SNS収益剥奪するならオールドメディアも収益剥奪を

やっぱり、SNS規制が出てきました。産経によると自民党内で現在、SNS規制として収益化の剥奪などが検討されているようです。なんだかよくわかりません。収益剥奪化を誰がどうやって判断するのかという問題もありますが、それ以上に、不正確な情報はSNSだけでなく、オールドメディアでも垂れ流されていることを忘れてはなりません。

当ウェブサイトではこれまで、SNSの社会的影響力は日増しに増えていて、いまや新聞、テレビなどのオールドメディアのそれを上回るほどになっている点について、しばしば話題に取り上げてきました。

とりわけ『「税の取られ過ぎ」に気付いた国民がSNSを手にした』などを含め、以前からしばしば指摘している通り、今年・2024年はネットの社会的影響力がオールドメディア・官僚の連合軍を凌駕し始めたという意味で、後世に深く記憶される年となるでしょう。

2024年が社会のターニング・ポイントといえる理由
  • ①国民は税や社会保険を取られ過ぎていると気付いてしまった
  • ②国民は官僚とメディアの腐敗と癒着構造に気付いてしまった
  • ③国民は不満を訴える手段としてSNSを手に入れてしまった
  • ④SNSの社会影響力がオールドメディアを上回ってしまった

ただ、それと同時に既得権の側にとって、この変化は好ましいものではないのかもしれません。

こうしたなかで気になる話題がひとつでてきました。産経ニュースの次の記事がそれです。

<独自>違法選挙動画で金もうけダメ 収益支払い停止、自民がSNS対策で法改正検討

―――2024/12/28 19:37付 産経ニュースより

産経は「独自」と銘打って、「複数の関係者」の話を引用する形で、自民党が現在、SNSを運営するプラットフォーム事業者が動画投稿による収益の支払を停止することができるよう法改正を検討している、と報じています。

端的にいえば、とんでもない話です。

産経によると「多くのSNSは動画再生回数に応じて収益を得られる仕組みを採用している」とし、「より多額の収益を得ようと、注目を集める選挙で真偽に関わらず過激な動画が配信されるケースが頻発している」、などと報じているのですが、この部分の記述、そもそもの事実認定が正しくない可能性があります。

少なくともX(旧ツイッター)の場合、広告収益は動画の再生回数(というかポストのインプレッション数)ではなく、おそらくもう少し複雑なアルゴリズムを採用しているものと考えられ(※著者私見)、コミュニティノートが付されたポストは収益化が停止されるなど、誤情報に対する対策はすでに進められているからです。

また、そもそも「そのSNS上の方法は正しくない」、と、誰がどう認定するのでしょうか?

ときの政府にとって都合が悪い情報(たとえば石破政権を批判する内容)を「誤っている」として収益化を無効にするなどの措置が取られれば、それは独裁国家への第一歩です。

というよりも、記事には書かれていませんが、「SNSの情報は間違っている」、という主張の裏には、多くの場合、「SNSではない情報源(≒新聞、テレビなどのオールドメディア)の情報が正しい」、という暗黙の前提が置かれているフシがありますが、これもおかしな話です。

そもそも、誤った情報を垂れ流しているという意味ではオールドメディアも同じでしょう。

そして、「誤った情報を流した場合」(※誰がどう認定するのかは知りませんが)に対する「罰則」として収益化を停止すべきというのであれば、それはオールドメディアに対しても同様に適用されねばなりません。

オールドメディアは1993年の「椿事件」、2009年の「政権交代報道」のように、メディア自身が意思を持って選挙に介入した、という実例がしばしば発生しています。

真偽不詳の情報を社会にばら撒いたことに対するペナルティとして収益を剥奪しなければならない、というロジックが通るのなら、オールドメディアの収益化も同じように問題視しなければおかしいのではないでしょうか。

いずれにせよ、SNS規制ないしネット規制が適用されたとしても、SNSを通じた「直接民主主義」への流れは止められません。すでに失われたオールドメディアに対する信頼が復活するわけではないからです。

