アジアスーパーグリッド構想、正気の沙汰ではありません。中国、北朝鮮、ロシアを含めた日本の近隣にある4つの無法国家と電力網を共有すれば、日本の安全保障そのものが脅威にさらされるからです。これとあわせて改めて直視しておかねばならないのは、再エネはベースロード電源にはなり得ない、という不都合な事実です。
目次
エネルギー安定供給は非常に難しい課題――3つの観点
「電力の安定供給」は、「言うは易し、行うは難し」、の典型的な課題でもあります。
そもそも電力には①現代の技術では効率よく蓄電することが難しい、②送電ロスをゼロにすることはできない、そして③電力系統上、供給側と需要側のバランスは常に一致していなければならない、という、少なくとも3つの重要な前提があるからです。
まず、蓄電の問題があります。
蓄電(バッテリーなど)の技術については過去と比べ、ずいぶんと向上していて、最近だと災害用の大容量バッテリーなども発売されていたりします(たとえばアマゾンのウェブサイトなどで調べると『ポータブル電源』などに関するリンクが多く見つかります)。
しかし、やはり事業所や家庭で使用する電源はについては貯めておくことが難しく、使用する電力は都度、発電所で発電しなければなりません。
よく「太陽光や風力で作った電力を電池で貯めておけば良いのに」、などと主張する人もいるのですが、蓄電効率の問題があるほか、現在の技術力だと、蓄電池は何度も充電・放電を繰り返していると、すぐに寿命が到来して使えなくなります。
また、「太陽光や風力で作った電力で揚水をすれば良いのに」、などと述べる人もいますが、揚水式水力発電のエネルギー効率は一般に70%から高くても80%程度とされているようであり、残念ながら、「全国に揚水式水力発電施設を作れば良いじゃないか」、といった単純な問題でもありません。
送電ロスと需給の一致
次に、こうした蓄電の問題とも部分的に重なるのが、送電ロスの問題です。
経産省ウェブサイトに掲載されている、電気・ガス取引監視当委員会が2019年7月31日付で作成した『約款上の送電ロスの取扱いについて』P6によると、送電ロスは大きく①送配電線・変圧器等の抵抗損失(電流の二乗×抵抗)、②変電所内の消費電力――などにより発生。
これに加えて発電動向や需要動向、送配電設備の性能などによっても変動するとされており、同資料のP3などを眺めると、どの電力会社でも「特別高圧」で1~3%、「高圧」で2~6%、「低圧」で7~9%程度の送電ロスを約款で織り込んでいることがわかります。
電力は地産地消が原則だ、などといわれることが多いのは、電力はできるだけ発電所から近い場所で消費しなければ効率が悪い、という意味でもあります。
そのうえで③電力系統では電力の需給が一致しなければならない、という論点は、以前の『これだけある!太陽光発電の問題』でも引用したとおり、これまでに当ウェブサイトにて何度も取り上げて来たもののひとつです。現実に九州など一部の地域では、電力は発電し過ぎても「捨てられる」、という事態も生じているのです。
そもそも電力の需給に不均衡が生じると、周波数が狂ってきます。周波数が狂うと電気機器が誤作動を起こす可能性があるなど、社会全体に大きな問題をもたらしますので、周波数が低下したり、上昇したりしないよう、電力会社としてはかなり気を遣わなければなりません。
原子力などの安定電源が必要である理由
こうした少なくとも3つの課題――①現在の技術では効率的な蓄電は難しい、②発電所から距離があるほど送電ロスは大きくなる、③電力は需給を一致させなければならない――から出てくる結論は、「現在の技術では、電力は使う都度、臨機応変に発電しなければならない」、というものです。
このように考えていくと、「私たちの社会を維持するためには、電力の安定供給が必要だ」、というお題目自体、いかに難しい課題であるかがわかってきます。
