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夕刊受難の時代…朝日新聞社が北海道での夕刊を休刊へ

「夕刊は2022年10月から起算して7.68年以内に消滅する」との当ウェブサイトの昨年予想は、どうも外れるのかもしれません。現実の夕刊減少のペースが想定よりも速いからです。こうしたなかで、昨年は朝日新聞などが東海地区での夕刊発行を休止したとの話題がありましたが、株式会社朝日新聞社は7日、今度は北海道での夕刊発行を休止すると発表しました。こうした動きは広がっていくのでしょうか。

2024/02/07 16:38追記

記事のURLが誤っていましたので修正しています。

新聞業界の最近の動き

一般社団法人日本新聞協会のデータによると、2023年10月時点における朝刊・夕刊の合計部数は3305万部で、最盛期だった1996年の7271万部と比べ、じつに半分以下に減ってしまった。

また、2023年10月時点の朝刊部数は2814万部、夕刊部数は491万部であり、2000年(朝刊5189万部、夕刊2001万部)と比べ、朝刊は2375万部(つまり45.77%)、夕刊に至っては1510万部(つまり75.46%)も減った計算だ。

しかも、新聞部数の減少ペースは近年、さらに加速しているフシもある。

直近3年間でいえば、合計部数は930万部(うち朝刊部数は618万部、夕刊部数は312万部)減っており、これを1年平均に換算すれば、310万部(うち朝刊206万部、夕刊104万部)減ったという計算だ。

しかし、夕刊に限定していえば、減少ペースはさらに加速している。

2023年10月の491万部という部数は、2022年10月時点の6,45万部と比べると、154万部減っており、減少率に換算すれば、なんと23.85%に達する。

たった1年で、これだ。

もしも部数の減少がこのペースで続けば、夕刊に関しては、下手をするとあと3年あまりで夕刊が絶滅する計算となる――。

夕刊部数の減少のペースはさらに速くなる

以上の議論は、年初の『「新聞がなくなったら社会に莫大な利益」とする考え方』などを含め、当ウェブサイトでもしばしば取り上げて来た話題のひとつです。

ちなみに文中に出て来る「部数」については、新聞協会が発表しているオリジナルデータと比べて違いがあります。

オリジナルデータでは朝刊と夕刊の「セット部数」を1部とカウントしているのですが、当ウェブサイトとしては、朝刊と夕刊という「実体」に着目し、「セット部数」を「朝刊1部+夕刊1部」に分解したうえで、それぞれ朝刊単独部数、夕刊単独部数と合算して「朝刊部数」、「夕刊部数」を計算して議論しています。

それはともかくとして、現実問題として、新聞の発行が今後も続けられるという可能性は、非常に低いのが実情です。

そもそもこれまでのトレンドで見る限り、とくに2010年代後半以降、新聞部数の減り方が激しくなっており、短期的に反転するような兆しは見えません。夕刊など、とりわけそうでしょう(図表)。

図表 夕刊部数の増減

(【出所】日本新聞協会データをもとに作成)

ちなみに当ウェブサイトでは昨年の『新聞夕刊は7.68年以内に消滅』で、「夕刊は2022年10月から起算して7.68年以内に消滅するのではないか」、とする仮説を提示したのですが、早くもこの仮説が破綻してしまう可能性が出て来ています。

冒頭でも指摘したとおり、夕刊の部数減少ペースはむしろ加速しており、「2022年10月から7.68年」という期間ももつのかどうかが怪しい状況だからです。

もちろん、新聞社や発行地域によっては、意外とほそぼそと夕刊発行が続くという可能性はあるかもしれませんが、全体としてみると、とくに一般紙に関しては「朝・夕刊セットでの刊行」が非常に難しくなっていくであろうことは間違いありません。

損益分岐点を割り込むと事業継続ができなくなる

そして、先日の『日経ですら苦戦か…新聞の「電子媒体化」が難しい現状』などでも論じた損益分岐点の議論からもわかるとおり、現実には発行部数がゼロになるよりも前の段階で、新聞発行を断念せざるを得なくなります。固定費が賄えなくなるためです。

その「固定費が賄えなくなる具体的な水準」については、正直、よくわかりません。

その会社が保有している資産状況などによっても異なるからです。

ただ、以前の『今月も新聞値上げ相次ぐ…ビジネスモデルはすでに破綻』などでも指摘したとおり、新聞業界では最近、値上げが相次いでいるほか、夕刊を廃止するなどの動きが相次いでいます。

新聞が売れなくなっているときに値上げをするのは自殺行為にしか見えない、といったツッコミどころもありますが、この「値上げ」、「夕刊廃止」は、いずれも部数減に伴い、各新聞社の経営が苦しくなってきているという証拠でもあるのでしょう。

