訪日外国人の大半はリピーターでラーメン需要も=調査
訪日外国人が毎月300万人を超える時代が到来しつつあるなか、俗に「円安で訪日外国人が増えている」という説明を聞くことがあります(当ウェブサイトでもその可能性を指摘してきました)。しかし、株式会社電通の調査によれば、外国人観光客の約半分はリピーターであり、とくに欧米豪の観光客にとっては円安よりもラーメンを含めた日本食などに魅力を感じて日本にやって来ているようなのです。
目次
訪日外国人が「毎月300万人台」の時代
2022年10月に日本政府が外国人観光客の受入を再開して以降、コロナ禍で止まっていた日本と外国との往来は復活し、それどころか、いまや訪日外国人はコロナ禍以前をほぼ完全に上回っています。
『訪日外国人客は過去最大:「3百万人台」は4ヵ月連続』でも取り上げたとおり、コロナ禍以前には月間300万人を上回ったことがなかった訪日外国人が、今年3月以降、じつに4ヵ月連続で300万人台を記録している状況にあるからです。
この点、民主党政権時代に原発稼働が(かなり強引に)停止に追い込まれるなどしたためか、石油、石炭、LNGなどの輸入が増えるなど、貿易赤字基調にあるわが国にとって、旅行収支の黒字は貴重な外貨獲得源のひとつとなりつつあります。
実際、経常収支統計上、「旅行収支」(2023年4月~24年3月期)は4兆2295億円のプラスとなっているなど、インバウンド観光業には(とくに一部の関係者からは)日本経済を支えるものとしての期待も集まっています。
株式会社電通の『ジャパンブランド調査』
こうしたなかで、外国人は日本のなにに魅力を感じて日本にやって来ているのかについては気になるところですが、これに関連し、株式会社電通は今月3日、『ジャパンブランド調査2024』の結果を発表しました。
電通、世界15の国・地域を対象に「ジャパンブランド調査2024」を実施
―――2024/07/03付 株式会社電通HPより
電通によるとこの調査は世界15ヵ国・地域の20~59歳の7,460人を対象に実施したもので、記事副題には『「観光目的で再訪したい国・地域」1位の日本を5つの視点(期待・契機・関心・地方・和食)で読み解く』、とあります。
電通はこれについて、次のような点を列挙しています(要約・抜粋)。
- 「再び観光に訪れたい国・地域」の1位は日本(34.6%)。海外旅行先としての日本に期待していることは▼多彩なグルメ(28.6%)、▼他国と異なる独自の文化(27.9%)、他国にない自然景観(25.6%)
- 訪日観光の理由の50%はリピーター需要で、地域別にみると東アジアでは「円安が続いているうちに行くべきと思ったから」が44.1%と、他地域と比べ約20ポイント高い
- 日本でおカネを払って最も体験・利用したいものは「庶民的な和食レストラン(41.4%)」で、一部の国・地域では日本独自の観光資源が支持された
- 都道府県別認知度では東京都が55.6%で1位。過去8年分の調査で上位5都道府県に変化なし。訪日外国人の地方観光の障害要因は▼言語コミュニケーションへの不安(36.2%)、▼東京、大阪、京都など以外の観光地を知らない(26.7%)、▼地方観光地(略)情報源が足りない(26.7%)
- 自国における日本食の喫食頻度については、東アジア、東南アジアは外食・中食が内食より高いが、欧米豪はこれらに大きな差はない。帰国後にまた食べたい日本料理の1位は「ラーメン」(26.5%)
「再訪したい国のトップは日本」(ただしアジア圏に限る)
調査対象エリア15ヵ国・地域は、米国、豪州、英国、ドイツ、フランス、インド、UAE、インドネシア、シンガポール、タイ、ベトナム、中国本土、香港、台湾、韓国だそうです。
つまり、2024年6月の統計で見て、訪日客のトップ20に入っている国だとフィリピン(6位)、カナダ(12位)、マレーシア(15位)、イタリア(18位)、スペイン(19位)、メキシコ(20位)が調査に含まれておらず、20位に入っていないUAEが調査対象に含まれている、ということです。
また、サンプル数7,460人の内訳は米国960人、インド900人、中国本土800人、その他の国・地域が各400人で、「中間所得層以上」以上を対象に株式会社ビデオリサーチがインターネットで調査を実施した、とあります。
