辺野古移設「賛否拮抗」が民意だ
沖縄県議会議員選挙を巡って、またしてもメディアが誤報をやらかしたようだ、といった話題が、X(旧ツイッター)を賑わせているようです。現実に普天間飛行場の辺野古移設については、議会では賛否が拮抗したにもかかわらず、一部メディアが「反対派が過半数」、などと報じてしまったのです。これに加えて普段はやたらと民意を強調するメディアの今回の報道にも、違和感を禁じ得ません。
沖縄県議会選の結果
日曜日に投開票が行われた沖縄県議会議員選挙では、「オール(?)沖縄」の中核4政党(立憲民主党、日本共産党、社民党、沖縄社会大衆党)の候補者が11人しか当選せず、これに対し自民党が立候補した20人全員を当選させた―――。
これは、『「逆風」のはずの自民党、沖縄県議選で候補が全員当選』でも取り上げたとおりです。
沖縄県選挙管理委員会のデータや報道をもとに、
政党等 | 選挙前→選挙後 | 増減 |
自民党 | 18→20 | +2 |
公明党 | 2→4 | +2 |
日本維新の会 | 2→2 | ±0 |
(小計) | 22→26 | +4 |
立憲民主党 | 4→2 | ▲2 |
日本共産党 | 7→4 | ▲3 |
社会民主党 | 2→2 | ±0 |
沖縄社会大衆党 | 1→3 | +2 |
(小計) | 14→11 | ▲3 |
無所属 | 12→11 | ▲1 |
(【出所】沖縄県選挙管理委員会および各種報道より作成)
反知事派が多数:普天間飛行場の辺野古移設移設は賛否が拮抗
ちなみに玉城デニー知事を支える「知事派」は、このオール沖縄11議席に加え、無所属のうちの9議席だそうですが(合計20議席)、「反知事派」は自民、公明、維新の26議席に加え、無所属のうちの2議席とされているため(合計28議席)、議会では「反知事派」が多数を占めるそうです。
このあたり、今回の県議選は、単に玉城氏が掲げる「普天間飛行場の辺野古移設反対」が沖縄県民の支持を集められなかったというよりも、どちらかといえば、基地ばかりにかまけて牽制をないがしろにしていることに対し、沖縄県民からの不信任が突き付けられたようなものではないか、といった気もします。
ただ、一部のメディアが「辺野古移設の是非を巡る選挙」、などと一方的に報じていたことも事実であり、もしそれが本当に焦点だったのだとしたら、今回の選挙結果は「辺野古移設を可とする民意が示された」、ということになりそうです。
(もっとも、辺野古移設に限定していえば、公明党も反対らしいので、辺野古移設に関していえば24対24で拮抗しているかたちです。)
共同通信の速報と地方紙などの報道
これに関連し、ちょっと面黒い話題があるとしたら、そのひとつは、これかもしれません。
【速報】沖縄県議選、辺野古容認派の過半数厳しく
―――2024年06月16日 20時16分付 共同通信より
これは、共同通信が日曜日夜8時過ぎに配信した「速報」と銘打った記事ですが、短く「辺野古移設を容認する候補が過半数を得るのは厳しい情勢」、などと述べたものです。
これは、なかなかに影響の大きな記事です。共同通信といえば、時事通信と並び、地方紙などを中心に、多くのメディアに記事を提供している社のひとつだからです。ですが、その共同通信が速報を出せば、全国各地のさまざまなメディアが自動的に共同通信の記事を配信せざるを得ません。
ネット上ではX(旧ツイッター)などを中心に、昨日から、おそらくは共同通信発と思われる『辺野古反対派が過半数 知事派少数、沖縄県議選』なる記事がさまざまなメディアに報じられたことが指摘されています。
もっとも、Xや検索エンジンなどを使うと、次のような記事が配信された形跡を見つけることができますが、不思議なことに、それらの多くは現時点で記事リンクを辿ることができなくなっています。
辺野古反対派が過半数 知事派少数、沖縄県議選
―――2024/06/16付 東京新聞TOKYO WEBより【※リンク切れ】
辺野古反対派が過半数 知事派少数、沖縄県議選
―――2024/06/16付 沖縄タイムスプラスより【※リンク切れ】
これに関しては、産経などいくつかのメディアが話題に取り上げています(ただし、内容自体はよく似ていて、とくに山陽新聞や福島民友新聞に関してはアップ時刻も同時であるるため、もしかすると、またしても共同通信の配信記事、という可能性もありそうです)。
沖縄県議選で共同通信が「辺野古移設反対勢力の過半数確実」と誤報 結果は反対・容認同数
―――2024/6/17 17:53付 産経ニュースより
沖縄県議選報道で誤り 共同通信「深くおわび」
―――2024年06月17日 19時06分付 山陽新聞より
沖縄県議選報道で誤り
―――2024年06月17日 19時06分付 福島民友新聞より
反対なら「民意」、賛否拮抗なら…!?
