飛行機機内サービスで気づく「テレビ業界終焉の号砲」
ときどき飛行機を利用すると、その変化に驚くことがあります。最近だと(国際線機材の場合は)トイレに温水洗浄便座が設置されているなど、技術の進歩には素晴らしいものがありますが、それだけではありません。座席のUSB給電ポート、機内WiFiは当たり前。機内でネット環境につながるのです。前世紀だと機内エンターテインメントといえば全員一律で前方スクリーンの映画上映が当然でしたが、いまや個人別のサービスが当然。そういえば、「全員一律で同じ番組を見せる」という意味では、テレビも似たようなものかもしれません。
目次
最近の飛行機、すごい!
時代の変化でテクノロジーが進化すれば、旧来のサービスがどんどんと時代遅れになっていく―――。
これは、人類社会の宿命のようなものかもしれません。
先日、とある用事で飛行機に乗ったのですが、たまたま乗った飛行機が国際線仕様の機材で、ちょっと驚きました。最近の国際線の機材、ずいぶんと進化していたからです。座席はより快適・高機能となり、USBポート設置は当たり前。機内のトイレに温水洗浄便座まで設置されていたのには、ちょっとした感動すらありました。
当然のことながら、機内WiFi環境も整っており、機内に居ながらにしてインターネットを利用可能で(※ただし路線によっては機内WiFiの接続が不安定、というケースもありますが)、機内エンターテインメントも、各人のPC/タブレット/スマートフォン端末などからWiFiに接続すれば、直接、映像などさまざまなコンテンツを楽しむことができあす。
実際、周囲の人たちも(国籍を問わず)機内でスマートフォンとにらめっこしていたようです。
もちろん、一部の格安航空などではこうしたWiFiサービスがない、といった事例もあるようですが、逆に海外だとStarlinkへの接続サービスがある、といったケースもあるようです。
前世紀に機内で見た「インディペンデンス・デイ」
じつに興味深い時代だと思います。
著者自身の思い出ですが、前世紀、大学生だったころに初めてJALに乗って海外旅行に行った(※このときに、日本円という通貨の強さを実感した次第です)ときは、機内食が終わると機内前方スクリーンで映画鑑賞会があったのを思い出します。
ちなみにたしか、上映された映画は「インディペンデンス・デイ」でした(英語版と日本語吹替版の多重音声)。
映画が見たいという人はヘッドホンを装着し、そうでない人はヘッドホンを外す、という仕組みだったと記憶しています。
当時は各人が各座席で映画をオンデマンドで鑑賞するなどと、考えられない話だったのです。
国際線であれ、国内線であれ、搭乗すると、まずはボーディング・ブリッジの先端部分にマガジンラックが置かれていて、乗客はその日の新聞、最新の雑誌などを手に取り、席に向かうのが常でした。機内エンターテインメントも前方スクリーンで全員一律、同じコンテンツを視聴する、という仕組みだったのです。
新聞、雑誌の配布サービスは終了した
それが、いつの間にか、国際線に関しては各自の座席に画面が取り付けられ、好きな映画を好きなタイミングで視聴できるように変わり、それに伴って徐々に新聞、雑誌などの配布サービスも順次、終了していきました。
また、座席にモニターが設置されていないことが一般的だった国内線に関しても同様に、新聞、雑誌類の配布サービスは順次終了し、その代わりに2000年代後半から10年代前半あたりにかけて、音声による様々なサービス(音楽、落語、キッズメニューなど)が提供されるようになりました。
最近だと主要エアラインでは、少なくとも国内線に関しては無料のWiFiサービスを提供するようになり(※国際線だと有料というケースが多いようです)、これらのWiFiサービスに加えて各種機内エンターテインメントもオンラインにて提供されるようになりました。
旅客は機内WiFiサービスを使い、自身のPCやスマートフォンの端末を使ってそれらのサービスを享受できる、というわけです。
なかなかに興味深い時代の変化といえるでしょう。
当たり前ですが、技術は日々進歩していますし、また、いったん進歩した技術は、めったなことでは後戻りしたりしません。
そして、何らかのかたちで古いビジネスやサービスが残っていたとしても、それらはなにかきっかけがあれば、あっという間になくなってしまうのです。
飛行機では、前方スクリーンでの映画上映や新聞・雑誌の無料提供といったサービスは終わり、国際線は座席モニタ、国内線は機内WiFiなどを通じた映像コンテンツサービスに切り替わりました。きょうび、新聞や雑誌のコンテンツはインターネットで提供されることが一般的でもあるからです。
このように考えたら、昔の機内サービスのうち、とりわけコストが高いうえに満足度が低い新聞、雑誌配布がなくなるのも、ある意味では当然の話かもしれません。
フジテレビ問題、表面的には4つの問題があるが…
さて、先月はフジテレビ問題というものが浮上しました。
これは、さる著名男性タレントが女性との間で性的トラブルを起こした、などとされる問題を巡り、この男性タレントに女性を紹介するというかたちで、株式会社フジテレビジョンの幹部が関わっていたとする疑惑です。
これについては少なくとも現時点において、あくまでも「疑惑」に過ぎませんので、当ウェブサイトとしても一部報じられているような「フジテレビがかかる不祥事に深く関与していた」などと断定することは控えてきたつもりですし、最終報告が出るまでは、これについては控えたいと考えています。
ただ、現実問題として、フジテレビの「密室社長記者会見」以降、フジテレビへのCM出稿を差し止めるスポンサーが相次いでいることもまた事実です。
これについてはオピニオン誌『月刊WiLL』2025年4月号でも指摘したとおり、表面的には、少なくとも大きく4つの要因があると考えられます。
フジ問題でスポンサーが離れた理由
- ①企業側のコンプラ意識の高まり
- ②SNSでの炎上リスクの高まり
- ③テレビ広告の魅力の相対的低下
- ④一種のみかじめ料モデルの終焉
それぞれの詳細については、『月刊WiLL』の記事で触れているほか、当ウェブサイトでも『民放ワイドショー「放送内容」がネット上で改めて物議』などで似たような趣旨のことを述べていますので、どうかご参照ください。
実際にはビジネスモデル自体が変化している!
