「西側諸国の誤算でドル覇権終了」→議論が飛躍しすぎ

ロシア経済はそれなりに順調に見えます。一説によると5四半期連続でGDPはプラス成長だったのだそうです。そもそもGDPというものは「穴を掘って埋める」だけでもGDPは伸びるものだ、という点はさておき、一見すると好調なロシア経済。ただ、そうだからといって、ウクライナ戦争を契機にBRICSのドル使用がなくなり、ドル覇権が終了する、などと考えるのには、かなりの論理の飛躍があります。

ロシア経済は(見た目は)順調

どうやら、ロシア経済が順調であるようです。

2022年2月にロシアが始めたウクライナ戦争の影響で、ロシアは現在、主要西側諸国からかなり厳格な経済制裁を喰らっており、ロシア自身が金融システムから排除されているだけでなく、さまざまな輸出統制の影響もあり、産業用の資材などが手に入らなくなっているはずです。

それなのに、ロシアでは経済成長が続いているようです。

一部報道によるとロシアの2024年第2四半期(4-6月期)のGDP(速報値)は前年と比べ4%となるなど、「5四半期連続のプラス成長」などとしています。

ロシアの経済統計をそのまま信頼するのか、という問題はあるにせよ、「厳格な経済制裁を喰らっているはずなのに、プラス成長が続いているのは変じゃないか」、といった疑問が頭をもたげてくることも事実でしょう。

BRICSのシェアは今や世界の4分の1に!

しかも、かつてと異なり、西側諸国だけで世界のGDPの圧倒的多数を占めていた時代は終焉を迎えつつあります。

名目GDP(2023年、ドル表示)で見てみると、G7諸国の合計は46兆7958億ドルで世界の44.38%を占めていますが、「BRICS」、つまりブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5ヵ国については合計25兆9176億ドルと、全世界のGDPのざっと4分の1を占めるまでになりました(図表1)。

図表1 世界のGDP(2023年、名目、ドル建て)
国・地域名目GDPシェア
全世界105兆4350億ドル100.00%
 うち、G7諸国46兆7958億ドル44.38%
  米国27兆3609億ドル(1位)25.95%
  ドイツ4兆4561億ドル(3位)4.23%
  日本4兆2129億ドル(4位)4.00%
  英国3兆3400億ドル(6位)3.17%
  フランス3兆0309億ドル(7位)2.87%
  イタリア2兆2549億ドル(8位)2.14%
  カナダ2兆1401億ドル(10位)2.03%
 うち、BRICS諸国25兆9176億ドル24.58%
  中国17兆7948億ドル(2位)16.88%
  インド3兆5499億ドル(5位)3.37%
  ロシア2兆0214億ドル(11位)1.92%
  ブラジル2兆1737億ドル(9位)2.06%
  南アフリカ3778億ドル(40位)0.36%

(【出所】World Bank Open Dataをもとに作成)

とりわけ中国のGDPの伸びが顕著ですが、インド、ロシア、ブラジルなども経済成長が続いており、とくにブラジルとカナダはすでに昨年の時点でGDPが逆転してしまっています。

このように考えていくと、ロシアに対する経済制裁にBRICS諸国が協力していないことで、西側諸国の経済制裁の効力が弱められていることは間違いありません。

実際、ロシアが産出するエネルギー資源(LNGや石油、石炭など)については、西側諸国ではなく、インド、UAEなどに大量に輸出されているとする報道などもありますし、ロシアとしては国内に資源・産業などが豊富であるだけでなく、引き続き外貨を獲得することで、さまざまな軍需物資を調達しているのが現状でしょう。

デイリー新潮「人民元決済急上昇でドルの危機も」

こうしたなかで、ウェブ評論サイト『デイリー新潮』が12日、こんな記事を配信しました。

ロシア「GDP」は連続プラス成長、中国との「人民元決済」急上昇でドルの危機も…ウクライナ戦争、西側諸国の“大誤算”

―――2024/09/12 06:00付 Yahoo!ニュースより【デイリー新潮配信】

記事を執筆したのは、経済産業研究所コンサルティングフェローの方ですが、表題でもわかる通り、ロシアの経済は5四半期プラス成長を続けており、それどころか人民元決済が増大することで、むしろ米ドルの覇権が揺らぐリスクすら出て来ている、という主張です。

