維新で予算賛成方針への「異論」…執行部の調整力は?

維新が予算案の賛成をめぐり、どうも党内の根回しをしていなかったのではないか、といった疑問があります。高校無償化などを引き換えに維新が予算案で賛成票を投じる方向で党内調整を進めているとする報道に対し、維新の幹部らから異論が相次いだ、といった報道が出てきたからです。有権者との対話、党内のコンセンサスづくりなど、どうも現在の維新の体制には、いろいろと課題があるのかもしれません。

実現が危うくなっている?「手取りを増やす」

昨日の『維新案で予算が通れば自民党は減税する必要なくなる?』でも取り上げたとおり、国民民主党が掲げている「手取りを増やす」、「基礎控除を75万円拡大する」などの案をめぐっては、その実現可能性が非常に低くなっているフシがあります。

日本維新の会が高校無償化などの動向次第では予算案で賛成する可能性が出てきているからです。

あくまでも報道ベースですが、維新は「高校無償化」を巡り、自公両党との協議を続けるなかで、与党側が維新側の要求を大幅に受け入れたことで予算案への「賛成も視野に調整を進めている」、などとされています(社会保険料の引き下げがどこに行ったのかはしりませんが…)。

仮に維新が予算案に賛成するとなると、国民民主党の賛成がなくても予算案は国会を通ります。衆院側では統一会派ベースで196議席を保有している自民党、24議席の公明党に加え、38議席の維新で過半数(233議席ライン)を超えるためです(※参院側ではもともと連立与党側が過半数を制しています)。

言い換えれば、自民党としては、(もし仮に維新が「釣れる」ならば)わざわざ国民民主党に配慮して政策合意をする必要などなくなる、ということです。

「維新が減税を潰す」?→維新内部で異論が噴出か

少なくともXや『Yahoo!ニュース』の読者コメント欄など、ネット空間の世論を眺めている限りにおいては、これについては「維新が(おそらく多くの人が望んでいるわけではない)高校無償化と引き換えに、(多くの人が望んでいるであろう)年収の壁引き上げを潰すことになる」、といった評価が一般化しつつあるようにも見えます。

もちろん、物事についての一面的な見方は適切ではありませんが、しかし、たしかに維新の行動は国民民主の減税案を(「結果として」、ですが)潰すことになる可能性があるからです。

ただ、ここにきてもうひとつ、興味深い話題が出てきました。

どうも肝心の維新の党内で、意見集約が難航する可能性が出てきたようなのです。

ここでは日テレ/NNNとFNNプライムオンラインの記事を紹介しておきましょう。

【独自】維新の役員会で異論噴出…どうする?予算案への対応

―――2025年2月19日 17:48付 日テレnews/NNNより

維新内で「予算賛成ムード」に待った「こんな大甘の合意なら反対すべき」賛否諮るはずが…反対相次ぎ結論先送り

―――2025年2月19日 22:37付 FNNプライムオンラインより

「野党だから予算案に反対せよ」は論外だが…

このうちNNNの記事では、維新は予算賛成を視野に党内意見の集約を図ろうとしていたところ、役員会で異論が噴出したことが「日本テレビの取材で明らかになった」と報じています。また、FNNの記事でも、維新の「国会議員団役員会」で予算賛成に対し出席幹部から異論が相次ぎ、賛否の結論を見送った、とあります。

両記事によると問題の会合は非公開ベースで行われたのだそうですが、噴出した異論としては、次のようなものがあったのだそうです。

  • 野党である以上、予算案の反対が基本。それを覆す中身でなければ、賛成はあり得ない
  • 維新らしさが感じられない
  • 社会保険料の削減では、目標額と期限をいれるべき。目標が入らないと賛成できない(以上NNN記事)
  • 自民党ではできない改革が与党過半数割れの今ならできるのに、これではとても合意できない
  • 我々は野党だ。こんな大甘の合意ならすべきでない。予算案には反対すべきだ(以上FNN記事)

「野党だから予算案に反対すべき」といった考えは正直論外ですし、ほかにも、「維新らしさが感じられない」だのといった言い分には思わず首をかしげる有権者も多いかもしれませんが、しかし、「社保の削減では目標額と期限を入れるべき」といった言い分については、正論でしょう。

有権者の意見の集約、党内根回しは?