こうした仮説が正しいかどうかについては、案外遠くない未来に判明するのではないかと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 元雑用係 より:

    これ、詳細がわからないのでなんともですが、

    >現行の「情報流通プラットフォーム対処法」は大規模プラットフォーム事業者に対し、違法投稿への対応の迅速化などを義務付けている。同法は選挙の候補者の名誉を毀損する内容の投稿を削除しても賠償責任を負わない特例も設けている。
    >自民が検討を進める法改正では、こうした特例に収益の支払い停止も追加する方向だ。

    対象の「違法投稿」が公選法などの既存の法令への違反を意味し、収益停止時の賠償責任を免責するだけのことであればむしろあってもよいとも思います。
    が、おっしゃる通り違法投稿の収益停止などは既に事業者がやってるようですから法改正の意味があるのやら・・・事業者からニーズが挙げられたんでしょうかね。誰からどんな意見を聞いてまとめているのやら。
    公選法の違反規定の明確化は必要と思っていましたが、どんな改正案になるかはちょっと気になりますね。

  2. 丸の内会計士 より:

    こんなの検討している段階で自公政権はアウトでしょう。産業革命の最終段階ということが理解できないのか。

    1. 丸の内会計士 より:

      SNSが政策の司令塔になってしまうと、選挙の際にジバン、カンバン、カバンが機能しなくなる可能性が出ています。SNSによって選挙の業界構造が変化してしまい、これまでの強みが機能しなくなる。世襲の意味が無くなる。バ◯がバレる。SNSによって様々不都合な状況が現出します。
      なんとしてもSNSを無機能化したいのだと思います。

      1. 丸の内会計士 より:

        SNSの規制なんてやってる場合ではない。経済成長する方策を考えろよ!!
        当分の間、日本は、手取りを増やす減税をしないと駄目でしょう。特に若い世代。減税した分は、消費にもまわるし、残りは、貯蓄。貯蓄が増えれば、結婚も増える可能性がある。

  3. 匿名 より:

    やっぱり自民党は中国共産党化してますね。

  4. 引きこもり中年 より:

    既存メディアを脅かす新興メディアを規制しろ、ではないでしょうか。つまり、SNSでなくても、新しい巨大(?)になる可能性のあるメディアが出てくれば、それも規制しろ、ということです。
    蛇足ですが、SNSが生まれて、まだ一世代たっていません。つまり、生まれた時にSNSがあった世代と、生まれた時にはSNSがなかった世代に分かれるということです。

    1. 引きこもり中年 より:

      そのうちテレビが、「SNSばっかりやっていると、バカになるぞ」と言い出すのでしょうか。

  5. 匿名 より:

    某既得権益層にとって実効性があるほぼ唯一と言っていい方法は言論統制ですからね

    今後は言論統制を敷こうとする既得権益層vs言論の自由を守ろうとする国民の戦いになりそうな気がします

    笑えないのは、報道の自由が~~~と声高に叫んでる層が、言論統制を敷こうとする側なわけですが

  6. 七味 より:

    「違法情報」って簡単に言うけど、個別の情報について判断するのは結構難しい気がします♪

    >候補者の主張に関するデマや真偽不明の情報が広く出回り、
    って言うけど、個々のポストについて
    ・「デマ」なのか否か?
    ・「真偽不明」なのか否か?
    なんて、外形的判断するのは大変だろうからこそ現行法では、投稿者の発信者情報の開示請求を制度として設けて、当事者間の争いがしやすくしているんだと思います♪

    あと、収益化を禁止するなら、選挙関連よりも大規模災害に関する情報を対象にして欲しいと思います♪

    それこそ「災害発生から被害者救出に必要な72時間の投稿は一切収益化の対象にしない」みたいな雑な制度であっても、あたしは支持するのです♪
    ついでに、その間の投稿については、発信者の位置情報を国単位でいいから公開して欲しいのです♪

  7. deinei より:

    現与党側からこんなSNS規制の話が出ると言ことは、即ち岸田・石破政権がオールドメディアと
    癒着し利害関係を等しくしている証拠ではないでしょうか?
    かっての安倍政権はオールドメディアの誹謗中傷をものともせずに選挙で連勝し、政策を推進
    しましたが、オールドメディアに援護してもらわないと政権維持もできなくなった現政権が
    同じ自民党政権とは、にわかに信じられない話です。

  8. カズ より:

    YouTubeも、独自性の薄い「単なる切貼り動画」は、収益化対象外とのようですね。
    自助努力の解釈を取り違えてる『BPO』とは比べるまでもなくの健全さ・・!!

