年収の壁騒動を「国民は2年後に忘れ去る」ものなのか
官僚やオールドメディアにとって都合が悪い論点、今までであれば「報道しない自由」を駆使すれば鎮静化することができていたフシがあります。しかし、昨年の衆院選や兵庫県知事選のあたりから、どうもネット世論はそう簡単に鎮圧できない、ということがわかってきたように思えます。ことに、広告費の世界でもネットは伸び続け、オールドメディアが伸び悩んでいるといった調査結果を見るに、ひと昔前のような「報道しない自由」で世論を鎮圧することができなくなった現状が浮かびます。「年収の壁」問題も、これと全く同じではないでしょうか。
目次
自民党の支離滅裂な基礎控除上乗せプラン
正直、「支離滅裂」ともいえる自民党の減税案、考えたのはいったい誰なのか。
シンプルに、気になります。
自民党の減税案は、(彼ら自身の説明によれば)年収区分別に基礎控除の引き上げ幅が細かく異なり、しかも年収(給与収入)200万円から850万円までの層に関しては、基礎控除の引き上げ幅の増額は2年間限定の措置なのだそうです(図表1)。
図表1 基礎控除の上乗せ特例
(【出所】テレビ東京・篠原裕明氏のXポスト)
新たな壁が4枚も…意味不明な基礎控除の年収制限
これらをもとに、与党側が国民民主党に示していたとされる基礎控除拡大案を解読すると、(やや不正確ながらも)図表2のようなイメージであろうと推定できます。
図表2 与党側が国民民主党に示したとされる基礎控除拡大案
年収または所得 | 基礎控除の額(引上げ額) | 減税効果 |
~年収200万円 | 95万円(+47万円) | 23,994円 |
~年収475万円(2年間) | 88万円(+40万円) | 20,420円 |
~年収665万円(2年間) | 68万円(+20万円) | 20,420円 |
~年収850万円(2年間) | 63万円(+15万円) | 30,630円 |
~所得695万円 | 58万円(+10万円) | 23,483円 |
~所得900万円 | 58万円(+10万円) | 33,693円 |
~所得2400万円 | 58万円(+10万円) | 40,840円 |
~所得2450万円 | 42万円(+10万円)? | 40,840円? |
~所得2500万円 | 26万円(+10万円)? | 40,840円? |
所得2500万円超 | 0円 | 0円 |
(【出所】『減税巡るショボすぎる自公案…国民に喧嘩売った財務省』で示した情報に加え、国民民主党・玉木雄一郎氏のXへのポスト内容などを参考に、扶養控除なし、月収は年収の12分の1という前提を置いて作成・試算。ただし、給与所得控除の正確な金額、あるいは所得2400万円以降2500万円までの層などに関しては資料がないなど、推計する資料が不十分であるため、その正確性について保証するものではない)
年収の壁を動かしたら新しい壁が4枚も出てきたという、なかなかに強烈な計算式です。
ちなみに年収200万円以下の層に関しては、基礎控除が95万円、給与所得控除の最低保障額が65万円に引き上げられるため、所得税が課税されない「年収の壁」については、95万円と65万円を足して160万円となる、という理屈です。
あと2年で国民も忘れる…!?まさか!!
「これにより、103万円の壁が160万円に動いた、だからハッピーだ」―――。
本当に国民がそう思うとでも、思っているのでしょうか?