それはともかくとして、「世界の海外旅行経験者」に対し、「観光目的で再訪したい国・地域」を調べたら、日本が34.6%で最も高く、続いてシンガポール(14.7%)、米国(13.0%)―――、などとあります。
ちなみに同レポートの『図表1』をもとにした正確なランキングは、次の通りです。
- 1位…日本(34.6%)
- 2位…シンガポール(14.7%)
- 3位…米国(13.0%)
- 4位…韓国(10.5%)
- 5位…英国(10.4%)
- 6位…タイ(9.7%)
- 7位…中国本土(8.8%)
- 8位…豪州(8.1%)
- 9位…香港(7.1%)、イタリア(7.1%)
(【出所】株式会社電通レポート『図表1』をもとに作成)
とりわけ調査対象国・地域のうち、日本は東アジアで58.3%、東南アジアで52.5%を獲得するなど、圧倒的な人気を誇っているのだそうですが、北米リージョンだと16.3%で2位(※1位は英国)、欧州リージョンだと6.5%で10位(※1位はスペイン)なのだとか。
何のことはない、日本は東アジア・東南アジア諸国から圧倒的な人気を誇っているものの、少なくとも欧州ではそこまでの人気はない、ということでしょう。
全地域でリピーターがトップ:ラーメンに魅力、「円安」はアジア圏に顕著
ただし、訪日外国人の50%は「前回日本を訪れて楽しめたので、また行きたいと思ったから」と答えており、その割合は東アジアで45.5%、東南アジアで55.2%、欧米豪で42.4%といずれも1位なのですが、2位以下でバラツキがあります。
具体的には、欧米豪では「OTA(オンライン・トラベル・エージェンシー)の訪日観光の商品紹介を見たから」が38.7%で2位、「自国で日本料理を食べて日本に行きたくなったから」が34.4%で3位となっていますが、アジア圏ではそうではありません。
「日本の製品が気に入って日本に行きたくなったから」が東南アジアでは50.0%で2位、東アジアでは40.3%で3位となっており、東アジアの2位は「円安が続いているうちに行くべきだと思ったから」の44.1%、東南アジアの3位は「自国で日本料理を食べて日本に行きたくなったから」の41.3%だそうです。
この電通の調査を信頼するなら、「円安だから外国人観光客が増えている」という説明は、正しくなく、多少円高になっても、リピーターとして日本にやってくる、あるいは日本の料理が食べたいから日本に来る、といった需要は根強い、ということでしょう。
また、帰国後にまた食べたい日本料理の1位は「ラーメン」(26.5%)なのだそうですが、たしかにラーメン店は日本だけでなく、いまや世界的に展開しています(ちなみにラーメンはもともとは中華料理、という印象を持つ人も多いかもしれませんが、香港などでは「日式拉麺」などの店舗を見かけるようです)。
いずれにせよ、当ウェブサイトでも「訪日外国人の急増は円安が後押ししている可能性がある」と述べてきましたが、電通の調査を信頼するならば、少なくとも欧米豪からの観光客は、円安を主因としているわけではなさそうです。
日本の日常体験に魅力か
この調査で興味深い点は、ほかにもあります。
今後の来日時におカネを払って体験・利用したいものについては▼庶民的な和食レストラン(41.4%)、▼農泊体験(40.0%)、▼新幹線(37.3%)、▼高級な和食レストラン(36.3%)、▼日本の伝統工芸品の購入(35.9%)などが挙がったそうですが、それだけではありません。
「日本製の日用品の買い物」が全体で35.3%と6位に入っていますが、この選択肢は中国本土では31.4%で3位、台湾では48.4%で1位、ベトナムだと37.7%で4位だったそうです。
また、「日本オリジナルのコンビニ食品」は全体で34.5%と7位でしたが、この選択肢は香港では46.2%で4位、シンガポールでは38.8%で5位、インドネシアでは48.4%で3位、そして米国でも30.3%で5位に入っていることが確認できます。
このあたりは著者自身も何となく理解できる気がします。
旅行に行く際には、観光客向けに整えられたコンテンツだけでなく、現地の人たちが日常で利用している施設・店舗、庶民的なレストラン、さまざまな日用品・飲料・ジャンクフードなどを体験するのも楽しいものだからです。
