秒でバレるウソをつく財務省…それを指摘しない新聞社

日経新聞が19日に配信した記事によると、財務省は「法人税率が2010年代から引き下げられてきたにもかかわらず、国内の設備投資や賃金は増えていない」との分析を示したそうですが、財務省はどうしてこうも堂々とウソをつくのでしょうか?秒でバレるウソをつく財務省。変なグラフで印象操作をする日本の新聞。このあたりに現代のわが国の問題点が凝縮されているのかもしれません。

秒でバレるウソをつく財務省

どうして財務省は、すぐにバレるウソをつくのでしょうか?

減税に関する3党合意を「マスコミ抜きで」読める時代』などでも取り上げたとおり、国民民主党が主張する「年収の壁引上げ」を巡って、自民、公明両党を加えた3党は20日、基本的な方向性で一致し、総合経済対策に盛り込むことで合意しました。

もちろん、具体的な減税額などについてはこれから詳細が詰められるものと考えられ、展開次第ではまた波乱も予想されるところではありますが、それでも少数与党体制下で野党が主張した内容が実現に向けて動き出すというのは、憲政史上でも、さほど多く見られる事例ではありません。

ただ、減税が実現しそうになっているためでしょうか、財務省が法人税率を引き下げても投資や賃金が増えなかった、などと主張し始めているようです。

法人税率下げても「投資・賃金増えず」 政府税調で議論

―――2024年11月19日 22:26付 日本経済新聞電子版より

記事は3党合意の前日である19日付のものですが、冒頭からウソが混じっていて驚きます。

政府の税制調査会(首相の諮問機関)は19日、EBPM(証拠に基づく政策立案)を活用して税制の効果を検証する専門家会合の2回目を開いた。財務省は法人税率が2010年代から引き下げられてきたにもかかわらず、国内の設備投資や賃金は増えていないとの分析を示した」。

設備投資も人件費も増えている

どうしてすぐバレるウソをつくのでしょうか?

そもそも財務省自身が作成している『法人企業統計』調査では、「ソフトウェアを除く設備投資」は2008年度の28兆6958億円から2023年度においては52兆7911億円へと倍近くに伸びています(図表1)。

図表1 ソフトウェアを除く設備投資(当期末資金需給)

(【出所】財務省『法人企業統計調査』。業種は「全産業(金融業、保険業を含む)」、企業規模は「全規模」)

ちなみに、2019年度に落ち込んでいるように見えますが、これも単純に、「法人税率の引き下げに効果がなかったから」ではなく、「2019年10月の消費税等の増税」による影響と考えた方が自然ではないでしょうか。

同様に、企業の人件費(※役員給与、役員賞与、従業員給与、従業員賞与、福利厚生費の合計)も伸びており、2008年度に207兆円だった人件費は2023年度で233兆円となっています(図表2)。

図表2 人件費

(【出所】財務省『法人企業統計調査』。業種は「全産業(金融業、保険業を含む)」、企業規模は「全規模」)

どうしてこう「秒でバレるウソ」をつくのでしょうか、財務省は?

日経グラフもおかしい

ただ、日経新聞の記事(というかグラフ)にも、非常に大きな問題があります。

記事のグラフで見ると、「企業所得は伸びている」としたうえで、法人税収がほとんど伸びていないかの印象を抱くかもしれません。

法人所得と法人税収を同一のスケールで表示しているのですから、そう見えてしまうのは当たり前です。

財務省自身が『税収に関する資料』のページで公表しているデータで確認すると、2023年度の法人税収は15.86兆円で、これは21世紀最多だった2006年度の14.92兆円を上回っていることがわかります(図表3)。

図表3 法人税収

(【出所】財務省『税収に関する資料』公表データをもとに作成)

一般会計税収は過去最大

ついでに指摘しておくと、一般会計税収についても図表4に示す通り、過去最大だったりします。

図表4 一般会計税収

(【出所】財務省『税収に関する資料』公表データをもとに作成)

税収が過去最大ということは、企業や国民にとっては、それだけ自分たちの取り分が減っている、ということを意味します。

また、取り過ぎた税金がどうなっているのかについては『じつは財務官僚は数字に弱い?毎年巨額の剰余金を計上』などでも述べたとおり、毎年、巨額の剰余金が計上されていて、国債発行の取り止めや既発国債の償還などに流用されているのが現状です。

正直、財務省が「秒でバレるウソ」をつき、その「事実上の広報紙」もそのウソを指摘しない、というあたりに、現在の日本の問題点が凝縮されているように見えるのは、決して気のせいではないでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    毎度、ばかばかしいお話を。
    新聞社:「財務省のウソを指摘するには、基本的専門知識がいるし、グラフを読む能力がいる」
    記者クラブでの発表待ちでしょうか。

    1. 引きこもり中年 より:

      「新聞社は、財務省のウソを指摘して、その指摘が間違っていた時のことを恐れて、記者クラブでの発表を待っている」に訂正します。

  2. 日弁連 より:

    外国人に優しい財務省を目指してほしいと思います。
    日本人はいくら締め上げても我慢しますが、外国人は逃げられたら終わりですよ。

  3. 匿名 より:

    釣り針がでかすぎるコメントは放っておくとして

    財務省はグラフで誤魔化すしかなくなったのか?
    増税はトントン拍子で進むのに
    減税はてんで進みませんなあ

  4. foo より:

    統計データはいずれも財務省のデータですが、財務省自身がこれを見ていないのか、
    信用していないのか、無かったことにしているのか、財務省自身が統計データを作成しながら
    真逆の発言をしているとは、一体どういうことなのでしょう。
    不信感の積み上げを自らが実践する結果となっている。

    それから、企業活動は創意工夫を重ね利益の拡大や業務の改善・効率化等々の目標を掲げ、
    目標達成のためには必要な設備投資を行うなどが通常の活動で、その結果が図表1に表れて
    いるのだと思いますが、まさか、まさか、財務省は企業活動を知らないのでは・・・?
    あるいは、単なる無視を決め込んだか。真偽は如何に。
    企業減税で手取りが増えなかったのは、需給の均衡が崩れていたからではないでしょうか。
    つまりはデフレが原因であって、消費税もかかっているし、生活に必要なものでも
    我慢して買うのを止めた。結果、誰かの支出は誰かの収入とはならなかった。
    これが30年も続いた、よくやってこれたものだと今更ながらに思います。

  5. sqsq より:

    製造業の経理にいると計画している投資が何年で回収できるかを見て投資するかどうかを決めるが、その際「投資の経済性計算」を使う。大学で習ったが、あんなもの机上の空論と思っていたが現場で実際に使っているので驚いたことがある。
    その計算の中で法人税率というのは重要なファクターだ。法人税率が低いほどキャッシュフローが大きく、したがって回収期間が短く良い投資ということになる。
    財務省の言っている「法人税率を下げても設備投資が増えない」というのが事実だとすると、税率とは別の問題があるのだろう。
    アイルランドは法人税率が低く(12~3%程度)多国籍企業の投資が多い。今日本の「デジタル赤字」がすごいことになっているが行先は税率の低いアイルランドらしい。

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