共産党が反対していた宇都宮LRT開業1年目の大成功

宇都宮LRTの開業から、もうすぐちょうど1年を迎えます。開業前は利用者数がそんなにいるのか、危ぶむ向きもあったようですが、ふたを開けてみたら、利用者は予測を約2割上回り、沿線の商業施設の利用者も増え、地価も上昇するなど「予想外の効果」までもたらしたそうです。こうしたなか、日本共産党はこのLRTの開業に反対しており、開業直前には県議団が声明で遺憾の意を表明していたそうですが、日本共産党は本件について、なにか言うべきことがあるのではないでしょうか?

鉄道論の面白さ、そして鉄道の重要性

当ウェブサイトは「金融を中心とした政治経済評論」などと名乗っています。

ただ、『改めて考えておきたい政治家の実務能力と鉄道工事理論』などでもお気づきの方もいるかと思いますが、著者自身は鉄道を含めた交通システムの体系を研究するのが大好きで、政治経済評論と名乗りながらも、ときどきは鉄道理論を織り交ぜながら議論を進めたりすることもあります。

とりわけ、首都圏や近畿圏などの大都市圏に暮らしている人にとっては、仮に鉄道そのものにあまり興味・関心がなかったとしても、鉄道というシステムと無関係に暮らすことは、あまり現実的ではありません。

鉄道を日常的に使わざるを得ないからです。

東京都市圏の例でいえば、「都心部」と呼ばれる地域には「まあるい緑の山手線」(※厳密にいえば形状は「真ん丸」ではありません)が日々、一説によるとラッシュ時には3分~4分に1本以上とも言われるほどの過密ダイヤでグルグルと運転しています(コロナ後に多少の減便はあったようですが…)。

また、山手線以外にも、それに並走するなどして、JR各線には緩急さまざまな路線がありますし、おもに山手線の各駅から郊外に向けて、私鉄各線が伸びており、多くはこれらの路線をバイパスするかたちで、地下鉄各線が相互直通運転を行っていたりもします。

こうした交通システムは、一見複雑でありながらも、利用者にとっての利便性は極めて高いといえます。

小田急複々線化工事・連続立体化工事に見る「政治との類似性」

そして、こうした交通体系を作り上げてきたのは、既存の鉄道網をさらに拡充し、利便性を高めて来た先人の努力の賜物です。当ウェブサイトでよく取り上げる小田急の複々線化の事例もそうですが、鉄道システムは単純に「土地を買収して、線路を引いたら、自動的に出来上がる」というおものではないからです。

たとえば小田急の事例だと、従来は上下1本ずつしかなかった線路を登戸から代々木上原の区間で上下2本に増やし、あわせて東京都内に関しては高架化や地下化を進めることで踏切をなくすなどしたことで、高密度・高速での鉄道の運行を可能にしています。

また、編成を長くするためには、各駅のホームを延伸する工事を行わなければならないこともあるなど、膨大な投資が必要です。都心部のように、土地の買収費用が非常に高額となるケースも多く、また、公道の地下を通す場合などには、トンネルの掘削などで費用が跳ね上がることもあるからです。

これらの投資は利用者の運賃に上乗せすることに加え、国や自治体の補助金などが投じられることもありますが、このことは、鉄道インフラは鉄道会社だけでなく、社会全体で維持・改善・発展を図っていかなければならない、ということを意味しています。

そして、既存路線の改良や新規路線の建設には、莫大なコストがかかるだけでなく、地元民の理解を得ることも必要です。たとえば、工事期間中には交通渋滞や騒音が発生するかもしれませんし、新しい路線のせいで立ち退きを余儀なくされる人も出てくるかもしれないからです。

小田急複々線化のときにも、一部区間(敢えて地名は挙げません)で地元民の反対運動などの影響で工事が遅延したという事例があったようですが、これなども鉄道工事において地元民の理解を得ることがいかに大切か、ということを示しているのかもしれません。

(※余談ですが、「既存の枠組みを壊さず、運用し続けながら改良し続ける」という意味において、鉄道改良工事は政治と通じるものがある、とするのが著者自身の持論でもあるのです。)

