子供2人を私立中高…その年収と手取りで大丈夫なのか
年収500万円の50代男性が奥様の高級バッグに「キレた」。そんな記事を発見しました。ただ、記事を読んでみると、いろいろとツッコミどころが多々あります。年収500万円というレベルで、奥様が扶養の範囲内でパート勤務、お子様2人を私立の中高一貫校に通わせている、とあるのですが、そもそもそれで生活は成り立つのでしょうか?
わかり辛い「年収と手取りの関係」
「年収と手取りの関係」といえば、最近、当ウェブサイトでよく登場する論点のひとつです。これが、大変にわかり辛いものだからです。
皆さまご存じの通り、1年は12ヵ月です。
したがって、「年収を12で割ったら月収になる」、などと思っている人も多いかもしれません。たとえば「年収1000万円」というと、「その人は毎月100万円ずつ給料をもらっているに違いない」、といった感覚を持つようなものです。
そして、こう羨ましがるのかもしれません。
「毎月100万円も自由になるカネがあるともなれば、その人はずいぶんと豊かな暮らしをしているに違いない」。
年収1000万円を超えると月収は100万円(①)であり、本当に豊かな暮らしができるはずだ―――。
そう思っている方には大変申し訳ないのですが、こうした理解は、さまざまな点で誤っていると言わざるを得ません。なお、そもそも1000万円を12ヵ月で割ると月収は100万円ではなく約83万円(②)ですよ、といったツッコミは、とりあえず脇に置きます。
イメージと実際の乖離
日本の給与所得者は多くの場合、月給とは別にボーナスが夏と冬の2回程度、支給されます。残業代などがなく、シンプルに1回あたりのボーナスが月給の2ヵ月分だった場合は、年間の給与総額は月給の16ヵ月分となるため、年収1000万円の給与所得者の月収は100万円ではなく62.5万円(③)です。
そして、毎月の社会保険料(※本人負担分のみ)は約10万円弱(※東京都政管健保令和6年3月分以降、40歳以上の場合)、各種控除がなかった場合の所得税(甲欄)は34,310円、住民税は5万円少々ですので、手取りは441,338円(④)と計算されます。
図表1 年収1000万円の人の手取り…イメージと実際の乖離
区分 | 毎月の手取り | 計算根拠 |
①一般人が勘違いがちな額 | だいたい100万円くらい? | 1000万円÷12ヵ月≒100万円 |
②単純に12で割った額 | 833,333円 | 1000万円÷12ヵ月≒83.3万円 |
③ボーナス4ヵ月分の場合 | 625,000円 | 1000万円÷16ヵ月=62.5万円 |
④実際の手取り | 441,338円 | ③-社会保険料-諸税 |
上記①については論外ですが、年収1000万円でも計算方法によっては毎月の手取りが44万円に過ぎないという点については、案外多くの人が見落としている論点のひとつではないかと思うのです。
年収と月手取りには大きな乖離がある!
同じロジックで年収と月収、毎月の手取りの概算を示したものが、図表2です。
図表2 年収と月給と月手取りの対応表
年収 | 月給 | 月手取り | 月手取り率 |
200万円 | 125,000円 | 99,718円 | 79.77% |
400万円 | 250,000円 | 191,713円 | 76.69% |
600万円 | 375,000円 | 282,095円 | 75.23% |
800万円 | 500,000円 | 366,788円 | 73.36% |
1000万円 | 625,000円 | 441,338円 | 70.61% |
1200万円 | 750,000円 | 519,951円 | 69.33% |
1400万円 | 875,000円 | 598,787円 | 68.43% |
1600万円 | 1,000,000円 | 673,342円 | 67.33% |
1800万円 | 1,125,000円 | 742,184円 | 65.97% |
2000万円 | 1,250,000円 | 803,204円 | 64.26% |
(【注記】試算方法は『手取りが「増えてしまう」発言に見る自民議員の勘違い』に示した『試算の前提』参照。なお、所得税については月額甲欄を適用するものとし、住民税特別徴収税額についてはその年収に対応する金額を単純に12で割った数値とする)
もちろん、高校生の子供がいたり、年収103万円以下の配偶者がいたりすれば、控除の関係で税額が変わってくることもあるかもしれません。しかし、そもそもわが国の制度上は、とくに所得1800万円までの層に関していえば社会保険料の負担が大変に大きく、その社保に控除は関係ないことも留意点です。
年収500万円・50代男性で娘2人は私学…大丈夫!?
