自転車、キックボード、モペッド…法制の見直しが必要

事故が相次ぐ電動キックボード、危険運転が多い自転車――。こうした問題に加え、ちょっと気になる論点があるとしたら、俗に「モペッド」などと呼ばれる原動機付自転車ではないでしょうか。この「モペッド」、ペダルをこがなくても動く自転車のことで、最近、都内などでもよく見かけるのですが、法的には「原動機付自転車」であり、運転免許証やヘルメット着用、ナンバープレートなどが必要です。しかし、無免許、ノーヘル、ノーナンバーで運転している者も多いようなのです。

電動キックボードで事故が増えて来たようだが…

最近、都内を歩いていると、やたらと目にするものが、危険な乗り物の数々です。

以前の『電動キックボードの事故を防ぐための講習制度の創設を』などを含め、これまでに何度も指摘してきた、いわゆる電動キックボードがその典型例でしょう。

改めて指摘しておくと、電動キックボードは現在、「最高速度は20㎞以下である」などの条件を満たすものであれば、運転免許証を持っていない人であっても、16歳以上であれば、誰でも乗ることができます。

また、基本的には車道(の左端)や自転車専用道路などを通行することとされているのですが、歩道を走行することも可能で、さらにヘルメット着用は「努力義務」とされており、ヘルメット未着用で電動キックボードを運転したとしても、それ自体に対する罰則はありません。

なぜこんなルールになっているのか――。

これについてはあくまでも著者自身の理解に基づけば、自転車に合わせた扱いではないでしょうか。

自転車の場合もたしかに、「車道を走ること」が義務付けられていて、また、ヘルメット着用も努力義務に留まっており、ノーヘルメットで走行しても罰則はありません。

しかも、最近だと電動アシスト自転車などが普及しているため、こうした自転車と電動キックボードには「性能的にあまり違いはないじゃないか」、などと考えるのであれば、電動キックボードに関する現在の取扱いも、これとあまり相違はない、などと考えることもできるのかもしれません。

電動キックボード事故は6倍に=共同通信

ただ、「現在の電動キックボードの扱いだと、事故が激増するのではないか」、とする懸念についてはこれまでに当ウェブサイトでも繰り返し指摘してきたとおりですが、案の定というべきでしょうか、こんな記事が出て来ています。

電動ボード事故、法改正後6倍に 制度周知不十分、死者出る懸念も

―――2024/04/06 04:55付 Yahoo!ニュースより【共同通信配信】

共同通信によると電動キックボードの一部で運転免許が不要になった昨年7月の法改正以来、1ヵ月あたりの事故件数が6倍超に急増しているのだそうです。これに加えて「新制度を知らないことが原因と見られる違反」も生じているほか、重傷事故も発生している、などともしています。

「6倍超で済んでまだ良かったね」、などと思わざるを得ません。

著者自身が目撃した事例に限定しても、▼人が多い歩道を縫うようにして電動キックボードで走行し、幼児にぶつかりそうになる、▼車道を逆走、▼ふざけて運転――などのケースは、枚挙にいとまがありません。ちなみにヘルメットを着用している事例はほとんど見かけません。

もちろん、運転する人のマナーなどにもよりますが、「運転免許なしに乗れる」ことの裏返しでしょうか、まともに運転免許証を持っている人ならばやらないような運転(たとえば「車道の右側を走る」、など)を頻繁に見かけるのは、やはり恐ろしいところです。

ちなみに日本維新の会の衆議院議員がX(旧ツイッター)に13日付で「電動キックボードの試乗会」に関する動画をポストしています。

「今後どんどん普及していくのだろうなと思います」。

立法に携わる方の発言としては、どこか他人事に見えるのは気のせいでしょうか(※この点、あくまでも個人的な感想ですが、現在の道路交通ルールのままで、これ以上普及してほしくはありません)。

電動アシスト自転車の問題点

ただし、道路上の安全という観点からは、電動アシスト自転車の運転についても、ちょっと注意する必要があります。

電動アシスト自転車はその名の通り、バッテリーで動力を補助するタイプの自転車で、ペダルを漕ぐと電力が助けてくれるため、一般的な自転車と比べると急な坂道も楽に登れますし、子供や重い荷物を載せても快適に走行できるなど、大変便利な自転車です。