西側諸国の誤算はこれにとどまらない」。

ウクライナ戦争勃発直後、西側諸国はロシアの対外資産の全面凍結やエネルギー輸出の封殺など、前例のない厳しい制裁を科した。だが、ロシアの国内総生産(GDP)の成長率は西側諸国よりも高い伸びを示している」。

その理由として、記事で指摘するのは、戦時経済体制に移行したことにより、遊休化していた工場施設が空前の活況を呈するなどの経済活性化効果です。

この記事の著者によると、「戦闘」(※原文ママ)が長期化することで人手不足が深刻になりつつあり、また、インフレ率も高水準だとしつつも、「それでも当分の間、ロシアの継戦能力に支障が生ずる可能性は低いだろう」としたうえで、こう述べます。

西側メディアは『ロシアは孤立を深めている』と喧伝しているが、その実態はまったく逆のように思えてならない。その最たる例がBRICSの拡大だ」。

なんでも、この記事によると、BRICSの台頭は「基軸通貨ドルの危機」だそうです。

BRICSは今年からイラン、エジプト、UAE、エチオピアの4ヵ国が加わり9ヵ国体制となったのだそうですが、これに加えてタイ、マレーシア、アゼルバイジャンが相次いで加盟を申請。NATO加盟国であるトルコも加盟に向けた手続きを振興中、などとしています。

正直、数だけが多くてもなにか意味があるのか、よくわかりませんが、この点はとりあえず脇に置きましょう。

記事ではBRICS加盟申請ラッシュが続いている背景に、「西側諸国の求心力低下があると言わざるを得ない」としたうえで、「脱ドル化」が進んでいると主張するのです。

具体的には、昨年8月のBRICSサミットで「脱ドル化」を協議した加盟国間で、自国通貨による決済が増えていると指摘。とりわけロシア・中国の間で人民元決済の比率が急上昇しており、「基軸通貨ドルの優位性が失われつつあるとの見方が出ている」、と述べているのです。

これが、「米ドルの基軸通貨としての地位喪失」、という論点でしょう。

事実①米ドル決済のシェアはむしろ増えている

大変申し訳ないのですが、ちょっとこの記述については、議論がちょっと飛躍しすぎています。

国際的な決済システムを運営しているSWIFTのデータによると、米ドルの「地位」は、むしろ上昇しているからです。

SWIFTがほぼ毎月公表している『RMBトラッカー』というレポートには、前月の国際送金に使用された通貨のシェアとランキングが掲載されています。

これは、顧客が送金人となる取引や銀行間の送金取引において使用された通貨を上位順に20件列挙するもので、現時点で手に入る最新の2024年7月のデータによれば、ユーロ圏を含めた国際送金、ユーロ圏を除外した国際送金の双方で、米ドルがトップであることがわかります(図表2)。

図表2 2024年7月時点の決済通貨シェアとランキング(左がユーロ圏込み、右がユーロ圏除外、カッコ内は12ヵ月前からの順位変動)

(【出所】SWIFT『RMBトラッカー』データをもとに作成。黄色はG7通貨、青色はG20通貨)

しかも、国際送金において米ドルが占めるシェアは、とりわけ非ユーロ圏において顕著に上昇しています。2023年6月に42.4%だった米ドルの国際送金シェアは、その翌月の23年7月に、突如、59.2%にジャンプし、それ以降、6割弱を保っているのです(図表3)。

図表3 国際送金における米ドル(USD)のシェア

(【出所】SWIFTの『RMBトラッカー』の過去レポートに掲載された国際送金ランキングデータををもとに作成)

BRICS諸国はいずれも「ユーロ圏外」の諸国ですので、もしも米ドルの基軸通貨体制が揺らいでいるというのであれば、昨年7月以降、1年以上、ユーロ圏外における米ドルの決済通貨シェアが6割弱を維持していることの説明が付きません。

しかも、人民元の決済シェアは、なぜかユーロ圏を含めたものではドル、ユーロ、英ポンドに続いて4位なのですが、ユーロ圏を除外したデータでは、ドル、ユーロ、日本円、英ポンドに続き5位です。

BRICSにおける人民元決済比率が上昇しているというのなら、なぜ、人民元がドルどころか日本円にも敗けているというのでしょうか?