つまり、社会全体で常に使用する電力に相当する部分は、安価で常に安定的に一定の電力を生み出し続けてくれるベース電源(一般水力発電、原子力発電、地熱発電など)、需要変動に応じて発電量を増減させられるミドル電源(LNGなど)、出力を機動的に調整可能なピーク電源をミックスすることが必要です。
この点、ベース電源部分だけでピーク時の需要まで賄おうとするには、少し無理があります。原発をいくらでも増設すれば良い、という話ではなく、現実的には原発などの安定電源である程度の電力を生み出しつつ、調整可能な電源(LNG火力発電、揚水発電など)を組み合わせるのが理想的です。
再エネは電力の安定の脅威
こうした電力の物理的・経済的性質を踏まえたら、太陽光発電を含めた再エネの多くが、電力の安定供給という観点からは、決して好ましい発電手段ではありません。というよりも、電力の安定という観点からは、むしろ再エネは「脅威」ですらあります。
太陽光発電を例に挙げましょう。
太陽光発電は①同じ電力を生み出すのに、原発と比べて100~200倍という多大な面積を必要とする、②各地で環境破壊の問題を引き起こしている、そして③発電量が安定せず、人為的にコントロールすることができない、という、とても大きな問題を抱えています。
もちろん、太陽光発電は、たとえば非常時の電源としても期待できるなどの利点もあるのですが、少なくともベースロード電源には不適です。発電量は時間、天候、季節、緯度などによって大きく変動するからです。少なくとも夜間の発電量はゼロですし、ちょっと雨が降っただけでも、発電量は激減してしまいます。
不安定で非効率――。
民主党政権の負の遺産:原発稼働停止と再エネ買取制度
こんな電源が増えている理由はもちろん、民主党政権時代の2012年に始まった、再エネの買取制度にあります。
政府の『固定価格買取制度とは』によると、これは「再エネで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度」のことで、その買取原資は私たち一般人から強制的に徴収される再エネ賦課金です。
『再エネ賦課金のせいで5月から全国的に電気代値上げへ』などでも引用したとおり、この再エネ賦課金は5月から1kWhあたり3.49円に引き上げられます。今年度の賦課金が1.4円だったことを踏まえると、kWhあたり2.09円の値上げであり、毎月400kWh使用する家庭は年間で16,752円の負担です。
再エネ賦課金が1.4円→3.49円になる影響(毎月400kWh消費する家庭の場合)
- 1ヵ月あたり…560円から1,396円に値上げ(+836円)
- 1年あたり…6,720円から16,752円に値上げ(+10,032円)
正直、これだけ高額の負担金を支払い、しかも電力の安定供給にまったく役に立たない発電施設を支えているのですから、国民はもっと怒っても良いのではないでしょうか。
しかも、この再エネ買取制度とあわせ、民主党政権時代には主要原発が稼働を停止してしまいましたし、それによって現時点までで電力供給が頻繁に不安定化していることは間違いありません。これを民主党政権の負の遺産といわずして、なんと呼べばよいのでしょうか。
なお、どうでも良い話ですが、これを「民主党政権の負の遺産」と称すると、最近、きまって読者コメント欄に「自民党も再エネ買取制度に賛成していたからこれは民主党政権の負の遺産ではない」、などとする支離滅裂なコメントがわきます。
自民党が政権に復帰してから12年近くが経過するなか、原発再稼働も進まず、再エネ賦課金制度も続いているわけですから、この問題における自民党の不作為の責任は明らかではありますが、だからといって民主党政権の負の功績が消えるわけではありませんので、ご注意ください。
中国の意向?
