新聞部数減少続くも電子契約増えず=朝日メディア指標
株式会社朝日新聞社が31日に公表した『朝日新聞メディア指標』によると、9月末時点の朝日新聞朝刊部数は334.9万部と、3月末と比べ、8.8万部減りました。部数の減少速度自体は減速しており、朝日新聞の部数のが下げ止まるのかどうかについては気になるところです。ただ、朝デジ有料会員は30.3万人で、半年で0.3万人減りました。紙媒体の部数が減っているわりに、ネット上の有料契約が増えているフシは見られない、というわけです。
目次
新聞業界の個別分析が難しい理由
当ウェブサイトで以前から精力的に追いかけているテーマのひとつが、新聞・テレビといったマスコミ各社の経営指標です。
ただ、(非常に不思議なことですが)テレビ局はともかくとして、新聞社に関しては財務諸表などの経営情報の開示が非常に少なく、部数がどうなっているのか、売上高がどうなっているのか、売上原価や人件費などがどうなっているのか、といった情報が極端に少ないのです。
もちろん、新聞社の経営に関する指標が世の中にまったく存在しない、ということはなく、たとえば新聞部数であれば一般社団法人日本新聞協会が毎年公表している部数データ、一般社団法人日本ABC協会などが公表している各新聞の部数データなどのように、参考になる指標がないわけではありません。
ただし、ABC部数に関しては、有料レポートでしか確認することができないらしいため(※ときどき某匿名掲示板に無断転載されているようですが)、基本的には当ウェブサイトにおける分析では対象外とさせていただいています。
当ウェブサイトは「誰でも簡単に確認できる数値」を議論の出発点とすることを基本方針として採用しているからです。
このため、新聞業界の分析というのは、わりと大変だったりもするのです。
株式会社朝日新聞社の有価証券報告書を通じた分析
ただし、その例外があるとしたら、株式会社朝日新聞社かもしれません。
同社は新聞業界のなかでは珍しく、有価証券報告書作成し、財務局に提出しているからです。
この最新版データである2024年3月期有報については、今年6月の『朝日新聞部数はさらに減少:新聞事業は今期も営業赤字』でも取り上げたため、当ウェブサイトの読者の皆さまのなかにも読んでくださった方がいらっしゃることと思います。
自社の経営情報を頑なに公表しない新聞社が多い中で、この株式会社朝日新聞社の有価証券報告書は、新聞社の実情を知る上では大変貴重なデータであることは間違いありません。
この点、当ウェブサイトがまるで株式会社朝日新聞社を執拗に追及しているかに感じていらっしゃる方もいるかもしれませんが、当ウェブサイトにおいて株式会社朝日新聞社を題材に取り上げるのは、詳細データを分析でいる対象が同社くらいしかない、という事情がある、という点についてはご了承ください。
朝日新聞メディア指標の最新版が公表
さて、その株式会社朝日新聞社が公表しているものは、有価証券報告書だけではありません。
最近だと、同社は「朝日新聞メディア指標」と題したデータを、だいたい半年に1回の割合で公表しています。
そして、この最新データが31日、同社ウェブサイトに公表されました。
「朝日新聞メディア指標」を更新
―――2024-10-31付 株式会社朝日新聞社ウェブサイトより
これによると2024年9月時点において、朝刊部数(ABC協会公査)は334.9万部、朝日新聞デジタル有料会員数が30.3万で、合計すると365.2万(※百の位を切り捨て)だったのだそうです。ちなみに朝日ID会員数は659万、月間UU数は3250万、LINE友だち登録数は595万だったのだとか。
これについて、同社が過去に公表した『朝日新聞メディア指標』をもとに、朝刊部数と朝デジ有料会員数を並べておくと、図表1のとおりです。
図表1 朝日新聞朝刊部数+朝デジ有料会員数(カッコ内は前回比)
時点 | 朝刊部数 | 朝デジ有料会員数 | 計 |
2022年12月末 | 383.8万 | 30.5万 | 414.3万 |
2023年3月末 | 376.1万(▲7.7万) | 30.5万(±0.0万) | 406.6万(▲7.7万) |
2023年9月末 | 357.3万(▲18.8万) | 30.3万(▲0.2万) | 387.6万(▲19.0万) |
2024年3月末 | 343.7万(▲13.6万) | 30.6万(+0.3万) | 374.3万(▲13.3万) |
2024年9月末 | 334.9万(▲8.8万) | 30.3万(▲0.3万) | 365.2万(▲9.1万) |
(【出所】株式会社朝日新聞社公表資料をもとに作成)
これを、大きいとみるか、少ないとみるか。
まず、朝日新聞の朝刊部数については、減少率が緩やかになっています。具体的には、2023年9月は18.8万部、2024年3月末は13.6万部と、それぞれ半年で10万部を超える減少を記録していたのが、24年9月末は8.8万部と、半年の減少数が10万を割り込みました。
部数の減少速度は緩んでいるようにもみえるが…電子版は減少
同社有報によれば、朝日新聞の部数は減少基調が続いていた(図表2)わけですので、今回のメディア指標が正しければ、朝日新聞の部数の減少速度自体は緩やかになっているという気がします(※2023年3月末の「▲7.7万部」は、3ヵ月前の22年12月末と比べた値ですので、そのままの比較はできません)。
図表2 朝日新聞の部数
(【出所】株式会社朝日新聞社・過年度有価証券報告書の開示データをもとに作成)
これにより、朝日新聞の部数の減少に歯止めがかかってきたとみるべきなのでしょうか。
この点については、現時点では軽々に判断することはできません。
やはり、紙媒体の減少は続いている格好ですが、それ以上に気になるのは、朝日新聞デジタルの有料会員数がほとんど増えていないどころか、むしろ直近で見たら30.3万件と、2023年9月末時点の水準に戻ってしまいました。
基本的に、紙媒体が減っても、デジタル契約に移行すれば、新聞社の経営は安泰(?)であるはずです。
しかし、現実には部数が半年で8.8万件減っているのに、デジタル版の契約は8.8万件増えるどころか、むしろ0.3万件減っているわけですから、やはりこれは「朝日新聞」というメディアが提供する情報そのものが売れなくなっている、ということを示唆しているように思えてなりません。
他の主要メディアは電子契約数すらろくに公表せず
ただし、これは「朝日新聞だけの問題」なのかといえば、そこもまた微妙でしょう。
本稿で確認したとおり、新聞部数が減ってもデジタル版の有料契約が増えているフシが見られないというのが朝日新聞の特徴ですが、では朝日以外のメディアはどうなっているのかといえば、よくわかりません。(著者自身が知る限りは)朝日新聞以外の主要メディアについて、そもそも電子版契約が良くよからないからです。
あるいは、朝日以外の各紙に関していえば、デジタル版の契約がどうなっているのかについて、データそのものを公開しているフシがないという点をもって、経営の実情は「推して知るべし」、なのかもしれません。
いずれにせよ、新聞業界全体の状況に関しては、(おそらくは12月下旬に公表されるであろう)日本新聞協会の部数データを俟ちたいと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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