いずれにせよ、年収と月手取りの間には大きな乖離がある、ということです。
こうした前提を置いたうえで、ちょっと気になる記事があるとしたら、これかもしれません。
金が足りない…妻が放った「衝撃の一言」で地獄に突き落とされた、50代の夫のゾッとする「怒りの矛先」
―――2024/12/27 08:04付 Yahoo!ニュースより【現代ビジネス配信】
50代「年収500万円の夫」に絶望を叩きつけた…ゴミ箱のレシートで発覚した「美容師の妻」の衝撃の秘密
―――2024.12.27付 現代ビジネスより
詳しい内容はリンク先を読んでいただきたいのですが、当ウェブサイトなりに要約すると、年収500万円程度の51歳男性の暮らしを経済面から切り取ったもので、1歳下の「パート美容師」の奥様、私立の中高一貫校に通う2人の娘さんとの4人暮らし、ということです。
何がどう問題なのかについては記事で確認していただきたいのですが、前提条件を見た瞬間に浮かぶのが、こんな疑問です。
「この年収で娘を2人、私学に通わせて、暮らしていけるのかな?」
上記図表2に示したのと同じロジックで計算すると、年収500万円の人の手取りは毎月237,259円です。
ただし、奥様が「年収103万円」の範囲で働いていることから配偶者控除が効くのに加え、娘さんのうちの1人は高校生でもあるため、所得税、住民税の額がもう少し安くなり、毎月の手取りは25万円程度には増える計算です。
これに児童手当や奥様のパート収入が加算されるため、世帯にとっての手取りは35万円程度、といったところでしょうか(※なお、これとは別に年2回、額面で625,000円ずつのボーナスが支給されます)。
この点、お住まいの場所(都市部なのか地方なのか、借家なのか自宅なのか、自宅の場合は親御さんからの生前贈与などの支援があったのかどうか)などの前提条件がわからないなかではあります。
ただ、ベネッセの2024/09/26付『国公立と私立…いくら違うの?中高一貫校で6年間にかかる総額を比較!』というページの説明によると、中高一貫校の学費は6年間で約747万円とされますので、単純計算で子供1人あたり年120万円少々、毎月10万円前後が必要、という計算です。
お子様が2人、私立学校に通っていれば、教育費だけで毎月20万円前後が吹き飛んでいくということであり、ボーナス全額を教育費に注ぎ込むとしても、それでも10万円ほど足りない、という計算にならないでしょうか?
記事では奥様が高級バッグを購入していたことで男性が奥様に対し「キレた」という記述が出てくるのですが、そもそも経済的に見て、「その生活は持続可能なのか」、という観点が抜けているように思えてなりません。
いずれにせよ、現在の日本では、私たち一般国民から見て、給与から控除されている保険料や税金の総額が見え辛い状況にあることも間違いなく、その意味では、ちょうど年末調整が行われたタイミングということもありますので、源泉徴収票の見方などについて勉強する良い機会ではないか、などと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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高校授業料、東京都に住んでいれば年額484,000円の授業料の補助が国+都からある。
私立高校の授業料、7~8割はこれでカバーできるのでは?
こんな矛盾のつじつま合わせのための学費無償化なんてまっぴらだ!
リンク先の話は身につまされるものではありますが、日本のGDPが下降傾向にあることと庶民の暮らしの苦しさを関連づけてイメージされることを狙って取り上げた謂わば印象操作の感が拭えません(著者のレポーターはそのようなことは意図していなかったように見えます)。
冷静に考えれば、いつの時代でも、つまりバブル期においても年収500万円程度の人々は存在し、「世の中、しんどい」と思っていた筈です。まして浪費癖の妻に至っては経済・景気に関係なくいつの世でも、また、中間層に留まらずどの層においても悩ましい普遍的存在であります。
問題はそういう家庭が増えてきたことなんでしょうね。やっぱり税金高過ぎ、社会保障費高過ぎ、教育費高過ぎ、おまけに生活物価がどんどん上がる、ということでしょう。消費税なんぞ無かった時代が懐かしい。
因みに50代で年収約500万円、娘2人が中高一貫の私立高校生ということは、多分大学も同じ系列の私立大学に進学の可能性が高くなり、貯蓄もゼロだと、この先大出世をして年収が倍くらいにならない限り、いくら懸命に働き続けても家計が破綻することは見えています。
カネが無いから子供を希望の学校に行かせられないというのは、親として自分の身を切られるより辛いものですが、やはり娘達に率直に家計状況を打ち明けると同時に、コンサルタントに相談して収支の立て直しをする方がよい話です。
私立がダメなら国公立に行けばいいじゃない。 by マリー・アントワネット
自分は、親が身を切って自分を国立大学に行かせてくれたので、親には感謝しかありません。学費は、私立に比べれば、格段に安かったと思いますが、親にしてみれば、結構な負担であることに間違いはなかったと思います。
自分は、今こそ都会暮らしですが、生まれも育ちも田舎なものですから、学費を積んで子供を私立に行かせようという感覚が、いまいちピンときておりません。自分の経験に即せば、小中高ずっと公立で、塾通いもせずとも、国立大学には入れました(共通一次試験とかがあった時代の話です)。
今の学費の状況に疎いものですから、何も確たることは言えないのですが、手取りのお金で工面できない学費を負担するのはナンセンスだと思います。
社会に出れば、学歴より、業務遂行能力が重要になります。自分の見た事例に即すれば、東大卒でも偉そばるだけで仕事ができない木偶の某はいますし、高卒入社で叩きあげた凄まじくキレッキレな超絶優秀な方もいらっしゃいます。
身に過ぎた金を積んで自分の子供を学歴のレールに乗せるよりも、分相応の金を積んで自分の子供の実力を信じて頑張らせた方が、いい結果を生むような気がいたします。(これは当方の主観であって、何らエビデンスがあるものではありません。)