高市氏「なぜ日テレは自民党党員名簿を持っているの」

日本テレビの番組で司会者が「自民党員への調査の結果、高市早苗氏の支持率は3位だ」とする旨の指摘を行ったところ、高市氏は「そもそもなんで党員名簿日テレさんが持ってはるんですやろ」と述べました。たしかにこれは奇妙です。日テレの番組では、「世論調査で自民党員と答えた人に聞きました」などと述べているのですが、これだとRDD方式で1,019人の自民党員から回答を得るためには10万人以上から回答を得る必要があるからです。

ツッコミどころだらけの日テレの番組

自民党総裁選に立候補している高市早苗氏は9月9日放送のBS日テレの番組『深層NEWS』に出演しました。その内容については、下記動画で確認することができます。

番組サブタイトルに『冒頭1時間しゃべりっぱなし決意表明』などとする文言が含まれている時点で、かなりのバイアスがかかっている気がしてなりませんが、本稿の主題は、そこではありません。司会者と高市氏の間でなされた、こんなやり取りです。

(司会)「日本テレビが全国の有権者のうち、自民党党員・党友と答えた1,019人を対象に独自の電話調査を行ったところ、総裁選で誰を支持するかの質問で、高市さんは17%で3位。2位の小泉進次郎氏と1ポイント差というようなスコアがあることがわかりました<後略>」

(高市)「<略>」

(司会)「ただこの3番手で1ポイント差ということになりますと、やはり決戦投票に残る可能性が高い候補ということで、議員からも、そして党員からも認知されるデータではあると思うんですね。ま、こういったところは何か訴えていく中でどういうふうなメッセージになるでしょうか?

(高市)「うん、いや、そもそもなんで党員名簿日テレさんが持ってはるんですやろ

(司会)「ま…、独自の取材をしているというところでございますけれども<後略>」

…。

自民党員が約105万人、有権者が約1億500万人だとすれば…?

何だか、よくわかりません。

日テレの司会者が痛いところを突かれ、「独自の取材を…」云々と述べ、むにゃむにゃ言葉を濁しているわけですが、高市氏の指摘通り、たしかに「なぜ日テレが自民党の党員名簿を持っているのか」は謎です。

なお、これに関しては動画のなかで、「自分が自民党党員・党友だと答えた人に尋ねた」、といった説明も出てくるのですが、この言い分についても、なんだかよくわかりません。

日テレがランダムに電話をかけて世論調査を実施したとして、1,019人の自民党員から回答を得たのだとすると、日テレはいったい何件、電話を掛けたのか、という疑問が浮かぶからです。

たとえば、日経電子版が3月に報じた次の記事によると、自民党の党員は2023年末時点で109万人だったそうです。

自民党員数3万3600人減、23年末で109万人に

―――2024年3月12日 12:16 付 日本経済新聞電子版

「政治とカネ」の問題もあってか、自民党の党員数はその後も変動している可能性はありますが、ここではとりあえずざっくりと、「自民党員は105万人」だったと仮定しましょう。

一方、総務省が公表している『選挙関連資料』によると、直近の大型国政選挙である2022年7月の参議院議員通常選挙では、有権者数は105,019,203人だったとされています。

ということは、自民党員が全有権者に占める割合は1%前後であると推定できます。

やっぱり名簿かリストがあったのでは?

したがって、日テレの説明を信頼するならば、1,019人の自民党党員から回答を得るためには、逆算して10万人前後から回答を得なければならない、ということであり、世論調査の回答率を50%以下と仮定すれば、日テレは20万人以上に電話を掛けたことになります。

このあたり、日テレ以外のいくつかのメディア(新聞社、テレビ局、通信社)の世論調査を眺めてみると、世論調査の多くは2~3日の期間をかけ、数千人を対象に実施され、有効回答数は1,000~2,000件程度、といったものが多いのですが、さすがに「20万人以上を対象にした調査」はあまり目にしたことがありません。

常識的に考えて、(「調査結果自体が捏造」、という可能性を除けば、)日テレが何らかの手段で入手した自民党の党員名簿(あるいは党員電話番号リストなど)を持っていて、その名簿ないしリストをもとにダイヤルした、と考えるのが自然な発想でしょう。

なお、あえて日テレの弁護をしておくならば、その名簿ないしリストは、正当な手段で入手することもできなくはありません。過去からの世論調査で、「あなたは自民党員ですか?」という調査項目に「はい」と答えた人をストックしておけば良いだけの話だからです。