こうしたなかで、やはり個人的に興味深いのは、2点あります。

ひとつは、現在の維新執行部、とりわけ前原誠司・共同代表あたりが世論をうまく読めていない可能性があることであり、もうひとつは、維新の党内が一体となっていないという可能性です。

今回の「高校教育無償化」も、おそらく多くの有権者(前回御衆院選で維新に投票した人やそうでない人も含む)にとって、「そこまで優先順位が高い改革なのか?」という点については、正直、戸惑っているのではないでしょうか。

また、維新の政治家であっても、SNSを使いこなしている人であればあるほど、現在の維新の党執行部と肌感覚で見えてくる有権者のニーズとの落差が危機感を呼び起こしている可能性はあるでしょう。

もちろん、「維新が分裂する」とか、「一部が自民党に合流する」とか、あるいは「政界再編の引き金を引くことになる」、といった話に発展していくという可能性がどこまであるのかについては、現時点では、どうにも読めません。

しかし、少なくとも今回の「年収の壁」騒動を見るに、頑なに減税に応じない自民党に対して戸惑いや失望、あるいは憤りを感じる保守層・中間層も増えているなかで、維新側がろくに党内の意見集約・根回しもせずに自民との政策協議を進めているのではないかとの疑念が高まることは、維新にとって良いことではありません。

当ウェブサイトはもともとは「数字や事実に基づいて政治・経済を論評する」というサイトであり、政局や政治家の資質などについてそこまで焦点を当てるつもりはなかったのですが、少なくとも現在の維新に関していえば、どうも現執行部の「リーダーとしての資質」にも焦点を当てるべきかもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 元雑用係 より:

    こんなの拾いました・・・

    https://x.com/mi2_yes/status/1892403885454602743
    与党幹部「前原さんと握手したつもりだったのに次の日には変わってしまう」

    前原氏を代表代行にしてしまって、悪目立ちしてますよね。それは置いといて。
    3月末にどう決着するかわかりませんが、社会保障費の話は4月以降も論点整理とスケジュールを決めて公開議論をして欲しいですね。折衝で短期間に決められる話と思えないです。前原氏がそんな地道なことを思いつくかわかりませんが。
    その面では国民民主の交渉も議論ではなく「折衝」になっていて、自民が財源の問題だと言う割にはその議論をしていない。そりゃバナナの叩き売りにしかなりません。どうせやるなら、4月以降は是非まともな議論にしてほしいもんです。

    1. カズ より:

      元雑用係 様

      いろん(異論)な人たち

      党(民進)を投げ出して
      党(国民)を逃げ出して
      党(維新)を穿り返して

      根回しできぬ根無し草
      そんなのが代表代行!!
      ・・・・・
      握手で始まり握手で終わるのが紳士の所作であり、
      握手で始まり悪手で終わるのは紳士ではないから。


      なんだと思っています。

      *悪ノリだったかもです。
      m(_ _)m

      1. 元雑用係 より:

        さすがでございます。

        チャンスを与えられたことは何度もあるけど、結果は出していない。(=実務能力疑問)
        個人的なスタンドプレイしかやってない、そんなふうに見えてしまいます。
        地に足の着いた議論をしたことあるんだか・・・

  2. 通りすがり より:

    現状で合意してしまう&関西の状況などを冷静に見ている人たち(※)は、
    参議院議員選挙でそっぽを向く可能性が高いかな、という感じ。
    自民党はお金のしがらみだが、維新は金ではないなんとも変な?しがらみが気持ち悪い。
    ※兵庫・岸和田に見られる仲間を”感情で”安易に切り捨て、前原氏の自由すぎる言動(他の議員ついてこれてる?)

