ちゃんと計算したら「ほとんど意味なし」=減税自公案
自公が示した減税案について、少し解釈が違っているところがありましたので、再計算しました。自公案だと給与所得の最低保障額を10万円引き上げるというもので、これだと年収190万円を超えたら減税効果がなくなるという点を見ていなかったためです。結局、変更されるのは所得税の基礎控除を10万円引き上げるという部分だけであり、減税はほとんど意味がなくなります。
『対決より解決…税調決定を幹事長レベルで覆す事例か?』では、自公が20日に決定した与党税制大綱に基づく手取り額についてのシミュレーションを行ったのですが、これについて再度訂正させていただきたいと思います。
同記事では、現在の「年収103万円の壁」を巡り、自公案について「国税部分を103万円から20万円引上げて123万円の壁とし、地方税部分を98万円から10万円引上げて108万円の壁とする」、という前提を置いて、こんな趣旨のことを申し上げました。
減税額(基礎控除を国税20万円、地方税10万円引き上げた場合)
- *250万円…20,210円(1.02%)
- *500万円…30,420円(0.79%)
- *750万円…50,840円(0.92%)
- 1000万円…50,840円(0.71%)
- 1250万円…56,966円(0.65%)
- 1500万円…77,386円(0.76%)
- 1750万円…77,386円(0.67%)
- 2000万円…77,386円(0.60%)
(【注記】試算の前提については『対決より解決…税調決定を幹事長レベルで覆す事例か?』末尾参照)
ただ、大変申し訳ない話ですが、この試算結果については再訂正しなければならないことになりました。
自公大綱をよく読み込むと、あくまでも引き上げられるのは基礎控除部分は国税が10万円、地方税がゼロであり、また、給与所得控除についても全体的に10万円ずつ引き上げるという意味ではなく、最低保障額のみを10万円引き上げる、とするものです。
したがって、現実には年収が190万円(=65万円÷40%)を超えた場合の給与所得控除は現在とまったく同額となり、上記試算結果は誤り、ということです。大変申し訳ございません。
したがって、自公案に忠実に試算してみると、実際の減税額はさらに少なくなります。
減税額(基礎控除+10万円、給与所得控除最低保障額+10万円)
- *250万円…5,105円(0.26%)
- *500万円…14,252円(0.37%)
- *750万円…20,420円(0.37%)
- 1000万円…20,420円(0.28%)
- 1250万円…23,483円(0.27%)
- 1500万円…33,693円(0.33%)
- 1750万円…33,693円(0.29%)
- 2000万円…33,693円(0.26%)
(【注記】試算の前提については『対決より解決…税調決定を幹事長レベルで覆す事例か?』末尾参照)
「基礎控除(所48万円、住43万円)を所得税、住民税ともに現在の水準よりも75万円ずつ引き上げた場合」と比べると、その差は歴然でしょう。
減税額(基礎控除75万円引上げの場合)
- *250万円…113,288円(5.72%)
- *500万円…131,308円(3.41%)
- *750万円…223,504円(4.03%)
- 1000万円…228,150円(3.18%)
- 1250万円…251,123円(2.87%)
- 1500万円…327,698円(3.24%)
- 1750万円…327,698円(2.86%)
- 2000万円…327,698円(2.55%)
(【注記】試算の前提については『対決より解決…税調決定を幹事長レベルで覆す事例か?』末尾参照)
そして、「基礎控除75万円引上げ」の場合と自公案を比べると、次のような具合です。
減税額の違い(基礎控除75万円引上げの場合と自公案の場合の差異)
- *250万円…▲108,183円(▲5.17%)
- *500万円…▲117,056円(▲2.94%)
- *750万円…▲203,084円(▲3.52%)
- 1000万円…▲207,730円(▲2.80%)
- 1250万円…▲227,640円(▲2.53%)
- 1500万円…▲294,005円(▲2.81%)
- 1750万円…▲294,005円(▲2.49%)
- 2000万円…▲294,005円(▲2.23%)
(【注記】試算の前提については『対決より解決…税調決定を幹事長レベルで覆す事例か?』末尾参照)
これは、なかなかに強烈です。
「もしかして年収の壁が動くかも?」、などと期待していた人たちは、大いに落胆せざるを得ないのではないでしょうか。年収250万円の層にとっても、自公案だと当初目論見と比べて10万円以上、減税額が変わってしまうわけです。
というか、自公案だと減税策としてほとんど意味はありません。
この点、「基礎控除の変更はシステム的にとても大変だ」、などとおっしゃっていた人たちが本件でダンマリを決め込んでいるように見えるのもおかしな話ですが、財務省・財務官僚・自民党税調も、少し国民を愚弄し過ぎているのではないでしょうか。
いずれにせよ、2024年という年は、本当の意味での国民の敵対勢力が誰なのかが可視化されたという意味では、大変に有意義な年だったのではないか、などと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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