目的意識は人生全般で非常に重要
「目的意識を持て」、「満点主義を捨てよ」、「仲間づくりを」。これは、資格試験を受験する人に対する著者なりのささやかなアドバイスなのですが、べつに資格試験に合格するためだけに重要な考えでもないと思います。収入が安定せず、非常に狭い家に暮らしているにも関わらず、来年のW杯で渡米するための資金を暗号資産で積み立てる、という、とあるユーチューバーの方の行動を見ると、たしかに目的意識は重要です。
目次
資格試験の3つの教訓→資格だけでなくさまざまな面で有効
先日の『資格試験通じ学ぶ「3つの教訓」』では、資格試験を題材に、「目的意識を持て」、「満点主義を捨てて時間効率を意識せよ」、「仲間づくりが大切」、といった点を紹介しました。
これは、「資格試験にどうやって合格するか」に焦点を当てて、とにかく試験に合格する「だけ」なら、基本書をじっくり読みこむよりも、過去問や受験予備校の教材などを徹底的に繰り返し、基礎的な論点をバッチリとマスターするのが近道だ、とするものです。
著者自身も一介のビジネスマンですが、じつはこの方法を見ていると、だいたい成功しているビジネスマンの多くが「自分が今なすべきこと」への目的意識をしっかりと持っていて、「満点主義よりも時間効率」、「仲間づくり」などを強く意識していることに気づきます。
資格は実務家:「学者」じゃない!
ちなみに公認会計士資格の場合だと、会計理論の専門書なども(とくにひと昔前は)多数出版されていたのですが、あえて暴論を申し上げておくと、会計の専門理論(たとえば財務諸表論など)は、正直、「学者のお遊び」であり、こんなものに真剣に付き合う価値などありません。
というのも、企業会計の実務で重視されるのは、どこかの学者の学問的理論ではなく、「実際の会計処理を実務的にどうするか」、だからです。
著者自身は専門書をじっくり読みこむスタイルの学習方法を否定するつもりはありませんし、世の中には優れた専門書もあることは否定しません。学者になるための学習であれば、そうしたスタイルも良いのかもしれません(著者自身が学者ではないため、なんとも判断が付きませんが…)。
しかし、実務の世界では、どこかの学者が考えた会計理論よりも、現実に生じる問題にどう対処するかの方が、課題としては遥かに重要です。
また、資格試験という世界だけに集中しておくと、試験問題に対し、その論点を深く理解するよりも、「正解」の理論を暗記した方が効率的なこともあります。よく理解と暗記のどちらが重要かと迷う人もいますが、結論的にいえば、きちんと暗記しておけば、後から理解が伴うこともあります。
その意味では、実務家になるための試験では、試験における頻出論点をさっさと暗記してしまい、さっさと合格したうえで実務の世界で研鑽を積むのが正解ではないか、などと思う今日この頃です。
気軽に生活をアップロードできるYouTube
さて、上記はあくまでも数十年前の資格試験の話ですが、「目的意識を持つことの重要性」について実感したければ、ほかにもいくつかの方法があります。
他人様の生き方を「合法的に」視聴すれば良いのです。
インターネットが出現し、YouTubeなどの動画サイトが充実してきたことで生じた大きな社会的変化があるとしたら、それは「一億総発信社会」の実現かもしれません。
そう、この世はまさに、猫も杓子も動画発信者となっているフシがあるのです(「猫も杓子も」、は、ちょっと言い過ぎかもしれませんが…)。
当ウェブサイトの読者の皆様方も、おそらく多くの方々は、スマートフォンくらいはお持ちでしょう。
そして、お手持ちのスマートフォンでは、機種や空き容量にもよりますが、動画を撮影することができるはずであり、撮影した動画をYouTubeにアップロードすることもまた簡単です。YouTubeにあなた自身のチャンネルを作成し、動画をアップロードすれば、今日からあなたもユーチューバー!です。
もちろん、著者自身も含めて、自分自身の姿や声などを動画サイトにアップロードすることには抵抗がある、という人も、世の中には多いことでしょう。したがって、こうした「心理的抵抗」から、だれもかれも気軽にユーチューバーになれる、という単純なものでもありません。
しかし、こうした「心理的抵抗」を別とすれば、物理的に私たち一般人が撮影した動画をYouTubeなどの動画サイトに投稿すること自体は極めて簡単です。
また、撮影した動画(や写真)は、動画サイトだけでなく、X(旧ツイッター)やTikTokといったSNSなどにも気軽に投稿できますし、何なら事故、災害現場などに偶然居合わせた人がその様子を撮影し、Xなどに投稿する、といったことは、非常によくある話でもあります。
(※余談ですが、こうした事件・事故画像などがXで話題になると、なりの確率で、テレビ局の公式アカウントが「これらの動画、写真を番組で使用させてほしい」などとお願いをしてきたりするようです。どうでも良い話かもしれませんが。)
生活系ユーチューバーの行動は正しいのか?
