自称元徴用工問題で、被害者である日本企業から加害者である自称元徴用工側に事実上の現金給付がなされてしまった問題を巡って、林官房長官、上川外相ら日本政府関係者の対応は鈍いといわざるを得ません。ただ、冷静に考えたら、今回の事例は韓国自身が国家として、1965年の日韓請求権協定を破った事件であるという言い方もできます。韓国が被害企業から奪ったのはたかだか600万円ほどの金額ですが、これにより日本の韓国に対する莫大な請求権が復活したのだとしたら、興味深いことと言わざるを得ません。
どう頑張っても正当化できない、韓国の請求権協定破り
先日の『自称元徴用工が供託金引出し…日本政府の対韓制裁は?』でも取り上げたとおり、自称元徴用工問題を巡って日立造船が韓国の裁判所に供託していた資金が没収され、原告側の自称元徴用工らの手に渡ったとする報道がなされています。
このことは、正直、自称元徴用工問題がこれまでとは異なる局面入りしたことを意味しています。なぜなら、自称元徴用工問題における被害者である日本企業の資金が直接、加害者である自称元徴用工側に渡ったからです。
1965年の日韓請求権協定では、日韓双方の企業や国民、政府などが、1945年8月15日以前の請求権に関し、お互いに何ら請求をなし得ないことと定められており、いかなる理屈をこねたとしても、この状態を正当化することはできません。
金額としては、日本円に換算してせいぜい数百万円、というレベルですが、「1965年以来、日韓間で作られてきた法的基盤を韓国側が覆した」という意味では、韓国が名実ともに無法国家となった瞬間でもあるからです。
日本政府の対応は鈍すぎる
しかも、問題はそれだけではありません。これに関連する岸田内閣の反応は鈍いといわざるを得ないのです。とりわけ上川陽子外相、林芳正官房長官らの対応には、首をかしげます。
たとえば林官房長官は報道があった20日の会見で、本件については「日韓請求権協定に明らかに反する判決に基づき、日本企業に不当な不利益を負わせるもので極めて遺憾だ」と述べたそうです。
林官房長官、徴用工訴訟で原告側へ供託金「日本企業に不当な不利益を負わせ極めて遺憾」
―――2024/2/20 17:36付 産経ニュースより
しかし、ここでいう「不当な不利益」は、日本政府が韓国に対する対抗措置を発動するための条件だったはずです。どうして日本政府は韓国への対抗措置を発動していないのでしょうか?
また、上川陽子外相は21日午前(日本時間同日夜)、訪問先のブラジル・リオデジャネイロで韓国の趙兌烈(ちょう・だれつ)外相との会談で、本件について「強い遺憾の意」を示した、などと報じられています。
上川外相、供託金受け取り「強い遺憾の意」 韓国外相に
―――2024年2月22日 10:40付 日本経済新聞電子版より
しかし、ここで上川氏がやらねばならないことは「遺憾の意」の表明ではありません。
実効性のある制裁措置を、速やかに実行に移すことです。
岸田文雄政権が能登半島地震における適切な対応などで、ここ最近は評価を高めていたことは間違いないと思う反面、正直、今回の対応はいただけません。『数字で見ると日本が韓国への制裁をためらう理由はない』でも指摘しましたが、現在の日本に、経済的理由から対韓制裁をためらう理由はないのです。
請求権協定無効化の「本当の意味」
ただ、こうした岸田政権の情けない対応はともかくとして、冷静に考えると、今回、日本円に換算してたった600万円程度の供託金を韓国の裁判所が没収したことで、韓国は新たな国家崩壊の危機に立った、という見方もできなくはありません。
韓国自身が日韓請求権協定を無効化したのと同じだからです。
もしも1945年8月15日以前の請求権が、韓国の側に復活するのだとしたら、それは同じ請求権が日本側にも復活することになるはずであり、そうなると、「日帝」が終戦の時点で朝鮮半島に残してきた莫大なインフラに対する請求権も復活することになるはずです。
道路、港湾、鉄道、学校、水道、電気といった莫大な社会インフラもそうですし、韓国が現在でも使用している民法や商法といった社会の基本法もそうです。これらはすべて日本が整備してあげたものです。
さらにいえば、当時の朝鮮人に対し、大日本帝国臣民として施した教育の対価も負担していただく必要があるかもしれません。これらのすべてを現在価値に換算して数兆円から数十兆円、いや、下手をしたら数百兆円、といったところでしょうか?
