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八王子市長選で見えた「勝てなくなった左派限界野党」

日曜日に投開票が行われた八王子市長選で、自公両党が推薦する無所属新人・初宿(しやけ)和夫氏が当選しました。といっても、八王子市ではこれまで自民系市長が続いてきましたが、野党系候補も善戦していることから、今回の勝利を自公両党は手放しで歓迎して良いかどうかは別問題です。ただ、注目される選挙で野党系候補者が勝てなくなっているように見えるのは、興味深い現象といえるかもしれません。

八王子市長選で自公推薦の初宿和男氏が初当選

21日・日曜日に投開票が行われた八王子市長選では、東京都の元局長で自民・公明両党が推薦する無所属新人の初宿(しやけ)和夫氏が初当選を決めました。

八王子市では長らく自民系の市政が続いていて、初宿氏も3期12年務めた石森孝志(たかゆき)現市長から後継者として指名されたものです。

ちなみに報道等によれば、初宿氏は今年59歳ですが、高校生時代からアルバイトで学費を稼ぎ、経済的な理由から大学進学を断念し、海上自衛隊に入隊したという経歴の持ち主で、その後は都庁に入庁して35年間勤め上げたという努力家だそうです。

また、一部メディアは八王子市が安倍派の重鎮でもある萩生田光一・前自民党政調会長の地元であることから、「政治とカネ」の問題と絡めてこの選挙に注目していたようですが、結果的には石森市政が継続することとなりそうです。

今回の市長選、自公両党にとっては「案外苦戦」か

もっとも、初宿氏が危なげなく当選したのかといえば、そうともいえません。

八王子市選管のウェブサイトによると、今回、初宿氏が獲得したのは63,838票であり、立憲民主党、日本共産党、社民党、八王子・生活者ネットワークが支持する無所属・滝田康彦氏の57,193票と比べれば、得票差は6,645票に過ぎません。

また、都民ファーストの会出身の元都議である無所属の両角譲(もろずみ・みのる)氏も44,913票を集めており(※ちなみにほかの2人の候補者は合わせて12,569票でした)、あくまでも結果論からすれば「三つどもえ」の戦いだったという言い方もできるかもしれません。

その意味では、自公両党は、「自分たちが推薦した候補者が勝利した」と手放しで喜んでよい、というものでもないでしょう。

ちなみに八王子市のウェブサイトに公開されているデータをもとに、自民系候補者と野党(とくに日本共産党など)系候補者の得票数と得票率を比べておくと、今回の初宿氏の得票率が自民系としては非常に低いことがわかります(図表)。

図表 八王子市長選の主要候補の得票数と得票率
選挙期日 自民系 野党系
2024/1/21 63,838票(35.76%) 57,193票(32.04%)
2020/1/26 78,372票(54.12%) 47,426票(32.75%)
2016/1/24 93,641票(64.38%) 51,811票(35.62%)
2012/1/22 74,273票(48.05%) 17,619票(11.40%)
2008/1/27 84,877票(57.19%) 63,540票(42.81%)
2004/1/25 75,970票(62.09%) 46,383票(37.91%)

(【出所】八王子市選挙管理委員会ウェブサイトデータをもとに作成。なお、「野党系」とは日本共産党、社民党、八王子・生活者ネットワーク、立憲民主党など、その時々の野党が推薦ないし支持を表明した候補者を指す。ただし、選挙によって具体的にどの政党が支持したかについては微妙に異なる。また、3人以上の候補者が立っている選挙もあるため、得票率を足しても100%にならないことがある)

野党にとっては両角氏の出馬がチャンスとなったものの…

ということは、立憲民主党などの野党が推す候補者にとっては、あと6,000~7,000票を積み上げることができれば、八王子市長という座を獲得することができていた、ということであり、いわば、「あと一歩」が足りなかった格好だ、ともいえるかもしれません。

ただ、野党側から見て、この「足りないあと一歩」は、もしかすると、今回だけ出現したボーナスのようなものかもしれません。

今回無所属で出馬し、得票率3位で落選した両角譲氏は、じつは今から12年前の八王子市長選にも「みんなの党」の支持を受けて出馬していて、62,673票をかっさらっており、自公が推薦する石森孝志氏(74,273票)にあと一歩まで迫っていた人物でもあります。

両角氏は八王子市議を4期13年、都議を2期8年務めており、想像するに、八王子市では相応に知名度もある人物なのでしょう(もしかすると、2025年の都議選で出馬したらまた当選するかもしれません)。

すなわち、両角氏のような「第三極」系の候補者が出現すれば、自民系、野党系の候補者の得票が削り取られる(かもしれない)、という意味でも、今後の選挙動向を読む上では参考になるかもしれません。

とりわけ、日本維新の会が衆議院議員選挙における小選挙区で、自民党系の候補者を落選させるのか、それとも立憲民主党系の候補者を落選させるのかという観点からは、今回の八王子市長選は非常に興味深い前例となったといえるかもしれません。

