民放ワイドショー「放送内容」がネット上で改めて物議
民放テレビ局はフジテレビ問題が現在、CM差し止めなどで大きな騒動に発展していますが、その裏でもうひとつ意識しておく必要がある論点は、「ワイドショー問題」でしょう。昨年の朝のワイドショーに関する出演者の発言が、ネット上では改めて話題になっているようですが、実際に内容を確認してみると、やはりコンプライアンス面から大きな問題がありそうです。放送法第4条第1項各号の規定に違反しているように見えてならないからです。
目次
なぜフジテレビからスポンサーが逃げているのか―――3つの理由
当ウェブサイトでもしばしば議論している通り、株式会社フジテレビジョン(以下「フジテレビ」)の1月17日の「社長密室会見」が、いまや同社の経営を揺るがす大問題に発展しつつあります。社長会見から数日のうちに、スポンサーが次々と、フジテレビへのCM出稿の差し止めを宣言したからです。
これについてはすでに当ウェブサイトにて取り上げてきた通り、基本的には次の3つの理由があると考えています。
1つ目は、スポンサー企業側のコンプライアンス意識の高まりです。
東証規則・コーポレート・ガバナンス・コードなどでも求められているとおり、企業は人権蹂躙などに対して敏感になってきています。したがって、人権を蹂躙するかのような番組にスポンサーとしてCMを出稿すること自体が、スポンサー企業にとっての倫理基準に抵触する可能性があるのです。
2つ目は、社会のSNS化による「炎上リスク」への備えです。
近年、SNSなどネットの社会的影響力が高まっていることなどを踏まえ、スポンサー企業側も妙な番組にCMを出すことが、SNSにおける炎上リスクを高め、その企業自体の不買運動に発展することをリスクととらえているのです。
そして3つ目が、テレビのCM効果の減少です。
テレビは視聴者に合わせて表示する広告を変えることができないため、スポンサー各社としては、必然的にネットのターゲット広告やスマホアプリなどにシフトしていく戦略を取らざるを得ません。テレビ(や新聞)が広告媒体として、魅力を失っているのです。
なお、上記3つ以外にも、やや著者自身の憶測めいたことを申し上げるならば、「みかじめ料仮説」というものもあります。
これは、スポンサー企業がテレビCMを出稿する理由が、自社のことを悪く報じられないようにするための保険料(いわゆる「みかじめ料」)である、という趣旨の仮説です(※もっとも、これについては必ずしも数量的に合理的な根拠を示せるわけではありませんが…)。
テレビ事業の低収益性
次に考えておきたいのが、なぜCM出稿差し止めが、同社の経営問題に発展しかねないのか、という論点です。
その理由は簡単で、テレビ事業はCM収入に大きく依存しており、かつ、その事業の収益性は低いからです。
この点、フジテレビなど在京民放各局はいずれも「認定持株会社制」に移行しているため、単体の収益性についてはよくわかりません。
しかし、2024年3月期の株式会社フジ・メディア・ホールディングス(以下「フジメディア」)の有価証券報告書を確認すると、「メディア・コンテンツ事業」はセグメント売上高が4337億円であるのに対し、セグメント利益は157億円に過ぎず、逆算した営業経費は4180億円。
割合でいえば経費率は96.38%、すなわち利益率は3.62%に過ぎません。
わかりやすくいえば、10,000円の売上高を得るために必要な経費が9,638円だ、ということであり、また、売上高が10,000円だったとしても、手元に残る利益がたった362円に過ぎない、ということです。
つまり、もともとテレビなどの「メディア・コンテンツ事業」は、フジメディアにとっては「お荷物」と化しつつあった、という可能性があるわけです。
ちなみに放送事業で稼げなくなってくれば、そのほかの事業で稼ぐしかありません。
フジメディアの事例でいえば、たとえば不動産事業などがそれに相当します(フジメディアのセグメント名称は「都市開発・観光事業」)。この「都市開発・観光事業」は、2024年3月期でいえば、営業利益で195億円と、すでにメディア・コンテンツ事業を上回るセグメント利益をもたらしています。
アニメ番組でスポンサーがついた、つかないで一喜一憂も?
ただし、不動産事業の営業利益水準は高いといえる反面、不動産事業「だけ」で会社の経営を支えていくことはできません。先ほども指摘したとおり、フジメディアの「メディア・コンテンツ事業」には多大な経費が掛かるからであり、不動産事業「だけ」でこれらの経費を賄うことなどできないからです。
このように考えていくと、CM差し止めの動きが長期化するようであれば、これはフジメディアの経営の屋台骨を揺るがす事態に発展していくことも間違いないでしょう。
こうしたなかで、同社の日曜日の「看板アニメ番組」のひとつ『ちびまる子ちゃん』が、ネットでちょっとした話題となったようです。これについては『スポニチ』が配信した次の記事が参考になります。
フジ「ちびまる子ちゃん」提供テロップ復活! 1社表示にネット驚き「何かうれしい」「もうすぐだもんな」
―――2025/02/16 18:29付 Yahoo!ニュースより【スポニチアネックス配信】
スポニチによると同アニメ番組の16日放送回で、提供テロップに1社の社名が表示され、同社のCMが流れたほかは、フジテレビの番組の予告・宣伝などが流れたのだそうです。
ただ、日曜日6時半からの人気アニメ番組『サザエさん』では、提供者名は1社も表示されず、磯野、河豚田両家の家族が集合した静止画が流れたのみだったとのことです。
ワイドショー問題はこれからが本格化?