もちろん、現在の自民党政権が続く限り、日本政府がそのような請求を韓国に行うとも思えませんが、もしも岸田政権以降に「悪辣な政権」(?)が日本に誕生したら、その政権が今回の韓国側の協定破りを逆手にとって韓国に莫大な費用を請求する、という可能性は皆無ではないのです。
ついでに大韓民国憲法第3条において、「大韓民国の領土は韓半島とその付属島嶼とする」とする規定が設けられているわけですから、「同じ請求権が北朝鮮にも及ぶ」、「ついでに北朝鮮による日本人拉致などの犯罪行為の賠償金も韓国政府は負担すべき」、といった理屈も成り立つかもしれません。
ウラジミル・プーチン容疑者や習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席あたりならば、この手の理屈は平気で考えて来るのではないでしょうか。
韓国という無法国家の行く末を生温かく見守る
なお、上記のような極論を考えるまでもなく、韓国という国は、国際法や国際的な約束などを、ちょっと甘く見過ぎているフシがあります(そして、そのような責任が日本にもあることは間違いありません)が、このことは韓国に対し、決して良い影響をもたらすとはいえません。
少なくとも現実の数値で見る限りにおいて、たとえば国際与信統計上、日本の対韓与信額が日本の対外与信全体の1%を割り込むなど、日韓の経済関係が順調に進展しているとは言い難い状況にありますし、日本にとっての2023年における韓国との貿易額は、豪州、台湾に抜かれて5位に下がっています。
もちろん、日本から見て、貿易や国際与信の分野における韓国の地位は、日本の産業・貿易構造や国際与信状況などからも影響を受けるため、「韓国が無法国家である」という点だけで韓国の重要性が落ちるというほど単純なものではありません。
とりわけ、中国のような無法国家が日本にとって貿易額でトップであるという事実からもわかるとおり、国際貿易の世界では、かならずしも相手国が無法国家であるというだけの理由で経済的関係が途絶えるというものではありません。
しかし、国際的な約束や国際法を軽視する韓国の姿勢が、韓国という国自体の将来をどう変えていくのか、その行く末などについては、私たち法治国家に生きる国民としては関心を持ちつつ、生温かく見守っていくべき論点のひとつではないかと思う次第です。
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岸田政権と外務省の事ですから、日本側の財産ゼロ査定で更なる賠償をやってもおかしくないかと
毎日の更新お疲れ様です。南朝鮮の方々は常々[たかだか5億ドルのはした金]と宣います。ならば現在価値にして南朝鮮国家予算2年分で変換後してもらいたいですよ。どれ程巨額か実感させたいです
「 日立造船が韓国の裁判所に供託していた資金が没収され、原告側の自称元徴用工らの手に渡った」件につき、遺憾表明だけで何もしようとしない岸田政権に対し、強い不満を表明する件については、全く同意致します。
一方で、これまで「代わりがいない」「評価すべきところは是々非々で判断すべき」と、岸田政権を支持してきた方々にも、猛省を促したい。
韓国の司法(政府は異なる)は、「日韓請求権協定により、個人の請求権は消滅しない」という立場を取っており、彼らの論理のなかでの整合性は取れています。国際世論は、日韓の細かな争いに興味はありません。従って、日本政府が有効な制裁を発動しない限り、本件は「没収され損」となります。
「韓国は新たな国家崩壊の危機に立った、という見方」は単なる希望的観測だと、考えます。岸田政権の失政を糊塗する以外のなにものでもありません。
高々数百万の収入で、国際条約違反というとんでもない外交上の損失を被ってるのは韓国です。
なにか日本と交渉する時に、何か後ろめたい、不利な環境にあることで苦しむのは韓国外交官ですね。
こんな面白い状況ないです。日本が抑制的な対応していることも、韓国にとっては嫌でしょう。要するに日本にとってカードになってしまったのです。
韓国としては、なんとしても、この数百万を払ってとりあえずの均衡を保ちたい。単に金払えばいいなら楽ですが、それは韓国世論が許さない。なんとか財団の寄付からの支出って形を取る必要があり、労力は桁違い。
ホント、いつ請求書が届くかビクビクしている姿は滑稽です。ザッツエンターテイメント!
岸田政権の韓国に対する甘さは頭が痛いですが、韓国政府や親韓メディアが
やりづらくなってしまう(”嫌韓”の説得力が増す)と言うメリットもありますね。
政府に期待できないなら、世論でやればいい。オールドメディアは脂汗を流しながら
見て見ぬふりをしている様ですが、彼らの寿命は確実に削れていく。
「韓国を大事にしろ!」と叫ぶ人たちも論破されるのが怖くて身内同士の
エコーチェンバーに閉じこもるしかなくなり、影響力はどんどん落ちていく。
時代は確実に変わりつつあります。もうしばらくの辛抱は必要ですが。
まず韓国政府がなんとかしますから待ってくださいと言っても、先に取ったのは韓国なんで 韓国がなんとかするまでホワイト国とスワップとビザ無しも一時停止するべきです。
そして、なんとかしなければ追加制裁を増やしていけばいいんです。
返す返す、安倍総理の死が悔やまれます。
たった一人の狂人のために国の運命が狂わされるなんて。
また、菅総理であれば韓国に甘い態度などしないので、この様な事態は起こらなかったでしょう。
ただ、プラスに考えれば岸田総理が甘い顔!したおかげで韓国が引鉄をひいたともいえます。
いくらブンブンでも安倍総理や菅総理ではこの様な事は恐くて出来なかったでしょう。
あとは、岸田総理の決断により日本に寄生する悪い縁を切れるかどうかがかかってます。
あああ 安倍元総理を 山上・安重根という
卑劣なテロでやられてなければ・・・
と強烈に嘆きます。
たしかに『たかが600万』なのですが、しかし、
江戸時代の山賊追い剥ぎも一気に江戸城攻め(笑)
などはせず、彼ららしくせこく侵食したように
このたかが600万円で勢いをつけて
今はさすがに食器棚の陰の感ある朝日新聞と
少数よた者読者を奮起させてさらに
日本を攻める算段なのでしょう。
検察の中のドブサヨ汚染勢力の
安倍派攻撃と呼応して、
日本社会へのそもそも汚れた心根での攻撃には、
日本を支える多数派国民良識層が立ち上がって、
こら、ドブサヨ!こら!韓流!
