外貨建債務抱える韓国で外貨準備60億ドル減少の意味
隣国から、少し気になる話題が入ってきました。2024年4月の外貨準備高が約60億ドル減少したのです。韓国銀行の説明によると、これは「市場安定化措置」などによるものだそうですが、やはり為替介入を行っている、ということなのでしょうか。もともと韓国は外貨建ての債務を抱えている国でもあり、単純に自国通貨安が好ましいとはいえないのが同国の実情なのでしょう。
目次
日本発の通貨危機の可能性は?
通常、自国通貨が下落する局面では、外国からおカネを借りている国では大きな負担が生じることもありますし、また、ひどいときには通貨危機に発展することもあります。なぜなら、自国通貨建てで見ると外貨建ての債務の返済負担が増えてしまうからです。
たとえば、日本企業が1ドル=100円のときに100万ドルのおカネを借り、そのおカネを生産活動に使ってしまったとしましょう。このとき、この企業の貸借対照表には負債側に1億円(=100万ドル×100円/ドル)が計上されます。
しかし、その後円安が進み、一気に1ドル=200円になってしまったら?
この場合、この企業にとっての負債は2億円に増えます。なぜなら、100万ドルを1ドル=200円で円換算しなければならないからです(企業会計上、負債の評価差額の1億円は、「営業外費用」の「為替差損」、「その他業務費用」の「外国為替売買損失」などに計上されます)。
規模に比し、外貨建の債務が非常に少ない
では、現在のような「円安局面」において、日本で通貨危機が発生する可能性はあるのでしょうか。
端的にいえば、その可能性は限りなくゼロに近いです。
先日の『日本で「韓国型通貨危機」が発生する可能性が低い理由』などでも指摘しましたが、いわゆる「韓国型通貨危機」が日本で発生する可能性は、非常に低いと考えられます。日本は経済・金融規模に比べ、外貨建ての負債が大変に少ないからです。
たとえば、2023年12月末時点において、日本から外国への債権(対外与信)は「最終リスクベース」だと5兆0435億ドル、「所在地ベース」だと5兆1738億ドルですが、外国から日本への債権は、「最終リスクベース」で1兆2681億ドル、「所在地ベース」で1兆3256億ドルです。
また、日本の外国からの債務については、自国通貨建て(つまり円建て)が7597億ドルであり、外国通貨建ては4919億ドルに過ぎません(図表1)。
図表1 日本と外国の債権債務関係
区分 | 金額 | 備考 |
日本から外国への債権 | 5兆0435億ドル | 最終リスクベース |
日本から外国への債権 | 5兆1738億ドル | 所在地ベース |
外国から日本への債権 | 1兆2681億ドル | 最終リスクベース |
外国から日本への債権 | 1兆3256億ドル | 所在地ベース |
うち外国通貨建て | 4919億ドル | 所在地ベース |
うち自国通貨建て | 7597億ドル | 所在地ベース |
(【出所】The Bank for International Settlements, Consolidated banking statistics データをもとに作成)
これに加えて日本銀行は米FRBや欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)等の各国中央銀行との間で金額無制限の為替スワップを保持していますので、いざとなれば、日本の金融機関は日銀を経由して、ドル、ユーロといったハード・カレンシーの調達が可能だからです。
いずれにせよ、「円安で日本に通貨危機」、などと口走ること自体、「金融理論も知らないし、現在の日本の統計なども見たことがない」、と自供しているようなものではないかと思う次第です。
隣国はどうなのか…外貨建て債務は2000億ドル少々
ただ、この「自国通貨安」からの「通貨危機」が「あり得ない」のは、「ここが日本だから」、です。
私たちの隣国・韓国に関しては、対外債権よりも外国からの債務の方が金額が多く、しかも対外債務全体(所在地ベースで3761億ドル、最終リスクベースで3825億ドル)のうち、外国通貨建ての債務が、じつに2247億ドルに達しています(図表2)
図表2 韓国と外国の債権債務関係
区分 | 金額 | 備考 |
韓国から外国への債権 | 2661億ドル | 最終リスクベース |
韓国から外国への債権 | 2766億ドル | 所在地ベース |
外国から韓国への債権 | 3825億ドル | 最終リスクベース |
外国から韓国への債権 | 3761億ドル | 所在地ベース |
うち外国通貨建て | 2247億ドル | 所在地ベース |
うち自国通貨建て | 1292億ドル | 所在地ベース |
(【出所】The Bank for International Settlements, Consolidated banking statistics データをもとに作成)
この金額、日本の基準から見たら、債権、債務ともに非常に少ないという気がするかもしれませんが、これは日本が金融大国だからであり、こうした基準に照らして外国を見ると、感覚がマヒするので注意してください。
韓国の場合は対外債務のうち外貨建ての負債が2000億ドルを超えていて、(とりわけ米ドルに対して)ウォン安が進み過ぎた場合は、通貨危機のリスクが生じてきます。