一方で、この辺野古移設などを巡っては、全国紙のなかでも、たとえば朝日新聞などは、「移設反対派」の立場に焦点を当てた記事を多く配信しています。昨年10月6日付で配信した次の記事などは、その典型例ではないでしょうか。
沖縄の民意置き去り 異例の代執行 「ひとごとと思わないで」
―――2023年10月6日 7時30分付 朝日新聞デジタル日本語版より
朝日新聞の記事の冒頭には、こんな記述が出てきます。
「何度も示された辺野古移設反対の民意を置き去りに、国は5日、『代執行』の訴訟を起こした。<略>異例の対応を、ひとごとと思わないでほしい。沖縄は問いかける」。
記事の「辺野古移設反対の民意」云々の記述からもわかるとおり、朝日新聞のこの記事では、間接的に、「辺野古移設反対は沖縄の民意である」と主張していることは明らかです。
ところが、今回の選挙結果では移設反対派と賛成派が拮抗したわけですから、少なくとも「辺野古移設反対の民意」を「選挙の結果、辺野古移設反対派が多数を占めること」と定義するならば、今回の選挙結果「だけ」で判断する限り、辺野古移設反対は「民意」ではなくなりました。
そんな朝日新聞が「辺野古移設巡り、民意は賛否拮抗」とでも報じるのかと思っていたところ、現実に配信された記事を見て、ちょっと驚いてしまいました。
「辺野古反対」玉城知事派が県議選大敗 冷淡な政権にあきらめの空気
―――2024年6月17日 0時51分付 朝日新聞デジタル日本語版より
「冷淡な政権」に「あきらめの空気」、などとありますが、正直、選挙など水物なのですから、民意が変わることはあり得るわけですし、「今回の民意は玉城県政にノーだった」、「今回の民意は辺野古移設に賛否拮抗した」、などと書けば済む話ではないか、という気がしてしまいます。
SNSで違和感の指摘多数
実際、このSNS隆盛の時代に、この記事の表題に違和感を覚えた人も多かったらしく、Xのポストには昨日午後10時前の時点で、「いいね」が100件弱に対し、100件以上のコメントと、250件を超えるリポストが確認できます。
「辺野古反対」玉城知事派が県議選大敗 冷淡な政権にあきらめの空気 https://t.co/YIUMUlZX6S
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) June 16, 2024
いずれにせよ、日本は自由・民主主義国家であり、私たちの国の方向性を決めていくことができるのは、メディアの報道ではなく、私たち有権者の投票行動です。
今回の沖縄県議会選についても、沖縄県の有権者の現時点における意思表明であり、投票総数や各候補の当落は、有権者の意思に従って決まったものです。それにメディアやジャーナリストらが勝手な意味を付与しようとしたところで、選挙結果は選挙結果です。
このことは、およそ自由・民主主義国における、ありとあらゆるすべての選挙に当てはまるのではないか、などと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
次の選挙で共同通信の選挙結果速報を信じないほうがよい、ということでしょうか。
ちなみに前回の総選挙では、テレビ新聞なと主要なメディアが全員やらかしました。
普通は、事前予測はそれなりに正確。
少なくとも結果的に正確な人も混ぜる。
最悪でも20時過ぎてからの速報特番では、出口調査を織り込んで正解が出る。
ところがどっこい、日付が変わる頃まで
「野党圧勝」
なのに朝のニュースでは、
「自民党が絶対安定多数」
おいおい、17才かよ。
信じるものは救われる、という諺もありますけどね。
その選挙よく覚えてる。
メディアが世論を読み間違えてたんだね。彼らが世論と思ってるのは電話自動音声による例の奴だろう。いろいろなところが使っているらしく私の家に1か月かそこらで8回くらいかかってきたことがある。午後から夕方にかけてが多い。
世論調査の電話が平日昼間にかかってきたら働いている人は出られない。
覚えのない電話番号から発信されていたら女性は出たがらない。
結果世論調査に答えているのは定年退職して家にいる時間のたっぷりある高齢者ばかりということになる。こういうのを「生存者バイアス」と呼ぶようだ。
電話による世論調査は5分くらいかかる。なぜ5分と知っているのか? 一度だけ好奇心で答えたことがあるからだ。暇な高齢者でも「こんなのつきあってられねえ」と途中で切る人が大勢いるだろう。結果「世論」として集計されるのは暇な高齢者で粘り強く最後まで質問に答える人。質問に答えるのは世の中に強い不満があるからだろう。だいたいどんなプロフィールか想像がつく。
そういう電話がかかってくるたびに、必ず投票に行く、普段は社民党支持、岸田政権支持、投票先はれいわ、という感じで回答しています。調査の信頼性が落ちるかも、とは思っています。
メディアが「読み違える」と書くと、なんだか高等なことをやってるみたいですが、プロフェッショナルとして腐ってるのだと思いますね。
僕は都内の市役所で事前投票しましたが、成人年齢が18才なこともあってセーラー服や運動ジャージ姿の有権者も多く列をなしてました。
出口調査をしてたのはNHK。
腕章してる記者?はずーっとスマホを読んでる。
クリップボードを持ったバイトは、その脇でボーッと立っていて、たまに声をかけやすそうな人にコメントをもらいに行くくらい。
僕は学生時代にNHKの報道班でバイトしてたので、こういうバカを見てると信じられない思いでした。
昔はみんなもっと熱く汗をかいて走って頭を下げて情報集めてましたよ。
レイテ海戦で連合艦隊大勝利!