と声を挙げなければいけないときと考えます
さて、韓国政府による補填・無効化が為されないことにより確定する信用破綻。
国際法違反状態を喧伝し、「期限を切って」是正措置を催促すべきときですね。
・・・・・
日立造船は、投資家対国家紛争(ISDS)案件にすればいい。
日本政府は、「カントリーリスク」を見直す口実ができた。
とはいえ、ロシアと北朝鮮が接近しています。
更には、北朝鮮から中東の方にも支援が流れているという話もあります。
あからさまに日韓の間がよろしくない姿を見せれば、それは彼らに付け入れさせる隙を生むことにもなりかねない。
確かに、FOIPによるセキュリティ強化はされているので、韓国を強くする意味は無い。しかし、完全に無力化するのも得策とは言えないと思います。
韓国政府に対して、供託金の不正流用の補填を要求する。その要求が通るまでは、何らか供託金相当(可能なら、今後に不正流用されるならその都度増額出来るもの)の韓国資産の差し押さえや、金や物の流れの制限をするというのが、当面の現実的な落としどころではないでしょうか。
何にせよ。韓国が補填を明言し履行するまでは、関係は冷え込むでしょう。
緊密な連携をしても、その中身は補填しろの要求しか無いかと。
こと本件に関する岸田政権の対応は甚だ不十分なもので、とても及第点を上げられるものではないと、自分は思っております。
そして、このような不十分な対応しか指揮できない岸田文雄という男には、ほとほと愛想が尽きたというのが、自分の偽らざる心境です。
論考で時々取り上げられるところの、いわゆる「資格試験理論」、すなわち、「無尽蔵に時間を使って100点満点の仕事をすること」より、「限られた時間とリソースで60点の成果を出すこと」の方が大事、という考え方は、自分もそのとおりだと思います。また、岸田政権は、対韓問題等の対応が甚だ不十分である一方、震災対応その他、そこそこ仕事をしている分野もあるという評価も、そのとおりだと思います。
しかし、いわゆる「資格試験理論」に基づいて岸田政権、岸田文雄を評価するとするならば、すべての業務分野で満点を取ることを求める必要はないにしても、少なくとも、及第点の60点すら取れない業務分野があることを許してはいけないのではないかと思います。
資格試験でも、いくつかの試験科目を受験して、その得点によって合否が決まると思いますが、おそらく、どれか1科目でも及第点ラインに達していなければ、不合格になるのではないでしょうか。
なので、自分に言わせれば、岸田政権、岸田文雄の対韓問題の対処ぶりの酷さのみを理由として、見限る根拠としては十分なのであります。言い換えれば、対韓問題の対処で0点しか取れてない岸田政権、岸田文雄は、政権としても総理大臣としても不合格、ということです。
ただ、岸田政権や岸田総理が業務上機能している分野がないわけではないので、総理なんか辞めちまえとか、とっとと政権交代しろやとか、そういうことは申し上げません。せいぜいちゃんと仕事しろや、ぐらいに思いながら、岸田政権や岸田文雄に対して、何の期待も抱くことなく眺め続けることになるんだろうと思います。
ネットが発達した由縁か、
今までこれほど、能無し、ボンクラと罵倒を浴びた総理大臣を見たことがない。
こんな国家観のない人が、総理大臣が、同門として居ることが恥ずかしい。
開成高校でも同じだろう。
このブログのコメント主様達は、何かと論理的に説明・説得したいと表現するが、この”(こんな奴と同類と見られたら)恥ずかしい”の感情は、説明・説得を超えて、もどかしく、抑えがたい。
岸田総理には一刻も早く、見えない所に退場して欲しい。
サウスKOREA無法国家の判決については、
実害があれば即、対抗措置をとる、と言った河野元外務大臣、
百も手段があると啖呵を切った麻生副首相、
去年の夏までに党内取纏めて提示すると宣言した髭の大将こと、佐藤元外務副大臣、
何れも安倍総理の部下であった時と記憶していますが、
いよいよ、本領発揮の出番がきました。頑張って下さい。
又、次の総理として呼び声高い大川外務大臣も、保守層を引き付けるチャンスですので、かの国に果断な死刑執行をお願いしたいと思います。