日銀利上げ後も意外と底堅い首都圏中古マンション市況
今年7月の日銀による利上げショックで、首都圏の8月の中古マンション市況は一時的に悪化しましたが、その続きが見えてきました。9月に入り、(地域による多少の差はあれ)だいたい不動産価格は上昇基調に戻っているのです。著者自身はどちらかというと日銀利上げは不動産市況などに悪影響を与える点を懸念しているクチですが、データだけで見れば、そこまで顕著な影響は生じていません。
首都圏の不動産市況
当ウェブサイトで最近、経済指標の一種として、密かに注目しているものがあるとすれば、それは不動産―――とりわけ、首都圏の中古マンション―――の価格です。
一般に株式や債券などの金融商品と異なり、不動産は流動性が低く、また、物件ごとの個別性も強いため、不動産取引価格の個別事例を調べたとしても、それを経済の尺度として一般化できるのか、といった議論はあると思います。
しかしその反面、これはあくまでも著者自身の私見ですが、首都圏(とくに東京都内)の場合、中古マンションは間取りや条件などが比較的「金太郎あめ」的な性質を持っており、取引価格という一面的な尺度で比較しやすいという便利さがあります。
しかも中古マンションの取引事例は成約だけで毎月数千件ありますので(うち東京都内に限定しても毎月1,000件超)、やはり、首都圏の不動産市況は経済の状況を把握するうえで、参考にして良い指標のひとつではないかと思うのです。
こうしたなか、首都圏の不動産価格を調べるうえで役に立つのが、公益財団法人東日本不動産流通機構が運営する『レインズ・タワー』というウェブサイトの『レインズデータライブラリー』のページにて毎月公表される詳細レポートです(※ただしPDFファイル形式であるため加工し辛いのが難点ですが…)。
案外値崩れしていない
これについて、著者自身は過去にさかのぼって同レポートの数値を表計算ソフトに入力し、地域ごと(首都圏、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県など)にグラフを抽出できるように加工しているのですが、首都圏全体に就いてグラフ化したものが次の図表1です。
図表1 中古マンション成約状況(首都圏)
(【出所】レインズデータをもとに作成。以下本稿において同じ)
この図表からは、首都圏全体の中古マンションの成約状況に関し、次の2点を指摘しておきたいと思います。
- 価格、平米単価ともに2013年頃から上昇し続けており(コロナ禍の2020年前後を除く)、その上昇速度はとくに2021年頃から加速気味である
- この傾向が破られ、2024年8月は単価、価格ともに急落したが、9月に関しては「続落」とはならなかった
経済ウォッチャーの方であれば、「2024年8月」でピンときた方も多いと思いますが、2024年7月末ごろに日銀が政策金利を引き上げたこと(TONA誘導目標を0.10%→0.25%に設定)の影響ではないでしょうか。利上げは不動産を取得するための借入コストを上昇させる(可能性がある)からです。
著者自身、不動産市況はこのまま悪化するのかどうか見極めたいと思っていたのですが、利上げショックから1ヵ月経過した2024年9月の市況に関しては価格が続落とならなかったことについては、少し意外な気がしています。もっと下がる(かもしれない)と思っていたからです。
考えてみれば、今回の利上げ幅も0.1%から0.25%へと15ベーシス・ポイント(1ベーシス・ポイントは0.01%ポイント)引き上げられたに過ぎず、1億円をTONA単利で運用したときの年金利に換算すれば、10万円から25万円に上昇したに過ぎません。
もちろん、先月の自民党総裁選でリフレ派に近い高市早苗氏ではなくタカ派に近い(とされる)石破茂氏が総裁に選ばれたことで、10月以降は不動産市況がさらに冷え込む可能性はあるかもしれませんが、少なくとも9月時点だと不動産価格急落の兆候は見えてこないのです。
東京都内に限定すれば堅調
しかも、東京都内に限定すれば、市況はさらに底堅く堅調に推移しており、日銀ショックの影響は薄らいでいます。平米単価こそ104.64万円と7月の106.91万円に比べれば若干下がっていますが、それでも日銀の利上げは誤差のひとつに過ぎないかにも見えるのです(図表2)。