ただ、あまり知られていませんが、自転車も道路交通法上は「車両」です。

道路交通法(第2条第1項第11号など)によると、自転車も電動アシスト自転車も、基本的に軽車両に分類されており、原則として車道を走らなければならないとされ、歩道を走行する際には歩行者優先の原則が適用されることを忘れてはなりません。

ところが、都内などでは最近、歩道を歩いていると、自転車が車道や歩道などを縦横無尽に走り回り、後ろからぶつかられそうになることもあります。フード・デリバリー系の事業者などは、とくにその傾向が強いようです(一刻一秒を争っているのでしょうか?)。

さらには、広い幹線道路と細い生活道路が交差する地点では、生活道路側の信号が青になっているにも関わらず、幹線道路側で信号無視をして突っ込んでくる自転車もおり、大変危険です。

これに加えて最近、「逆走・信号無視のママチャリ」を運転していた女性と自動車運転手のトラブルに関する動画がSNSなどで拡散していますが(※当ウェブサイトでは該当する動画のリンクは取り上げません)、これも客観的に見れば、自転車側に過失が大きそうです。

というのも、この事例に関しても、自転車を運転する側が「左側通行」の原則を無視するなど、交通法規を無視しているからです。

そろそろ講習済み証制度などを始めては?

この点、当ウェブサイトにて指摘し続けていますが、やはりそろそろ、自転車(とくに電動アシスト自転車)や電動キックボードなどの運転者を対象に、道路交通法の講習を、何らかの形で義務付けるべきではないでしょうか。

たとえば運転免許証を持っていない人を対象に、無料で行われる30分程度の講習を受講し、顔写真入りの「講習済み証」などを交付して携行を義務付け、交通違反があった場合には反則金を徴収したり、違反講習を義務付けたりする――などの仕組みを入れるべきではないかと思うのです。

これにはたとえば、免許センターの担当者が中学3年生や高等学校1年生などを対象に全国の中高を訪れる、などの形でも良いと思いますし、講習会であれば、近所の警察署のロビーなどで行っても良いのではないでしょうか。

この世の中には、「面倒だから運転免許は取りたくない」という人もいらっしゃるでしょうから、「運転免許証ではなく、あくまでも自転車や電動キックボード専用の受講済み証ですよ」、と銘打って、運転免許がない人が自転車やキックボードを運転するための「最低限の交通ルール」を教える、という考え方です。

違法電動モペッドの問題点

さて、こうしたなかで、もうひとつ取り上げておきたいのが、「明らかな違法行為」です。

自転車評論家の疋田智氏がウェブ評論サイト『プレジデントオンライン』に17日、こんな記事を寄稿しています。

渋谷区での摘発は入れ食い状態…都内をオラつく「違法電動モペッド」がちっとも減らない根本原因

―――2024/04/17 9:00付 プレジデントオンラインより

表題にある「違法電動モペッド」とは、完全電動の自転車っぽい乗り物のことです。ちなみに「モペッド」は「ペダル(Pedal)付きのモーターバイク(Motorbike)」を略した「Moped」のことだそうです。

じつはこの疋田氏が指摘するところの「モペッド」、最近、都内などで見かけることが増えてきていますが、通常の自転車と比べて車輪も太く、ペダルをこげば進むという意味では自転車っぽいものですが、モーターで自走することもできます。

疋田氏によると、この「モペッド」が流行している理由は、次のような特徴があると「思われている」からなのだそうです。

  • 早朝(=超深夜)酒を飲んでいても捕まらない
  • 免許が要らない
  • ヘルメットも不要、髪型が崩れない
  • ガソリン不要、維持費が安い

このうちの4番目を除けば、どれも間違いです。

飲酒運転は通常の自転車でもアウトですので論外ですが、「免許が要らない」、「ヘルメットも不要」に関していえば、「モペッド」に関しては当てはまりません。この「モペッド」は道路交通法上の自転車ではなく、「原動機付自転車」に該当しているからです。

疋田氏はこのモペッドに乗っている人たちの多くが無免許、ノーヘルで、ナンバープレートもつけていない、などと指摘するのですが、問題はそれだけではありません。モペッドの多くは、任意保険はおろか、自賠責にも入っていない、という点にあります。

今すぐ取締が必要:場合によっては輸入管理強化も?

