「福島の海水からトリチウム検出」…なにか問題でも?
共同通信が7日、『海水からトリチウム検出』とする記事を配信しました。これによると1リットルあたり13ベクレルの放射性物質トリチウムが検出されたのだそうです。ただ、WHOが設定する飲料水としての安全基準値が1リットル当たり1万ベクレルであることを踏まえると、大きく取り立てて騒ぐべきことなのかについては疑問が残ります。
共同通信が7日、ちょっと気になる記事を配信しました。
海水からトリチウム検出 原発処理水放出口付近
―――2024/05/07付 共同通信より
これによると福島第一原発の周辺で6日、1リットルあたり13ベクレルの放射性物質トリチウムを検出した、とするものです。記事表題を読んで、「原発からの汚染水で海洋が汚染されている」、などと懸念する人も出てくるかもしれません。
もちろん、一部の国のメディアと異なり、共同通信など本邦の多くのメディアは、この「汚染水」という用語は使っていません。しかし、特定国メディアや一部野党関係者らが「汚染水」という用語を積極的に使用し、福島風評被害を拡大して来たことを踏まえると、やはり不安に感じる人は多いでしょう。
なにより、「トリチウム」、「ベクレル」など、普段私たちがあまり目にしない表現を見ると、やはり「原発は怖い」、「汚染水問題は大丈夫か?」、などとする反応が出て来ても不思議ではありません。物事は報じ方ひとつで大きく印象を操作することができるからです。
ただ、結論からいえば、今回の「トリチウム1リットルあたり13ベクレル」が事実だとしても、科学的に見れば、問題になる状況ではありません。
共同通信の記事をよく読んでみると、世界保健機関(WHO)が設定している飲料水基準はリットルあたり1万ベクレル(!)であり、今回の13ベクレルという数値は、それを遥かに下回っているからです。
(なお、東京電力のウェブサイトに掲載されている『海⽔分析結果<発電所から3km以内>(全β・γ)』の5月7日分によると、13ベクレルのβ線が検出されたのは「南放⽔⼝付近」ですが、「5、6号機放⽔⼝北側」からも11ベクレルのβ線が検出されているようです。いずれも問題となる量ではありませんが…。)
この点、福島処理水は飲料水として利用するものではありません(単純に衛生面で問題があるからです)が、それでも「含まれているトリチウム量が飲料水と比べても遥かに少ない」という時点で、「トリチウム検出」と記事タイトルに大きく表示するのはいかがなものでしょうか。
ただし、東京電力のレポートに記載されている「WHO飲料水基準値」は、比較の基準として適切なのかといえば、そうとも限りません。放射性物質の放出量を抑制する基準値として見れば、ちょっと厳しすぎるからです。
たとえば東京電力ウェブサイト『福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果』に掲載されている過去の海水中の放射性物質に関するレポートを見ると、「WHO飲料水基準値」を上回る放射性物質(多くの場合はセシウム137)が検出されていたことがあるからです。
「反原発派」にとっては、「そら見たことか!」「東電はウソつきだ!」となど、不要な攻撃材料を与え得るものでもあるからです。
もちろん、義務教育レベルの知識さえあれば、「WHO基準値のリットル当たり1万ベクレル」は「飲料水としての基準値」に過ぎず、1万ベクレルを超過したとしても直ちに安全性に影響は生じない、という点については、多くの人が理解するはずです。
ただ、それ以上に困った話があるとしたら、科学を否定し、いたずらに不安を煽るメディアが存在することでしょう。
福島処理水の海洋放出は科学的に安全性が確認されているにも関わらず、複数の新聞が「科学を振りかざすな」だの、「科学を隠れ蓑にするな」だのと述べて、これを強く批判した、という「事件」もあった(『福島処理水論争の正体は「科学vs非科学」の代理戦争』等参照)からです。
というよりも、日本の問題点といえば、非常に限られた数のメディアが情報発信を独占していることもさることながら、その限られた数のメディアが事実を軽視し、科学を否定するかのような言説を垂れ流していることにあります。
円高になったら「輸出産業が壊滅する!」、「日本は輸出依存度が高い国だから、経済に大打撃だ!」などとさんざん煽っていたくせに、円安になったとたん「物価が上がる!」、「我々庶民の生活はお終いだ!」、などとやるわけですから、ダブル・スタンダードの極みでしょう。
日本のメディアは、一事が万事、この調子です。
余談ですが、著者自身が昨年、とある機会で某高校生と話した際、その高校生は逐一具体的な数値を挙げて「新聞・テレビが報じる『国の借金問題』『福島汚染水問題』はウソだ」、と断定していましたが、ちゃんと数字で論理を組み立てられる若者が日本にいるというのも、心強い話です。
