インドネシアが韓国に戦闘機開発費を3分の1に値切る

約束を守らない国同士がトラブルになったらどうなるのか――。韓国紙の報道によると、インドネシアと韓国で共同開発していた戦闘機を巡って、インドネシア側が分担金を当初の3分の1に値切って来ている、といった話題が出てきました。正直、怪しい国同士のトラブルですから、どちらが正しいかを軽々に断定することは難しいのですが、韓国紙の報道が事実なら、韓国が「被害者」っぽい立場になるという意味で、珍しい事例といえるかもしれません。

韓国は加害者

著者自身は政治家を評価する際には「是々非々」の姿勢が大事だと考えている人間のひとりであり、これは岸田文雄首相という政治家についても同じことがいえると思っていて、トータルとしてみれば岸田首相は良い仕事をしていると思います。

ただ、少なくとも対韓外交に関していえば、現在のところ、積極的に及第点はつけられないと考えているのですが、その大きな理由は、いわゆる自称元徴用工問題の解決策自体が法的も実質的にも解決になっていないことに加え、韓国政府の解決策がごく近い将来、破綻する可能性が高いことにあります。

これは、どういうことでしょうか。

そもそも論ですが、韓国といえば、私たち日本にとっては隣国であるだけでなく、さまざまな捏造でわが国の名誉と尊厳を傷つけて来た相手国でもあります。韓国が大好きな「被害者/加害者フレームワーク」でいえば、韓国はれっきとした「加害者」の側だ、ということです。

二重の不法行為と対日不法行為一覧

ちなみに韓国が日本の仕掛けて来たさまざまな不法行為の多くは、①韓国側による根も葉もない捏造であること、②韓国が日本に対し、法的に根拠がないことを要求していること、という2つの特徴を有しています。だからこそ、当ウェブサイトではこれを「二重の不法行為」と呼んできたわけです。

日韓諸懸案巡る韓国の「二重の不法行為」とは?
  • 韓国側が主張する「被害」の多くは、(おそらくは)韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである
  • 韓国側が日本に対して要求している「謝罪」「賠償」などには、多くの場合、法的根拠がなく、何らかの国際法違反・条約違反・約束違反を伴っている

(【出所】当ウェブサイト作成。詳細は『【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』等参照)

こうした視点で、竹島不法占拠問題や自称元慰安婦・自称元徴用工問題に加え、李明博(り・めいはく)、朴槿恵(ぼく・きんけい)、文在寅(ぶん・ざいいん)の各政権における対日不法行為を眺めてみると、だいたいそのような共通点があることがわかるでしょう(図表1)。

図表1 韓国の対日不法行為一覧(主要論点のみ)

©新宿会計士の政治経済評論/引用・転載自由

自称元徴用工問題の被害企業は順調に増える

この点、2022年5月に発足した現在の尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権については、発足からそろそろ丸2年が経過し、一部「保守勢力(?)」などの間でも「親日的な政権だ」とする評価を得ていることは事実ですが、基本的に韓国は韓国です。

というのも、たとえばこの尹錫悦政権が2023年3月に打ち出した自称元徴用工問題の「解決策」――いわゆる「財団による第三者弁済」――については、さっそく財源不足で破綻しそうになっています。なぜなら、その後も韓国の大法院(最高裁に相当)が、日本企業敗訴判決を続々と出しているからです(図表2)。

図表2 自称元徴用工訴訟の被害企業一覧
時点被害企業訴訟件数
2018年10月30日日本製鉄1件
2018年11月29日三菱重工業2件
2023年12月21日日本製鉄1件
2023年12月21日三菱重工業1件
2023年12月28日三菱重工業2件
2023年12月28日日立造船1件
2024年1月11日日本製鉄1件
2024年1月25日不二越3件
合計12件

(【出所】報道等。なお、2018年10月30日の被害企業については、当時の社名は「新日鐵住金」)

報道等によると、現時点までに韓国大法院が日本企業に違法な賠償を命じた判決件数は延べ4社・12件に達しており、これに加えて下級審でもいくつもの訴訟が係属中であることから、賠償をするための韓国の財団で財源が枯渇することはほぼ確実です。

それどころか、韓国では日本企業が裁判所に差し入れていた資金が没収されてしまうなど、今年、日本企業には本格的な実害が生じている(『自称元徴用工が供託金引出し…日本政府の対韓制裁は?』等参照)ほどです。

