維新案で予算が通れば自民党は減税する必要なくなる?

もしも維新の賛成で予算案が通ることになったとしたら、自民党としては国民民主党が主張してきた「年収の壁」に関する議論を気にする必要がなくなります。もちろん、維新自身が予算案に賛成するかどうかはまだ読めないところですが、それ以上に気になるのが、年収の壁上限引き上げをめぐって「下手を打った」自民党が、ここから挽回する方策です。

自民党への深い失望、Xで広まる

ちょっと、なんだかずいぶんと「きな臭い」状況になってきました。

今朝の『公平でも中立でも簡素でもない…自民党の複雑な減税案』では、自民党が国民民主党(と公明党)に対し、いわゆる「年収の壁」上限を引き上げる提案を行ったものの、その「引き上げ方」が非常に複雑である、とする話題を取り上げました。

これについては、当ウェブサイトでは、わりと控えめに、「公平でもなければ中立でもない、簡素でもない」、などと述べるに留めたわけですが、X(旧ツイッター)などを眺めていると、ずいぶんと舌鋒鋭い批判が自民党に対して寄せられているようです。

それも、ちょっと前までは自民党の「岩盤支持層」っぽい言動をとっていた人たちが、相次いで、自民党に対する強い不満と失望を表明しているように見受けられるのです。

維新との連携という道もある自民党

ただ、現実問題として、自民党は国民民主党と「だけ」連携すればよい、というわけではありません。

ここで、事実関係を改めて振り返っておきましょう。

衆院ウェブサイトによると、自民党は統一会派ベースで196議席を保有しており、まぎれもなく第1党ではあるいますが、単独過半数ライン(233議席)には37議席足りません(※なお、「統一会派ベース」であるため、自民を離党している議長を含まず、自民党員でない会派所属議員を含む可能性があります)。

「この足りない37議席」については、連立相手である公明党の24議席と合わせても、依然として過半数には13議席が足りません。だからこそ、13議席以上を保有している会派との連携が、自民党にとっては重要となるわけです。

では、13議席以上保有している会派とは?

まず、最大野党である立憲民主党は、統一会派ベースで148議席を保有しており、続いて野党第2党である日本維新の会が38議席、野党第3党である国民民主党が28議席を、それぞれ保有しています。

自民党と主張の差が極めて大きい立憲民主党との連携は無理がある反面、自民党から見て、比較的連携しやすいのが日本維新の会と国民民主党の両党なわけですが、両党ともに単独で13議席以上を保有しているため、極端な話、どちらかの政党と組めば良い、という話でもあります。

これを、「年収の壁を178万円に引き上げること」を主張してきた国民民主党の立場から見れば、自分たちの政党が日本維新の会と「両てんびん」にかけられる、という意味でもあります。

また、自民党からすれば、国民民主党とどうしても折り合いがつかなければ、同党との連携は諦め、日本維新の会との連携を模索する、という道も残されているわけです。

維新が予算案賛成の可能性も!?=報道

そして、その「自民と維新の連携」という話が、もしかすると実現する可能性も出てきました。

あくまでも報道ベースですが、たとえば日テレnewsが19日付で報じた次の記事などが参考になります。

来年度予算案 与党と日本維新の会詰めの協議 維新、賛成も視野に調整

―――2025/02/19 11:59付 Yahoo!ニュースより【日テレnews配信】

日テレによると与党と維新は「高校無償化」をめぐり交渉を続けており、また、与党側が維新側の要求を大幅に受け入れたことで、維新としては「予算案への賛成も視野に調整を進めている」のだそうです(※維新といえば社会保険料の引き下げも主張していたはずですが…それはどこにいったのでしょうか?)。

もちろん、維新がこの案を党として受け入れるかどうかは、まだ読めないところでもあります。

実際、日テレによると、与党側の「教育無償化」提案に対し、維新の党内では「まだ不十分」、「飲めない」といった反対意見も残っているそうであり、維新も予算案への賛否は流動的です。

ただ、記事によると「与党はできる限り多くの野党から賛成を取り付けたい考え」だそうであり、国民民主党との年収の壁をめぐる協議は続ける、などとされています(いい加減、国民民主党の支持者としても、議論を見せられるのに辟易としているのではないか、という気もしないではありませんが…)。

下手を打った自民党が挽回する方法とは?

さて、ここでちょっとだけ、「今後」について考えてみたいと思います。

戦略論的な立場からすれば、自民党はずいぶんと下手を打った、という評価が成り立ちます。仮に自民党が今後、国民民主案の「178万円」を丸呑みしたとしても、有権者の支持が自民党に向かうという保証はなく、むしろ今夏の参院選では国民民主党を圧勝させる要因となりうるからです。

ただ、自民党があくまでも国民民主案を拒絶し、策を弄してその実質的な骨抜き化を図るのだとしたら(そして国民民主党側がまったく折れなかったならば)、自民党は減税を求める有権者層の支持を大きく失い、国民民主党がさらに圧勝する要因となりかねません。

このように考えるならば、とりあえず今夏の参院選の勝利「だけ」を目的とする場合、自民党にとっては、むしろ国民民主党の主張する「178万円」を上回る減税を打ち出すくらいしか挽回策は考えられません。

維新が予算案に賛成する、という前提ですが、ピンチに陥ったのはむしろ自民党と日本維新の会だったのではないか、といった解釈も成り立つかもしれません。

このあたりの敗因も、結局のところ、財務省のゴリゴリの「省内ロジック」に浸かってきた税調インナーの認識がアップデートできていないことにあったのかもしれない、などと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 匿名z より:

