発行枚数が最盛期の4分の1に激減…年賀はがきの未来
日本郵政が8月30日に発表したプレス・リリースによると、2025年向け年賀はがきの当初発行枚数が10.7億枚と、前年と比べて3.7億枚も削減されることが明らかになりました。減少率でいえば25%近い削減で、ピーク時の2004年の44.5億枚と比べて4分の1という水準です。当ウェブサイトでは昨年、「このままのペースでの減少が続けば、最速で2030年代に年賀状が消滅する(かも)」と述べましたが、この「最速で2030年代」については撤回し、「最速で2020年代には」に訂正したいと思います。
目次
昨年の予想は「最速で2030年代に年賀はがき消滅」
昨年の『発行枚数が最盛期から3分の1に激減した年賀状の将来』では、2024年用の年賀状の当初発行枚数が14.4億枚と、最盛期(2004年用の44.5億枚)と比べて3分の1以下に減り、このままだと最速で2030年代にも年賀はがきが消滅する(かも)、とする話題を取り上げました。
その際に、こんなグラフ(図表1)を掲載したのを覚えている、という方もいらっしゃるでしょう。
図表1 年賀はがき発行枚数がゼロになるまでの予想年数
(【出所】日本郵便ウェブサイト・過年度プレスリリース等をもとに作成。ただし、予想①は2024年の枚数が毎年2億枚ずつ減少するとした場合、予想②は2024年の枚数が毎年1.5億枚ずつ減少するとした場合)
年賀状の当初発行枚数は2004年向けでピークを付け、その後は多少のリバウンドもあったにせよ、2012年向け以降、2024年向けまで13年連続で落ち込んでおり、この期間の平均の落ち込みの平均値は1.7億枚でした。
したがって、グラフでは「①今後、毎年2億枚ずつ減る」、「②今後、毎年1.5億枚ずつ減る」という2つの予想を立ててグラフ化した結果、予想②だと2033年に、予想①だとそれよりも前倒しで2031年に、それぞれ年賀はがきの発行が終わってしまう(かも)、という仮説を示しているのです。
新聞部数は激減している
この予測が正しいかどうかについては、わかりません。
それに、「毎年2億枚ずつ発行枚数が減り続ける」というのは予測としては雑過ぎる、という批判もあるでしょうし、「統計には見えてこない『年賀はがきの根強い愛好家』はいるはずだから、年賀はがきの発行枚数がゼロになるというのはさすがに非現実的だ」、といった見立てもあり得るかもしれません。
ただ、少なくとも昨年までの統計数値で見ている限りは、現実に減少が続いていて、この減少速度がいきなりゼロになるというのは考え辛いところです。
これに加えて私たちの身の回りから、「紙媒体」が急速に姿を消しているという事実も見過ごせません。
たとえば、一般社団法人日本新聞協会の最新データに基づけば、新聞の部数は2023年10月時点で3305万部と、1996年のピーク時の部数(7271万部)と比べて半分以下に減っています(図表2、あるいは『データで見る「新聞部数放物線」』等参照)。
図表2 新聞部数の推移
(【出所】一般社団法人日本新聞協会データ【1999年以前に関しては『日本新聞年鑑2024年』、2000年以降に関しては『新聞の発行部数と世帯数の推移』をもとに作成。なお、「合計部数」は朝夕刊セット部数を1部ではなく2部とカウントすることで求めている)
また、新聞業界と並び、紙媒体の「雄」だったはずの雑誌でさえ、ここ数年は事実上の廃刊が相次いでいますし、最近だと多くのコンビニから撤去されてしまいかねないという懸念も生じている(『苦境の新聞業界に「コンビニ雑誌配送問題」の影響は?』)など、雑誌業界も売上の低迷に、かなり苦戦しているようです。
ペーパーレス化を目指す企業社会の動向
ただ、紙媒体の苦戦は、これらだけではありません。
また、私たちの日常生活でも、LINEやiMessage、メールなど、電子的なメッセージのやり取りが多く、とくにコロナ禍でリモートワークを経験した人たちのなかにはは、ZoomやWebExといったウェブ会議システムの便利さに、すっかり慣れてしまったというケースも多いでしょう。