限界政党と化しつつある左派政党たち

そして、やはり今回も印象的なのが、立憲民主党を含めた左派政党の限界ぶりです。

昨年の『武蔵野市長選から見える、限界野党としての立憲民主党』などでも指摘したとおり、日本の左派政党の多くは、いまや「限界政党」と化しているフシがありますが、「政治とカネ」の問題で自民党に対して「逆風」が吹いているはずなのに、立憲民主党などの野党側が選挙で勝てないというのも興味深いところです。

また、X(旧ツイッター)上などでは、今回、自民系候補が勝利を収めたことで、「統一教会と創価学会の組織票の勝利」だ、「カルトの勝利」だ、などと八王子市民を侮辱するかのようなポストが散見されます。

正直、自分たちの望む候補者が勝てなかったからといって、その地域の有権者を「統一教会」だ、「軽蔑する」だ、「無知」だ、「恥を知るべき」だ、などと叫ぶのはおかしな話ですし、逆にこういうポストがあるからこそ、野党系候補者が最近、注目される選挙であまり勝てなくなったのではないか、という気がしてなりません。

もしかすると、有権者のなかには今回の石川県能登半島地震を巡る自民党政権の危なげない対応ぶりを見ていて、改めて「野党はない」、などと痛感している人も増えているかもしれません。『フェリーもキャンピングカーも今次災害では役立たない』などでも触れたとおり、左派政党の荒唐無稽さがあまりにも印象的だからです。

とりわけXなどでは立憲民主党、れいわ新選組、日本共産党、社民党などの左派政党関係者の「炎上」案件を見ることも多く、立憲民主党を中心とする左派政党側が、こうした傾向を止めるべく、良い方向に変われるのかどうかについては、今後の注目点のひとつであることは間違いないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (14)

  • この八王子は、自公の選挙区の牙城です。与党候補が勝って当たり前のところです。創価大学があり、公明党の基礎票が4万5千近くあり、反自公の候補が勝てるところではないですね。

    • 初宿氏の得票数が、63000で、公明の基礎票が45000とすれば、自民党は、18000しか得票出来なかったということですか?
      野党候補が、57000、都民ファが、45000。
      これで、どうして、自公の保守の牙城と言えるのでしょうか?
      この論稿の主旨は、自公保守が強いということでは無く、野党系の得票は頭打ちだろう、これ以上、野党系が伸びることは他の地域でもないだろうということ。
      この数字から見て、とても、八王子が自公の牙城と見做すことは出来ませんね。
      寧ろ、今回の自公の勝利は、この論稿の主旨の通り、野党の限界の賜物です。その証拠が、都民ファの強力な得票数です。
      これがこの論稿の文意です。
      自分の思い込み強いと、文章の文意を冷静に読み取れなくなるようですね。

  • 自腹を切って貧困調査をしていた某事務次官の方もですが
    自分の思い通りに選挙の結果がならないと、有権者は愚か、などと暴言を吐き出します。
    そして民主主義ではないと喚き散らします。

    真顔で言うのですが自身と違う候補に投票しただけで言葉にするも憚るような蔑称を叫び続ければ、次回の選挙の時にそうした候補者に入れようと思うでしょうか?
    いや思わないでしょう。支持者が悪口を振りまいていれば候補者も同じ穴のムジナであると。

    いま敗北した候補者はなぜ指示を得られなかったのか真摯に受け止め次回の選挙や衆議院選挙に向けて身の振り方や公約を見直すことです。
    ですが残念ながら敵対相手の悪口を言い続けて、なぜ自分たちが指示されないのか顧みる事はしないでしょう。
    日本で民主主義が遅れているというのは身をもって証明してくれているのかもしれません。

    今回の裏金問題で自民党はどうしようもうない政党だと判明しました。
    しかし地震対応を見ている限り大きな落ち度は見受けられず、リベラル野党は机上の空論ばかり述べている事考えると、やはり自民党しか選択肢が無いのかと思い知らされます。

    • 「裏金」なんてマスゴミの印象操作に引っ掛からないようにしなければ。
       共産党の募金詐欺疑惑の方がよほど「裏金作り」なんですが、何故検察はこっちの方にはがさ入れしないんでしょうか?

      • 僕もそう思いますね。

        裏金疑惑は、会計手続の問題はあれど
        「自民党への募金」
        支出した人の主旨には合致してます。

        共産党や日テレの募金横領は、
        「犯罪」
        支出した人の主旨に反してます。

        段違いに悪質ですわ。

        例えるなら夫婦の変態プレイを取り締まるより、通勤電車の痴漢を逮捕しろ!くらいの話ですよ。
        (失礼!)