    教育無償化では私立校は 授業料を上げるだけ。そして税金の補助がどんどん増えて
    役人の天下りが増えるだけ。これはトランプがアメリカの教育省を廃止しようとしているのと同じ構図。 以下参考

    トランプ政権が廃止予定の「教育省」、ある意味で『USAIDよりあれな組織』だったことが識者の指摘でバレる
    https://you1news.com/archives/134960.html

  2. 青い鳥 より:

    今となっては国民民主案を上回る対策を選挙で出したとしても、それを実行すると信じる有権者がどの程度いるのかという大きな疑問
    直近で収入の壁、ガソリンの暫定税率の2点があるだけに民主党が下野した時の選挙と似通った情況になっているかと
    それ程に今の自民は「信」を失ってるように見える

  3. 同業者 より:

    わたくしが考える起死回生の一手は下記のようなものだったんですが、タイミングを失しましたね。意思決定のスピードが遅過ぎます。
    国民民主党の主張に対し、二〇三高地を落とす児玉源太郎のような気魄で「手緩い!200万円まで引き上げる!」と答弁していればよかったんです。
    あるいは、第二次世界大戦の猛将パットンのように「178万円だと?200万円まで引き上げよ!」と答弁することでしょうか。
    石破首相の独断(放言?)であっても、有権者の心に火を着けてしまえば、官僚もその下僕の自民党税調も逆らえませんから。
    素人を煙に巻くような今の態度では、夏の参院選では自民党候補者を一人残らず落選させてやると有権者は決意するでしょうね。

  4. DEEPBLUE より:

    公立はともかく私立高校無償化なんて喜んでるのはセレブだけで、大半の大衆はその為に減税オジャンなら自民と維新を許しませんよ。

  5. 引っ掛かったオタク より:

    まーコノママ「自由民主党に政権を預けて財務省の意に沿った税政構築や財政運営などを続ける」とせっかくの機会であるトコロの『円安ボーナス』も虚しく消費されて内需拡大には繋がらず“暫しの中休み”を経た『続・失われたン十年』がモタラサレ「日出ずるくに」は霧消するに至る途を加速シテユクコトでせう…
    知らんけど
    テナクライニハ「自由民主党」に対する絶望が満ちつつあるノカモシレマヘナ、知らんけど

  6. JA より:

    私立高校無償化は、少子化で定員割れする私立高校に、中国から生徒を受け入れるための制度としか思えない。
    少なくとも国民のための制度ではないのでは?
    Fラン私立高校からは熱烈な支持が見込まれる。

  7. はるちゃん より:

    現時点で自民党は既に終わっていますね。国民民主党は178万円を主張し続ければいいだけです。
    それにしても維新には大局観がありませんね。授業料無償化と課税最低限度額の引き上げとどちらが日本にとって大きな課題か理解できていないようです。目先の授業料無償化という餌につられてこのまま落とし穴に嵌ってしまう事になりそうです。
    石破自民と前原維新ならさもありなんと言ったところでしょうか。
    次の政権には、財務省を初めとする行政改革と税と年金の抜本的な見直しの議論を始めてもらいたいですね。

  8. foo より:

    維新案で予算が通れば、確実に減税は無くなるでしょう。
    自民党が発する「検討する」という言葉は、「考えていない」、「やらない」を意味します。
    始めから幹事長間での約束事などは如何でも良く、一応の格好をつけただけに過ぎません。
    約束事を一切守らない国家、支那、南朝鮮、北朝鮮と同様に、自民党の精神が支那化、朝鮮化
    していることは間違いないと見ています。

    面白いと思う事が一つありまして、嘗てのアメリカ大統領は日本の旧民主党の代表に向かって
    Loopyと表現したことがありましたが、自民党もまさにこのLoopyでしょう。
    Loopy自民党。なんだか笑ってしまいます。

  9. なな より:

    授業料ばっかり取り沙汰されるけど
    私立は授業料以外にもお金かかることたくさんあって
    なんだかんだでトータルで授業料の倍くらいは少なくてもかかるのに
    そのあたりを全くわかってない人達が推し進めてる感じで嫌ですね

  10. 匿名 より:

    維新議員も維新支持者?擁護者?も維新だってやりたいことがあるんだから正当な行いだ。と主張してますが、次元が低いと言わざるを得ませんね。
    国民民主党の減税政策は国民が望んでること、民意。
    維新の教育税負担化は維新がやりたいこと。
    向いてる目線が違う。この違いが分からずにやっていた場合でも分かっててやっていた場合でも、いずれにせよ参院選では自民党と共に負けていただきましょう。

  11. Masuo より:

    > 維新案で予算が通れば自民党は減税する必要なくなる?
    まぁ、そうでしょうね。
    もっと言うと、紙の保険証と夫婦別姓案を通して立憲と組めば、維新案すら必要無くなる。
    岸破ならやりかねない。

    しかし、国民の榛葉も言ってたけど、減税潰した(と見られる)維新は有権者の怒りの矛先が向くのではないかと思います。橋下の言っていた「キャスティングボードを握る」ってこう言う事じゃないと思うのですけどね。

    維新は高校無償化なんて新たな利権を生み出す事ではなくて、吉村が言っていた社会保障改革を飲ませる形で予算案賛成すれば、もう少しましだったのではないかと思う。

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