宇都宮LRTに反対した日本共産党

既存路線の改良工事でさえ反対運動が生じるくらいですから、ましてや、まったく新たな交通手段を作るとなれば、それに反対する集団が出現するであろうことは、想像に難くありません。その典型例が、宇都宮ライトレールでしょう。

北関東の都市・宇都宮では、次世代型路面電車(ライトレール・トランジット、いわゆるLRT)が昨年8月26日に開業しました。

ただ、開業に先立って、野党、とりわけ日本共産党は、この宇都宮LRTに反対の姿勢を示して来ました。反対理由はなんだかよくわかりませんが、『宇都宮民報』はこれについて、「住民の合意を無視して市当局が強引に建設を進めたこと」や、「安全性の問題」、「青天井の事業費」などの問題を挙げています。

「安全性の問題」とは専用軌道ではなく、道路との併用軌道として整備した区間があること、「事業費の問題」とは、当初予測よりも事業費が膨張したことなどを指しているようです。

コスト増と安全性軽視を批判する共産党の自己矛盾

また、下野新聞の次の記事によると、栃木県議会の日本共産党県議団は開業直前の2023年8月24日付で、「安全性、事業費の大幅増額」などを問題点が「解決されないまま開業に至ったことは極めて残念」とする声明を出したのだそうです。

LRTの開業「極めて残念」 共産党県議団が声明

―――2023/08/25付 下野新聞SOONより

本当に、批判しかしない人たちは、楽で良いですね。

仮に日本共産党の意を汲んで「安全性を確保するために全線を専用軌道にする」とした場合には、事業費がさらに膨張する格好ですし、「事業費を抑える」のが目的なら、極端な話、全線を併用軌道にすればコストは抑えられるでしょう。

安全性を無限に高めつつ、コストを抑えることなど、できっこないことくらい、小学生でもわかりそうなものです。

それに、LRTのように、地下鉄などと比べてかなり安価に建設できる公共交通手段は、私たち一般庶民にとっては望ましいものであるように思えてなりません。

その「安価に建設できる公共交通手段」の建設に、日本共産党は公然と反対しているのです。いつも不思議に思うのですが、そんな日本共産党は、はたして「弱者の味方」なのでしょうか?それとも「弱者の敵」なのでしょうか?

これだと、日本共産党を含めた特定野党(※日本共産党だけではありませんが)は反対ばかりしていて、前向きな提案がほとんどない(あるいはむしろ、日本経済を弱くするような提案ばかりしている)、などといわれても、文句はいえない気がします。

ふたを開けてみれば…大成功!

もっとも、こうした日本共産党の反対運動にも関わらず、LRTは事業者が想定した以上の大きな効果をもたらしているようです。

そもそも利用者数が想定以上に伸びているそうで、建設通信新聞の次の記事によると、開業から312日目で、累計利用者が400万人を突破したのだとか。

【利用者400万人突破】開業312日で達成 宇都宮ライトレール

―――2024/07/05付 建設通信新聞より

また、読売新聞の22日付の記事によれば、開業1年目の利用者は470万人を超え、予測を約2割上回る見通しなのだとか。

宇都宮のLRT利用、開業1年で予測2割上回る470万人超

―――2024/08/22付 読売新聞オンラインより

開業効果は、これだけではありません。

下野新聞の23日付の次の記事によれば、、LTR開業後に沿線の商業施設の利用者も増え、沿線の地価上昇などの経済効果も生じているのだそうです。

LRTの経済効果、商業施設は「想定以上」 際立つ沿線地価上昇/加速LRT 宇都宮ー芳賀開業1年②経済効果

―――2024/08/23 05:00付 下野新聞SOONより

子供や高齢者といった自動車の運転ができない人たちが、JRやLRTを乗り継いで気軽に商業施設を訪れることができるようになった効果が大きく、その意味でLRT開業により、一部地域では自家用車を持たないなどの選択肢も出ているようです。

このあたり、宇都宮LRTの成功例を、あまり一般化すべきではないのかもしれませんし、宇都宮が成功したからといって、「公共事業はすべて成功する」と決めつけるべきでもありません。

宇都宮LRTは、現実的に地下鉄と比べて低価格かつ短期間で竣工するLRTというシステムの強みが良い形で出たといえるかもしれませんが、どんな地方都市でも似たようなLRTを作れば絶対に成功するに違いない、などと考えるのも、少々短絡的です。

しかし、少なくとも日本共産党がこのLRTの建設に反対していたこと、開業直前に大々的に「遺憾」を表明したことは事実です。本件について、日本共産党は我々有権者に対し、なにか言うべきことがあるのではないでしょうか?