先ほどの試算が正しければ、RDD方式により実施した世論調査で、1回2,000件の回答を得れば、理屈の上ではそのうちの20人が「私は自民党員だ」と答えるはずであり、このような調査を50回繰り返せば、1,000人分の自民党党員の電話番号リストが出来上がります。

日テレがそのような方法で党員電話番号リストを作成しているのだとすれば、そのように説明すれば済む話でしょう(といっても、この仮説にもかなりの無理があるとは思いますが…)。

いずれにせよ、メディア報道などで「数値」を目にしたら必ず「割合」を、「割合」を目にしたら必ず「数値」を、セットで確認することを、強く推奨させていただく次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. KN より:

    なるほど、この1019人には、独自の調査によって必ず回答してくれるリピーターか相当数含まれるということでしょうか。でないと効率が悪すぎますもんね。調査に回答しない層との意見が同じとは限りませんし。世論調査のカラクリを突いたつぶやきはナイスでした。

  2. 農民 より:

     シンパを自民党員にさせれば、20万電凸や名簿の不正取得などせずとも済むどころか、意のままに”自民党員の意見”を作れますね。

    1. 引きこもり中年 より:

      マスゴミは、取材のために社員を自民党党員にしている、ということですね。

  3. 引きこもり中年 より:

    毎度、ばかばかしいお話しを。
    日テレ:「自民党党員リストを、中国からもらった」
    せめて、共産党からもらったことに、してくれって。それも、まずいか。

  4. 元雑用係 より:

    すみません、調査法への疑義ではなく中身の数字関連で・・・

    同じ日テレの9/13(昨日)報道の数字がありました。
    対象数は1022人だそうで。前回と極めて近いですね。(笑)

    https://news.ntv.co.jp/category/politics/4cfe38110059450db5d0484a4a30e259/image?p=2
    石破25%↓3p、高市22%↑5p、小泉19%↑1p。
    論戦は党員の投票意向に影響を与えている、ということでしょうかね。
    政策を見ているのでしょうかね。

    9人の”論戦”をいくつか動画で見ましたが、ある候補の政策を、素人のマスコミが評価するのではなく政策の専門家たる候補者が評価するってところが、視聴者には有意義なのだろうなぁと思いました。

    ところで、石破小泉の数値が高いのは、普段から疑わしいと思っていた一般向け世論調査と同じ傾向ということになります。田崎史朗氏はある番組でこの数字に違和感がないとした上で、小石は地方行脚が多く党員と一緒に写真を撮ったりと、精力的にサービスしている、と述べていました。ここまでの数字を出せるなら、生存戦略としてバカにできないと思いました。
    “論戦”によりそれがどのように変化するのか、とても関心があります。

    前回の総裁選時の日経記事。
    https://www.nikkei.com/telling/DGXZTS00000290X10C21A9000000/
    党員の構成要素を示唆する記述は、「職域が3割で減少傾向」とだけあります。
    91年以降の党員グラフでは最後の政権交代を境に減少が増加に転じています。
    減少時期に党員だった人々と、増加時期に入党した人々の属性はかなり違うのではないかという気がしています。

    日テレの調査法は怪しいですけど、個人的には是非とも同じ方法で継続調査してもらいたいです。(笑)

    1. 伊江太 より:

      元雑用係様

      いつも不思議に思うのですが、なんで「自民党員」を対象とすると銘打った調査で、いつも石破氏がダントツのトップなんて結果が出るんだろう。妙に評論家然として普段はしゃべっているが、いざ具体的政策を述べるとなると、それほど保守層向けに受けそうなこと言うわけではないように思えるんですがね。

      こまめに地方行脚はやってるようだから、ひょっとして、こんな地方にまで脚を伸してくれたんだから、その義理もあるよね、なんてのが相当の割合を占めているのでは(笑)。

      1. 元雑用係 より:

        情報が少なくて今ひとつ腑に落ちないのですけど、

        >こんな地方にまで脚を伸してくれたんだから、その義理もあるよね

        或いは、自民党員というと保守のイメージですが、自民党員の中にも新聞テレビ経由の意識高い系の政策(選択的夫婦別姓とかLGBTQとか)に弱い人々が一定数いるのでは、とか。
        主流派が拾わないような動機薄弱な党員の意向(かつマスコミ受けもいい)を拾って集めていたら今のI氏が出来上がった。
        でもその党員たちが、いざ総裁選の論戦を目にすると「やっぱおかしいな」と気づいてしまった。なんてこと「かも」しれないと思ったり。(笑)

    2. ムッシュ林 より:

      電話に出て世論調査に回答する時間的余裕がある老人が答えるから、石破が人気になるのではと考えることもできますが、そもそも石破さん、この数年、役職にもつけず表舞台から消えて評論家みたいに呟くだけで存在感など全くないのになぜ自民党員の中で人気になるのか不思議でたまりません。主張も自民党よりも立憲民主党支持者が好むようなものばかりですし。
      いずれマスコミの世論調査の嘘がバレて大恥かくだけな気がします。

  5. 匿名 より:

    なんでもってはるんでっしゃろ
    なんでだろう なんでだろう なんでだなんでだろう

  6. クロワッサン より:

    >ま…、独自の取材をしているというところでございますけれども

    選挙事の出口調査アンケートの結果を流用しているとか?