いずれにせよ、新聞やテレビなどのメディアが人々からの信頼を失うことになっている大きな原因は、メディア自身の「事実の軽視」と「専門性の欠如」によるものではないか、などと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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ああーっ、また汚染DHMOネタですか。
(笑)
まだコレに引っ掛かる人たちが鋳てるのですねえ。
「海水からDHMO検出」
この記事は何を言いたいのか全く理解不能です。
元々トリチウムの入っている処理水を海水で希釈して流すと言っているのだから、排水口から検出されるのは当然だと思うのだが。ニュースになるのは予定よりも相当濃度が高かった場合だが、原理的にあり得ない。
WHOの基準を1とすると、0.0013だから、福島は安全ですよと共同通信は主張しているのだろうか(笑)。
逆に福島の海水から全くトリチウムが検出されなければ、そちらの方が異常事態ではないでしょうか。もしそうなれば、(大きく違うか小さく違うか、何が違うかは分かりませんが)他の海とは違うことになるので、世界中から科学者が研究のために集まるでしょう。
蛇足ですが、この記事を書いた共同通信の記者には、学歴詐称疑惑がでてくるでしょう。
「事実のみを伝える」とこんな記事になるのではないだろうか。
これこそが、マスコミに求められるものだったりして。
この記事を読んで、読み手が「大変だ!」と思うのか「安心だな」と思うのかはわかりませんが、WHOの基準も書いてあって公平のようにも思う。
ある人には、海洋放出けしからん、というネタになるだろうし、ある人には全然大丈夫だな、と思うだろうし、またある人は、人々が忘れる権利を侵害している、と思うかもしれないです。(私はいちいち記事にする事の物でもないのにな、と思いました)
共同はもしかして「ほら、安全でしょ」って言いたかったのかもしれませんね。
そういう書き方してないと思いますが。
本文は事実を書いているので、特に問題とは思いません。
「すべての放射性物質は有害で、地球上に決して存在してはならない!」と信じている人たちを釣るためのタイトルでしょうね。トリチウムも、もちろん自然界に普通に存在します。
・放射能泉の効能
https://onsen.community2.fmworld.net/articles/7964/
http://www.murasugi.com/contents/document10-002
https://www.chouseikan.co.jp/onsen/radium.php
>東京電力は(中略)検出したと発表した。
記事はこんな書き方になってて、東京新聞が何か特別な発表の場を設けたってことにも見えるのです♪
ただ、数値自体は新宿会計士様が言うように特段取り立ててどうこう言うような数値ではないように思えるし、東京電力のHPでは日々の分析結果を愚直に積み上げてるだけのようなのです♪
https://www.tepco.co.jp/decommission/data/analysis/index-j.html
なんとなくだけど、過去からの推移とかを記事に含めないのは不自然な気がするのです♪
それにしても、基準値自体に安全係数はかかってるだろうに、その1000分の1の数値を検出してるって、東京電力もなかなか頑張ってる気がするのです♪
いやはや、人呼んで 挙-動不審社さん らしい
偏向かかったタイトル付けてますねえ (^^)
まあ、日頃から
日本の基幹ロケットに記者さんが
「それは失敗と言いまあす」の捨て台詞吐いたり
日本での五輪を失敗としたさに
「ボッタクリ男爵」?とのレッテル貼りで
嬉々として反日流行語大賞受賞したり、
名古屋支局のデスクの桜ういろうHNでの
職務中の誹謗SNSに処分を発表してなかったり、
などなどなど、まあ、
およそ社を挙げて日本ディスリに
頑張ってお見えなので
韓流やどぶサヨさんが勢いづくこうした
記事を日々配信しているのでしょう。
共同通信は何をしたいのでしょうかね。
共同通信「海水からトリチウム検出」記事をヘイト問題取材班がなぜかシェア 事実を整える
https://www.jijitsu.net/entry/kyodo-hate-tritium
もしかして「海水からトリチウム検出」と報じた記事を批判する事を「ヘイトだ」と認定したいのでしょうか。
仮のそうであれば、「自分達にとって不都合な事実から逃げたい」という事なのでしょう。
正に「卑怯」と言うべきですね。
醤油の致死量が1リットルらしいです。
てことは、大変だ大変だ醤油小さじ1/4を口にしてしまった。一大事だぁ!!