図表2 中古マンション成約状況(東京都)
もちろん、同じ東京都内でも、地区によっていろいろ状況は異なるようです。
たとえば都心3区(千代田区、中央区、港区)だと利上げショックの影響が大きく出ているようですが(図表3)、城西地区(新宿区、渋谷区、杉並区、中野区)だと逆に平米単価だけで見たら史上最高値を更新している(図表4)のです。
図表3 中古マンション成約状況(東京都 都心3区(千代田区、中央区、港区))
図表4 中古マンション成約状況(東京都 城西地区 (新宿区、渋谷区、杉並区、中野区))
こうした状況を踏まえると、首都圏のなかでもとりわけ東京都内でマンションを買うことのハードルは非常に上昇しているのではないかと思わざるを得ません。多少の利上げでもマンション需要はあまり影響を受けていないように見受けられるからです。
郊外だと県により状況はさまざま
もっとも、東京の郊外に目を転じると、また状況は変わってきます。県により状況はさまざまです(図表5)。
たとえば埼玉県の場合、中古マンション価格は高止まり状態ではあるにせよ、ここ2~3年は顕著に価格が上昇しているようには見受けられません。
図表5-1 中古マンション成約状況(埼玉県)
また、千葉県だと価格は史上最高値を更新していますが、神奈川県だとむしろ半年ほど前の2024年2月頃をピークに中古マンション価格は下落に転じていたりもします。
図表5-2 中古マンション成約状況(千葉県)
図表5-3 中古マンション成約状況(神奈川県)
このあたり、同じ首都圏でも東京都とそれ以外の県では住宅の嗜好が違う(たとえば人々は中古マンションよりも新築マンションを好む/戸建てを好む、など)、といった可能性もあるのかもしれません。
いずれにせよ、あくまでも現時点の個人的感想を述べるならば、とくに投資目的による取得意欲も強いであろう東京都内の中古マンションの市況が(都心3区などを除いて)顕著に崩れている気配が見られないことは、日銀の利上げが実体経済にまだそこまで大きな影響を与えていない可能性を示唆します。
著者自身は現段階での日銀の追加利上げ(たとえば25bpsの追加利上げ)には反対の立場ではありますが、少なくとも不動産市況のデータだけで判断するならば、7月の利上げは一時的なショックをもたらしただけに留まっていると考えるのが自然な解釈ではないかと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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首都圏平均単価75.86万円/㎡は東京の104.64万円/㎡と東京以外3県の平均約48万円/㎡から来ているのだろう。東京の104.64万円/㎡は都心3区185.27万円/㎡と城西4区139.17とそれ以外の16区から来ているから、16区の平均は80万円/㎡くらいだろう。
都心3区はタワマンの多い中央、港が入っているためにただでさえ高い地域の単価が上がっているのだろう。提供されたデータには築年数が入っていないが、よくいわれているがことだが旧耐震基準の1981以前に建ったマンションは値を叩かれるらしい。
住宅価格は、基本は需要と供給で決まるが、需要は払える金額から計算した住宅ローン金額に影響される。したがって住宅ローン金利が上がれば払える金額、つまり借りられる金額が減り、需要が小さくなり価格は下がる。
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ハリスはカネを配ることしか頭にない。
トランプは働きたい人たちのために仕事を増やすと言っている。健全なのはどちらでしょうか。
大都市圏のマンション需要が底堅いのは、共働き夫婦が増えているからではないでしょうか?
専業主婦が一般的だったころは、郊外の一戸建て住宅の需要が中心だったように思います。
共働き夫婦が増えたのは、生活費を稼ぐためか自立した女性が増えた事に因るものなのかどちらなのでしょうかね?