さらに、『「保守政党」が惨敗の韓国に日本はどう向き合うべきか』でも取り上げたとおり、先日の韓国の国会議員総選挙の結果、野党側が3分の2を制圧する事態は避けられたものの、尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領の支持母体である「保守与党」は議席を減らしています。

こうした状態で、「韓国が日本との約束を守ってくれる」と無邪気に期待するには、少々、無理がありそうです。

ちなみにこんなことを述べると、「現在の親日的な韓国との関係を損ねるのは良くない」、「多少、日本が譲歩しても、『実』を取るべきだ」、などと言いだす人がいるのですが、こうした見解が正しいのかどうかについては、『数字で見ると日本が韓国への制裁をためらう理由はない』で詳しく議論しましたので、本稿では割愛します。

いずれにせよ、自称元徴用工、自称元慰安婦、火器管制(FC)レーダー照射などの問題は、「韓国、あるいは韓国政府自身が平気でウソをついたり、約束を守らなかったりする」という点を、我々日本人に強く印象付けたことは間違いないでしょう。

韓国が珍しく「被害者」に?

ただ、こうした文脈で見ていくと、韓国は日本との関係では、常に「加害者」としての側面を強く持っているのですが、たまには「被害者」っぽくなることもあるようです。

韓国と超音速戦闘機を共同開発中のインドネシア「分担金は3分の1だけ払います」

―――2024/05/07 15:05付 朝鮮日報日本語版より

韓国紙『朝鮮日報』(日本語版)に7日付で掲載された記事によると、韓国と超音速戦闘機を共同開発しているインドネシアが韓国政府に対し、当初合意された開発分担金を3分に1に減額するように求めている、というのです。

朝鮮日報が報じた「業界関係者が6日に明らかにした」内容は、次の通りです(文意を変えない範囲で日本語表現を整えています)。

  • インドネシアは3000億ウォン(現在のレートで約340億円)を支払済みだが、追加で3000億ウォンを2026年までに支払いたいと韓国政府に通知した(この場合のインドネシアの合計支払額は6000億ウォン=約680億円となる)
  • 当初予定されていたインドネシアの分担金は約1.7兆ウォン(約1930億円)で、のちにおよそ1.6兆ウォン(約1820億円)に減額されたという経緯がある

…。

当初の分担金を3分の1に値切るとは、なかなかに、酷い話です。

ちなみに記事によると、インドネシアは当初、2021年6月までに分担金を完納すると約束していたものの、「自国の経済事情」などを理由にこれまで3000億ウォンしか支払っておらず、さらに分担金をパーム油のような現物で支払いたいと申し出てきたり、支払期限を延長してほしいと要請したりすることもあったのだとか。

しかも、朝鮮日報によれば、インドネシア側は「共同開発の代価として予定されていた戦闘機技術移転も、それに相応の水準に限って受けるという立場」を示した、ということですが、「技術移転の水準も3分の1に留める」、というのも、なかなかに斬新な発想です。

この件については、韓国紙の報道を読む限りにおいては、インドネシアの側に過失が多そうにも見えます(もっとも、韓国紙の報道だけをもって、韓国を「被害者」と決めつけるのは控えたいと思いますが…)。

約束を破る国同士のトラブル

ちなみにインドネシアといえば、日本との関係でも、「約束を破った国」としての評価が定着しつつあると思われます。例の高速鉄道の件(『開業したインドネシア高速鉄道にスタンドアロンリスク』等参照)がその一因です。

そして、このインドネシア高速鉄道は、典型的な「安物買いの銭失い」でもあります。インドネシアが中国の協力を得て「鳴り物入り」で建設した同国初の高速鉄道、いったん中国の技術で作ってしまった以上、それを拡張性するには中国の協力が必要だからです。

一部報道によれば、インドネシア側は高速鉄道のうち、スラバヤ・バンドン間の区間の建設を日本に依頼する、といった構想も出ていたようですが、これについてはさすがに日本政府の高官側から「高速鉄道では異なるシステムをつなぐことはできない」と拒絶されたとのことです(当たり前でしょう)。

いずれにせよ、約束を守らない国同士のトラブル、彼ら自身がどう始末をつけるのか、基本的には「高みの見物」が正解ではないか、などと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. KY より:

     >約束を守らない国同士がトラブルになったらどうなるのか

     今一見親密そうに見える中露も、何時そうなってもおかしくないと思いますが、果たして両国の場合、どう落としどころを見つけるのやら。

    1. ぽん より:

      中国の銀行がロシアとの取引を停止したのでロシアへの輸出が難しくなってますが。

  2. 匿名 より:

    韓国が戦闘機開発?
    それも、総額4000億円で。これで、どんな戦闘機が出来るのか?
    インドネシアは、負担金600億円?
    こんな金で、戦闘機が手に入る?
    何か、甘さが漂って来る。
    依存体質で約束守らないもの同士が協力して、どんなものが出来るのか?