笑い話にもなりゃしないw
これぞマスゴミのマスゴミたる所以ですかね。
オールドメディアのいつもの「ウソは言ってませんよ、ウソは。タイトルが釣りっぽい?
別にミスリードの意図なんてありません。もし騙された人が居たら、その人が悪いんです」
案件だとは思いますが…
あえて好意的?に解釈するのなら、「そろそろまた”汚染水”の件で記事を書けって
言われたけど、どうやっても”安全です”って記事になっちゃうからなあ…
せめてタイトルだけでも誤解しやすくさせて、お茶を濁すか…」などと言った
執筆担当者の苦悩(笑)があったのかもしれません。
雪だんごさんのご指摘の通り、なんとまあ
いじっこい生きザマなされてますなあ(笑)
ただ、
多数派国民良識層からは、単に
せこいどぶサヨ根性に過ぎないのですが
それが彼らにとっては、
『これぞオレ様達才能あふれる特権階級マスコミ様だあ!』
と自己陶酔してるとお見受けしす。
まあ、
詐欺師さんが、
日々精進する騙しのテクニックを
自己満足してご披露なされてるようなものだと
鑑賞してあげるべきなのでしょう(^^);
韓国の水道水からもトリチウムが検出されそうです_
共同通信らしいといえば、らしいおハナシ、というか煽り記事ですねですね。
1リットル当たり13ベクレルのトリチウムが人体に危険な数だだというなら、日本中の放射能温泉には入湯できないことになってしまいます。
因みに日本国内での放射能数値の最高は、有馬温泉のそれで14Bq/L出そうです。(笑)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD%E6%B3%89
愛知県東部在住様
>日本中の放射能温泉には入湯できないことになってしまいます。
この指摘自体は、その通りなんですが、処理水排出口付近で検出されたトリチウム濃度13ベクレル/Lとの比較に、放射能泉の温泉水を持ち出すのは、象の体のつくりを蟻のカラダと比較して説明するくらいの違和感があるんですね。
引用されているWikiの記事を読んでみましたが、筆者は肝心の放射線およびその人体への影響について、ほとんど基礎的知識を持たない人のように思えます。
有馬温泉の温泉中に含まれる放射性物質を、多分複数の核種が含まれるでしょうが、一応すべてラジウム-226として考えると、この放射性核種を水に溶けた形で環境に放出することが許される放射能濃度の限度はトリチウムの約1/30,000です。この物質が骨に蓄積する性質があることと、それから放出される放射線の組織に与える影響の大きさが、トリチウムより桁違いに大きいのが、その理由です。
ベクレルという物理単位は、測定する物質中で1秒間に何個の核種の壊変が起こり、それによって外部に放射線が放出されるか、単にその頻度=放射能量を表わすものです。それによって人体にどれだけの影響が出るかという点に、ただちに結びつく値ではありません。
人体への影響を論じたければ、ベクレルではなくシーベルト単位で表わした値を用いるべきですが、それで言えば、13ベクレル/Lの水をがぶ飲みした影響がどれくらいかと言ったら、マイクロ、ナノシーベルトどころか、ピコ、ファノのオーダーの話になってしまうはずです。
かりに共同通信がこんな記事配信したのが、「放射能水が放出されてるぞ、タイヘンだ~」が本意であれば、そこは「0.000000000…n シーベルトの放射能を含む放出水」と書いて然るべきところのはず。13ベクレル/Lとしたのは、単なる無知が所以か、あるいは悪質な印象操作を狙ったものなのか。
それはともかくとして、有馬温泉の温泉水を、14ベクレル/Lの値付きで比較対象にされたのは、同じような誤りを含んでいることにお気をつけください。
訂正です。
上記「放射能濃度の限度はトリチウムの約1/30,000です」
としたところ、約1/60,000の誤りでした。
伊江太 様
貴重なご指摘有り難うございます。
私立ど文系ゆえにこういうのははっきり言ってにはてなんですが、ウィキにはくれぐれもご用心!ということですね。
今後は気をつけて参りたいと思いますが、正直言ってちんぷんかんぷんな自分が情けない、というのが本音です。