いずれにせよ、私たち個人が情報発信することのハードルは、大きく下がりました。
その結果、従来であれば絶対に視聴できるはずのないコンテンツなども、私たちは気軽に楽しめるようになってきたのであり、それらのなかには、ちょっと自分自身とあまりにも常識がかけ離れたものもあり、逆の意味で楽しめる(?)ものもあります。
こうしたジャンル、「生活系」とでも呼べばよいのでしょうか。
本稿で紹介しておきたいのが、とある「生活系ユーチューバー」の方の事例です。実名を挙げるのはちょっとやめておきますが(ユーチューバーの方とはいえチャンネル登録者数はまだ数千人、というレベルであるため)、これが見方によってはなんとも興味深いものなのです。
詳細を明かすことは控えますが、そのユーチューバーの方は収入が非常に不安定であり、とても狭い部屋で暮らしていて、そんな日常を動画にして投稿しています。狭い部屋での決して快適とは言い難い生活は、見ていてハラハラするものでもあります。
ところが、このユーチューバーの方がある日投稿した内容を見て、思わずのけぞってしまいました。
なんと、暗号資産への投資を開始したというのです。
それも、暗号資産について詳しく知っているという雰囲気はなく、暗号資産通貨への投資を始めた理由も、(動画を視聴する限りは)なんだかよくわかりません。来年のサッカーワールドカップに合わせて米国に行きたい、というものなのですが、そもそも収入が不安定ななかで、サッカーを見に行く余裕などあるのでしょうか。
また、目的をもっておカネを貯めるのは悪いことではありませんが、よりにもよってその手段が暗号資産というのは、輪をかけて理解に苦しみます。
資金使途が来年のワールドカップにあるのならば、一般に価格変動が激しく実質的な手数料も高いとされる暗号資産に投資するのは適切ではありません。それなのに、このユーチューバーの方は、「長い目で見たら(暗号資産価格は)当然上がるんだろう」、などと述べているのが確認できます。
そもそも投資と投機の違いやオファー・ビッドの違いなどを理解しているフシがないことも大きな問題ですが(たとえば、暗号資産を買った瞬間に口座の総資産が減少する理由をまったく理解していない点など)、それ以上に見ていて危なっかしいのは、おそらくは株式投資などにも習熟していないと思われる点です。
もちろん、運良く投資対象の暗号資産の価格が上がれば良いのですが、暗号資産の価格は下がることもありますし、オファー・ビッドの違いも大きいため、換金する際に思ったほどの運用成果が得られなかったらどうするのか、といった点も心配になります
改めて指摘する「目的意識」の重要性
いずれにせよ、冒頭の議論で申し上げるならば、やはり「目的意識」は大切だと思います。
公認会計士試験受験生の例でいえば、(よっぽど受験勉強が順調に進んでいるのでなければ)通常、まずは目の前の公認会計士試験での合格を目指すべきですし、とりわけ大学を卒業するなどし、無職で資格試験に挑戦している人の場合は、一刻も早く合格できるよう、戦略を組み立てるべきです。
そのときに効いてくるのが目的意識です。
やはり、何年も受験勉強を続けていると、目的意識を失ってしまいがちですし、惰性で生きてしまうこともあります。気が付いたら何年も受験浪人を続ける、という事態にも陥りかねません。
先ほどのユーチューバーの方の場合も、(詳しい事情についてはわかりませんが)とりあえず生活を安定させるのが先決ではないかと思いますし、ただでさえ物価高の米国に、ただでさえ円安の現在の日本から、航空券も高騰しているであろうW杯の時期に出かけるのは、やはり無謀に見えてなりません。
ましてや1年後のW杯に向け、ボラティリティの高い暗号資産で資金を積み立てるという発想自体、なかなかに驚きます。
いずれにせよ、すべての資格試験の受験生の皆様や、あるいはくだんのユーチューバーの方のご多幸を、心よりお祈り申し上げたいと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
![]() | 日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
若手だったころ、上司から「手段と目的を間違えるな」「戦略と戦術を考えろ」と言われても理解できませんでした。
責任あるポジションに就いた頃からそれらが理解できるようになりました。