  3. 引っ掛かったオタク より:

    いずれにせよ、出来上がりをあてがわれるパイロット達には同情の念を禁じ得ませぬ…
    出来上がらんから無問題??

  4. 伊江太 より:

    ハイテクの粋を集めた戦闘機を、実戦目的のため、国威発揚のために保有するのが本意という国は、多分現在ではほとんど無いと思います。日本にしても欧州諸国にしても、第二次大戦後何度も新鋭機への更新を行っていますが、その都度旧型機は実戦に投入されることもなく引退を迎えています。

    戦場で実地に活用したことが何度もある米国にしたところで、喰うか食われ得るかのドッグファイトを繰り広げたことなんてなかったはずです。制空権を握って一方的に空爆し放題というような場面でしか運用してこなかったでしょう。それ考えれば、ウクライナの「特別軍事作戦」で、高価な戦闘機、戦闘爆撃機、空中管制機なんかを次から次へと撃ち落とされてるロシアのおこないなど、まさに愚の骨頂と言うべきかも知れません。

    日本が過去に導入した戦闘機その他の軍用機。実戦に使われることは無かったし、それはあらかじめ予測もされていたのだから、結局、無駄な開発、買い物だったかと言えば、そうではないでしょう。それで備えているぞというところを見せつけておけば、悪意を抱く周辺国にしたって、うかつにこちらの領土を侵すような真似はしてこない。それだけでも十分な価値があるでしょうですが、その開発、ライセンス生産、機体整備などで得られる高度技術の取得は、民生分野への拡がりという意味で、より大きな果実が得られ期待があるからこそ、最新鋭機の獲得に力を入れるのだと思います。

    じゃあ、韓国は? 日本と同じ意味合いで、つまり見栄じゃなくって、実利に徹して、国産戦闘機の開発を目指したのだったとすれば、たとえそれが実戦配備される時には、世界の軍事強国の水準からすれば、最早型落ちに近い状態になっていることが見えているにしても、その意気や良し!としなければならないでしょう。だけど、開発のパートナーに選んだのがインドネシアというのは、なんで?と言いたくなりますよね。

    公称でも良いからそこそこの性能があると言える戦闘機が、他国から購入するよりずっと安く手に入るのなら、それにツバつけとかない手はないくらいにしか考えない国であることなど、初めから分かっていて然るべきところなのに。実際に飛ばせる時期になった頃に、もっと良いのが納得がいくお値段で手に入るとなったら、そちらに乗り換えるなんぞは当たり前。そうなりゃ、約束していた開発費用の分担を踏み倒すくらい、当初の目論見からすれば、やらない方が不思議レベルでしょう。

    まあ、形の上では「被害者」ってことになるのかも知れませんが、自国についても、他国についても、結局見る目がなかったということで、「以て瞑すべし」とでも、しなけりゃいけないんじゃないかな(笑)、

    1. 匿名 より:

      伊江太さんのこのコメント、珍しく真意が分かりづらいですが、戦闘機、僅か数十機運ぶ為に、空母打撃機群と言うものを編成し、巨額の軍事費を掛けている。そもそも、戦闘機は、ドッグファイトをすることが目的なのか、制空権を取る為のものなのか。然し、戦闘が始まる時、逸早く、あんなものが襲って来て、戦闘の要所要所を攻撃されたら、作戦はやりにくい。
      四盃で夜も眠れず、と言われた戦艦、それに数十の小蝿のようなものが飛んで来て、やたらとあちこち破壊されたらたまったものではない。
      戦闘機とは、単体で用をなすものではなく、戦闘体系の中の一つの役割を果たすことで、威力を発揮するものです。
      韓国が戦闘機を開発と聞いて、違和感を覚えるのは、軍隊の戦闘体系もはっきりしないのに、個別の兵器だけを開発しても、何の意味があるの?という疑問が湧いてくるからですね。

    2. 引っ掛かったオタク より:


      朝鮮戦争では12.5対1と圧倒していたキルレシオがベトナムではダダ下がりで~ は有名なハナシだと思ってましたが…
      ミサイル全振りで固定武装が無かったF-4にM61搭載する改修型(F-4E)をつくるキッカケらしいですし、ナム戦は戦闘機同士の空対空やっとったんちゃいます??
      印パ戦争で亜音速機のナットが超音速機のMig21をタコって気を良くしたインドがナットを国産化更に独自改修してアジール造ったり…
      あーでもガチドッグファイトは第三世代機あたりまでかもしれませんね

  5. 雪だんご より:

    韓国や中国は我々日本側から見れば「信用できない」の一言ですが、
    実はこの2国以上に酷い国はさして珍しくないのです。
    恐ろしい事に、この2国の信用性は世界平均で見ると中間地あたりなのかも知れません…

    どこまで本当かは判断しかねていますが、中国は「債務の罠」で後進国を
    ハメようとしたら「ゴメン、利息すら払えません!」を連発されて
    「担保を差し押さえても大損だぞ!?」となっているらしいです。
    (個人的には「中国なんだから、それを見越して超悪質な取り立てを計画していたのでは?
    ”ないんだから、ない!”でどうしようもなくなる程間抜けだったのか?本当に?」と
    いまだに懐疑的なのですが…)

    韓国も中東やアフリカとのやり取りで痛い目を見る事は珍しくなく
    (逆に韓国側が不義理を働くケースも勿論?ありますが)、今回のインドネシアの件でも
    ”狐と狸の化かし合い”になっている模様。

    ある意味では、日本が馬鹿正直でお人好しであったが為にこうなったのかも?

  6. 世相マンボウ(^^) より:

    これはとても興味深いニュースです(^^)

    韓国さんには是非、日頃の
    日本へのインネンツケの時のように
    インドネシアとバチバチに死闘を繰り広げて
    観衆の期待に応えて欲しいものです。
    ただ、
    身近な社会でも
    チンピラヤクザはカタギ市民には
    声高に大声で因縁つけるものの
    ヤクザ同士の争いは,、
    闇の世界でドスで勝負して結果だけが
    事件として知られるようなものなので
    韓国さんとインドネシアさんの
    せこい闇の乱闘勝負が詳らかにされて
    私達の鑑賞に供されるのを期待するのは
    難しいものなのかもしれません。(^^);

  7. naga より:

    イランに対する韓国のやり方に比べれば良心的でしょう!?
    イラン←韓国←インドネシア、信頼できない国同士勝手にやってください。

    1. 呆け老人 より:

      >イラン←韓国←インドネシア、信頼できない国同士勝手にやってください
       南朝鮮もインドネシアもこれからは信用できない国であると世界中に宣言しているようなモノで、旨く立ち回ったつもりでも「信用」という貴重な資質を放棄したことを証明した事実が分かっていないのでしょうね。

  8. カズ より:

    共同開発の体ではあれども、実質は韓国側が受注した請負契約です。
    相次ぐ進捗遅延と仕様改劣をうけ、負担金の減額要求は当然のこと。

    当初契約時に負担金遅延ペナルティを謳わなかった韓国側の落度ですね。
    請負契約ってのは、「(安易に)請けたら負けよ!」ってことなのに・・。

    1. CRUSH より:

      「契約は、したモン勝ち」
      という安易だけど黄金の韓国風勝ちパターンに持ち込んだつもり、だったのかなぁ。

      例えば、ラオスのダム決壊。
      やらかしたのだとしても、いつでも逃げられる。
      逃げられて困るのは発注主側なので、追及もほどほどで止まる。

      「やったぜ!」
      と思ったのかもしれませんが、戦闘機開発だと、
      ・発注側に失うモノは何もない。
      ・受注側は成果を出さないと得るモノはない。
      やらかしたのだとしたら、支払ってもらえないのは自分。
      逃げたら困るのは受注者の自分自身。

      「アホ」ですね。
      あ、またアホと書くと嫌味を書いてくる人が出るのかな。

      1. カズ より:

        当初の計画では「米国の核心技術がふんだんに移転された」機体を韓国主導で共同開発し、尼国側は「完成機(50機)を自国に導入する」との運びだったはずです。

        (ある意味、”お約束どおり”の展開)
        本来なら「米国からの技術移転がままならず」の時点で契約無効でもおかしくない案件なのかとも。
        それにしても、構想を意気揚々とテイクオフしたKF-Xのオチが「KF-X(ペケ)」だったなんてですね。
        ・・。

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