新聞というメディアに毎月4,000~5,000円という大枚をはたこうとする人が、いまや社会の多数派ではなくなりつつあることは間違いないのですが、それだけではありません。スポンサーにとっても新聞やテレビという媒体に対し、そこまで多額の広告費を支払おうとするインセンティブも低下しているのではないでしょうか。
逆に言えば、新聞、テレビは一種の「既得権」として、新聞は多額の購読料と広告収入、テレビも広告効果に比べて多額の広告収入を得ていて、これが時代にそぐわなくなってしまっているのです。
これに加え、例の「フジテレビ問題」―――スポンサーがフジテレビに対するCM出稿を相次いで差し止めていること―――なども考慮すれば、今年以降、テレビ広告費(絶対額と広告費全体に占める割合)は、さらに落ち込むことはほぼ間違いないと思う次第ですが、それだけではありません。
収入源が減少すれば、それだけ社会的影響力も低下します。
果たしてこれからオールドメディア業界がどこに向かうのか。
まだまだ目が離せない展開が続きそうです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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