もちろん、かつての通貨危機時と違って、現状、韓国は対外債務(とくに1年内の短期債務)の額を大きく上回る外貨準備を持っている(ことになっている)ため、1997年のアジア通貨危機や2008年のリーマン危機時のようなシンプルな通貨危機に陥る可能性がそこまで高いわけではありません。
外貨準備統計で約60億ドルの減少
ただ、韓国の通貨当局が常時、為替介入を繰り返している可能性がある、という点については、以前から当ウェブサイトで取り上げて来たとおりなのですが、その際の基本となるのが、韓国の外貨準備統計です。
韓国銀行が7日に発表した、2024年4月末時点の外貨準備高は、前月と比べ約60億ドル減って4132.60億ドルとなりました(図表3)。単月の減少幅としては、約19ヵ月ぶりの大きさです。
図表3 韓国の外貨準備高(2024年4月末時点)
項目 | 2024年4月末 | 前月比 |
外貨準備合計 | 4132.60億ドル | ▲59.91億ドル |
うち金 | 47.95億ドル | ±0.00億ドル |
うちIMF-RP | 43.66億ドル | +0.32億ドル |
うちIMFSDR | 146.43億ドル | ▲0.60億ドル |
うち現金預金+有価証券 | 3894.57億ドル | ▲59.64億ドル |
(【出所】韓国銀行)
ではなぜ、60億ドル近くも外貨準備が落ち込んでしまったのでしょうか。
これについて韓国銀行はプレス・リリースで、次の3点を列挙しています。
- 国民年金との為替スワップなど市場安定化努力
- 四半期決算に合わせて増加していた外貨預金などが減少したこと
- 米ドル高の影響でドル以外の通貨の外貨準備が目減りしたこと
つまり、今回の外貨準備の減少は、あくまでも一時的な現象だ、というのが韓国銀行の言い分でしょう。
ちなみに「国民年金との為替スワップ」は、国民年金が外貨建有価証券に投資する際に、同基金に対し韓国銀行が外貨準備から外貨を融通する、というスキームのことを指しています(が、「市場安定化努力」とは一般に為替介入を指すことも多いようです)。
また、「四半期決算に合わせて」云々のくだりは、おそらくはLCRやNSFRといったバーゼル銀行規制に関連するもので、銀行が流動性比率を充足するために、外貨建の負債に対応する外貨建ての資産を保有しなければならない、といったルールのことをさしているものと考えられます。
(というか、「決算期に帳尻を合わせる動き」、などと公式の文書に書いてしまうこと自体、いかがなものかと思いますが…。)
FRB要因だけでほぼ説明がつく韓国の外貨準備高
いずれにせよ、これだけの額の外貨準備高の減少は、やはり印象的です。
とりわけコロナ禍後(とくに2020年3月以降)に限定していえば、韓国の外貨準備高は米FRBの金融緩和と金融引締めでだいたいの説明がつくのですが(図表4)、「FRBの金融引き締めの影響でいまだに韓国からの外貨流出がジワジワ進んでいる」、という可能性を強く示唆するものでもあります。
図表4 韓国の外貨準備高
(【出所】韓国銀行)
いずれにせよ、こうした韓国の資金調達構造に照らすならば、「韓国発通貨危機」という可能性から目が離せないゆえんです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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韓国が、通貨危機と金融危機のはざまで翻弄され続けるのは、自前資金の乏しさゆえの苦境。
キャッシュ・フローが厳しいのは不労資金(他資=ふろう・キャッシュ?)に依存してるから。
>不労資金(他資=ふろう・キャッシュ?)に依存してるから
昔から、不労資金に依存すると、不良になるようですね。
もしかして韓国の「残酷な4月」の影響か。
12月決算会社の配当支払いー>海外への資金流出。
外国人持ち株比率が高いとこうなる。
>四半期決算に合わせて増加していた外貨預金などが減少したこと
と、韓国銀行がプレスリリースで書いていますね。
だから、
もしかしなくても「残酷な4月」の結果ですね。
新宿会計士さん、韓国は国際社会における様々な課題への対応にパートナー()として協力していくべき重要な()隣国です。
自国の誇りある物事に対してk○○と呼称する、あちらの慣例に倣い、韓国型通貨危機をk通貨危機と呼称するべきではないでしょうか?
お示し頂いた客観的な数字で見てみると
あらためて韓国さんの崩壊寸前の窮状が
つまびらかになっていると感じます。
崩壊避けるために、普通にまともな国なら
まずは自国の見栄を張ったサムスンヒュンダイ等の
海外投資と資産を売り払って
自国経済通貨防衛の補填に準備して
他国には物乞い姿勢で援助を願い出る
そんな状況なのでしょう。
ところが韓国さんの場合には(笑)
この期におよんで自国の放漫の付けを
日本の朝日新聞などの偏向メディアと韓流さん
それと日本の鬱憤層どぶサヨさんの
騒ぎたてを頼みにして
日本にスワップニダとなすりつけを狙っており
さらには、朝日吉田の捏造が元と露見している
自称従軍慰安婦像撒き散らしまで
やめようとしないとは、その圧巻の
韓流らしいありようには舌を巻きます。
私達とはあまりに違うあり様で
理解が難しいのですが、もし
日本で類似のものを探すとすれば
江戸時代の山賊追い剥ぎさんたちのスタイルが
近いのかなあ?と感じます。