AUKUSへの「日本参加検討」報道に中国が強く反発
スパイ防止法などがない日本が「JAUKUS」に入るのはまだ少し早いのかもしれませんが、それでも一部メディアが報じている「AUKUS第2の柱」への日本の協力が実現すれば、それに向けての一歩となるかもしれません。おりしも高市早苗氏や小林鷹之氏らが強く推進してきたセキュリティ・クリアランス(SC)などの法制化が進むなかで、日本のAUKUSへの協力は、日本としては歓迎すべき動きそのものでしょう。その証拠が、中国の反応です。
目次
外交は人間関係の延長上で理解可能
そもそも外交は、基本的に国益を最大化する重要な手段です。
「いきなり何を難しいことを」。
そう不満に思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、外交とは国と国とのおつきあいのことですが、国もしょせんは人間の集合体ですので、人間関係の延長で理解することが可能です。これについては、私たちの人間関係に照らして考えてもわかると思います。私たちの多くは仕事をするために人付き合いをしますし、多くの場合、人と付き合わなければ生きていけないからです。
もちろん、世の中には「他人と接触を絶って生きていく」という人がいないわけではないのですが、通常の文明的な暮らしを送るのであれば、店でモノを買うにしても、働いてカネを稼ぐにしても、多くの場合、私たち人間は他人と関わらなければなりません。
国と国の関係も、これと同じです。
北朝鮮のように、国際社会からの孤立を選ぶ国もないわけではないのですが、日本の場合は国際社会から孤立するわけにはいきません。外国と貿易をしたり、外国におカネを貸したり、工場を投資したり、はたまた人材交流を行ったりするのであれば、外国との国交は必要です。
外交の2つの目的は経済と軍事:人間関係は4象限で理解可能
そして、外交は基本的に、「経済的な利益」と「軍事的な利益」を目的としています。
経済的利益は、わかりやすくいえば貿易などを通じ、国民生活を豊かにすることです。日本でしか作れない製品を外国に売れば、日本は儲かりますし、外国も喜びます。外国でしか作れない製品を日本が買ってくれば、外国は儲かり、日本の国民生活は豊かになります。
また、軍事的利益は、外国と付き合うことで戦争のリスクを減らしたり、万が一、外国から攻め込まれたときに助けてくれる国を増やしたりすることを意味します。日本のように「平和憲法」を持っている国であれば、なおさら、戦争を防ぐための外交が大切だということがよくわかるでしょう。
こうしたなかで、外交の重要な視点があるとしたら、「利害関係」と「基本的価値」です。
これについて考える前に、人間関係の「利害と親近感」の論点を考察しておきましょう。人間関係でも、「利害関係が一致する相手」とはお付き合いせざるを得ませんが、利害関係がなくても、人間的に共感し合える関係であれば、その相手とは仲良くなれるかもしれません。
つまり、人間関係の場合は、「人間的には好きになれないけれども、仕事上、どうしてもその人と付き合わなければならない」という事例もありますし、「べつに利害関係はないけれども、この人とは仲良くなれる」、という事例もあります。
これを「利害関係の有無」、「親しみを感じるかどうか」という2軸で一般化すると、人間関係には少なくとも次の①~④の4つの類型が存在するはずです(家族、血縁、親戚づきあいなどについては、とりあえず脇に置きます)。
- ①利害関係あり、人間的に親しみを感じる
- ②利害関係あり、人間的に親しみを感じない
- ③利害関係なし、人間的に親しみを感じる
- ④利害関係なし、人間的に親しみを感じない
ちなみに人間関係で最も重視すべきは①のような相手であり、また、このような相手は利害関係が消滅しても、③のような関係になり、旧交を温め続けることもあります。①は気の合う上司、③は学校時代の恩師や昔お世話になった上司、といった具合です。
外交関係も4象限で…経済と軍事の利益最大化を図るべし
