プーチンが在外投票では惨敗か?「大規模不正」報道も

先日のロシア大統領選で「予定通り」(失礼!)圧勝した、国際刑事裁判所(ICC)から指名手配されているウラジミル・プーチン容疑者を巡っては、「在外投票では惨敗していた」などとする話題に加え、「少なくとも2200万票の不正があった」とする報道も出て来ています。これらのなかにはきちんと裏付けが取れていないものもありますが、いずれにせよ、こんな国がかつては「G8」の一角を占めていたという事実には、改めて驚きます。

欧州理事会議長は選挙前に「おめでとう」

先日の『プーチン容疑者がロシア大統領選で「予定通りに圧勝」』でも取り上げたとおり、国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪容疑で指名手配されているウラジミル・プーチン容疑者はロシア大統領選で90%近い票を得て、「予定通りに」圧勝しました。

これによりプーチン容疑者は2030年までの6年間、さらに大統領を務めることとなりました(個人的に、ロシア連邦という国家自体が6年後も存在しているのかどうか、といった点に疑問がないわけではありませんが…)。

ちなみにプーチン容疑者に対しては、欧州理事会のシャルル・ミシェル議長が選挙期日よりも前の3月15日の時点で、こんな内容をXにポストしています。

要するに、結果が出るよりも前の時点で、「本日から始まる選挙での地滑り的な圧勝、おめでとう」とポストしたのですから、ロシア大統領選では「予定通り」プーチンが圧勝するだろう、と予言した格好です。じつに、皮肉たっぷりです。

在外投票では得票率低め

それはともかくとして、ちょっと気になる話題があるとしたら、それは「在外投票」でしょう。

ロシアの公式の見解を報じている『タス通信』によると、世界144ヵ国における295箇所の在外投票所での開票結果は、投票総数383,553票のうち275,249票、つまり全体の72.3%をーチン容疑者が獲得した、というものだそうです。

Putin got 72.3% in voting abroad — final results

―――2024/03/21 05:30付 タス通信英語版より

『タス通信』の記事では、ダワンコフ氏の得票は63,388票(全体の16.65%)で、ほかにもロシア共産党のニコライ・ハリトノフ下院議員が8,445票(2.22%)、ロシア自由民主党(LDPR)党首のレオニード・スルツキー党首が7,495票(1.97%)――だった、としています。

ちなみにタス通信によると無効票は26,147票だったのだそうです(※ロシア本土の投票と比べ、プーチン容疑者の得票率が若干低いのは気になる点でもありますが…)。

じつは在外投票では「敗北していた」!?

ところが、これに対して時事通信は21日、こんな内容を報じました。

プーチン氏、欧州15カ国で敗北 ロシア大統領選の在外投票

―――2024/03/21 07:39付 Yahoo!ニュースより【時事通信配信】

時事通信は「ロシアの独立系メディアが20日に報じた」内容として、大統領選の在外投票では、欧州15ヵ国、アルゼンチン、パラグアイ、イスラエルの各国で、プーチン大統領が敗北していたと報じました。

ただし、時事通信の記事では「独立系メディア」の具体名を明らかにしておらず、また、いくつかの英語圏メディアを調べてみたものの、「欧州15ヵ国、アルゼンチン、パラグアイ、イスラエルでプーチンが敗北していた」とする情報は見当たりません。

したがって、時事通信が報じたこの情報についての真偽については、現時点では正直、よくわからないというのが実情です。

もっとも、ロシア大統領選について調べていくと、いくつか香ばしい情報が飛び交っていることがわかります。たとえばスイスインフォは、「少なくともスイス国内では」プーチンが惨敗していた、などと報じています。

Putin suffers election disaster – in Switzerland

―――2024/03/19付 swissinfo.ch英語版より

スイスインフォによると、「海外投票」(Vote Abroad)という団体がベルン、ジュネーブという2都市で実施した出口調査で、プーチン容疑者の得票率がそれぞれ16%と20%だったのだそうです。

ちなみにこの調査での「当選者」は政党「新しい人々」から立候補したウラジスラフ・ダワンコフ下院副議長が最多票を獲得したのだそうで、ベルンで45%、ジュネーブで29%の票を得た、などとしています。

不正は2200万票!?

一方、ロシアの大統領選を巡っては、他にも興味深い話題がいくつか出て来ています。

At least 22 million fake votes cast for Putin in presidential election

―――2024/03/19 19:19付 Novaya Gazeta Europeより

ロシアの独立系メディア『ノバヤ・ガゼータ』欧州版が19日付で報じた記事によれば、大統領選では「記録的な不正行為」が行われ、プーチンに投じられたうちの「少なくとも2200万票が偽の票だった」とする推計を公表しました。

これは、ロシア中央選管が公表したデータをもとに、数学者のセルゲイ・シュピルキンが考案した手法を用いて、選挙における「不正な」投票の割合を推定するというもので、当初推計では不正票は3160万件だったものの、モスクワを中心に増えているオンライン投票を除外し、最終的にこの数値が出て来たとしています。