    独自とは言ってても合法違法には触れないところ、叩けば埃が出てきそうですね。

  7. 同業者 より:

    自民党のフィクサー ナベツネには渡してしまうんでしょうかね。

  8. Sky より:

    リンクを貼っていただいた番組、今しがた視ていました。
    余程ひねくれた性格の視聴者でない限り、高市さんに好印象を持っただろうなぁ。という感想。
    NTV、ボロは隠せなかったがGood Job。

  9. んん より:

    報道に自由がありませんので
    「上から3位と言っとけ」と指示されましてん

  10. 元日本共産党員名無し より:

    元政党人であった私としては、信じられないお話です。確かに高市氏や新宿会計士さんの言う通り、何故自民党員名簿を入手して居るのか?
    これ、「日本共産党員名簿」に置き換えたら、公安調査庁以上の諜報力です。過去に「自民党員です」と申告した回答者をストックしておくなどと言う話も戦慄を覚えます。何故なら「その時その場のアンケート以外の目的でアンケート結果を保管し、利用した」事になるからです。
    アメリカみたいな共和党民主党に2分されただけのカテゴリーの国だとしても外国の代弁人は居るしそれは表向き表明されたその二党党員とは実質違うからです。

  11. はるちゃん より:

    「個人の思想信条に関する情報を報道機関が握っている。」
    これって左翼さんが激怒すべき事態ではないでしょうか?
    あるいは、仲間がやっていることは正しい事なのでしょうか?
    左翼さんの本質がよく分かりますね。

  12. 普段はROM男 より:

    咄嗟にこの様な返しができるのが高市さんの凄さの一つだと思います。

    「すごいですねえー」ニコニコ

    の含みも恐ろしさすら感じます。
    私は高市さんを応援したいです。

  13. F6F より:

    久しぶりに投稿します。
    名古屋の候補者演説会、行ってきました。

    空港並みのチェックもそうですが、久屋大通には大勢の警察官が早くから出張っていて、奈良県警がこの100分の1でもまともな警備をしていれば、あの悲劇は防げたのに…と言うのが第一印象です。

    上で皆さんが疑問視されている石破氏の支持率ですが、私の印象では彼の演説が一番上手(中身はともかくとして)でした。エネルギッシュさは微塵もありませんが、人を引き込む話法には一日の長があったように思います。
    ああした演説を至る所で繰り広げれば、自然と支持が広がっていくのもむべなるかな、と思います。

    私は支持しませんが。

    1. 舎人 より:

      総裁選挙5度目の挑戦となるI氏の構文がX上で好評です。

      最後まで決して質問への回答はせず、口調はゆっくり、詩を朗読するようにがコツだそうだ。

      それはどうあるべきなのか…
      それがどういう意味なのか…
      ほんとうにそれでいいのか…
      それがどういう影響を及ぼすのか…
      みんなが 
      「それはどういうことなの?」
      「それっておかしいよね?」
      「それはこうあるべきだよね?」 
      と、疑問を持たれないか…

      みんなが納得するまで説明責任を果たしているのだろうか…
      それを自問自答し、そしてなお努力をし、議論していかなければならない…
      「ねばならない」に代表される石破ネバネバ構文に注目

      1. F6F より:

        舎人さん

        ご返信、ありがとうございます。
        ネバネバ構文、言い得て妙ですね。

        ただ直に聞くと、その中身と言うよりもリズムや口調と言うのですかね、じっくりと聞かせるようにゆっくりとしゃべる話法って、結構引き込むものがあるんです。
        (繰り返しますが、内容は別です)

        他の候補者がどちらかと言えば声を張り上げていたのと一線を画していたから、余計にそう感じたのかもしれません。

  14. CRUSH より:

    そもそも、メディアは、
    「おれたちは特別」
    「法には囚われない」
    と考えている節がありますね。

    正義の成就のためには不法や不当は正当化される、みたいな理屈なのかな。
    もう、ガチテロリストの一歩手前くらいのメンタルですな。

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