なお、世の中の人間関係の悩みは多くの場合、上記②に尽きるわけで、書店で人間関係の本を探してみると、圧倒的多数が「苦手な上司との付き合い方」だったりすることがその証拠でしょう。また、④の関係については議論するまでもありません。勝手に消滅するからです。
国家の外交関係にも、これと同じようなことがいえます。
つまり、日本にとって「利害関係上、付き合わなければならない国」、「基本的価値を共有している国」などに分類していくと、次の4つの類型に分けられるはずなのです。
- ①基本的価値を共有する、戦略的利益を共有する
- ②基本的価値を共有せず、戦略的利益を共有する
- ③基本的価値を共有する、戦略的利益を共有せず
- ④基本的価値を共有せず、戦略的利益を共有せず
日本が最も重視すべきは①の相手国であり、その具体例としては米国を筆頭とするG7諸国、豪州、台湾などが挙げられます。
ただ、②のような相手国――つまり、日本とは基本的な価値を共有していないけれども、お付き合いせざるを得ない相手国があることも忘れてはなりません。その具体例としては、中国やロシア、中東諸国などが挙げられるかもしれません。
FOIPとクアッドは日本外交の大きな転換
この点、麻生太郎総理大臣が提唱した「自由と繁栄の弧」構想を受け、故・安倍晋三総理大臣が唱え、菅義偉総理大臣が完成させた「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」は、日本の外交をまさに従来の「近隣国重視型」から、「価値観重視型」に転換させるものでした。
FOIP以降、日本は国際的な約束を誠実に履行するような諸国との関係を重視し、そうでない国との関係をほどほどに抑える方向に舵を切ったのです。
また、この過程でFOIPにインドを引き込んだのも、日本の近年の大きな外交的成果でしょう。
インドが日本にとって基本的価値を共有しているかどうかは議論があるところですが、少なくとも日米豪印4ヵ国の「クアッド」パートナーシップが、広い意味での「安倍外交」におけるFOIPを象徴する成果のひとつであることは間違いありません。
この点、岸田文雄・現首相が、ごく一部の「約束を平気で破る国」との「関係改善」を志向しているフシがある点については少し気になりますが、それでも日米同盟を重視し、深化させていくとともに、英国、豪州、台湾といった諸国との友好関係を深めていくという姿勢は、基本的には正しいと考えて良いでしょう。
AUKUS→JAUKUSへの道は?
さて、米英豪の3ヵ国が安全保障的に連携している枠組のことを、俗に「AUKUS」と呼びます。
この連携を巡り、ずいぶんと以前の『英制服組トップがAUKUSの日本の参加に前向き発言』などでも取り上げて来たとおり、当ウェブサイトとしては「日本も是非とも参加していただきたいものだ」、などと考えていました。
その理由は簡単で、米国も英国も豪州も、日本が基本的価値を共有する相手国だからです。
「AUKUS」に日本が参加するとしたら、「JAUKUS」、でしょうか。
こうしたなかで、このAUKUSを巡っては、いくつかのメディアが「日本が参加することが検討されている」などと報じ始めています。当初は外国語メディアの報道が中心だったのですが、日本時間の9日になると、ブルームバーグをはじめ、いくつかの日本語版のメディアもこれを報じているのです。
米英豪、安全保障枠組みへの日本の参加を検討-先端技術分野で
―――2024年4月9日 11:06 JST付 Bloombergより
現在、岸田文雄首相が米国を訪問しているなかで、この手の報道が出てくることは、興味深い現象です。
ちなみにブルームバーグによると、英米豪3ヵ国は現在、このAUKUSの「第2の柱」である超音速兵器や人工知能(AI)、量子コンピューティングなどの先端技術分野で日本と協力することを検討しているのだそうですが、「第1の柱」である豪州への原潜配備については「日本の協力を求めない方針」とのことです。
中国がAUKUSへの日本参加に強く反発
ただ、これに対するもっと興味深い反応は、これではないでしょうか。
