台湾が日本の「3番目の貿易パートナー」として再浮上
日本にとっての「自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値や原則を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人」といえば、台湾です。その台湾との貿易高が再び3位に浮上したようです。日本の外交青書上、日本の近隣にある唯一の「価値を共有するパートナー」と位置付けられている台湾との経済関係が深まることは、日本の利益でもあります。
台湾が3番目の貿易相手国に浮上
本稿は、ちょっとしたメモです。
財務省税関が30日に公表した『普通貿易統計』によると、2024年4月における貿易高で、台湾が日本にとっての3番目の相手国に浮上しました(図表1)。
図表1 貿易高(2024年4月)
相手国 | 金額 | 割合 |
合計 | 18兆4101億円 | 100.00% |
1位:中国 | 3兆7013億円 | 20.10% |
2位:米国 | 2兆9172億円 | 15.85% |
3位:台湾 | 9653億円 | 5.24% |
4位:韓国 | 9434億円 | 5.12% |
5位:豪州 | 8656億円 | 4.70% |
6位:UAE | 6628億円 | 3.60% |
7位:タイ | 6513億円 | 3.54% |
8位:ベトナム | 5575億円 | 3.03% |
9位:ドイツ | 4884億円 | 2.65% |
10位:サウジアラビア | 4784億円 | 2.60% |
その他 | 6兆1789億円 | 33.56% |
(【出所】財務省税関『財務省貿易統計』・国別総額表ダウンロードデータを加工)
トップは中国で3.7兆円、2番目が米国で2.9兆円ですが、台湾も単月で1兆円近くに達しています。「人口比」で考えたら、人口14億人以上とされる中国本土と比べ、2400万人弱の台湾との貿易額がその4分の1超、というのも印象的です。
(※ただし、図表1の「貿易高」は、「輸出額」と「輸入額」を単純合算したものであり、財務省などの公式発表とは異なる可能性がありますのでご注意ください。)
輸出はトップ米国、2位中国、3位台湾
一方、輸出額と輸入額についても見ておきましょう。まずは輸出です(図表2)。
図表2 輸出金額(2024年4月)
相手国 | 金額 | 割合 |
合計 | 8兆9801億円 | 100.00% |
1位:米国 | 1兆8028億円 | 20.08% |
2位:中国 | 1兆5871億円 | 17.67% |
3位:台湾 | 5824億円 | 6.49% |
4位:韓国 | 5752億円 | 6.41% |
5位:香港 | 4237億円 | 4.72% |
6位:タイ | 3301億円 | 3.68% |
7位:シンガポール | 2424億円 | 2.70% |
8位:ドイツ | 2206億円 | 2.46% |
9位:ベトナム | 2172億円 | 2.42% |
10位:インド | 2052億円 | 2.29% |
その他 | 2兆7933億円 | 31.11% |
(【出所】財務省税関『財務省貿易統計』・国別総額表ダウンロードデータを加工)
輸出相手国としては、トップは米国、2位が中国で、この2ヵ国は「不動」、というわけですが、近年、米国が日本にとっての最大の輸出相手国となることも多いようです。また、台湾は久しぶりに日本の3番目の輸出相手国に浮上しました。
なお、(本稿では実施しませんが)概況品目別に分析すると、米国に対する輸出高は最終製品(とくに自動車など)が中心ですが、中国、台湾などアジア諸国に対する輸出高は、「最終製品」というよりも「モノを作るためのモノ」が中心でもあります。
このあたりはまた別稿で詳しく触れたいと思います。
輸入はトップが中国、資源国がこれらに続く
一方の輸入については、図表3のとおりです。
図表3 輸入金額(2024年4月)
相手国 | 金額 | 割合 |
合計 | 9兆4457億円 | 100.00% |
1位:中国 | 2兆1142億円 | 22.38% |
2位:米国 | 1兆1145億円 | 11.80% |
3位:豪州 | 6764億円 | 7.16% |
4位:UAE | 5159億円 | 5.46% |
5位:サウジアラビア | 4129億円 | 4.37% |
6位:台湾 | 3829億円 | 4.05% |
7位:韓国 | 3682億円 | 3.90% |
8位:ベトナム | 3403億円 | 3.60% |
9位:タイ | 3211億円 | 3.40% |
10位:インドネシア | 2957億円 | 3.13% |
その他 | 2兆9037億円 | 30.74% |
(【出所】財務省税関『財務省貿易統計』・国別総額表ダウンロードデータを加工)
トップは中国で、単月で2兆円以上も輸入しています。
一方、2位が米国で、3位から5位まで資源国(豪州、UAE、サウジ)が入り、台湾は6位でした。