    1. 村人B より:

      結局は、大阪都構想とかいう権力握って好き放題したい勢力の集まりですし。
      「結局最後は金目でしょ」ですかね。

  3. 丸の内会計士 より:

    普通の感覚だと、今の状況で、「手取りを増やす」を潰したら、選挙でボロ負けすると思います。維新と自民党は、潰すつもりなのでしょうが、「手取りを増やす」を凌駕する政策を示して欲しいと思います。高校無償化では、経済成長しないでしょう。今の維新では駄目ですね。

  4. 農民 より:

    「野党は政策の中身なんかどうでも良くて何でも反対ばっかりだ」
     これ、もうかなりの有権者に刷り込まれています。実際そうだったのだから仕方ありませんし。そして、こういう中身の無い反対はすっかり印象が悪くなった。実害があるのだから仕方ありませんし。何より、中身の無い反対行動をマスコミが隠せなくなってしまっている。
     議員センセの間では”野党は反対が基本”とやらは常識なのかもしれませんが、多くの国民はそんなもん望んではおらず(まぁそういう方も居て立憲社民あたりを支持してらっしゃるのでしょうけども)、もうそんな時代はとっくに過ぎているのですが、維新は現執行部の調整力も各議員の理念もダメっぽいですね。
     国民民主と玉木氏が総合力以上に持て囃されているのは、実際に手取り増を望む声・財務省の印象最悪化・そして[現実的ながら良さそうな政策を独自で出してきたのが目新しく未来に希望を持てた]、の相乗効果では。

     ……どれも理想的な政治であれば当たり前のことですけども。当たり前って貴重なんですね。

  5. 一之介 より:

    >維新らしさを感じられない?
    そうなんですか?国民民主に後ろ足で砂かけて手前勝手に飛び出した新参者の前原さんを共同代表にしたことが【とても維新らしい】のではないでしょうかね?これでは信義も何も無い【とてもとてもとても】信頼できる政党ではありませんね。と、私は思いますけれども。

  6. 匿名 より:

    感覚論です。
    国民民主党が掲げている「手取りを増やす」がなし崩しとなった場合、自民党は参議院選で大敗すると思います。また、なし崩しに協力する維新も苦戦するでしょう。しかし、うがった見方をすると、自民党を大敗させるために維新は「(おそらく多くの人が望んでいるわけではない)高校無償化と引き換えに、(多くの人が望んでいるであろう)年収の壁引き上げ」を潰そうとしているのではないでしょうか。大企業の賃上げだけでは多くの国民の生活苦を緩和できない状況では、自民党は国民民主党と組んで「手取りを増やす」を実現するしか道はないような気がします。増税が必要であれば、それはそれとして国民に問うべきではないでしょうか?

  7. 元雑用係 より:

    おっと。長文ツイートです。詳しくはリンク先を。

    高市早苗 @takaichi_sanae

    https://x.com/takaichi_sanae/status/1892581603735642558
    いわゆる「年収103万円の壁」を巡る自民党・公明党・国民民主党の3党協議に関する報道を見て、私だけではなく他の自民党所属国会議員達も落胆し、怒っています。
    私が知る限り3党協議前に平場(自民党所属国会議員が誰でも参加できる会議)は開催されておらず、自民党の提案とされる内容は、税制調査会のインナーと呼ばれる幹部数名で決めたのでしょうか。
    私も含めて報道で初めて知ったと憤る議員が多数です。
    (中略)
    総裁選後の人事で宮沢議員の税制調査会長就任を強く推してこられた岸田前総裁の現在のご意見もチャンスがあれば伺ってみたく存じますが、自民党所属国会議員の多数意見とは思えない自民党の提案。
    税制調査会インナーの皆様には、今一度、熟考して頂きたく存じます。
    ===

    宮沢御大批判ですね。(第一層)
    党内にリーダーシップが無い、そんな風に読めます。(第二層)

    1. カズ より:

      *情報をありがとうございます。

      自民の中枢も、維新と大差ないのですね。

      ♩根回しを知らない、オトナたちぃさ~!
      とだけ申し添えておきます。

    2. 引っ掛かったオタク より:

      まー多分に元自民党外交部会長佐藤某氏の影響かと自省しとりますが、高市氏の発信も“ガス抜き”でネェか??と疑心疑心…

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