やはり、民放テレビ業界開闢(かいびゃく)以来の非常事態が続いていることは間違いなさそうですが、それだけではありません。
番組名を名指しすることは控えますが、ここにきて、インターネット上では「ワイドショー」と呼ばれるいくつかのテレビ番組をめぐり、過去の問題報道に関する投稿が相次いでいるのです。
たとえば、昨年9月の朝の生放送情報番組で、出演したジャーナリストが兵庫県知事である斎藤元彦氏(9月末で失職も、11月の知事選で再選)を念頭に、あたかも殺人などの犯罪が行われたかのように発言した、という「事件」が発生しています。
斎藤元彦知事ら「追い込んで人を殺してしまった」 批判受けたジャーナリスト「ご遺族のお気持ちに寄り添いたい」
―――2024.09.18 20:30付 J-CASTニュースより
実際にXなどに投稿されている内容を確認してみると、この「ジャーナリスト」は「人を追い込んで、人を殺してしまった」、「敢えて殺したと言いますけど」、などと発言しています。事情を知らない視聴者がこれを視聴したら、まるで斎藤知事が職員を自殺に追い込んだかのように誤認してしまいかねません。
当たり前ですが、本当にそのような「パワハラ」が行われているかどうかに関しては捜査当局などが適切に調べるべき話であり、少なくとも昨年9月17日の段階で「該当する職員の方が斎藤知事のせいで自紙に追い込まれた」などとする内容を、公共の放送を使って垂れ流すことが適切だったのかは議論があるところです。
放送法第4条第1項を守ってますか?
というよりも、テレビ局は放送法第4条第1項を守っているのでしょうか?
放送法第4条第1項
放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
偏った視点から断定的な内容を報じることは、この放送法第1項の各号(とくに第1号や第3号、第4号など)に明らかに抵触しているようにおもえてならないのですが、総務省がこれについて行政処分を下さないのは、本当に謎と言わざるを得ません。
ただ、このワイドショー問題については、先ほど申しあげた「スポンサー側のコンプラ意識の高まり」、「スポンサー自身のSNS炎上リスクの意識」という観点から、おそらくごく近い将来(下手をすると今年のうちに)、テレビ局各社に延焼する可能性が出てきていることも事実でしょう。
ワイドショーは従来、民放テレビ局にとって、安いコストで視聴率を稼げる手段として重宝していたのですが、これがコンプラ面から耐えられなくなってきた、というのは、重要な変化といえるのかもしれません。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
![]() | 日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
先日の鈴置論考で書きそびれましたが、鈴置氏は日本の観察者としても慧眼をお持ちだとの事で、まさに日本の法治も他国を笑えるほど、しっかりした民主主義ではない、という事でしょう。
日本では放送法は形骸化しています。総務省は『番組全体(放送局全体)で見ればバランスが取れている』なんて屁理屈付けて指導しようとしません。そのくせ、放送法64条は頑なに守らせようとするあたり腹立たしい限りです。
日本で特に酷いな、と思うのがこの放送法と公職選挙法です。鈴置氏は韓国にかこつけて日本の法治に警鐘を鳴らしていたのではないかと思うくらいです。
毎度、ばかばかしいお話を。
テレビ局:「アメリカのUSAIDにスポンサーになってもらおう」
NHKもUSAIDがスポンサーになるのでしょうか。
朝日新聞が田嶋陽子女史の半生記の連載を開始しましたが、「USAIDが朝日新聞を介して、日本のフェミニズム運動に資金援助をした」と考えるのは、流石に陰謀論でしょうか。
>これは、スポンサー企業がテレビCMを出稿する理由が、自社のことを悪く報じられないようにするための保険料(いわゆる「みかじめ料」)である、という趣旨の仮説です
これ、日産なんか該当しているのでしょうか。
あそこは電通ではなく博報堂のようですが。
このブログの教えに従い、結構昔からこの会社から発表される一次情報を追いかけています。
動機は違和感です。いじめの対象、サンドバッグになってる?という。
自分自身偏向報道の餌食になりそうな経験があったからです。(過酷紹介したことがあります)
結果、その違和感が確信に変化していったのですが、筆まめでないので詳細は省略します。
しかし、とても良く纏まった論考を発見したのでご紹介します。
日産の現状を正しく理解するために【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】
https://www.goo-net.com/magazine/newmodel/car-technology/250944/
この記事は要約記事のようなもので、本当に詠むべきは記事の巻末に載っている参照リンク先の記事です。是非読んでみて下さい。
マスコミのよるいじめ、日経新聞記事などにも苦言言っていたりします。
マスコミ・メディアが偏向報道するのはこの場におられる皆様はご存知と思うのです。
偏向報道の対象は政治経済だけでもありません。
が、本件、何故にしてマスコミ・メディアの報道を真に受けるのか、とても不思議に思います。
マスコミ・メディア。ホントに油断なりません。
>ワイドショーは・・安いコストで視聴率を稼げる手段として重宝していた
>これがコンプラ面から耐えられなくなってきた・・【スポンサー離れ】
*まさかのワイドショー終焉で、「これからワイ、どぉしょう!?」・・ってオチ。