いずれにせよ、LRTの事例は、日本共産党を含めた左派政党の現実性のなさを象徴しているようにも見えるのですが、いかがでしょうか?

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 普通の日本人 より:

    私の地元でも「共産党は反対ばかりで代案を出さない」ことは有名です
    困ったもんだ
    もう一つ思い出したこと
    マッカーサーが吉田首相に共産主義を禁止するように指示を出したが「めんどくさい」為止めた
    この話本当?

    *共産党は自由を求めているんだと。
     お笑いに進んだらいいんでないの! とは街の声

  2. G より:

    共産党さんの意見に対してちゃんと結果が出たということは重要ですね。
    1%の住民しか利用しないというのはどういう数字の読み違いなんだろうなと興味があります。
    もしかして、1日の予測利用者数と住民の全人口を比較して1%って意味ですかねぇ。そりゃ関係ない地区に住んでいる人も大勢いますからねぇ

    冷静に利点、難点を比較して言ってるのではなく、なんとか不利な材料だけ掘り出して批判している感じですね。
    こんな雑な共産党さんの主張でもたまに通ってしまうことはあるので気をつけなければなりません。相手のやりたいことを止めるだけで一仕事終わりで、何も進まない責任は絶対取らないって人たちですからタチが悪い。

  3. はるちゃん より:

    >そんな日本共産党は、はたして「弱者の味方」なのでしょうか?それとも「弱者の敵」なのでしょうか?

    共産党から見れば弱者は共産党政権を実現するための利用すべき対象ですね。
    弱者から共産党はどのように見えているのでしょうか?
    私から見れば、弱者は見え見えの詐欺師に引っ掛かった情けない人にしか見えません。

    1. 雪だんご より:

      共産党に限らず、一度「特殊なグループ」を居心地よく感じてしまうと
      そこから抜け出すのにはそれなり以上の意志力が居る様です。

      ・”良い人達”が実際には悪人だった
      ・自分が信じていた正義は間違っていた
      ・今まで否定していた”敵”が正しかった
      ・自分はこんな目に遭ってしまったマヌケだった

      乗り越えないといけないハードルが多くて、かなり難しいらしいです。
      そしてそれらを乗り越えられる人はそもそも「特殊なグループ」には引っ掛からない
      のでは?と言う点を考慮すると……

      まあ、借金から抜け出せないのと同じ様な物ですね。

  4. 駅田 より:

    正直リベラルな人達の提言する内容
    後からみて良かった、と思うケースが少なすぎる。

    兎にも角にも日本の足を引っ張る事を生き甲斐にしているようにしか見えない。
    楽しかった学生運動はもう思い出の中だけにしまっておいて欲しい。

  5. クロワッサン より:

    >本件について、日本共産党は我々有権者に対し、なにか言うべきことがあるのではないでしょうか?

    日本共産党は常に正しく、仮に間違える事があっても先の条件が適用されて常に正しいので、有権者は日本共産党の言葉にただ黙って従うべきであるって事では?

  6. あい より:

    宇都宮市のゆいの杜という地域はLRTが通るということで、何もなかったところから、すっごく雰囲気のいい街になりました。LRTが走ってるのをみるとちょっと近未来の街って感じがします。

  7. 匿名 より:

    共産党が党の味方なのは世界共通なのでは?

  8. 匿名 より:

    日本共産党は
    日本がさらに豊かになるのは許さない。
    日本がさらに発展するのは許さない。
    日本の未来が明るくなることは許さない。

    実は財務省と一緒に日本を貧しくさせるのが目的だったりして

  9. GABULLAcCHO より:

    共産党が反対する理由?

    宇都宮LRTから、チューチューする仕組みを確立出来なかったからじゃないですか?

    若しくは「反対する事」で、何処ぞからチューチュー出来る仕組みがあるからとか?

    知らんけど。

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