ただ、日本人が好むコンビニ・スイーツなどの存在を外国人に知られてしまうと、せっかく日本人が世界の人々から隠れて楽しんでいたものが、外国人に買われることで値上がりしてしまう、という懸念もありそうですが…。
リピーター需要、食への関心…ただし観光業は「労働集約産業」
なお、株式会社電通のレポートには、他にもいくつかの論点が取り上げられているのですが、それらについて本稿ですべて取り上げることはしません。ご興味があれば、電通のウェブサイトにて、レポートの全文を直接お読みください(ウェブ版、PDF版)。
いずれにせよ、多くの外国人が日本にやってくる「おもな動機」が円安ではなく「リピート需要」にあること、外国人が日本に期待する大きな要因が「食」であること――など調査結果を信頼するなら、正直、日本が国として、外国人観光客を積極的に誘致しなくても、外国人は勝手に日本にやってくるのかもしれません。
このあたり、著者自身は、インバウンド観光が盛況になれば、国防にも大きな好影響を与えると考えています。日本のファンが世界中に増え、そのことを通じ、有事の際にも日本に味方をしてくれる国が世界中で増える効果も期待できるからです。
ただ、観光業がそもそも労働集約産業であることについては見逃せません。人材不足の折、インバウンド観光がさかんになれば、その分、日本経済全体で人材不足と物価上昇が加速する可能性があるなどの点については憂慮すべき事項です。
さらには、例の「富士山コンビニ問題」(『富士山黒幕問題と本質見失う批判』等参照)などのように、オーバーツーリズムによる観光公害も生じ始めているわけですから、観光客急増によるコストをだれがどう負担していくのかに関する問題からは避けて通れません。
個人的には、現在の「出国税」、つまり「日本人だろうが外国人だろうが無関係に1人あたり1,000円を徴収する」という税制はやめて、「入国税」ないし「観光税」として、観光客1人あたり数万円レベルの税を徴収するのが妥当ではないかと思います。
(※このあたりは増税が大好きな財務省あたりが積極的に動いてほしいところですが…。)
正直、現在でも一部地域で交通がマヒしている状態で、原発再稼働、自動運転の実現などの社会的課題が解決されなかったならば、「年間観光客6000万人」(つまり毎月500万人)を目標に掲げるのは、非現実的です。
さらには観光客に紛れ、好ましからざる外国人が入国するのをどう防いでいくかも課題ですが、これらも含め、国土交通省・観光庁が外務省、法務省、財務省、経済産業省、金融庁、警察庁などの他省庁と有機的に連携しているようには見えません。
こうした点に関しては、日本の観光業(というか日本の産業政策全体)における大きな課題といえるのではないか、などと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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日本食は欧米の食事より 適正なカロリーで低脂質でおいしいと、評価されています。
でも日本食は 結構危険なんです。
とにかく塩分量が多いです。
外国の方が ラーメンのつゆを残さず食される姿を見るたび 塩分8グラムは摂取されたのではと、危惧してしまいます。
牛丼やコンビニ弁当も結構高塩分。
厚生省は1日の塩分摂取上限を8グラム前後を推奨。
日本食を食べ続けると 高脂質・肥満は解消されるかもしれないけど、高血圧、脳卒中が増えるかもしれません。
訴えられないよう 注意喚起が必要かも(笑)。
電通の調査が正しいとして「観光目的で再訪したい国・地域」にフランス、ドイツはベスト10に入ってない。少し意外です。
また日本料理の1位は「ラーメン」。ん〜ラーメンね。もうちょっとアッパーゾーンの食事が入って欲しいです。別にラーメンが安くて(でも1,000円以下は、今どき無い)貧しい人がすするモノとは言いません。食べやすいし馴染みやすいんでしょう。
また庶民的な和食や農泊体験、新幹線乗車して、和食レストラン行って伝統工芸品の購入をしようと思ったら、東京(首都圏)から京都・大阪で手一杯!他の地方が恩恵が少ないのは分かります。
