ロシアの苦境…「北朝鮮兵がロシアに到着」報道が示唆
米国ホワイトハウスのカービー広報官は現地時間23日、少なくとも3,000人の北朝鮮兵が今月、ロシア東部に到着したとの見方を示したそうです。これらの北朝鮮兵がウクライナの前線に向かうのかどうかは「不明」とのことですが、もし彼らがウクライナ戦争に参加すれば、欧州のみならず、「インド太平洋地域にも影響が及ぶ」との懸念があるようです。ただ、一見すると好調なロシア経済にも、よく見ると戦時経済の兆候が散見されるようです。
目次
米政府「北朝鮮兵3,000人がロシア東部に到着」
すでに国内外のいくつかのメディアで取り上げられていますが、どうやら多くの北朝鮮兵がロシアにいるらしい、とする情報については、米国側も認めるようになったようです。たとえば米メディアCNNは日本時間24日朝、こんな記事を配信しています。
北朝鮮兵3000人がロシア東部に 米ホワイトハウス
―――2024.10.24 06:02 JST付 CNNより
記事によるとホワイトハウスのジョン・F・カービー広報補佐官(国家安全保障担当)が現地時間23日、少なくとも3,000人の北朝鮮兵が今月、ロシア東部に到着した指摘。北朝鮮兵の動きについて「不明」としつつも、北朝鮮兵がウクライナとの戦闘に参加する可能性は「極めて高い」と述べたそうです。
これに加えてロイド・オースティン米国防長官も23日、北朝鮮がロシアに部隊を派遣している証拠があるとしつつ、ウクライナでの戦争に参加するとなれば「インド太平洋地域にも影響が及ぶ可能性がある」との懸念を示したのだそうです。
もし北朝鮮が参戦なら…「宇露戦争」に留まらなくなる!?
この「ロシアに北朝鮮兵」に関しては、『北朝鮮軍のウクライナ派遣疑惑受け韓国がロシアに抗議』などでも述べたとおり、事実だったとしたらウクライナ戦争のフェーズが一段階変化した可能性があります。これまでだと、ウクライナ軍事侵攻に関わっているのは、(表向きは)あくまでもロシア1ヵ国のみだったからです。
もちろん、ロシア軍が深刻な人手不足に陥りつつあるなかで、外国人傭兵部隊を使用していた、などとする情報は多く(たとえば『現在のロシアは典型的な戦時経済…遂に「学徒動員」も』等参照)、非ロシア人がウクライナでの戦闘に関与していた可能性はあります。
しかし、もしもウクライナ戦争に北朝鮮の「正規軍」(?)が参加したことが公式に確認されたならば、戦争のフェーズが「宇露戦争」に留まらなくなるかもしれません。
実際、CNNによるとオースティン氏は「北朝鮮が宇露戦争でどのような役割を担うか」などについては「分析中」としつつも、「北朝鮮が<中略>ロシア側に立ってこの戦争に参加するつもりなら、極めて深刻な問題」、「欧州ならずインド太平洋地域にも影響が及ぶ」と述べたそうです。
北朝鮮制裁を洗い直すチャンス
たしかに、北朝鮮が実質的に、直接の戦争の当事者のひとりとなるのであれば、西側諸国にとっても北朝鮮を宇露戦争における直接の脅威のひとつに位置付け直さなければならなくなります。
北朝鮮に対しては現時点ですでに核・ミサイル開発などを巡って国連安保理決議に基づく経済制裁を受けていますが、これに加えてさらに厳しい北朝鮮制裁の発動を検討せねばならないことになるかもしれません。
もっとも、その北朝鮮への制裁の監視状況に関する国連の安保理北朝鮮制裁委員会専門パネルが、ロシアの拒否権発動によって活動停止に追い込まれています(『【長文注意】高市早苗氏演説全文を文字に起こしてみた』等参照)。
このため、北朝鮮制裁が現実に機能しているのか、といった点については、微妙なところでしょう。
もっとも、ロシアの拒否権発動が予想される中、北朝鮮に対する新たな国連安保理制裁の決議は難しいかもしれませんが、少なくとも日米英欧豪加NZなどの西側有志国を中心に、改めて経済制裁・セカンダリー制裁のパッケージを洗い出し、組み替える、ちょうど良いタイミングかもしれません。
日本人拉致事件の被害国でもある日本としては、すべての拉致被害者を1人残らず保護し、無事に帰国させるまでは、北朝鮮に対する圧力を緩めるわけにはいきません(理想をいえば、圧力を加える手段として武力の行使を容易にするための憲法改正なども急がれますが…)。
その意味では、北朝鮮のロシア派兵は、考え様によっては、拉致被害者奪還に向けた好機でもあるのかもしれません。
ロシアは現在、戦時経済と化しつつあるのか
さて、視点をロシア経済に移してみると、今回の北朝鮮のロシア派兵は、ロシアがいかに深刻な人材不足に陥っているかという可能性を示唆するものでもあります。
先の大戦におけるわが国の事例でも何となく想像がつくかもしれませんが、一般に戦争初期は(とくに攻める側は)景気が良くなりがちです。穴を掘って埋めるだけでも有効需要は増えますから、同じ理屈で砲弾を作って戦場で消費すれば、「短期的には」、景気は大変良くなるはずです。
しかし、戦争が長期化してくると、今度はたいていの場合、インフレが襲ってきます。
いや、インフレというよりもモノ不足というべきでしょうか。
多くの場合は国家総動員体制のもとで軍需産業に生産資源が集中配分されるようになり、生活必需品などの供給が滞りだすのです。これにともない価格統制令や配給制などが敷かれるケースもあります(が、やがて配給制自体も滞り始めたりします)。
さらには学徒動員や学徒出陣などが始まると、いよいよ戦時経済は末期的状況の様相を呈してきます。戦争の遂行が人々の生活が、次第に厳しくなっていくからです。
たとえば、学校だと授業を行おうにも教員が不足しますし、授業を受ける側の学生自体も勤労奉仕ないし出陣により減ってしまいますので、学校の授業は広範囲に短縮または停止に追い込まれるのです。
北朝鮮に依存するほど厳しいのか?