くだんのYouTuber氏も
「ワールドカップに行く」という目的を達成するために
「費用を効果的に稼ぐ」という戦略を立て
「暗号資産に手を出す」という戦術を立てたのでしょう。
正解ではないと思いますが、もしかすると
「YouTube広告で稼ぐ」という目的を達成するために
「注目されやすいネタで動画を回す」という戦略を立て
「ワールドカップにいく費用をかせぐために暗号資産に手を出すオレ」という戦術を立てたのかもしれませんね。
財務官僚も総務官僚も厚労官僚も、それを代弁してしまう人々も「目的」が間違っていることを理解してほしいところです。
私事ですが、資格手当ほしさに取得した宅建を皮切りに、簿記(日商1級は落ちました)とか、実務系の「難関ではない民間資格・検定」をいくつか持っています。
私がやってたのは、過去問の答えを見て「正解しか覚えない」です。
これで学科しかない資格試験は、概ね何とかなったように思えます。
・・・・・
動機がなんであれ、目的意識は大切ですね。
身銭を切ることで生ずる意気込みも同じく。
新宿会計士先生も監査から離れているとのことですね。私も会計士の資格は、ある目的のために取得し監査ではない、そのターゲットの仕事では、想定通り非常に役にたちました。しかし、実は最近、監査の世界に戻り、監査する立場と監査される立場を経験中です。戻った理由は、おいおい話をするとして、私の場合、目的が当初の目的と変わってきてしまっています。螺旋階段のようなイメージですが、想定通り上手く行くかどうかというところです。本業の方も首を突っ込んでいるので、結構、毎日、大変です。
事務屋系の某資格試験では、「深く理解してしまう前に合格してしまいなさい。」と言われることがあります。
そして、合格して実務家になると、「限られた時間内にどれだけのことができるか」で評価される世界が待っているわけです。研究者のような時間は与えられていませんし、仕事には必ず納期があります。高名な学者が書かれた専門書よりも、実務から学ぶことが多かったりします。
某資格試験の受験サイトで、受験に伴うご家族の負担に悩んでいる方の相談が載っていたので、それに答えたことがあります。その際、親御さんの子への心情について述べつつ「さっさと合格してしまうことです。」とお答えしたら、ベストアンサーに選ばれていました。
目的意識と言えば、「〇○さんの行動は「目的」的ですね。」と言われたことがあります。無理もありません。最初に就いた職がそういう組織だったからです。すっかり身に付いてしまっていたのでしょう。
それにしても、暗号資産への投資でワールドカップ観戦ツアーですか・・・。
「運に左右されるものは勝負ではないからね。」とは棋士の升田幸三氏の言葉ですが、わたくしもギャンブルはいたしません。
「来週にジャニーズの公演に行く。だから仕事頑張る。」とおっしゃった女性教師のように、「さぁ、働こう。」がベストアンサーになるのでしょうね。
いつも参考になる記事をありがとうございます。目的意識の重要性は同感ですが、昨日書き忘れたことをひとつ言わせて下さい。
私は資格試験のために何年も浪人している人達の目的意識が乏しいとは思っていません。専門学校や塾に入学するのは、ささやかでも目的意識を持っている証拠です。基礎学力を持っていない人であれば、資格取得に5年以上かかっても仕方ありません。最初から多年浪人を覚悟して入校した可能性もあります。他人から揶揄されようが、めげないで専門学校に何年も通う姿は立派です。本人が一番辛いはずですから。
多年浪人をする人は、もしかしたら持病がある可能性があります。あるいは、家族や家庭に深刻な問題があり、勉強どころじゃなかったのかもしれません。成績の悪い人のことはあまり意識しない方がいいですね。
目的意識の高さに応じて、学生達がまとまる傾向が見られるという話も、資格試験であることが原因かもしれません。もし競争試験ならば、仲良くまとまったりはしないでしょう。
「政局」
が大好きな古い気質の政治家さんたちにこそ、目的と手段の区別を強く意識してもらいたいですね。
八百屋が大根を売ってもうけた金で、食事をしようが車を買おうが好きにすればよい。
でも政治家は、公約を掲げて得票当選したら、右へ行こうが左へ行こうが好きにしてもよい訳ではありません。
(ある程度の裁量は認めます)