自民党税調の「インナー」といえば、税調会長の宮沢洋一氏がその筆頭格でしょう。
自民税調「インナー」がなぜそこまで財務省に配慮するかのようなダメな案を出してくるのか、正直なところ、よくわかりません。いったい何を恐れているというのでしょうか。
ただ、Xを眺めていて、こんな趣旨のポストを発見しました。
「2年も経てば、バカな国民も忘れるでしょ」。
「2年」とはおそらく、基礎控除の上乗せ特例の期限が切れる2年後のことを指しているのでしょう。
とりあえず、今だけを乗り切れば、それによって「バカな国民」も忘れてくれるに違いない―――。
もしそう思っているならば、それは相当におめでたい人たちです。2年後に基礎控除の上乗せが消滅するのを見て、国民が自民党税調や財務省に対し、怒り狂うであろうことは容易に想像がつくためです。
SNS普及前なら「報道しない自由」で葬り去られる可能性があった
もっとも、この「2年後に国民が忘れ去るだろう」、などとする指摘を見て、著者自身としては、やはり思うところは色々あります。
じつは、「以前の日本では」、こうした指摘は、あながちピント外れとまでは言い難いものだったからです。
もちろん、「日本国民がバカだから」、ではありませんが、「2年も待てば国民世論も沈静化する」というのは、ある意味では核心を突いた指摘でもあります。新聞やテレビなどのオールドメディアが、何年か経てばすっかりテーマを忘れ去ってしまうからです。
これには、インターネットが出現する以前の世論がどのようにして作られていたかを思い出す必要があります。
ネットが出現する以前であれば、国民の側に不満があっても、オールドメディアの側にそれを取り上げる機運がなければ、こうした不満が大きなうねりになることはほとんどありませんでした。国民の意識を大きなうねりにする役割を担っていたのがオールドメディアだったからです。
それどころか、オールドメディアは「報道の自由」あるいは「報道しない自由」を駆使し、国民の意識に上っていないような内容を、なかば無理やり、世論化することに努めていたフシすらあります。「(旧)統一教会問題」や「裏金問題」などは、その典型例でしょう。
ネットとオールドメディアの力関係は完全に逆転した
しかし、2024年10月の衆院選、あるいは同年11月の兵庫県知事選などでも判明したとおり、この構造が、完全に変わりました。
オールドメディアが社会的影響力という観点で、インターネットに敗北しつつあるからです。
そして、オールドメディアが社会に対し、徐々に影響力を失っていくことの本当の効果は、官僚支配の終焉です。なぜなら、官僚とオールドメディアはお互いに結託し、オールドメディアは「官僚にとって都合が良いストーリー」を拡散する役割を担ってきたからです。
『世論を「鎮圧」できなくなった官僚とオールドメディア』などを含め、当ウェブサイトで繰り返し指摘してきたとおり、以前であれば、官僚とオールドメディアが結託し、官僚から見て都合の悪いストーリーは、オールドメディアが「報道しない自由」を駆使することによって葬り去ることができていました。
しかし、社会のSNS化・ネット化が進むに従い、この手法が使えなくなってきているのです。
実際、昨年の衆院選以降、(各種調査によれば)若年層になるほど国民民主党への支持率が高いこと、いくつかの地方選では国民民主党の躍進が目立つこと、国民民主党がSNSや動画サイトなどを使いこなす政党であること、といった状況証拠を集めていくと、なんとなく、こうした実態も見えてくるというものです。
こうしたなかで、昨日の『新聞広告費がさらに減少…ネット広告費はさらに伸びる』でも取り上げたとおり、各メディアの社会的影響力を読む手掛かりのひとつである「広告費」という観点からは、ネット広告費が前年比10%以上伸びたという調査結果は、参考になります。
もちろん、「ネット広告費」と一括りにできるものではありませんが、それでもオールドメディアの広告費が伸び悩む一方で、ネット広告費が増えていることは、その背後でオールドメディアの社会的影響力が急激に後退していることを強く示唆しています。
年収の壁問題、この半年でまったく鎮静化していないという事実
だいいち、この「年収の壁」問題、昨年10月の衆院選直後からネット上で大きなうねりとなり、いまだに鎮静化せず、それどころか社保の取られ過ぎ問題、健保の高額療養費問題、厚年の限度額引き上げ問題など、問題が次々に波及・類焼している状況にあります。
これとともに、役所のSNSも、初期は財務省あたり、これに続いて厚労省なども炎上を始めており、そして「炎上する材料」が残っている限りは、こうした炎上は継続せざるを得ない、とするのが、現時点の著者自身の見解でもあります。
こうした見立てが正しいかどうか。
まずは今夏の参院選で、そして遅くとも3年半以内にやってくる衆院選で、その結果がおのずから明らかになると思うのですが、いかがでしょうか?