(個人的にはウェブ会議システム、相手先の通信環境次第で音声がブチブチ切れてしまうなど、まだまだ改善の余地はあると思いますが、この点は今後の課題、といったところでしょうか)。
さらに無視できないのは、企業社会の動向です。
いわゆる「電帳法」―――電子帳簿等保存法―――に基づき、たとえば税務関係の帳簿書類については紙ではなくデータで保存することが可能となったほか、税務などの申告は多くの場合、紙ではなくデータ(e-TaxやeLTAXなど)で行うことが一般化しつつあります。
最近だと、経理業界では「デジタルインボイス」、すなわちいわゆるPeppolの日本版の普及に向けた取り組みが知られており、使い勝手等にはまだまだ改善の余地はあるにせよ、将来的には企業間で、紙媒体による請求書や領収書などが削減されていくことが予想されます。
さらに、とりわけ日本の企業社会というものは、いったん一方向に舵を切ると、それまでの慣習などをわりと簡単に捨て去ることも多く(※著者私見)、企業間でやり取りされている年賀はがきも、「SDGs」の観点から、例年、削減される方向にあります(※この点は著者自身もビジネスマンとして痛感しています)。
そうなると、手紙・はがき・新聞といった「書面を郵便等で送付・配達する行為」そのものが、社会の主流ではなくなっていくであろうと予想され、こうした観点からは、郵便はがきも継続的に減少するであろうとするのが当ウェブサイトなりに得た現時点における仮説、というわけです。
(※余談ですが、個人的に手紙、はがきが敬遠されるようになりつつある地味な理由は、コンビニなどで切手・はがきを買い求める際、電子マネーやクレジットカードといったキャッシュレス決済がいまだに利用できないことなどもあるとは思っています。本質的な問題ではないかもしれませんが…。)
今年版のプレス・リリースではなんと「最盛期の4分の1」に!
では、この「年賀はがきは早ければ2031年に消滅する」、といった仮説は、どの程度正しいのでしょうか。
最近、当ウェブサイトではなかば毎年夏から秋にかけての「恒例行事」となった感がありますが、日本郵便は今年も、来年用の年賀はがきに関するプレス・リリースを公表しています。
2025(令和7)年用年賀はがきなどの発行および販売
―――2024/08/30付 日本郵便株式会社ウェブサイトより
このプレス・リリースで、仮説を検証してみましょう。
同プレスリリースの5ページ目によると、今年発行される(つまり来年用の)年賀はがきの当初発行枚数は10.7億枚と、なんと昨年度と比べて3.7億枚削減されます(減少率でいえば25%を超えます)。最盛期の2004年向けと比べると、じつに4分の1です(図表3)。
図表3 年賀はがき当初発行枚数実績
(【出所】日本郵便ウェブサイト・過年度プレスリリース等をもとに作成)
これは、なかなかに大きな落ち込みです。
もちろん、これには今年10月1日に予定されている郵便料金の値上げという要因も大きいでしょう。
この値上げにより、はがきは1枚63円から85円に引き上げられることになります。
また、最近だと年賀はがきだけでなく「年賀切手」も販売されているため、「はがきの発行枚数が激減している」からといって、単純に「年賀はがきが近々消滅する」、という話は、議論としては多少、乱暴です。
昨年の予想は撤回します
ただ、こうした特殊要因はあるにせよ、昨年、当ウェブサイトにて示した「年賀状消滅の時期」が早まったことは間違いありません。すでにグラフの傾きが大きく変化したからです。
ちなみに図表1で示した昨年時点のグラフを少し書き換えて、2024年から2025年にかけての減少が続けば、図表4で示す通り、年賀はがきは2028年に発行枚数がゼロになるという計算結果が出てきます。
図表4 年賀はがき当初発行枚数(実績+予想)