と大本営の参謀が読み違いしたのは誤情報が多かったと擁護できなくもないのですが、今の大手メディアはそもそも情報収集能力が無い、のだと思います。
あるのは変なプライドと横並び意識だけ。
仕事をしろよ、と。
偏向するもしないも、まずは調査と予測が正確であることが大前提なのに、それがゼロなら存在価値ないですわ。
来たる第三次世界大戦で中露朝韓のならず者国家陣営を打ち破り、大陸内に米軍基地が出来ていけば沖縄の米軍基地もだいぶん減らせると思うので、大変ではありますがチャンスでもありますね。
負ければ、沖縄に人民解放軍の基地が代わりに出来るでしょうし。
現状維持や減るよりは増えそうな気がしますが。
辺野古移設反対は「良い民意」
辺野古移設賛成は「悪い民意」
さすがに悪い民意とは書きづらかった心の内がわかる気がします。
>沖縄県議選報道で誤り 共同通信「深くおわび」
朝日がよく使う言葉に「前のめりになって」というのがあるけど、まさに前のめりになって偏向報道やってた。
沖縄ですら、もはや「社会全体が左に巻いている」状況ではなくなってしまった。
楽観的に予定稿を準備していたのに、大変残念な結果である、
地方自治を住民無視でイデオロギーや対立の為に利用した事がばれたようですね。
都知事選でも同じような主張をしている挑戦者がいますがそのような方は退場願いたいですね。
やっぱりここで共同通信社の会社案内の社長メッセージ
https://www.kyodonews.jp/company/
「でも、大切なことは何も変わりません。確かなニュースを速やかにー。それが、わたくしたちのポリシーです。
ネット空間では日夜、フェイクニュースや中傷、真偽不明の言説が飛び交っています。だからこそ、共同はファクトにこだわり抜きます。事実を追い、掘り起こし、裏付けを取る。特定の主張に偏らない「公平さ」を重んじながら、記事、写真、動画、グラフィックスとして、いち早く伝える。フェイクの時代に立ち向かう仕事を通じて、これからも「信頼の通信社」であり続けます。」
シビレます。
新聞社サイトには社是理念のページがありますが、読むと笑いを誘います。世に冷笑を広めているのは誰でしょうか。
>信頼の通信社
信頼性の高いメディア(自称)において、複数の目による厳しいチェックの結果、現場の楽観的な予定稿が流出してしまうのですね。わかります。
・「なぜNIEなのか」
https://www.nie.jp/about/
実際には、知事選でも議会選挙でも基地問題だけが争点だったわけではない
ましてや辺野古移籍問題だけが争点なわけではない
ドラちゃんさん
私、新聞を読んでないので。
具体的にどんな争点が有ったんですか?
僕も、教えてほしいです。
テレビ新聞ほぼ読まず、ポータルサイトのヘッドラインを眺めるくらいなので、大手メディアが歪めた(であろう)争点しか知らないのですよ。
移籍はしないと思いますが。。。。
デニーが勝った知事選は辺野古反対を前面に出していた印象ですが、
今回の県議会 議員 選挙では、現地の実際の雰囲気では、普天間対策の辺野古移転だけが争点ではなかったらしく、だから自民・政府系の圧勝だった訳ですね。
メディア批判は小さい問題なのでさておいて,辺野古移設反対派の構成から考えてみます。大きな勢力は,第2次世界大戦の沖縄戦を経験した高齢者や,そいういう人達の経験談を強くひきずっている人達でしょう。無理からぬところはあります。あとは,日教組などの左派勢力。中国の影響は,それほど大きくないと考えたほうがよいでしょう。
科学的判断ができる人達は,ウクライナ戦争を客観的に観察していて「次の戦争は第2次世界大戦とは全然違う」ことが理解できて,防衛力の有効性がわかるでしょう。
馬毛島の工事は順調に進んでいるようですね。こちらも,過去の日米協議の重要項目で,安保上重要です。