事実②外貨準備の世界では、米ドルの割合は6割弱である

もうひとつ、重要な事実を指摘しておきましょう。外貨準備の世界では、米ドルの地位は(徐々に低下しているとはいえ)依然として6割弱を保っているのです。国際通貨基金(IMF)が公表している『COFER』と呼ばれる統計を読めば、そのことがよくわかります。

COFERは、正式には “Currency Composition of Official Foreign Exchange Reserves” と呼ばれる統計で、意訳すれば『外貨準備通貨構成統計』といったところです(ただし、財務省や日銀などによる公式訳は見当たらないため、当ウェブサイトではそのまま『COFER』と呼ぶことが多いです)。

COFERの意義は、これを読めば、各国の通貨当局が保有している外貨準備資産の通貨別構成がわかる、という点にあります。

もちろん、国ごとに通貨別構成を示した統計は存在しないのですが(IMFによると、各国の通貨構成データは一般公開されない厳密な機密情報なのだそうです)、COFERを読めば、IMFへの報告国の外貨準備における、トータルの通貨別構成については判明します。

直近、つまり2024年3月末時点のデータで見ると、IMFに報告された外貨準備高(12兆3499億ドル)のうち、通貨別構成内訳が判明している金額が11兆4974億ドルで、このうちの58.85%にあたる6兆7668億ドルが、米ドルでした(図表4)。

図表4 世界の外貨準備高の通貨別構成(2024年3月末時点)
通貨金額Aに対する割合
内訳判明分(A)11兆4974億ドル100.00%
 うち米ドル6兆7668億ドル58.85%
 うちユーロ2兆2634億ドル19.69%
 うち日本円6541億ドル5.69%
 うち英ポンド5622億ドル4.89%
 うち加ドル2952億ドル2.57%
 うち豪ドル2484億ドル2.16%
 うち人民元2469億ドル2.15%
 うちスイスフラン223億ドル0.19%
 うちその他通貨4381億ドル3.81%
内訳不明分(B)8525億ドル
(A)+(B)12兆3499億ドル

(【出所】International Monetary Fund, Currency Composition of Official Foreign Exchange Reserves データをもとに作成)

密かに日本円の割合が徐々に上昇していることもさることながら、人民元の外貨準備に占める金額、シェアがともに低下しているというのも興味深いところです。いったいこれのどこが、「人民元のシェアが上昇している」ことの証拠になるのでしょうか?

謎です。

サプライチェーンの影響は長期的に生じる

この点、「SWIFTを使用しない国際送金が増えているに違いない」、「IMFに報告していない外貨準備がほかにもあるに違いない」、などとおっしゃるのであれば、そのように主張なされば良いと思います。

ただ、数値も出さずに「米ドル覇権が終了するの!」「覇権が終了するといったら終了するの!!」などと主張なさったところで、そうした主張が説得力を伴っているのかについては疑問です。

また、百歩譲って米ドル覇権が終了するにしても、ガチガチに資本統制・管理され、国際的な決済・資本・投資取引に不向きな人民元ではなく、米ドルと同等の使い勝手の良い通貨(具体的にはユーロ、英ポンド、日本円など)のシェアが増えると考えるのが自然な発想でしょう。

この場合、「米ドル基軸通貨体制」が終焉したとしても、それが「G7基軸通貨体制」に移行するだけの話ではないでしょうか。

なお、改めて「『戦闘』の長期化にもかかわらず、ロシアのGDPが伸びている」とする命題について考えてみると、これが「西側諸国の経済制裁が無意味である」、「西側諸国の誤算である」、という証拠にはなり得ません。

ロシアは北朝鮮などと違い、石油、LGNなどを豊富に産出する資源国ですから、戦前の日本のように、あるいは現在の北朝鮮のように、経済封鎖・制裁によってエネルギー源が枯渇するという事態は考え辛いのですが、それと同時に現代社会はサプライチェーンで世界中が密接に結びついています。

その影響は、数年という単位で徐々にボディブローのように効いてくるでしょう。「西側諸国の部品がなければロシアの生産活動に支障を来す」というった品目はありますが、残念ながら、「ロシア産の部品がなければ西側諸国が生産活動に支障を来す」といった品目はないからです。