ちなみに公式データによれば、オンライン投票者を除いた有権者の総数は7450万人で、このうち6470万人がプーチンに投票した、などとしていますが、かりに2200万票が不正だったとすれば、プーチンの実際の得票数はこれより少なかった、ということでしょう。

なお、この「2200万票の不正」に関する推計方法の詳細については記事だけではよくわかりませんので、現時点ではあくまでも「そういう分析もある」、という話に過ぎないという点については、一応の留保は必要でしょう。

いずれにせよ、ロシアという国が日本を含めた私たち自由・民主主義国家群とはまったく異なる国であることだけは、とりあえずは間違いない話ですし、こんな国がかつては「G8」として先進国首脳会合にも名を連ねたという事実には、改めて驚愕する次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 百十の王 より:

    民主主義を騙った邪悪な独裁者プーチンですので選挙なんてなんでもありの茶番。ただただ国内外に「俺は国民の圧倒的な支持を得た。特殊軍事作戦(ウクライナ侵略戦争)は続けるぞ」と言いたいだけでしょう。

    マスコミは複数の暗殺事件を恐れて言いたいことも言えない状態。国民も表立って批判すれば投獄されるのでロシア国内では反対できない。

    2006/10/7 第2次チェチェン紛争およびプーチンを批判したジャーナリスト アンナ・ポリトフスカヤ暗殺(自宅アパート内で射殺された)

    2006/11/1 ロンドン亡命中の元KGB/FSB職員リトビネンコが放射線物質ポロニウム210を盛られ毒殺された。(プーチンの自作自演のテロでロシアのチェチェン侵攻を正当化したと主張)

    2023/8/23 プリゴジンの死亡(飛行機事故に見せかけた暗殺でしょ)

    2024/2/16 プーチンの政敵ナワリヌイ氏死亡(おそらくプーチン指示の暗殺)

    ほんと陰険を絵に描いて写真に撮ったような奴。

    1. 百十の王 より:

      自己レスですが
      上記は3/18NHK「映像の世紀バタフライエフェクト ロシア暗殺と粛清」から引用しました。

    2. 誤星紅旗 より:

      プーチン大統領が恐怖による自作自演で自らの神格化に手を染めた原点はこれかと。1999年のモスクワアパート爆破事件

      https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E9%AB%98%E5%B1%A4%E3%82%A2%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%88%E9%80%A3%E7%B6%9A%E7%88%86%E7%A0%B4%E4%BA%8B%E4%BB%B6

      『偉大なるロシアの栄光』とやらを手に入れる過程でどれだけ無辜の民の犠牲を強いてきたことか。

      1. 百十の王 より:

        なるほどプーチンの陰謀の原点は1999年の首相時代で、チェチェン侵攻の大義名分のため、自国民を犠牲にする自作自演のテロ事件だったんですね。こんな陰謀に塗れた最悪の人物を大統領に選んでしまったロシア国民。ヒトラーを選んでしまったドイツ国民を彷彿するのは不謹慎か。

  2. けん より:

    かつての「G8」のロシアの選挙も不正っぽいですが、自称「G8」のお隣韓国の選挙も怪しいもんですね~はぁ

  3. 世相マンボウ* より:

    まあ、国連憲章犯して他国を
    戦闘機と戦車で攻め入った国際指名手配中の
    ウラジミールプーチン容疑者(71)なのです。
    そんなものに投票した怠け者のロシア国民のみならず
    選挙といっての結果を他国のものと同一視
    しようとする日本のそんなこんなの人たちにしても
    それは犯罪者のお仲間だと扱ってあげるのが適切です。

  4. 雪だんご より:

    ロシア人達はもう一度「革命」を起こさないんだろうか?と疑問に思う事もあるけど、
    「革命を起こしたらもっと酷い奴が独裁者になったり、もっと酷い無政府状態になったりした」
    ケースなんていくらでもあるから、「怖い」のではなく「やりたくない」のかも?

    などと思考実験してみましたが、ロシア人の本音を聞くのは難しそうですね。

    1. DEEPBLUE より:

      しかし、プーチンも永遠に生き続ける訳ではないので没後はロシア初期より酷い混沌になりそうですね。

      1. 雪だんご より:

        ちょっと前に「数年後の元ロシアがめちゃくちゃ沢山の国々に分かれた地図」が
        どっかで出ていたので、プーチン亡き後はそうなるかも?

        1. パージ より:

          そんなロシアでも役に立っていることが一つあります。
          ”明らかな敵”であることです。
          仮想敵国である間は日本にアメリカの矛先が向かないので、
          ロシアが分裂して脅威で無くなったら、お鉢が回る危惧は有ります。
          例:日露戦争前後の対日感情の変化

  5. はるちゃん より:

    ロシアや中国などの強権政権に対して自由主義の国が出来る事には限りがありますね。
    自由主義と言える国の数もヨーロッパや北米に加えてアジアでは日本と台湾くらいしかありません。
    アメリカの自由と民主主義押し売り政策が開発途上国の政権に反米感情を持たせてきた面もあります。
    また、G7諸国によるESG押し付け政策も先進国の独善的な政策では無いかと批判されています。
    色々考えるとトランプのほうが良さそうに思えてきます。

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