さて、こうした太陽光発電を含めた再エネの強引な推進では、中国製の太陽光パネルが使われている、中華系の発電業者が日本国内に太陽光発電パネルを大量設置している、といった疑いが、最近、SNS上で提起されるようになりました。
これについては当ウェブサイトとして、公式統計などをもとに、その情報の正しさを裏付ける証拠を得ているわけではありません。
しかし、もしも「日本が太陽光発電を推進すれば中国が潤う」という構図があるのだとすれば、私たち日本国民が決して安くない再エネ賦課金を支払い、間接的に中国の企業などを儲けさせているようなものじゃないか、といった指摘も成り立ちます。
これに加えて「アジアスーパーグリッド」構想も見逃せません。
『「反原発活動家」が電力政策の方向性を決めていないか』などを含め、先日から取り上げているとおり、「内閣府の再エネタスクフォースに提出された資料に中国企業の透かしが入っていた」とされる問題の本質は、政府の政策の方向性を決めるのに、特定の勢力が関わっている疑いが生じているのです
ASG構想の危険性
これに関しては日経新聞社の滝田洋一氏が25日、こんな内容をXにポストしています。
ポストに出て来る「自然エネルギー財団」とは「公益財団法人自然エネルギー財団」のことで、同財団のウェブサイト『アジアスーパーグリッド(ASG)とは』のページに出て来る地図の画像をあわせて提示しています。
この構想、「アジア各地に豊富に存在する太陽光、風力、水力などの自然エネルギー資源を、各国が相互に活用できるようにするため、各国の送電網を結んでつくりだす国際的な送電網」のことだそうですが、中国、モンゴル、ロシアなどの間での限定的な連携を東アジア全体に広げようとするものです。
政治的に対立し、そして決して信頼ができない相手国(とくに中国、ロシア、北朝鮮など、日本の近隣にある4つの無法国家)と電力網をつなぐなど、正気の沙汰ではありません。
日本の電力網が中国などに握られてしまうと、たとえば日中が政治対立する局面で、中国が日本への送電を停止すると宣言すれば、それで日本は中国の言いなりになるしかなくなるからです。
小林鷹之氏「安全保障上、国際送電網で大陸と繋ぐわけにはいかない」
このASGについては、経済安全保障の専門家でもある小林鷹之・前経済安保担当相が26日、こんな内容をポストしました。
ポストによると、小林氏は3年前の予算委員会分科会の質疑で、こんな発言をしたそうです。
「アジアスーパーグリッドなる構想もあるようだが、わが国は安全保障上、国際送電網で大陸と繋ぐわけにはいかない」。
これがすべてでしょう。
ちなみに小林氏は「日本は、エネルギーミックスを一国だけで完結させなければならない、という(欧州とは異なる)特殊事情がある」としたうえで、「自給率を上げつつ、電力源の多様化の必要性は欧州とは比べ物にならないほど大きいことに留意する必要がある」と警告しています。
再エネを推進するのも結構ですが、根本にある問題点――高コスト、発電量が予測困難、外国事業者による環境破壊…等々――を放置したまま、そして原発の稼働が進まないという状況を踏まえると、やはり政策の優先順序は是正しなければなりません。
この点、「反原発運動」を繰り広げている人たちはあまり意識していない論点かもしれませんが、じつは、エネルギー供給は安全保障に直結する課題です。
あまり考えたくない話ですが、もしも何らかの手段で日本全体の電力網がズタズタに寸断されるようなことがあれば、日本は国家としての機能を停止してしまいかねません。現代社会は電力が安定的に供給されていることを前提として運営されているからです。
再エネ推進は電力供給を不安定化させるものであり、また、アジアスーパーグリッド構想は、この日本の電力網自体を外国に委ねるという意味で、安全保障の観点からは自殺のようなものです。
もしかして、再エネを推進させて日本の電力供給を不安定化し、日本をアジアスーパーグリッドに組み込むことが、中国共産党の意向に沿っているものなのだとしたら?