「人民元決済が増えドル覇権が終了する」はちょっと議論の飛躍が酷い

それに、先ほどのデイリー新潮の記事、「戦争」ではなく「戦闘」という不適切な用語を用いている時点で、何となく記事のスタンスが見えてきますが、戦時経済において経済が活性化され、見た目のGDPが伸びるのは当然の話です。GDPは極端な話、「穴を掘って埋める」だけでも増えるからです。

ロシアの場合は軍需工場で砲弾だの、戦車だのといった製品を作り、それをウクライナの前線で消費しているため、砲弾を作れば作るほど「金額で計算した付加価値」は産出され続けます。

問題は、生産された付加価値が投資となり、経済社会に役立つか、という点でしょう。(国際法違反の問題はとりあえず無視するとして)純粋に経済的に見れば、ロシアが工場で砲弾を作り、それによって戦争に勝利し、領土を獲得し、経済力が拡大すれば、それは「投資」として見れば成功です。

ですが、砲弾をたくさん産出しているにもかかわらず、前線が進まず膠着すれば、そこにたくさんの砲弾が無駄に投じられることになり、結果的にたくさん生産された砲弾は無駄になり、砲弾の製造コストは将来の付加価値の再生産に役立たない「ムダ金」となります。

現在のロシアが、そのどちらの状況になっているのか。

結論は明白でしょう。

いずれにせよ、当ウェブサイトで以前から指摘している通り、経済というものは、多面的に見る必要がありますし、現実の数字に基づいて議論する必要があります。

BRICS諸国の世界経済に占めるGDPのシェアが高まっていることは事実ですが、少なくともデイリー新潮の記事が主張する「ドル覇権が終了する兆し」、「ドルに代わって人民元決済が主流になる兆し」がまったく見えていないことについては、指摘しておく必要はあるでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    論理を飛躍させれば、自分が望む、どんな結論でも導くことができる、ということですね。ということが、同じ手法でロシア滅亡(ついでに中国も)という結論にも導くことでできるということですね。

  2. 陰謀論者 より:

     今後、総量では人民元決済は増えませんが、中国国周辺での決済で、人民元決済の割合がふえるとか、事実上人民元決済しか使えないようにするなどの無理やりな規制とかはあるかもしれません。
     どうも打つ手がないというか、打った手がことごとく裏目なり、むしろ加速度的に事態を悪化している最中らしく、もちろん必死に隠蔽してますが、サイレントかつ法的根拠も告知も無く、ヒトとカネの流れを規制している、もしくは監視下に置いたりコントロールしだした、あるいはしようとしはじめた疑惑があります。
     本当かどうか定かではありませんが、ある程度の金額の送金や決済、引き出しに、いちいち警察に申告して許可が必要になるようになったとか、最近急に中国の銀行の業績悪化はそんな事情もあるとかないとか。
     ただ根拠がなくとも、中国ならやりかねないのよね、知らんけど。本当にそんなことやってたら最悪な悪手なんですが、それは。信用をなくしたらお金はおしまいなんですけれどもねえ。

  3. 農民 より:

     オリンピックで勝てなくなるとルールの方を弄り、自動車エンジンの性能で勝てなくなると規制の方を弄り(自分の土俵にしたうえで更にデータ改ざん付き)、ということをイデオロギー上での味方にふっかけるような欧米が、それらよりも致命的な通貨覇権を、ルールに紳士的に厳粛に理性的に則り続けて潔く明け渡すとはとても思えませんが。
     BRICs(というか中露)を信頼できるような方々が、なぜ欧米をそういう意味で信頼できるのか謎です。

  4. カズ より:

    BRICSは、脱米ドルの集いではなく、「米ドルを持たざるものたち」の集い。
    平たく言えば、「中国の米ドル換金能力」へのぶら下がり集団じゃないのかと。

    1. 新宿会計士 より:

      事実陳列罪

  5. 引っ掛かったオタク より:

    裏地見る容疑者「ウランは売らん」

    1. 新宿会計士 より:

      【停滞中】
      3時間経過…
          ∧,,∧  ∧,,∧
       ∧ (´-ω-) (-ω-`) ∧∧
      ( ´-ω) U) ( つと ノ(ω-` )  zzz…
      | U (  ´-) (-`  ) と ノ
       u-u (l    ) (   ノu-u
           `u-u’. `u-u’

  6. 匿名 より:

    穴を掘って埋めるだけでもGDPは増えるんですねぇ。
    ついでに言えば、掘った穴には沢山の露軍将兵が埋められている。そのぶんだけ盛上がった土饅頭こそ、増えたGDPの正体でしょうね。

  7. めたぼん より:

    デイリー新潮の記事読ませていただきました。
    「ロシアと中国で人民元決済が増えている」とは書いてありますが、それをもって当該記事が「ドルに代わって人民元決済が主流になる兆し」だと主張しているというのは少し飛躍があるのでは?
    ドルを介さない決済イコール人民元決済、ということではありませんので。
    私にも人民元がドルに代わる立ち位置になるとは到底思えません。
    G7基軸通貨体制の方が現実的だと思います。

    問題は、G7基軸通貨体制になった時にアメリカの経常収支の赤字をどうするつもりなのか。
    ドル単独で基軸通貨である現在と同様に、ドルを暴落させずに膨大な経常赤字を出し続ける方法があるのかどうか。
    もし出し続けられないのであれば、アメリカの軍事力は大幅に低下せざるを得ない。
    日本としては非常に由々しき問題です。

    新宿会計士様は、データからすると現状ではドルが基軸通貨であることは揺らいでいない、だから【今後も変わらない】とお考えのように思います。
    しかし、本当に将来的にも変わらないのでしょうか。
    トランプの関税発言にしても、4月にイエレン財務長官が中国に行って米国債の買い入れを増やすように要請したことも、アメリカ自身が危機感を持っているように思えます。
    とりあえず決済通貨としては安泰だとしても、外貨準備は既に着実に減り始めています。
    最近まで中国が米国債の最大の保有国でしたが、少しずつ売却を進めて、今では日本が最大保有国になってしまいました。
    減らそうとしている国と現状維持の国はあるのに、増やそうとしている国はない。
    この傾向が続くと、世界経済の成長の割にはドル需要が伸びず、国債の借り換えに失敗する日が来るのではないでしょうか。
    暴落しないからこそ基軸通貨でいられるわけで、一度でも暴落したら基軸通貨の座から転落して普通の通貨になります。
    世界一の米国債保有国である日本は、アメリカと一連托生にならざるを得ない。
    であれば、「どうせ失敗するから」と悠長に構えている場合ではない、積極的にBRICS諸国をドル決済に引き戻し、ドルの発行額を増やし続けることが可能となるような努力が必要ではないでしょうか。

    余談ですが、2023年7月に何があったんでしょうね?
    ロシアという元々ドル決済比率が低かった国がSWIFTから排除されたことでドル比率が上がった、という可能性を考えましたが、排除されたのは2022年だからロシアは関係ないはず。
    EUを除くと人民元決済比率が下がるというのも解せない。
    EU間ではユーロ決済だし、ユーロ自身が強い通貨だから、EUを除くとドル比率が上がるのは分かる。
    しかし、何故人民元が下がるのかが分かりません。
    EU諸国はドルより人民元決済を多用してるということでしょうが、何故西側、我々からすると味方なはずのEUがドル需要を減らすようなことをするのか。
    今の日本にとって本当に仲間だと言えるのはカナダとオーストラリアぐらいしかいないと言うことでしょうか。

  8. 元雑用係 より:

    ロシア金融経済ではなく軍事関連ですが、「英国政府筋」とやらがストームシャドウの露国内標的への使用制限解除を、ブリンケンがATACMSの同様の措置を示唆したと伝えられ始めています。状況が劇的に変わるということではないと思いますが、一歩前進には違いないですね。
    西側戦車供与の時と同じく、世論喚起→英先行許可→米追随許可の流れ。
    赤信号をみんなで渡るにしてもプロトコルやら順番やら、いろいろあるみたいです。

  9. 伊江太 より:

    「ドル覇権」などという言葉を,あたかも実体概念として平気で使用できると考えている時点で、槍玉に挙げられている論考の筆者が、俗説的常識の陥穽に囚われている人物だと言っていいように思えます。