        • 裏金疑惑は、会計手続の問題はあれど
          「自民党への募金」
          支出した人の主旨には合致してます。
          ----------
          アクロバティック擁護もここまで来ると乾いた笑いしか出ない。
          政治資金規制法が何のためにあるのかくらい調べたらどうか。
          国会議員が自らを律する法律を制定し、収支報告書の不記載、虚偽記載に5年以下の禁固、100万円以下の罰金を科すこととしている意味を。

      • 検察も、安倍派の幹部議員を起訴できないとわかっていて、印象操作に加担しているんじゃないのと疑ってしまう。
        会計上の不備であれば、修正に応じれば、悪質性が全くないとはいわないが、さほど大きいとはいえない。特定野党、特定組織の全く辻褄のあわない意味不明な帳簿よりはずっとマシ。恣意的に捜査対象を決めたらいかんよね。

  • よその記事だけど、負けた側からは、「八王子市民が理解できなかった」とか「いまの選挙は民主主義ではなかった。」なんてな声も上がってるそうなのです♪

    こんな人達に政治を担わないで欲しいと思うのですが、流石に誤報ですよね・・・・

    自公勝利の八王子市長選、逆風の接戦制した小池都知事の応援 野党は追い風生かせず
    https://www.sankei.com/article/20240122-IPVIPSJM2VGG7IENCZQH4ND73M/

    >ある幹部は支援者に対し「超党派でこれだけ素晴らしい人が集まった。八王子市民が理解できなかったということでしょう」と強がり、別の幹部は「いまの選挙は民主主義ではなかった。カネの選挙で負けた」と強調した。

  • 八王子市長選挙、
    少数のそんなこんなの人たちの
    おかしな画策が通用せず
    良い結果だったと思います。

    Xでトレンドに上がっていた
    『八王子市長選挙』を見てみると
    そこには左翼さんの見るに堪えない
    つぶやきで溢れてました。
    『八王子市民を軽蔑します』
    『奴隷根性がすぎる』(?)
    『八王子市はカルトを受け入れた
     ということでよろしいですね』(?)(笑)
    などなど もう憐れんでしまいます(笑)

    いくら口先で正義を騙り相手を誹謗しても
    ふつうにまじめに働き納税する多数派国民が
    リアル社会でそんなこんなの生きサマと
    見透かされている特定野党の支持者さんの
    煽りと画策どおりに嵌められ投票すると
    思い上がっていることにそもそも無理があるものです
    それはその人達がご自身の思い上がりのようには
    当たり前には世間では認めては貰えられない
    現実ともリンクしています。

    不思議なのは、投票率が低いから敗けたと
    『投票に行かなかった八王子市民を軽蔑します』
    とのツイートです。
    たしかにそれぞれ忙しくて
    投票率が低いという多数派国民の問題はありますが、
    もし投票にもっと行ったら、
    少数の特定野党支持者さんは
    雨が降っても槍が降っても
    己の人生の負け戦の敵討ち!との
    精一杯の投票数をもっと圧倒してしまう
    だけなのにと思います。

    • 世相マンボウ様

      ウ~ン、さながら八王子市民は
      関ヶ原の小早川秀秋扱いですな。

      別に左翼界隈恩顧の人たちってわけじゃないのにね(笑)。

      • 伊江太さま コメントありがとうございます。

        八王子市長選挙と言えば2016年の、
        60年代革命失敗活動家の出涸し と呼ばれる
        法政大学デガラシ先生、いや、五十嵐仁センセの
        「うがい薬はイソジン! ジョン・レノンの歌はイマジン!  八王子市長はイガジン!」 ?(笑)を掲げての
        敗走が印象的です。 (^^);

        たしかに左翼さんたちはなぜか
        関ケ原の戦いのつもりでのツイートなのでしょうが、
        江戸時代村の襲撃に失敗した
        山賊追い剥ぎさんたちの捨てセリフ
        のようにしか映っていないのに滑稽です。

      • 世相マンボウさま、伊江太さま、

        元八王子市民として少しだけ。
        面白い考察ありがとうございます。
        ただ、小早川秀秋とは心外な笑
        罵るのであればせめて主家に反旗を翻した木曽義昌か小山田信茂と言って欲しいものですね。八王子は武田滅亡後に徳川家に臣従した武田遺臣による八王子千人同心が江戸を守っていた土地柄です。日野からも近く新撰組の縁者もちらほらいるとかいないとか。市の中心から離れた場所に新興宗教団体が居座り、度重なる勧誘に眉をひそめるヒトが少なくなかった印象です。八王子がとりわけ学会員の比率が多かったか存じませんが体感的にはエホバなど他の新興宗教の訪問頻度と大して差はなく公明の牙城と言われてもピンとこないですね。大学誘致で学生が比較的多く、日本新党からの新しい波のうねりを受け野党支持が増えてきたかもしれませんが、赤備えの末裔たちは左翼の赤にも備えあるのか佐幕な土壌がありそうです。

    • 左の方々の言葉は、だいたい自分自身へのブーメランになっています。

      >『八王子市民を軽蔑します』
      →既に自分たちが軽蔑されている

      >『奴隷根性がすぎる』(?)
      →まさに奴隷そのものの独裁政党を応援している

      >『八王子市はカルトを受け入れたということでよろしいですね』
      →左派はマルクスから現在に至るまで完全にカルト

      鏡をプレゼントすることで返答に代えるべきではないでしょうか。

      • ホント おっしゃるとおりです。

        まあ、あの えらっそうな言いようは
        思い上がりが強いがゆえに
        鏡に映る自分の人生の落ち武者姿を
        直視できず逃避して、特定野党の鬱憤層煽り立てで
        血道を上げている人たちなのでしょうが。