東南アジアの要望、「日本製の日用品の買い物」は全国何処でも出来ますね。
来日外国人が日本に期待することが”食”ってのはいいですよね。僕らが普段食べている町中華のラーメン、餃子、チャーハンを外国人が美味しいと思って海の向こうからわざわざ買いに来てくれるってことでしょ。トヨタのクルマや日立の電車みたいな最先端の高度な技術は必要ない輸出品をそこらへんの厨房のオヤジが個人レベルで作ってるってことですよね(って言ったら料理人に失礼かもしれないけどw)。日本はもう製造業は中国人にまかせて、とにかく美味い飯を作ることに特化して、世界中の胃袋を満足させることに重点を置いたほうが幸せになれるのかもしれませんよ。
観光客が住民の生活空間に入り込んでしまう状況は全くいいことがありません。オーバーツーリズムもほとんどそういう状況から生まれますし、そういう観光客が日本の観光収支に貢献することもありません。
なんとか観光施設に頑張ってもらって引き留めていっぱい稼いで欲しいです。日本が治安良くて何食べてもう美味しいってのは当たり前で今時そんなこと言われて喜んでる状況じゃないんです。
まあ、観光客向けにはしっかり高い値段を設定するといいです。ラーメン2000円とか3000円とか。彼らは旅行で来てお金も準備してるわけですから、良いと聞きつければそれくらいの値段屁でもないのです。日本人はもっと安くても味がいいところ知っている。そうやって観光客と住民の導線を分けていくのです。
外国人旅行者:ラーメンといったネタは、正直いって今更なネタというか、
TVでもやってるでしょうし、ようつべでも外国人旅行者が日本のB級グルメを楽しんでる動画ネタは山ほど見つかります。
ここで言及すべきネタか甚だ疑問です。
リピーターが多い香港人旅行者のデーターはスルーして、数自体がたいしたことがない「豪・欧」を例に出すのも疑問。「ヨーロッパ」という国は無いですから。
ラーメンなどが知られているのは、アニメでよく描かれるからでしょうね。それにしても、外人どもは日本文化の理解が遅いです。3億人の国だから訪日客が遅いものの、アメリカなんかは日本文化の理解が最も遅いグループ。日本語学習者なんかも少ないしあまり期待できない国でしょう。
会計士さん自体、「観光業」は日本経済を牽引してくれる訳では無いと何度も言及しているのに、なぜ外国人旅行者ネタを繰り返しているのか。よく分かりません。
どうせ観光業ネタを出すならむしろ別方向、リッチな外国人向けに彼らを満足させるようなリッチな日本料理店を含めた、観光資源開拓、みたいな話とか。せっかく話すのだから、ラーメン程度のネタはさっさと終わりにして、観光業発達の方向に話を振った方が生産的でしょう。好き嫌いの話ではなく、わざわざ観光業周りの話をするなら、まだ話されていないベクトルに話を振ってみては。
ツイッターでは「トヨタが日本から出ていけば日本は終わる」とか「日立が空調事業から撤退、日立も終わる」といった、日本国経済や企業のことが全く分かっていないツイートで溢れています。トヨタが居なくなっても日本は困らないとか、日立にとっての顧客は「日本国」自体であって家電事業など極めてごく一部、というような話をしても、私が個人的な「好き嫌い」の話をしているのではなく、そこにある事実をしているだけに過ぎません。トヨタが出ていこうが潰れようが日本は困らない、というのが事実かどうかは、自分で「ググれ」ばいいだけの話。
大雑把に言って日本経済は外国の力を必要としない国です。外人にどう評価されようが、ラーメンチェーン店がどう海外に進出しようが、おにぎり専門店が海外で人気が出ようが、ちっちゃいスケールの話であって、今すぐ日本の経済構造が変わる訳ではありません。日本のものは日本人だけで発達すると言うだけ。普通に、日本人の給与を増やすとか、普通のことを普通にするだけで、日本経済は回復します。
>外国人旅行者:ラーメンといったネタは、正直いって今更なネタというか、
>TVでもやってるでしょうし、ようつべでも外国人旅行者が日本のB級グルメを楽しんでる動画ネタは山ほど見つかります。
>ここで言及すべきネタか甚だ疑問です。
それって貴方の感想ですよね(ハナホジ
外国人はウドンとラーメンとパスタの違いわかるのかな?