減税を拒む立憲民主党の「取って配る」式緊急総合対策
やはり、立憲民主党は官僚機構の別動隊のようなものなのでしょうか?同党が7日に発表した緊急総合対策、評価できる部分といえば、能登半島の復旧・復興支援を前面に打ち出したことくらいであり、それ以外の家計支援、事業者支援の部分には失望せざるを得ません。「取って配る」くらいなら、「最初から取らない」方がマシではないかと思いますが、なぜこの「最初から取らない」という選択肢がないのでしょうか?
選挙から2週間近くが経過したが…
立憲民主党が7日、能登復興や物価高克服のための、総額7.4兆円の緊急総合対策を発表しました。
能登復興・物価高克服のための緊急総合対策
―――2024年11月7日付 立憲民主党HPより
著者自身の感覚からすれば、通常、野党のこの手の経済政策というものは、選挙前に固めておいて、選挙が終わったらすぐに与党側と協議するものではないかと思っているのですが、なかなかに驚きます。選挙から2週間も経っているからです。
ただ、その具体的な中身についても、違和感を禁じ得ません。
タイトルからもわかる通り、今回の緊急対策は「能登の復興」と「物価高対策」ということでしょう。
個人的に能登半島を表題に出し、能登半島復旧・復興に0.6兆円を提唱するなどの点については高く評価したいとは思いますが(同党の近藤和也議員の活躍によるものでしょうか?)、それ以外についてはなにかとツッコミどころだらけです。
家計への直接支援:なぜ補助金ばかり?なぜ減税がないの?
まず、5.3兆円を提唱している「家計への直接支援 ―賃金・所得の底上げで経済再生」の節ですが、こんなことが記載されています。
- 消費税の実質的な還付による「物価高手当」の給付
- 「就労促進支援給付」(「130万円の壁」による収入の減少を補填し、就労抑制を解消する給付)の実施
- 「年金生活者支援給付金」の拡充(+月額5,000円)
- 介護・障がい福祉職員、保育士等の処遇改善(+月額1万円)
- 訪問介護の緊急支援 (支援金の支給による基本報酬引き下げの実質的な撤回)
- 公立小中学校の給食費無償化の先行実施
- 児童扶養手当の増額(+月額1万円)
- 「奨学金返済負担の軽減に向けた総合対策パッケージ」の先行実施<略>
- 約25円/ℓのガソリン税減税(「トリガー条項」の発動)
- 「暮らしと地域応援重点交付金」の創設、特別交付税措置の継続・拡充<略>
- 電動車・省エネ家電買い替え支援
- 既存住宅の建物断熱化の強力な推進
いかがでしょうか。
このなかに、所得税の「年収103万円の壁」解消、「消費税の減税」などは含まれていません。
また、国民年金の130万円の壁に対応した補助金に関しても、結局、国民年金の加入義務の問題については解決していませんし、「児童扶養手当の増額」についても、旧民主党政権下で廃止されてしまった年少扶養控除の復活、といった項目はありません。
事業者への支援も中小企業への給付ばかり
続いて、1.5兆円を盛り込んだ「事業者への直接支援 ―事業を支え、賃上げを促進」の節は、こんな具合です。
- 米の価格上昇への対策(価格転嫁が困難な小売業者、飲食店等への支援)
- 「中小企業等 電気・ガス補助金」の直接給付
- 中小企業の省エネ・再エネ推進支援の加速
- 中小企業のコロナ債務の一定範囲内での減免等
- 新たに正規労働者を雇用した事業主の社会保険料負担軽減
- 公正取引委員会や下請Gメン等の人員強化による価格転嫁の促進
- インバウンド等の旅行需要回復を踏まえた人材不足対策
- 物流事業者の輸送負担軽減 (大口・多頻度割引の拡充措置延長、「トラック・物流Gメン」の拡充等)
- 地域公共交通支援 (LPガス価格の高騰を踏まえたタクシー事業者支援、バス運転手確保対策等)
- 肥料・粗飼料高騰対策の延長・拡充
- 鳥獣被害対策の強化 (駆除等捕獲活動の経費、ハンター育成等への支援)
やはり同様に、法人税法や消費税法の改革は含まれていません。
本来ならば、交際費損金算入否認規定や固定資産計上要件の緩和、消費税の課税事業者要件(現在だと年間1000万円)の緩和などが望ましいところですが、こうした提案が立憲民主党から出てくることはあまり期待しない方が良さそうです。
官僚組織の別動隊と揶揄されても仕方がない
いずれにせよ、普段から当ウェブサイトにて報告している通り、この「取って配る」式の政策、結局は財務省を含めた官庁の裁量の余地が働きますし、また、不思議なことに、立憲民主党など左派政党は、所得制限などを設け、大企業・高所得者層に恩恵が及ぶことを、かたくなに拒みます。
このあたり、本当に謎と言わざるを得ません。
あくまでも一般論ですが、官僚組織は「取ってから配る」ことが大好きです。
典型的には、「カネ持ちから税金を取って低所得者に支給する」、といったところがわかりやすいのですが、他にも官僚機構(やその天下り団体など)が「審査」して、「認可」したところに補助金を出す、といった仕組みも問題でしょう。
先日の『ふるさと融資から垣間見える新聞業界と官僚の癒着構造』でも引用した、例の「ふるさと融資」を使った沖縄県の株式会社琉球新報社への無利子融資なども、その典型例でしょう(この制度の管轄は財務省ではなく総務省ですが、地方交付税が使われるという意味では、「取って配る」の典型例です)。
個人的には、こうした「取って配る」をするよりも、「最初から取らない」、が最大の補助ではないかと思います。
その意味では、「取って配る」立憲民主党式のバラマキからは、日本もいい加減脱却しなければならないと思うのですが、いかがでしょうか?