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
![]() | 日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
>「2年も経てば、バカな国民も忘れるでしょ」。
忘れるようなら、国民の生活に余裕があるということなんでしょう。
家計消費の動向をみるに、消費税が上がって、消費は一時的に落ち込むけどしばらくすると元に戻る。ただし、さらに増加はしない。
頑張って、節約しようとするけれど、やはり最低限生存に必要な消費はせざるを得ない。これをマスメディアは「節約疲れ」と「趣味で節約」みたいな言い方をする。
同じような言い方ですね。
オールドメディアとそのオトモダチから所謂”ブーメラン発言”が多発するようになったのも、誰もが手軽に数年前の情報にそのままアクセスできるようになってしまった結果でしょうからね。元民主党の名手達のブーメランも、大抵は2年以上前、政権担当時やその前の発言、政策、ヤジによるものですし。蓮舫氏もすっかり鳴りを潜めましたが、まだ誰も忘れてなどいないでしょう。
また”デジタルタトゥー”なんて言葉も出来ました。もし醜聞を一旦は忘れたとしても、ふとしたときにすぐに思い出される。そして情報痕跡を消し去ることはほぼ不可能。財務省もメディアも国民ナメてるというか、まだ”人の噂も七十五日”に頼っているのかと、怒りよりも憐憫が。2年後にまだ生存していられると良いですが。
NHK は昨日の記事で椎葉幹事長発言を引用しこう伝えています。
「壁の動かし方がせこい」
餌付けされたポチとまで呼ばれているオールドメディア記者が文字に残したことは印象的です。
新宿さんサイトを読んでいて、ぼんやりと三公七民くらいかなぁ~と思っていた納税が、五公五民かも!とか、目から鱗のビックリでした。
肌感覚としては、言われてみたらホントにそうですね。
総括的にみて五公五民なのであれば、累進税率の変極点より右側に居る層にとっては、そこから余計に働く分は十公ゼロ民くらいかな。
そりゃ働き控えになりますよ、お代官さま。
ワタシたちは、奴隷なのですかね。
トホホ。
私見ですが、こういう構図が見える化したとこは大きいのですが、これまでの日本人のメンタルからすると、
「みんなでなら頑張る」
のだと思うのですね。
今なにが変わってきたかというと、ズルしてチューチューしてる人たちの存在もバレてきていることだと思うのですね。
あれは、許されない。
もともと左系のリベラルはチューチューしてる人たちの擁護勢力でしたが、今や自民党がそちらにズブズブに見えます。
トホホ
自公維 「三党寄れば文殊の知恵、三本の矢は折れない!」
三バカ大将「ん? 誰かおいらたち呼んだ?」
国民 「うん、ワシが呼んだ」
立憲 「あっ、お呼びでない? こりゃまた・・・」
爺民党「2年もあれば忘れるじゃろ」
若者「デジタルタトゥーって知ってるか?」
SNS以前は、仕事であれ友人であれ政治の話は避ける傾向があったように思います。気まずくなるのを避けるために。言いたい事が言えないストレスを抱えている人も多かったのではないでしょうか?
SNSも当初はテレビや新聞などと同じように一方通行が多かったと思います。当初は読者のコメントを掲載していたサイトもリスクを意識してコメント掲載中止になったところもありました。
しかし、私について言えば、一方通行のサイトは見なくなってしまいました。他の人の意見や感想が分からないからつまらないのです。参考になりそうな情報があれば見ますが。
SNSが普及するにつれて参加している人の意見も核心ついていると感じる物も多くなって来て、しかもこれを無料で読めるのですから有難い時代が来たものです。
特に友人知人の間で話題にしにくい政治の話は、SNSに向いているのでは無いかと思います。多くの人が問題だと思っている課題は、それが解決されるまではSNSでの議論は続くと思います。オールドメディアに操られる時代は終わりつつあるという事でしょうね。
毎度、ばかばかしいお話を。
フジテレビ:「フジテレビ騒動も、国民は2年後には忘れるに違いない」
2年後になったら、ネットに新たなサイトが立ちあがり、蒸し返される可能性もありますが。