雑誌消滅が3月以降に加速?「街の書店」と時代の流れ
社会のウェブ化に伴い、大きな影響を受けている業態が書店だそうです。以前から当ウェブサイトでも取り上げてきた通り、紙媒体の書籍は売れない、という状態が常態化していますが、J-CASTによるとその主な要因は「人々が雑誌を買わなくなったこと」だそうです。雑誌といえば今年3月に大手コンビニエンスチェーンのうち約1万店舗で雑誌配送が終了するとの話題もありますが、果たしてこれらがいかなる影響を与えるのでしょうか。
昔は新聞、テレビ、雑誌が情報収集の主要手段だった
当ウェブサイトを立ち上げたのは2016年7月のことであり、ありがたいことに、今年で9年目、もし来年まで続いたとしたら10年目の節目を迎えます。
我ながら、よく続けたものだと思います。
最近では著者自身の本業の方がやや多忙になっている(プラス、著者自身の体力の限界)といった事情もあってか、記事の更新頻度はかなり低下していますが、それでも「読んでくださる方々の知的好奇心を刺激すること」を売り文句に、何とか続けていきたいと思っている次第です。
では、なぜ当時、個人レベルでこの手のウェブ評論サイトを作ろうと思ったのか―――。
端的にいえば、著者自身は時代が変化することを見越していたからです。
当ウェブサイトを立ち上げた当時は、世の中の人々が情報を得る手段は、日常的な情報であれば基本的には新聞やテレビ、ちょっとまとまった情報であれば雑誌などを目にする、というケースが多かったはずです。
現実に、著者自身が行きつけの病院、薬局、取引銀行支店などに行くと、たいていの場合はその日の主要新聞(東京の場合だと全国紙やスポーツ紙など)に加えて主要な雑誌(経済誌だと週刊東洋経済や週刊ダイヤモンドなど、ほかにプレジデントや女性週刊誌など)がそろっていたのではないでしょうか。
しかし、以前の『数字で見る「雑誌業界」・概況編』などでもお伝えしたとおり、雑誌業界は多くのメディアが部数の伸び悩みに苦しんでいます。
なかにはウェブ版でそれなりの読者を獲得しているケースもないわけではないようですが、やはり、情報そのものに対して対価を支払う人が減っているということでしょうか。
今年3月に予想される「激震」とは?
こうしたなかで、昨年の『苦境の新聞業界に「コンビニ雑誌配送問題」の影響は?』でも取り上げたとおり、雑誌業界にもうひとつの「激震」が走ろうとしています。書籍取次大手の日販が全国3万店舗あるとされるコンビニエンスストア大手のローソン、ファミリーマートへの雑誌配送事業から撤退するからです。
これについてはトーハンが日販の後を引き継いでコンビニへの雑誌配送事業を継続するとされているものの、引き継げない店舗が1万店舗ほど発生するようであり、必然的に雑誌業界に大きな影響が生じると見込まれています。
ただ、冷静に考えてみると、私たちの日常生活で「この10年弱ですっかり消えたもの」の代表格が、書籍かもしれません。
著者自身は当ウェブサイトがきっかけで過去に2冊ほど書籍を発行していますが(ビジネス社『数字で見る「強い」日本経済』、ワック『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』)、正直、これも「書籍を出したことで名前が売れた」という事実はほとんどありません。
かつて、書籍を発行するともなれば、一世一代の大イベントだったのですが、著者自身はとある専門書の出版をコロナ禍最中の2020年4月ごろにお断りして以降、実名での書籍出版は行っていません(お断りしたのには事情があるのですが、これについては本稿では割愛します)。
いずれにせよ、最近の書籍といえば、絵本、児童書、教科書、参考書といったものを除けば、書籍自体で知識を得ることへの社会全体のニーズが減っていることは間違いありません(現実に出版した身でもありますので、このあたりも実感しているところです)。
J-CAST「街の書店が次々消滅」
こうしたなかで取り上げておきたいのが、J-CASTが11日付で配信した、「街の書店」に関するこんな話題です。
「街の書店」次々と消えていく 1軒もない自治体3割、減少ストップの秘策はあるか
―――2025/02/11 16:00付 Yahoo!ニュースより【J-CASTニュース配信】
J-CASTは「出版科学研究所」の統計をもとに、全国各地で書店がどんどんと消えており、とりわけ小規模店(49坪以下)に限ると2003年の6887店から2023年には3789店と「ほぼ半分になった」と指摘。そのうえで、書店が1軒もない自治体も3割近くに達すると述べています。
なぜ、こうなっているのか。
J-CASTは出版・書籍や書店について詳しいライターの永江朗氏が日経電子版に2024年11月23日付で述べた、こんな分析を引用します。
「経営者の高齢化と後継者難、入居していたビルの建て替え、家賃や光熱費の高騰等々。いちばん大きいのは本が売れなくなったこと、とりわけ雑誌が売れなくなった」。
なんでも、「街の本屋さん」の売上は大半が雑誌や漫画だったそうですが、そもそもその雑誌自体が売れなくなり、書籍もネット通販が主流となりつつあり、こうしたなかで駅前の再開発構想などが持ち上がれば「店をたたむ」という選択肢が出てくるのも仕方ない、というのがJ-CASTの見立てです。
結局は時代の流れでは?