ちなみに輸入品目については、中国からのものはPCやスマホ、衣類・雑貨といった「組立品」「軽工業品」などが中心であり、台湾など近隣国からは、近年、半導体などの製品の輸入が増えているという特徴がありますが、このあたりについても、6月までの数値が出て来た段階などで、いずれ別稿で取り上げたいと思います。
台湾は大切な友人
なお、輸出入は毎月変動するものであり、単月で台湾が日本の3番目の貿易相手国に浮上したからといって、それが永続するというものでもありませんし、また4位以下に転落する可能性もありますので、「一喜一憂的にランキングだけを取り上げるのはいかがなものか」、といった批判は、謹んでお受けしたいと思います。
ただし、日本の外交青書上、台湾は「日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値や原則を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」(『令和6年版外交青書』P50)と位置付けられています。
日本政府は台湾を「国」とは認めていないにせよ、日本の近隣国のなかで、「価値を共有している」パートナーに位置付けられているのは、台湾だけであることもまた事実です。
そんなかけがえのない大切な友人である台湾に対し、日本は最近、とくに金融面での関係を薄めて来ているフシがあるのですが、ただ、日台関係の深化は自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する日台両国にとっての共通利益でもあります。
その意味で、貿易、金融、人的往来などの観点から、日台関係がどう推移していくかは注目に値する論点のひとつであるといえるでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。
ツイート @新宿会計士をフォロー
読者コメント一覧
※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。
やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。
※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。
※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。
当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。
コメントを残す
【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
早く中国と縁を切りましょう
どうせいづれ一戦を交える相手なのだから
毎度、ばかばかしいお話を。
中国:「台湾と取引をする日本企業には、事実上の制裁を加える」
ありそうだな。
毎度、ばかばかしいお話を。
中国;「台湾は中国の一部なのだから、貿易パートナーとして中国と台湾を分けるのはけしからん」
もしかして。
おいらが若かりし20数年前はASUSやGIGABYTE製のマザーボードを使って自作PCを組み立てていたんですが、その頃は台湾製だったのかな?
今は台湾メーカーでもメイドインPRCが多そうなので、日台貿易には貢献しなさそう…
電子製品の最終組立もPRCから台湾に移れば、日中貿易不均衡と台湾との繋がりの深化が期待できそうですが、さて?
中国が台湾を併合したら
今の台湾の住民は不法滞在者扱いになるので
全員牢屋行き?牢人になるの?豚のお箱の住人になるの?
どうした、韓流?(爆)
コンテンツだったり、化粧品だったり、ピッコマやLINEといったもので稼いでいるはずでは?(某)
やっぱり、しっかりした「工業製品」が売れないとダメなんですかね。
中国依存、なかなか抜けられないですなあ。一昔前は中国製品は粗悪で避けていたものです。今では、タブレットやスマホ、ちょっとした電化製品は中国製品ばかりに占められるようになってしまいました。どうする、日本企業!
中国はうまく(組み立て)高評価したものです。
じゃあすぐに中国に変わる国を探すといっても、そう簡単ではないでしょう。質的にも、規模的にも。多くの国は、「まともに物を作れないから」です。
タイに仕事で行ったとき、携帯が壊れてしまったので、せめて時間が分かるようにしなくてはと思い、ショップに簡素な腕時計を買いに行きました。高価なものを買ってもしょうがないので(まあ、高価なものが売ってなかったんですが)、安価な腕時計を見てみました。
針式の、簡素な腕時計。でも売られている者は、どこかおかしいのです、デザインからしておかしい。タイでは、腕時計をつくるという、基礎的な工業からして弱いんだと思いました。何年も前の話ですが、基本は変わってないでしょうね。
国家を作るのって大変なんですよね。人口では世界一になったインド。チャイナ躍進のころは、人口が多ければ経済発展するという神話が語られていましたが、インドはそうなっていない。残念ながら、インドが躍進する未来はないようです。