あまり考えたくはない話ですが、あり得ない話でもないでしょう。
いずれにせよ、電力の供給が阻害されるということは、あってはならない話です。
さしあたって太陽光発電などの再エネに関しては、発電設備の将来的な撤去費用などを積み立てさせる、新規の設置を抑制する、(将来的には)買取価格を適正価格にまで引き下げる――など、社会全体でそのコストを適正化していかなければなりません。
それと同時に、再稼働可能な原発の稼働を急ぐことと、次世代炉を含めた原発の新増設を進めていくことは、日本全体が急がねばならない論点であると考えられるのですが、いかがでしょうか。
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>発電設備の将来的な撤去費用などを積み立てさせる
2022年7月から随時、稼働後10年を経た設備を対象として、売電額から源泉徴収的に積み立てられてるようです。 取り返しには、廃棄処理が確実に見込まれる資料の提出を要するとのことですね。
河野太郎は、もう外患誘致罪で良いのではないかと思う。
中国を利する事と自身の利益誘導しかしてないように見える。証拠は無いですが、とても日本のために議員をやっているように思えない。立憲議員が可愛いくらいです。
透かし問題も「ロゴ自体にウィルスはない」なんて、論点すり替えで「知っとるわ!」って怒りで震えます。
そして、ASG構想なんてとんでもない話です。
少し古い記事ですが、下記を上げておきます。
・フィリピンの電力網、中国が「いつでも遮断可能」 内部報告書が警告(CNN)
https://www.cnn.co.jp/world/35145970.html
フィリピンの電力供給網は中国政府の支配下にあり、紛争の際には遮断される可能性があるという議員向けの内部報告書の存在が明らかになった。
再エネ賦課金も含めて一度立ち止まって、TFのメンバーから見直しが必要だと思います。
もちろん河野太郎は更迭が望ましいです。
>「全国に揚水式水力発電施設を作れば良いじゃないか」、といった単純な問題でもありません。
結局コストの問題なのだと思います。
莫大な数の揚水ダムや蓄電設備を建設して維持管理するコスト。それらが全て電気料金に乗ってくることを許容できるか。
仮に変換効率が100%だったとしても、蓄電要素が加わるだけでコスト増です。
実現性の面でも電力を全て太陽光で賄う(と言ってる人もいますが)としたときに必要な揚水ダムの数の試算なども見た記憶がありますが(調べる元気がない)、日本に作るにはおよそ現実的ではない数だった記憶があります。
そのコスト負担する価値があるか。
私的な思いですけど、CO2削減の文脈では必死でCO2削減した結果温暖化や海面上昇にどの程度の効果があるかも怪しいし、そもそも温暖化を問題と思っていない私としては、そんなことにはビタ一文払いたくないですね。
マイナカードで情報集約して、日本国民の健康データーや銀行口座などすべてを某国へ差し出す河野太郎さん。
太陽光発電を推す人は熱力学第二法則を超越しようとしていることと同義。
太陽光発電はマイルドになった永久機関。
日本で太陽光発電が採算取れるのは鳥取砂丘だけかと。風力は洋上だけ継続で
CO2排出削減効果の統計が目標に到達していなかった場合、他国から排出削減量を買い取る事が出来るなどと言う意味不明の事をしているのだから再エネ事業がそもそも怪しい。
目標に達していない分は中国から数字を日本は買っている。
再エネ事業が増えようが減ろうが中国にカネが流れるシステムが出来上がっているのです・・・。
そもそもが中国が示している削減量って・・・信じる人達が居るんだよなぁ・・・。
☆孫正義氏について事実のみ時系列で列挙します。
・在日韓国人実業家の二男。日本に帰化するも通名は名乗らず。元来中国。
・福島第一原子力発電所事故を受け、当時の菅直人首相と共に、再生可能エネルギーの普及と脱原発を掲げる。
・特に太陽光発電に偏重した政策を実施させ、自身が再生可能エネルギーで巨大ビジネスを展開。
・民主党政権による固定価格買取制度の導入に際して、孫氏は菅直人首相に強く働きかけて同制度を成立させている。
・2012年、孫氏の希望通り、メガソーラー(大規模太陽光発電所)で固定価格買取制度を開始した。
・日本の太陽光発電買取価格は世界で最も高く、この制度によって日本国民が負担する賦課金額は、2016年時点で既に、年間2兆円という巨額に達しており、最終的には累計53~85兆円程度に及ぶ、と試算されている。
☆以上のことから、
再エネ賦課金を廃止するためには、高市さん小野田さん等一部のまともな自民党議員または日本保守党新人または国民新党に投票するとともに、ソフトバンクを儲けさせないようにして主犯・孫氏をつぶすべきと考えます。
セイキの味方のユルパンマン
隠したつもりが見えちゃってますヨ
そもそも、隠すつもりはなかったか
>発電所から距離があるほど送電ロスは大きくなる
原発はその送電ロスを少しでもカバーできるんですね?