しかし、ここでもっと大事なのは、ビジネスモデルの変化です。
飛行機の機内エンターテインメント・サービスが「全員一律の映画上映」から「各座席でのモニターでのオンデマンド・コンテンツ」、さらには「機内WiFi環境」と、どんどんと進化しているなかで、いまどき「全員一律の映画上映」というビジネスモデル自体、すでに時代から取り残されています。
これと同じで、テレビ業界も前世紀の常識をそのまま引きずり、時代に合わせて変化することができていないのです(※これと同じことは、新聞にもいえるのかもしれませんが)。
フジテレビ問題も結局のところ、もともとテレビ放送がコンプライアンス、人権といった観点に照らして問題だらけだったところに、折からのSNSの社会的影響力向上、テレビCMの広告効果の低下という要因も加わり、これまでの矛盾が一気に噴出した、というほうが、じつは現状に近いのではないでしょうか?
飛行機の場合、前世紀だと機内エンターテインメントといえば全員一律で前方スクリーンの映画上映が当然でしたが、いまや個人別のサービスが当然となりました。当然、新聞や雑誌の機内配布といったサービスも、ほぼ終了に追い込まれているわけです。
そして、「全員一律で同じ番組を見せる」という意味では、地上波のテレビも、似たようなものかもしれません。
視聴者全員を満足させるだけの高品質な番組を作るのはなかなかに難しいところですが、これに加えて日本の場合、地上波のチャンネル数自体も少ない、という問題もあります。
チャンネル数が少なければ競争も乏しくなり、コンテンツもつまらなくなり、人々はますますインターネットに逃げる―――。
そして、視聴者が減ればテレビの広告媒体としての魅力も低下するのは当然のことですし、それによりスポンサーにとっても従来と同じスポンサー料を負担することが難しくなっている、というわけです。
おそらく、フジテレビで発生したのと同じことは、他の民放局にも生じ得ます。
その意味で、今年はテレビ崩壊元年といえるのかどうかが気になるところでもあるのです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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毎度、ばかばかしいお話を。
フジテレビ相談役:「飛行機機内サービスとして、フジテレビ系番組の録画を上映することを命じる」
フジテレビ社長にとっては、笑い話でないかも。
どこで観るか、いつ観るか、何を観るか、何で観るか、どう観るか。4W1H
映画館の時代:映画館に行かなければ映画は観られない。しかも上映中の映画だけ。映画館の営業時間だけ。
テレビの時代:自宅で見られる。いつでも見られる。チャンネルは複数あり選べる。テレビがなければ観れない。
インターネットの時代:どこでも観られる。いつでも見られるしかも繰り返し何度でも。見たいものは無数にある。PC、スマホ、テレビで観られる。場合によってはコメントまでつけられる。
こりゃあ勝負ありだよね。
出版放送型事業モデルは崩壊した。価格破壊が起きて元へは戻らない。情報の流れは今後すべてプッシュ通知型 SNS のバリエーションになる。
たまに快速線に乗りいれることがありますが、壁はモニターだらけ。目がチカチカ。基本ローカル線なのでつり広告、かと思いきやさにあらず。まばらな乗員ということもありますが、それさえほとんど見たことなし。今や老若男女、スマホにかじりついています。
その昔、某国の飛行機で
新聞をオンデマンドしようとしたら
「その席は格安だから渡せない」と
断られたことを思いだした
青春時代の甘酸っぱい思い出の一つだ