この点、断片的な経済データをもとに、現在のロシアがどのフェーズにあるのかについて、軽々に断定することは控えますが、いちおう「目に見える情報」だけで判断する限り、ロシアが経済崩壊の危機にあるかとまではいえません。
たとえば世銀データ等によればロシアのGDPはプラス成長が続いていますし、また、一部YouTuberなどの報告によれば、とくにモスクワなど大都市部では生活物資も豊富であり、今のところ生活苦の兆候はないというのです。
もっとも、インフレ率の状況は厳しいのか、それとも通貨防衛のためなのか、ロシアでは高金利が続いています。少なくとも直近の政策金利は19%に設定されているようであり、これはウクライナ戦争開始後の2022年2月の20%に次ぐ水準でもあるのです。
ただし、今年4月頃の報道によれば、宇露戦争におけるロシア側の犠牲者は5万人超であるとも伝えられており、負傷者・高度障害者などを含めれば数十万人規模の人的打撃が生じていても不思議ではありません。
ロシア兵の死者、5万人以上に BBCなどの調査で明らかに
―――2024年4月18日付 BBC NEWS JAPANより
こうした状況を踏まえると、ロシアがNATOの軍事介入などの危険性を踏まえつつも北朝鮮軍を「雇用(?)」したことは、ロシアが「北朝鮮に依存しなければならないほどの打撃」を負っている可能性を示唆するものかもしれません。
ロシアが目に見える以上に深刻な打撃を被っているのかどうか―――。
引き続きこの話題からは目が離せなそうです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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ウクライナ側は北朝鮮兵に対して「他国で命を散らすな、温かい飯があるよ。」と投降を促しているそうですね。
これは効きそうだなぁ
投降の呼びかけを北朝鮮兵が目にすることがあるのだろうか。
SNSで投稿を呼びかけたと聞いたが、北朝鮮兵がSNSなど見ることはできない。
北朝鮮兵の目に留まるような呼びかけ手段がないのでは?
目に入ることがあれば効くだろうなぁってことよ
または韓国みたいにビラでも撒いてみますかw
送り出すのはよいけど、北朝鮮は自分たちの国境防衛は手薄にならんのかな。
あ、そういえば募集かけたら140万人が!とかニュースでやってましたね。
国境付近における監視の対象
韓国軍兵士 主に北方を監視する
北朝鮮軍兵士 主に北方とお互いを監視する
という話があります。
第二次大戦中「懲罰部隊」「囚人部隊」というのがソ連に存在した。
刑務所にいた軍務経験者を引っ張り出してきて減刑をエサに戦わせる。
士気が低く、略奪行為を働く。
北朝鮮の兵士はこれの現代版かもしれない。
北朝鮮兵士は最前線に、その後ろにオスマン帝国のイエニチェリみたいな督戦隊(ロシア正規軍)が配置され、北朝鮮兵士は必死に戦うしかない。そんな構図が浮かんできます
中露朝韓、「悪の枢軸」と命名されるまであとどれくらいだろう。
あ、韓国は今のところは違いましたね。失礼しました。
北朝鮮への見返りになると思われる実戦経験、あるいは核技術は言ってみれば知財なので、ロシアは直接は懐を傷めずに兵力を補充できることになります。といえば聞こえは良いものの、苦境でもなければそんな”切り札”を切る必要はないわけで。
そして日本にどうしても原子力技術を捨てさせたい人たちの目的がこんな時によくわかりますね。
しかし、憲法上の自国民を駆り出したロシア、そのロシア軍朝鮮人兵を殺傷することになるウクライナ、韓国は両方ともに自国民の生命を侵害されることになるのですが、どうするつもりなんでしょね。立場は曲がりなりにもアメリカの同盟国で西側で。
ウクライナ戦争で、集団安全保障には確実な軍事同盟関係が不可欠なこと、また支援があっても武器の使用条件に制約がかかることも露見しました。そのため永世中立を謳うスイス製の武器が、有事の際にロクに使えないことになるとして、性能に関わらず取引に不安感が漂い始めたそうです。立ち位置も国情も曖昧なまま来ている韓国は、同様の不都合に加えて不信感まであり、北朝鮮よりもアジアの火種になりかねないような。
北朝鮮兵が3000人……
これって、「ロシア語をある程度理解できて」「外国の慣れない環境でも適応できる」
北朝鮮軍の精鋭なんですよね?上記の2つが成立していないのならロクに使い物に
ならないだろうし……
ロシア側だけじゃなく、北朝鮮もそんな精鋭を投入しちゃって大丈夫なのかな?