これで人身事故をおこしたら、どうなるか――。

数千万円、いや1億円を超えるかもしれない損害賠償は、ずーっと加害者本人が払い続けることになるのだ」。

疋田氏はそう警告するのですが、人身事故の被害者の側からしても同様に、たまったものではありません。

無保険の自動車・原付にはねられて怪我をしても、保険から賠償金が払われないわけですから、加害者が逃亡するリスクもあります。

ではなぜ、こんな危険な乗り物が増えているのでしょうか。

記事によれば、この手の「モペッド」の多くはネットで販売されており、ウェブサイト上は「本品は原付バイクです」などと注記されているものの、「ユーザーのほとんどは自転車として乗」っている、というのです。

これについて疋田氏は、こう力説します。

放っておいていいのだろうか。/いいわけがない。/警察による検挙もいいが、最初に手を付けるべきはどこからだろうか。わかりきっている。供給の根本を断つことだ。『ネットでの販売禁止、もし売るならば売る側がナンバーの代理登録をすること』あたりだろう」。

この点については大筋同意しますが、ここで悩ましい問題も出ます。

もしもこの手の原動機付自転車をネット販売しているのが外国(中国など)の業者だった場合には、どうすれば良いのでしょうか?外国から部品をバラバラにして送り付けられると、当局としては取り締まりようがないのではないでしょうか?

そういえば、先日の『TBSが「中国ECアプリ」のコラボCM流す=東スポ』でも紹介したとおり、一部の中国系のECサイトでは、異常に安い商品を販売していることなどが話題となっています。

この手のサイトを巡っては、ほかにも問題がいくつかあるようなのですが、これらについては当ウェブサイトとしてはまだ調査中の事柄もありますので、本稿ですべて列挙することはしませんが、現実問題として、先日取り上げた中国系のECサイトでも「モペッド」は取り扱われているようです。

このように考えていくと、日本の道路交通の安全を脅かしている商品の一部が中国からやってきている可能性がある、ということであり、やはり輸入管理などの仕組みも強化していかなければならないのかもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. CRUSH より:

    思い出されるのは、
    ①大型二輪は教習所で免許とれない制度。
    ②高速道路で2人乗りできない規制。
    ③高速道路で低速車扱いしてた規制。

    馬鹿な役人が馬鹿なPTA?あたりとコラボして、
    「安全のため」
    という大義名分を押し立てて規制(役人人生における昇進評価UP?)していました。

    反対運動と外圧もあって、いざ規制を解除してみたらなんてことはない、
    「なんにも変わらない日常」

    規制に意味も効果も無かったのですな。
    アホらしいし、赤っ恥ですよ。
    (可哀想だから誰も言いませんが。)

    DJポリスあたりからですかね、日本の警察もようやく
    「規制して止める」のではなくて
    「安全に流してナンボ」の考え方に変わってきたのかな。

    まそれはともかく、あれほど馬鹿みたいに安全!安全!と経済や自由を止めてでも規制してやめなかった日本の警察が、電動スケーターについては積極的(に見える)に導入しようとしてる。

    実に怪しい。利権の臭い。
    そもそも電池駆動といだけで中華な臭いが強いのに。

    こういうのにツッコミ入れてくれるならば、馬鹿野党でも投票してあげるんだけどなあ。

  2. 簿記3級 より:

    いわゆる五大都市圏と言われる都市でも東京は最先端であり地方と交通事情が変わってきているようですね。
    ムキムキの質量で動く物体は圧力に応じて課税したり厳罰化する必要があるのかもしれません。
    力、スピード、パワーを持つ者は責任が生じるということでしょうか。

  3. 引っ掛かったオタク より:

    粛々と道交法と道路運送車両法を適用し片っ端から取り締まれば良いだけですわ
    自賠責保険掛けずにモペッド公道転がしてりゃ「無保険車運行」6点で前歴無くとも一発免停レベルの犯罪ですし
    現状は警察官が事務処理を面倒くさがって放置しつづけてきた結果に過ぎまへん
    今更「新たな法整備」なんぞゆーちょーにやるんも好きにせえでっけど、既存の法体系で大概アゲられますし
    法整備で”明確”に規定するならまず大昔の「国会答弁」くらいしか無い『歩道を走行する場合の自転車のそくど上限を明文で規定』せえや!
    くらいでっかね
    疋田はんも常日頃「まず”マナー”以前に”ルール”を守れ」て発信しとりまっせ

  4. とむ より:

    自分の知識不足で違うかもしれませんが、
    電動キックボード等のそもそもの許認可は国土交通省ではないのでしょうか?
    運用というか、取り締まりは警察の管轄と思います。

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