2024年4月8日外交部发言人毛宁主持例行记者会
―――2024-04-08 18:55付 中国外交部HPより
中国政府・外交部(※外務省に相当)の毛寧(もう・ねい)報道官は8日、ロイター記者の質問に対し、このAUKUS拡大に関して米国を牽制しているのです。該当する記述をそのまま抜粋しておきましょう。
ロイター記者「近期有报道称,美英澳三边安全伙伴关系(AUKUS)即将就接纳日本等新成员开始正式谈判。中方是否注意到相关报道,对此有何回应?」
毛寧氏「我们注意到有关报道。美英澳不顾地区国家和国际社会对于核扩散风险的普遍担忧,不断释放所谓“三边安全伙伴关系”扩员信号,诱拉部分国家入伙,加剧亚太军备竞赛,破坏地区和平稳定。中方对此表示严重关切。我们反对有关国家拼凑排他性“小圈子”,制造阵营对抗。日本尤其应当深刻汲取历史教训,在军事安全领域谨言慎行」。
本当にわかりやすい反応です。
いちおう翻訳エンジンなどを参考に、日本語に意訳しておくと、毛寧氏の見解は、こんな具合でしょう。
- 関連する報道によれば、米英豪の3ヵ国は核拡散に関する地域諸国や国際社会の一般的な懸念を無視し、いわゆる「三国パートナーシップ」への一部の国に同盟への参加を促している
- こうした動きはアジア太平洋地域の軍拡競争を激化させ、地域の平和と安定を損なうもので、中国はこれについて深刻な懸念を表明しており、また、私たちは、関係国が排他的な「小さなサークル」を形成して陣営間の対立を生み出すことに反対する
- とくに日本は歴史の教訓から学び、軍事安全保障分野での言動には慎重になるべきだ
日本の記者会見などのように、「報道にいちいち反応することは控えます」などと述べておけば済む話なのに、「日本がAUKUSに入ると困る」と大声で叫んでくれるのですから、本当にありがたい話です。
くどいようですが、中国やロシア、北朝鮮など、日本の近隣にある少なくとも4つの無法国家は、日本とは基本的価値を共有していません。
日本にもコストは必要だが…AUKUS参加は正しい道
この点、日本がAUKUSに入るとなれば、防衛費の上昇に加え、自衛隊や日本がテロや戦争に巻き込まれるリスクを高めるなどのコストも生じるかもしれませんが、それ以上に自由・民主主義陣営の結束を示すことができるうえ、日米同盟をさらに重層化することにもつながる――などのメリットが得られます。
また、スパイ防止法などの法制度がない日本が現状でAUKUSに本格的に入れるかといえば、そこは微妙ではあります。
ただ、高市早苗・経済安保担当相や小林鷹之・衆議院議員(前経済安保担当相)らが強力に推し進めているセキュリティ・クリアランス(SC)などの法制化の動きが進んでいけば、将来的に日本がAUKUSに全面的に参加し、これが「JAUKUS」に発展していく可能性を高めるでしょう。
その意味では、まずはAUKUSの「第2の柱」から日本が協力する関係が出来上がるのは、歓迎すべき話と言わざるを得ないと思うのですが、いかがでしょうか。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
あの国のやりそうなことですね。 知的所有権保護できない国に言われたくない。
朝日が反対するならそれが正解だ。今回も伝統芸が演じられるのでしょうか。
>朝日が反対するならそれが正解だ。
それ私も使わせていただきます。m(_ _)m
毎度、ばかばかしいお話を。
中国:「「朝日が反対するならそれが正解だ」と言われるから、朝日新聞は反対するな」
まあ、朝日新聞が反対しようがしまいが、AUKUSに日本参加になれば、幹部から記者に叱責がくるでしょう。
中国が日本に世論工作を仕掛けるか、それとも中国に忖度したマスゴミや、自身を中国と心理的一体化した大学教授らが、「日本はAUKUSに参加すべきでない」と言い出すでしょう。
蛇足ですが、AUKUS参加を阻止するために、中国で日本人が国家安全維持法違反で拘束されるのでしょうか。
このあたりは、新宿会計士さんのご意見に、全面的に賛同致します。