  9. Masuo より:

    自民党はすっかり共産党と同じになってしまいました。
    この検討が本当だとしたら独裁政治と言っていいと思います。

    誹謗中傷と批判との違いは?
    情報が偽であるかどうか誰がどう判断するの?
    政治や政治家を揶揄する事も出来なくなる?

    自分たちの気に入らない情報を「意図的に」封殺する事が出来ますね。
    これが言論統制と言わずして何だというんでしょうかね。

  10. 引きこもり中年 より:

    TBS系の番組をチラミしたのですが、そこで「今年は我々オールドメディアが問われた一年だった」とありました。つまり、TBSは自身をオールドメディアと認めたことになります。もっとも、「オールドメディアが問われたのであって、TBSだけが問われたのではない」と言いたいだけかもしれませんが。
    また、オールドメディアと言うからにはニューメディアが存在していることになります。なにしろ、ニューがあってオールドですから。
    また、このニューメディアは、それまでのオールドメディアとは異なることになります。なにしろ、(多少違っていても)それまでのオールドメディアと同じならば、オールドメディアのなかに新しいメディアが生まれただけになりますから。
    もちろん、ニューメディアが正しくて、オールドメディアが間違っているとは一概には言えませんが、オールドメディアがコントロールできないニューメディアが出てきたことは間違いありません。
    蛇足ですが、NHK世論調査によりますと、「SNSが、今後の選挙に影響を及ぼす」と答えた人が、「大いに」と「ある程度」を合わせて80%になったそうです。もちろん、来年はどうなるかは分かりませんが、SNSが政治家の生き死にを左右する可能性が出てきたのではないでしょうか。

    1. 引きこもり中年 より:

      毎度、ばかばかしいお話しを。
      議員:「オールドメディアが自分達の権威に挑戦してくるのは許せるが、SNSが挑戦してくるのは許せない」
      人間は、新しいものが自分たちに挑んでくるのを、嫌う生き物なのかもしれません。

  11. 農民 より:

     仮にSNSが悪意あるデマに満ちているとして。規制(どうやるつもりかしらんけど)が敷かれたら、規制を上手く掻い潜る表現でデマを撒くようになるだけですよ。なぜそう思うかって?オールドメディアがもうずっとやってるからですわ。

    1. はにわファクトリー より:

      放送法ってやつですかね

  12. がみ より:

    官僚・公務員の不祥事の際に「退職」「返金」すると横領でもなんでも許されると思うシステム

    新聞やテレビの不祥事や誤報(捏造も含む)は謝罪文の掲載や番組中で社員がお詫び申し上げれば許される謎システム

    誰一人許してなんかいないんだが「許された」「謝罪さかたもんね」と思えば後は知らない

    これダメでしょ?

  13. 雪だんご より:

    ”「複数の関係者」の話を引用する形で、自民党が現在、SNSを運営するプラットフォーム
    事業者が動画投稿による収益の支払を停止することができるよう法改正を検討している”

    随分と曖昧な言い方……さすがに「超がつく程反発を喰らう」のを理解はしている模様ですね。
    さて、どんなウルトラCでこの無理難題を通そうとするのやら?

    1. KN より:

      ただの無人観測気球のような気がする。

      1. 匿名z より:

        選挙直前に2000万円を配るような発想の人なら考えそう。

  14. DEEPBLUE より:

    これだったら国民民主党側に政権交代の方が自公よりマシだなあ(良いとは言えない)。

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