    確かに、第二次大戦の後の30年弱の期間、米国の膨大な金保有を背景に、ドルが世界各国の通貨の基準となるドル本位制=準金本位制が成立していた歴史はあります。しかし、金ドル兌換が停止され、世界の通貨体制が変動相場制に移行した後は、米ドルにそのような特権的地位を主張する根拠は失われているはずです。

    米国以外の国同士でおこなわれる貿易決済や金融取引は、本来ならそれぞれの国の通貨を使って遣り取りすれば良いだけのはなしで、それを禁止するルールなど存在しません。それでもなお、米ドルが国際間取引の場で圧倒的シェアを誇る理由はと言えば、何と言ってもその信頼性、使い勝手の良さ、そして入手の容易さにあると思います。

    この「入手の容易さ」についてですが、第三国間の米国とは何の関係もない取引の場でさえ、今でも多額の米ドルが使われるのは、過去に米国が多量のドルを自国の赤字と引き換えに多量に海外に流出させて来たことと、無関係ではないと思っています。米国の立場からすれば、そんな自らのコントロールが及ばないところで、多額の自国通貨が動き回っている事態は、余りうれしいことではないと思います。いつ何時その弊が自国経済に悪影響を及ぼすか、知れたものではないでしょうから。

    武漢肺炎禍のさいに、世界各国の金融市場で起きた米ドルのショートを受けて、米国連銀はそれまで続けていた日本を含む5カ国の中央銀行との間で結んでいる常設為替スワップ協定に加えて、更に9カ国に対して臨時の為替スワップ枠を設けています。実際に大規模にこれを実行に移したのは、約1カ国(笑)だけだったようですから、それほどの額の米ドルが更に世界に流出するという事態にはならなかったようですが、米国が「自国と関係のないところでドルショートが起きようがどうしようが、知ったこっちゃないよ」と言えないのは、自国経済に影響力を持つ多数の企業が多国籍化していて、それぞれが展開する地域経済の変調で大きな損失を蒙ることがあれば、そのままリスクとなって自国に降りかかってくるのを怖れてと言えるでしょう。

    長い目で見れば、米国は世界中に行き渡ってしまった余りに多額のドルの、回収に努めるほかないと思います。米国内と米国に直接関わる海外との資金のやり取りだけに、米ドルの流通範囲を絞らない限り、財政・金融政策の完全なコントロール下に置くのは難しいでしょうから。果たしてそれは可能なのか? でも、これやれなければ、いずれはドルの信頼性が揺らぎ、国際通貨体制に過激な再調整が迫られるときが来るように思えるんですがね。もし、この目標が実現できたとするなら、そのときはそのときで、当然国際間の通貨決済の中で米ドルの占めるシェアは相当に低下するでしょうし、その穴はユーロ、日本円、英ポンド、豪加ドル、中国人民元などなどの通貨で埋めるしかないでしょう。

    だからと言って、そのときかつての米ドルと同じように、自国に必要な以上に通貨を世界中にバラ撒いて、「通貨覇権国」の名を手に入れたいなんて国は出てくるでしょうか?(あるとすれば、経済音痴で、誇大妄想癖のあるあの人物が牛耳る某国くらいか)

    ちっぽけな商店街が、「地域商品券」を多量に印刷して国中にバラ撒いた挙げ句が、二進も三進も行かない事態に陥るようなものだと思うんですがね。

    1. めたぼん より:

      伊江太さま

      >>米ドルが国際間取引の場で圧倒的シェアを誇る理由はと言えば、何と言ってもその信頼性、使い勝手の良さ、そして入手の容易さにあると思います。

      ここ全く同感です。
      別にアメリカに強制されたわけではなく、各国が自主的に共通通貨として選んでいた。

      >>第三国間の米国とは何の関係もない取引の場でさえ、今でも多額の米ドルが使われるのは、過去に米国が多量のドルを自国の赤字と引き換えに多量に海外に流出させて来たことと、無関係ではないと思っています。

      ここも同感、しかし、

      >>米国の立場からすれば、そんな自らのコントロールが及ばないところで、多額の自国通貨が動き回っている事態は、余りうれしいことではないと思います。

      ここは私の推測とは違います。
      アメリカは意図的に他国間の決済に使う分だけのドルを供給していた、つまり、世界の中央銀行の役割を自主的に務めていたと私は考えています。