「ロシアの苦境」は、北朝鮮みたいなものに
頼らざるを得ない恥ずかしい状況は
まともな世界の観点からそのとおりなのですが、
しかし、ならず者同盟さんと
その支持者の観点からは
そうではないことを心配します。
日本の左翼方面が
まさに至高の家族愛の極地?(笑)
と絶賛した映画『万引き家族』は
映画の世界としてはそうですが
それを現実と混同して頑張ってしまっも
そんなの許されるはずも通るはずも
あらしまへん(笑)
それと同じで
ロシア北朝鮮のならず者同盟さんと
日本にも何故か居るその支持者の人達も
万引き成功すればいい!と同じように
よこしまに ロシア勝てばいい!?という
そんな主張は、己のリアル社会での
日頃の生きザマを見つめ直してから
考えて欲しいものだと考えます。
昔、日本の格差社会に絶望して「希望は戦争」と言った人がいますか、北朝鮮兵士のロシア派遣で(核戦争になるかは別にして)第三次世界大戦勃発することを待っている人が、いるのではないでしょうか。
もうすぐアメリカの大統領選挙があります。
トランプはロシアとウクライナの戦争をすぐにでもやめさせると言っています。
プーチンは、トランプが就任する前にウクライナに占領されたロシア領からウクライナ軍を追い出しておきたいのでしょうけど、ロシア軍にも余裕がありません。
そこで北朝鮮に援軍を頼んだのではと思いますが、金正恩にとってはロシアを自国の安全保障に引きずり込むまたとない機会であり、軍に実戦経験を積ませる良い機会でもあります。
北にとっては軍の派遣はメリットが大きいと思いますが、プーチンにしてみれば金正恩と一蓮托生の関係にもなりかねません。
プーチンもかなり苦しいところに追い込まれているようですので、西側としては支援をより一層強化して攻勢をかけるチャンスですが、バイデンの煮え切らない態度が問題ですね。
トランプが大統領になれば、局面は大きく変わるかも知れませんね。
ロシアに派遣された北朝鮮兵ですが、現場の評判は必ずしもよろしくないようですね。(まあそうだろうけど)
ウクライナが傍受したロシア軍兵士達の通信内容が報じられています。
「彼らをどうするの?」ロシア兵士、傍受された音声で北朝鮮新兵を非難するのを聞いた
https://edition.cnn.com/2024/10/25/europe/russian-soldiers-north-korean-recruits-intercepts-intl/index.html
>ロシア軍兵士たちは、「K大隊」というコードネームで呼ばれる来襲する北朝鮮兵士について軽蔑的に語り、ある時点で彼らを「クソ中国人」と呼んでいる。
記事後半にあり他でも報じられていますが、北朝鮮兵士の存在をプーチンは公式に否定しなかったそうです。
今までははぐらかしモードでしたが、今後はロシアは居直りモードに切り替わると思います。「北朝鮮兵士がいたら何が悪いんだ」
>クレムリンは当初、北朝鮮軍派遣の疑惑を否定していたが、木曜日のBRICS首脳会議でプーチン大統領は、北朝鮮が北朝鮮に兵士を派遣したことを否定しなかった。
私の妄想になりますが、ロシアが「脱北」に手を貸しているように見えるのですが、気のせいでしょうか。
もう一つ気になる事として「Kの法則」が発動する可能性です。
嘗て、産油国という強みを武器に、ソヴィエト連邦と一定の距離を置き、独自外交をしていたルーマニアのニコラエ・チャウシェスクが、1971年に東アジアの共産国(共産支那、北朝鮮)を訪問し、毛沢東思想、主体思想といった個人崇拝に感銘し、それを取り入れようとしました。
その中でも北朝鮮の主体思想については、ルーマニア語に翻訳させて、国内に普及させようとしていました。
その18年後の1989年、東欧諸国が「東欧革命」で一部の国を除き、穏和的に民主化を果たすなか、最後まで取り残されたルーマニアは「第二次ルーマニア革命」でチャウシェスク夫妻が処刑されるなど、血で血を洗う内戦となりました。
宇露戦争で北朝鮮が事実上ロシア側として参戦したともなれば、ウラジミール・プーチンもニコラエ・チャウシェスクと同じ末路を辿る可能性も出て来たと考えても良いのではないでしょうか。
北朝鮮と沿海州が絶望的な労働力不足によって荒廃していく危険に注意を払っておく必要があると考えます。中国がまるごとかっさらい領土に組み入れると、「attack surface」の面積が増して、日本海を挟んで本邦はにらみ合いをすることになります。