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
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自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
この政策、家計への支援というものの、ここだけをざっと見ても単身者や中所得者層への恩恵って物価高手当とトリガー条項の発動しか見当たりませんが、一体どんな家計が支援の対象なのですかね?
ちなみに、国民民主も3号被保険者の廃止を提案しているので(つまり、3号被保険者だから国民年金を払ってないのに年金をもらえる、という制度の廃止)、一人働き夫婦世帯への負担増になることを言及しておきます。
>鳥獣被害対策の強化 (駆除等捕獲活動の経費、ハンター育成等への支援)
これって来年2月28日にハンターになるためのPS5・proまたはゲーミングPCの購入も対象ですかね?
米国だと、大きな政府=民主党、小さな政府=共和党という構図がありますが、日本の場合、大きな政府=自民党、同じかもっと大きな政府=立憲共産党他って構図。
このため、税金を徴収して配るという姿勢は自民党も立憲共産党も同じなので、この立憲の政策はヤバさを感じますね。まさか自民党、乗らねぇだろうな、と。
国民民主党には頑張って貰いたいと思います、そして、来年の参院選では、野党共闘に参加せず、独自色を出し続けてもらいたいと思っています。
By 選挙区では自民、立憲、共産だったので仕方なく自民(宏池会)に投票しましたが、比例では国民に鞍替えした元自民党支持者
「立憲 共産はアングラな人の支援者」という前提にたてば
・マイナカード、マイナ保険証、マイナ運転免許証等々、使用する人がバレる施策は絶対反対
・納税側の減税で所得を増やすのは不都合で、バラマキ側で上手く受け取れる補助金が好都合
という施策が理解し易いかも。
国民民主党の政策が注目されているので、「やべ、何か出さなきゃ」って感じで慌てて出した感じが否めないですね。そういう取って付けたようなところがまた腹立たしいです。
国民民主党の政策が労働者全体や子育て世代に恩恵をもたらすものに対して、立憲のそれは老人や無職者など弱者限定の政策のように思います。ホントわかってないなと思います。いや、わかっててやっているのか。
とにかく国民民主党に頑張ってもらって、「選挙に行けば世の中が変わる!」って若者にわかってもらえる世の中になって欲しいです。
ふつうにまじめに働き納税する
ほとんどの国民は減税方式でメリット受けますが
そもそも税金払っておらずもらう層に
メリットないのは当たり前です。
ただ、そんな支持者を多数抱える
特定野党の政党さんは、
給付方式をどさくさで一律とすることで
税金払ってないのに濡れ手に泡を
狙っているのでしょう。
立憲民主党の岩盤支持層である65~69歳の年収の中央値は凡そ300万円、70歳以上で凡そ250万円です。
所得税減税よりも交付金。ターゲットマーケティング的には彼等彼女等の望む施策なのでしょう。
更にはわざわざ集めてから配る。立憲民主党としては仕事した感じがするのでマズロー的には自己肯定感をくすぐるのでしょう。
国民民主さんがよく動いているので、これはやばいと頭を絞って考えたのかも知れません。
マニフェストとかいう、嘘つき白書を見直すところから始めるのが良いと思います。
あ、一つ祝辞を。
安住(不記載)予算委員長就任当確おめでとうございます。
労組利権に 安住さん でしたかね(笑)
「取って配る」は民主政権時代の子供手当を想起させますね。
あれも外国人に配ったり、結局は子育て世代への負担増に繋がっている疑惑があったりと
大問題の制度でしたが……所詮は立憲民主党、こういうのが限界なんでしょう。
>「取って配る」くらいなら、「最初から取らない」方がマシではないかと思いますが、なぜこの「最初から取らない」という選択肢がないのでしょうか?
「配る」と配った相手からは感謝される
「配る」相手を変えることでアピールする相手を色々変えられる
こういったことから、政治家ひとりひとりのニーズにあった、たくさんの細かい「配る」政策を作ることができるからじゃないかな?って思います♪
減税どころか税率100%(全部徴収)にして全員に必要な分だけ一律額配るのが平等で公正とか思ってると、小生は邪推してます。共産ってそういう概念なのではと思っているのですが。
配る相手を官僚が決めることができる…なるほど。
受け取る側にも官僚が美味しい仕組みが入っています。
中小法人向けの補助金申請は大抵の場合、かなりの手間がかかる書類を提出させられます。そうすると、どこから嗅ぎ付けたのか元官僚のコンサルタントを名乗る人物が現れて「私が作成指導すればスムーズに申請が通ります。」と高いフィーを要求してくるんですよ。(実話)