ただ、中国が少子化の影響で、GDPで米国に追いつく可能性は著しく減ってきた、という状況は、踏まえる必要があるでしょう。そこまで中国を警戒する必要はないのかもしれない。
とはいえ、油断は禁物。今しばらくは、中国抑制で行くべきかな。
GDPで米国を追い越せないことが分かってしまったからこそ、今が一番危険かも知れないと考えています。
今よりも5年後の方が、5年後より10年後の方が、米国との軍事力、経済力のギャップが開いていくのであれば、現在が軍事力を背景とした現状変更の唯一のチャンスと考えるかも知れません。
「そんなことをしたら経済制裁くらってドカ貧だよ」と思うかもしれませんが、独裁国家には常識が通用しないことは多々あります。国民から突き上げを喰らった共産党幹部が国民の目を外に向けるために軍需衝突を引き起こす可能性も十分あります。
警戒は怠らず、出来ることを粛々と進めていく必要があると思います。
日中韓首脳会談で韓国に騒がせて妨害しようと。
このタイミングで外報から複数出てるなら、観測気球<事前広報 みたく見えますがさて…
中共は人口ボーナス活用にしくじったげに見えますし、今更胡錦濤路線には戻れない戻らない戻ったところでほぼ意味無し状態ですし、何処かの階層で短絡バカが暴発しないよう祈念しつつ捨て置くが佳いでせう
>とくに日本は歴史の教訓から学び
個人的にはここの方が驚きました。
言ってみれば彼ら定番の枕詞でしかないのですが、現在ではこれは既に、日本人には全く説得力を失い、どころか反発を招く言葉となり果てました。
日本を操縦したいのであれば無意味、懐柔しようとするのならば逆効果、無視されたら面子も潰れるしで、言わないほうがまだマシ。
20年前ならまだ、真に受ける者、呼応する回し者がそれぞれ結構な数居たことでしょう。軍事安全保障など持ち出しても、「中国にだけは言われたくない」「もはやそんな時代ではなくなったし、しかもそれは中国のせい」という意見が多発の上に堂々と言える状況にまでなり、且つそれらの意見は誇張抜きで過半に見えます。
中共の公式発言は多くの場合、相手や関係国の意など介さず唯我独尊というところではありますが、それにしても今回の発言は認識が古すぎるか、相手をどうこうするための工夫も気概も無い。アップデートもせず、過去の威光も失せ、現代的な手管も無い。”狡猾老獪な中国”というものはもはや存在しないのだなと感じます。
独裁が長すぎるせいじゃないかしら。習体制の集大成……なんつってな。
そしてちょうど今、国民党の馬英九前総統が中国を訪問中。まるで共産党と手を組み一体化ししつつあるかのふるまい。やはり血は争えない。20世紀から来た亡霊たちは過去に向かって冒進を続ける。アメリカに見捨てられつつある中国国民党、求心力訴求力を訴えるは歴史に学べとしか言えないことを暴露しているのです。
JAUKUSにはならんでしょう。
日本には原子力潜水艦技術がないので、第1の柱に参加協力ができないから。通常動力潜水艦と原子力潜水艦では必要とされる技術がかなり異なります。そして全面参加しないのであれば、AUKUSの名称を変更するまでもない。
それと日豪の防衛協力の枠組みは他にありますから。
米「日本の役割 年内に」との見出しが4月9日付の見出しが日経新聞の夕刊に出ています。
記事によると、米政府高官が日本をインド太平洋で中国を抑止する中核と位置づけているそうで、日本の役割を年内に決めるとの事ですが、この記事を読むと、アメリカの方針に日本が従うかの様な印象を受けます。
日経新聞は、「日本がアメリカの対中政策に巻き込まれる」との批判が起こることを期待しているかのような記事です。
アメリカ追従の伝統がある宏池会政権なので、このような不安もあながち的外れではないのですが。
中国側からみると所謂西側の自由な雰囲気は怖いだろうなあ・・・
共産党指導部というこわ~い存在が国民(人民)から捨てられてしまうのだから。
だから香港を待ちきれずに強制的に併合してしまった。
独裁者の究極目的は独裁を続けることだからこうなるのは見えている。
さてさて我々と独裁国家はどうしても葛藤をするしかないのか。
いい方法は無いものか