朝日新聞、今度は北海道でも夕刊を休刊

こうしたなかで、「夕刊の苦境」という動きが、またしても出て来たようです。

北海道で朝日新聞夕刊を休刊

――2024年2月7日 5時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より

株式会社朝日新聞社は4月1日以降、北海道での夕刊発行を「休止する」と発表しました。

その理由について同社は、原料費の高騰・輸送コストの上昇に加え、北海道では朝刊だけの購読希望者やデジタルサービスの利用者が増えているため、などとしています。

朝日新聞の夕刊は、すでに東海地区などでも「休刊」していますが(『いよいよ東海地区から始まった「夕刊廃止ドミノ倒し」』等参照)、今回の夕刊廃止という動きが興味深いのは、それだけではありません。北海道では、主要ブロック紙の一角を占める北海道新聞も、昨年9月末で夕刊発行を休止しているのです。

株式会社朝日新聞社の『朝・夕刊セット地域』のページによると、朝日新聞が現時点で夕刊を発行しているのは、北海道以外だと首都圏(茨城県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)、近畿地方(滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県)、それに山口県、福岡県、沖縄県だそうです。

(※余談ですが、同ページを読むと、昨年5月以降、夕刊の発行が休止されたはずの東海地域も夕刊刊行地域として記載されていますが、おそらくこれは単純にデータの更新が間に合っていないだけでしょう。)

いずれにせよ、新聞業界では、まずは夕刊から、これに続いて朝刊が消滅していく、といったというウェブサイトのこれまでの仮説を覆す事実は、なかなか見当たりません。

最大手の一角を占める株式会社朝日新聞社ですらこうなのですから、おそらく新聞業界全体として見るならば、まずは夕刊発行を断念せざるを得ない事例が、今後さらに増えていくのではないか、などとする予想は、案外正しいのではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (8)

  • 朝刊と夕刊の両方を発行している新聞の夕刊廃止は近いでしょうね。
    両方止めてしまうと設備廃棄や大規模リストラが必要になりますが、朝刊だけの廃止であれば若干のリストラで赤字削減が可能になるでしょうから。
    夕刊だけを発行しているタブロイド紙(夕刊フジ、日刊ゲンダイ)がどうなるかわかりませんが。

    • あるいは、の机上妄想ですが。
      タブロイド紙こそ主戦場として「猛烈に面白くなる」日が来るのかも知れません。
      当方が経営感覚のある編集担当だったら、優れた記者を(選り取りで)集めて紙面を一新して、高級朝刊紙には決してできない紙面展開を実現して見せることでしょう。
      人は活字に飢えているのです(えぽきしの例あり)新聞が読まれなくなったのは内容が陳腐でつまらないからです。

  • 未だ、夕刊やってたの?って感じですね。
    最盛期でも、夕刊なんか読む所も無いし、これは、輪転機の稼働率確保と新聞販売店の雇用維持の為ということは分かっていた事です。
    ある日突然、新聞社の倒産ラッシュがやって来るでしょう。

  • 私の使う私鉄の駅、キヨスクが改札横とホームに1か所づつある。
    ホームのキオスクに新聞が見当たらない。
    たまたま売店のおばちゃんが外にいたので聞くと、「新聞置くのやめたの。タバコもよ」との返事。
    朝5時台に駅に行って、新聞をかごに入れているところを目撃したことがある。たいして売れないのに毎朝品出し、返品。やってられないんじゃないかな?

  • いくら朝日が不動産で儲けていても、だからと言って赤字事業を永遠に続けられる訳は
    ないですからね。もし「損益分岐点を大幅に割り込んでも意地でも刷り続ける」事が
    可能な程金があったとしても、世論操作ができないのならただの浪費ですしね。

    「俺が引退するまで持てば良い」と割り切っていた上層部でさえ予想以上に加速度的に
    消えゆく部数に顔を青くしているかも知れません。いやあ、愉快愉快。

  • 日本政府が音頭を取って「紙」の廃止を進めていますから・・・
    https://www.smbc.co.jp/notice/20230804_denshika.html

    新聞「紙」も、そろそろ突然死が近づきつつありますね。

    これから春闘でベースアップは当たり前、
    新聞社も新聞購読料を大幅に値上げしたので、
    賃上げできるぞおおお!! オイオイ経営悪化は大丈夫か??

  • これは内容や論調のせいというより、単純に社会の変化ですよね。昔は 「時差の関係で、欧米のニュースを最も早く報道する英字新聞」 という売り文句で、英字新聞の夕刊紙を発行していたほどですから。

    ヘラルド朝日 #朝日イブニングニュース - Wikipedia
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%83%89%E6%9C%9D%E6%97%A5#%E6%9C%9D%E6%97%A5%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9

    このWikipediaの記事は興味深いですね。正社員を置かずに外部のフリーランス記者と嘱託社員だけでまわしていたら、その嘱託社員たちに雇用契約についての訴訟を起こされていたり、そのせいなのか、2011年には英字新聞の発行自体をやめて撤退していたり・・・。