(【出所】日本郵便ウェブサイト・過年度プレスリリース等をもとに作成。ただし、予想①は2024年の枚数が毎年2億枚ずつ減少するとした場合、予想②は2024年の枚数が毎年1.5億枚ずつ減少するとした場合、予想③は2025年の枚数が毎年3.7億枚ずつ減るとした場合)
つまり、今年版のデータをアップデートすると、下手をすれば2020年代にも、年賀はがきが消滅してしまう、という結果が出てきます。
よって、昨年示した、「最速だと2030年代に、年賀はがきが消滅してしまう(かも)」、とする仮説については、ここに謹んで撤回させていただき、これに代わって次の仮説を提示したいと思います。
「最速だと2020年代に、年賀はがきが消滅してしまう(かも)」。
この点、個人的に、さすがにここまでの急速な変化があるのかどうかについては半信半疑です。やはり、年賀はがき愛好家は世の中に多いと思うからです。
たとえば地元にご両親を残し、東京・大阪などの都会で働き、暮らしている人などであれば、お子さんが「田舎のおじいちゃん、おばあちゃん」に年賀はがきを出す、といった需要もあるはずです(とはいえ昨今はFaceTimeなどでの通話も可能ですので、年賀はがきに対する需要がそこまで根強いかは微妙ですが…)。
また、著者自身のように、「本当の旧友とは年に1回くらい、せめて手紙で安否を確認し合うくらいのことをやっても良いのではないか」、などと考えている人間にとっては、じつは元日に送られてくる年賀はがきが密かに楽しみだったりもします。
こうした点も踏まえるならば、年賀はがきは、早ければ2020年代半ばには発行枚数が激減するものの、その後は細々と続いていくような気もします。
どちらの予測が正しいかはわかりませんが、「紙媒体の現状」という観点からは、年賀はがきウォッチングについてはもう少し続けてみても良いかもしれない、などと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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「年賀はがきがなくなったら、雇用が減少する」と言う人が、でてくるのでしょうか。
年末年始のアルバイトといえば年賀状の仕分けと配達でしたが、近年はどのくらい募集しているのでしょう….地味に「高校生・大学生の短期バイト先が減っている」は有るかも知れません。
>2024年用の年賀状の当初発行枚数が14.4億枚と、最盛期(2004年用の44.5億枚)と比べて3分の1以下に減り
要するに20年で3分の1。
もっとすごいのがある。2008年から2023年の15年で6分の1に減少。
「週刊テレビガイド」の発行部数。2008年は51万部。2023年は9万部。
テレビに1週間分の番組表が内蔵されているのに、しかもそこから録画できるのに誰が買うんだろう。
地デジ初期の番組表が内蔵されてないモデルを使ってるご年配、とか?
ご年配の方ですと、毎月五千円位払って番組表と広告とその他の文字写真が印刷された紙が毎日届くサブスクを利用しているような気が….
「○歳を機に、本年を以て賀状を差し上げるのを取りやめることにいたします」
この頃、こんな賀状を頂くことがしばしばあります。
年取るほどに、まだ生きてるぞ(惚けてないぞ)とアピールする必要は増すと思うんだが(笑)。
以前、職場同僚の配偶者が郵便局勤めでした。
で、その同僚が年末近くに年賀状を個人や会社に売ってました。
郵便局の領収書(レシート)付きでした。
私も購入を頼まれましたが
「既に今までお付き合いのある郵便局で毎年購入しているので遠慮します。」と
断りました。
普段でも未使用の年賀状を厚さ10センチ以上で持ってて
私用ロッカーに入れていて、私に見せてくれたものです。
「普段使う葉書、切手があったら、用立て(同僚が手数料自腹切りつつ交換)あすよ。」
ゆうパックのちらしも一杯、渡されました。
配偶者の方が年賀状やゆうパックのノルマがあって
その手伝いをしてた模様です。
年賀状発行枚数の内、どれだけが本当に使用されていたのでしょうか。