ただ、記事では「本屋さんは文化の拠点だ」、などとして、書店がなくなっていくことに警鐘を鳴らしているフシもあるのですが、果たしてそうでしょうか。
正直申し上げるならば、時代の流れは「紙」ではなく「ネット」です。
もちろん、ネット上で欲しい情報のすべてが手に入るというものではありませんし、著者自身もいくつかのオピニオン誌に寄稿させていただいている立場上、これらの雑誌については続いてほしいと思うのが正直なところです。
しかし、少なくとも専門家にとっては、会計基準などについてはウェブで最新版を入手・参照できることで、クライアント先に重い監査小六法などを持っていく必要がなくなったのは、非常に大きな成果だと個人的には考えています。
いずれにせよ、著者自身は子どもたちなど次世代に文化を承継していくなどの観点から紙の書籍の重要性は認めているつもりですが、情報を入手する媒体が紙なのかウェブなのかという違いは、じつはさほど本質的なところではないとも考えている人間のひとりでもあります。
結局のところ、日本全体、いや、全世界で現在生じているのは、社会全体を挙げた脱・ペーパーではないかと思いますし、それが良いか悪いかは別として、この新しい流れに乗れなければ、経済から淘汰されるか、それとも国の補助金に依存するか、そのどちらかではないかと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
![]() | 日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
本好き、活字中毒の自分としてはキツい現実ですよ。
ただ、本屋の良い所は自分の視界て言うのかなあ、身の丈にあった世界を選べるんですよね。
ネットとか無限の情報に溢れてるけど実際に得られる事は限定的で良い意味での的外れが無いんですよね。
自分が主体的に情報を得られるリアル書店よ永遠に!
20年くらい前は電車で上手に折りたたんで新聞を見る人、漫画に夢中になる人が多かったですが、今はまったくと言っていいほど見ません。大半の方がスマホを触っている状況です。
時代はどんどん変化していきますが、我々が気づかないうちに無くなっていく文化が増えつつあるように思います。
例えばお正月のしめ飾り。車にまでつけていましたが、つけているのは100台に1台あるかないかです。
まだまだ変化は続きます。昭和の考えはもう通用しなくなりますね。
まだ街にTSUTAYAはありますが、いまでは雑誌や小説は買わない(老眼だから)し、DVDも借りない、もっぱら子供の学参や問題集などと一番は文房具を買うために行ってます。
最後の方のグッズは塾で販売コーナーを併設してくれたら完全に行くことはなくなりますね。
脱ペーパー。
かなり昔の社会人なりたての頃を思い出します。
当時導入され始めていた米国製半導体設計CAEシステムは、何冊ものバインダーに綴じられた膨大なペーパーマニュアルが付いてきてました。そしてほぼていきてきにメジャーアップデートでバインダーの中身を大幅に更新。どの間も小刻みにマイナー更新。その度に該当部分のページを入れ替え、抜いた大量のページは廃棄していました。
その数年後、マニュアルはCDROM化され、巻頭言に、木材資源、印刷&運送コスト、更新する各ユーザーの手間などの低減、これらの改善の結果であると記載されていました。
今から40年程前のことです。
その頃からペーパーレス化は実行に移されていたのですから、ゆっくりと、しかし着実に時代は移ろいでいったのだと思っています。
約40年前、姉は町の本屋に嫁いだ。一時は毎年数店の本屋を開店するなど飛ぶ鳥落とす勢いだった。が、今は廃業。諸行無常、、、時の流れというものはこんなにも早いものなのか。
週刊文春のスクープがよく取り上げられているが、週刊文春を最後に買って読んだのは5-6年前だったと記憶している。
あの雑誌、値段は表紙に出ているのでわかるのだが1月のある週の値段は510円だった。「えっ、そんなに高いの」
メルカリかヤフオクに1995年の週刊文春がでていたが280円、30年で1.82倍。
1年に直すと毎年2%の値上がりだ。
デフレの原因は中国ではないかという私の仮説が一部当たっていると思った。
週刊文春の編集、印刷、配送、販売に中国の安い人件費の要素はないからね。
「選択」という雑誌がある。「三万人のための情報誌」を謳うが三万人とは日本の指導者層の概算人数のことで実際の出版部数は5万部ほどだそうだ。
この雑誌は本屋では売っていない。年間13200円で年12回郵便で送られてくる定期購読。
郵送料込みで1冊1100円。
1~2年購読していたことがあるが年13200円の価値はあるという印象だった。
たった5万部でもやっていけるというのは定期購読で返本がないのが大きいのだろう。
一昔前は紙の方がネットより安いとか言われた物ですが、今やデジタルの方が割安ですからねえ・・・。紙の本自体は個人的には好きですが。
富士通が発売している e-Ink デバイス「クアデルノ」を知人が使っているのを見て欲しくなりました。
買った書籍を廃棄することには罪悪感がある。それが嫌さに新刊書も買わなくなってしまっているのは、終活を考え始めた世代には共通しているはずです。テクノロジーとしての e-Ink にはまだ改善の余地があるものの、不満点はそうばん改良されていくでしょう。地頭勝負で人生を送っている知人は分厚い学術書(しかも洋書)の PDF 版を購入してクアデルノに転送し、隙間時間を使ってどんどんと読み込んでいると言っていました。モノクロバージョン、近いうち自分も買うかも。
国会図書館もデジタル化で便利な模様ですし
“紙の本”やら“本屋”やらが好きなヒトビトは大型店が残る都市部へ集中するのか??
「本の貸し借り」がコミュニケーションから消項する日も近いのか???
まー知らんけど