      普通の国は、他国から物品やサービスを買うためには同等の何かを売らなければならない、買う一方ではいつかは必ずデフォルトしてしまう。
      しかし、アメリカだけはそうならない。
      物やサービスが売れなくても、ドルそのものが売れるから。
      ドルが共通通貨である間は、世界の経済成長に合わせてドルの供給を増やさなければならず、逆に言うと世界の経済成長の分だけアメリカは経常赤字を増やすことができる。
      このことがアメリカが対GDP比で3.5%という西側先進国としては異常に高い軍事費を使える根源になっていると思います。
      アメリカは自国が必要とする以上のドルを供給して来たし、今後もそれを続けたい。
      だからこそ、トランプはドル決済を止める国に関税をかけると脅しているのではないでしょうか。

      >>かつての米ドルと同じように、自国に必要な以上に通貨を世界中にバラ撒いて、「通貨覇権国」の名を手に入れたいなんて国は出てくるでしょうか?

      今のアメリカのような地位に就きたいと思ってる国はあるでしょうが、どの通貨を共通通貨とするかは世界各国の共通意思によって決まるものなので、ある1国が立候補しても無駄なことですよね。
      自国が必要とする以上の通貨を供給するというのは簡単に実行できることではありません。
      想定どおりに他国が使ってくれなかったら供給過剰で暴落してしまいますので。
      アメリカぐらいの経済力や軍事力、信頼度があってこそできることです。

      1. とくめい係 より:

        どちらも正しいと思います
        >>米国の立場からすれば、そんな自らのコントロールが及ばないところで、多額の自国通貨が動き回っている事態は、余りうれしいことではないと思います。
        >アメリカは自国が必要とする以上のドルを供給して来たし、今後もそれを続けたい。
        国内経済に責任を持つ財務省には頭痛の種でしょうが、対外政策にドルをカードとして使える のトレードオフと考えていると思います。輸出品目に「ドル」があると考えれば、楽して儲かるとも言えますし(うがった見方)
        別視点として日銀は財務省の子会社ですので「通貨の安定」を目指しますが、FRBは、出身母体から「ゆるやかでも増えるドル=デフレなんて論外、緩やかインフレ志向。だって銀行や証券会社の意見強いし」と性格が違うと思っておりますがどうでしょうか。

    2. アオキ より:

      結論は通貨が「多極化」するということ。

      なぜ管理人様がこんな簡単なことがわからないのか不思議な限りです(^^♪

      1. 世相マンボウ_ より:

        >結局は  ??
        などというそんな意味ない結論付けに
        何の意味があるのか
        ご説明いただきたいですなあ。

        私、別記事のコメントで間違って
        アオキさんの肩を持とうとしてましたが
        他の方のご指摘が正しいと気づけました

    3. アオキ より:

      世相マンボウ_ 氏

      https://x.com/balajis/status/1815516305740718369

      https://x.com/w2skwn3/status/1809824416307769712

      https://x.com/KobeissiLetter/status/1825228770329899079

      まずはこのリンクを10回熟読してください。

      もう米ドルの価値毀損、下落は避けられないのですよ?

      ドルの価値毀損に応じて各国は自国通貨を使用していく。

      その結果として世界では相対的に通貨が多極化する。

      何も間違っていないと思いますが?

      1. 世相マンボウ_ より:

        >>まずはこのリンクを10回熟読してください。
        あれ?(^^);
        せっかく書いてもらったのですが、
        海外で国際金融にも携わってたのでその程度の
        素人向け解説ぐらいは熟読(笑)しなくても
        とっくに知ってますし、また数ある説の中で
        間違っているとも思ってませんよ。

        私が申し上げたのは、
        世間にあるそうした説自体の当否ではありません。、

        >>なぜ管理人様がこんな簡単なことがわからないのか
        >>不思議な限りです (^^♪
        という表現方法の
        >結局は  ??
        などという安直で不遜な結論付けだけでは
        高い知的好奇心のここの諸兄には
        議論の価値はない書き込みをなさった
        あなたの文章と姿勢に申し上げたものです。

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