岸田首相自身にとって、このタイミングでの派閥解散の動きは、今年9月の自民党総裁選を踏まえると悪手でしょう。ただ、岸田首相自身、良いか悪いかは別として、思い切ったタイミングで思い切った決断をする人物です。もし自身の再選を諦め、残りの任期で「好き勝手」するつもりなら、宏池会を解散した勢いで財務省も解散してしまえば良いのではないでしょうか。
目次
宏池会(岸田派)解散
昨年末ごろから一部のメディアが大騒ぎしていた「政治とカネ」の問題を巡り、自民党内で派閥解消という動きが進んでいます。そのなかでも最近、とくに耳目を引く話題のひとつが、岸田文雄首相が言明した、「宏池会の解散」でしょう。
岸田首相は19日、自身が会長を務める派閥・宏池会(いわゆる岸田派)を解散すると表明しました。これについては岸田派に所属する小野寺五典・元防衛相もX(旧ツイッター)につぎのよう次のような内容をポストしています。
清和会(安倍派)、志帥会(二階派)も解散へ
これに加え、すでに清和政策研究会(いわゆる安倍派)や志帥会(いわゆる二階派)も、解散を決定しています。前者については西村康稔・前経産相の、後者については細野豪志・衆議院議員らのポストをご参照ください。
これで「岸田再選」の可能性は低くなった
これにより、党内のとくに大きな5つの派閥のうち、3つが解消されます。
正直、自民党自体、国会議員だけで衆議院で260人、参議院で118人(※それぞれ議長を含む)、合計で378人を抱える巨大な寄り合い所帯でもあるため、政治性向が似ている人たちが集合離散するのは当たり前の話ですし、政治資金を含め、互助会的な機能が生じることも避けられません。
よって、名目的に派閥を解消しようとしたとしても、それで現在、一部のメディアが大騒ぎしているような「政治とカネ」の問題が解決するのかどうかは、現時点ではよくわかりません。
ただ、ひとつだけ確実にいえることがあるとすれば、岸田首相はずいぶんと「思い切った決断」をすることができる人物だ、ということです。なぜなら、これで岸田首相が今年9月の自民党総裁選で再選される可能性がぐっと低くなったからです。
岸田首相自身、派閥の微妙な力学で政権を維持してきた(※著者による私見です)という事情を踏まえると、宏池会内、あるいは岸田政権を支えて来た平成研(茂木派)や志公会(麻生派)にとって「寝耳に水」のような今回の派閥解消の動きは、岸田政権の政権運営が不安定化する要因となるでしょう。
麻生太郎総理(自民党副総裁)や茂木敏充幹事長らが自派の解散に応じるかどうかという問題もありますが、それ以上に、宏池会構成員や麻生派、茂木派などで「岸田おろし」の動きが出て来る可能性があるかどうかは気になります。
また、今年9月の自民党総裁選で、岸田首相が出馬できないか、出馬できたとしても十分な支持が得られず、落選するかもしれません。
良い意味でも悪い意味での思い切った決断をする人物
ちなみにこの「思い切った決断」とは、良い意味とは限りません。「思い切った決断」が良い方向に動くこともあれば、そうではないこともあるからです。
後者の典型例としては、たとえば昨年3月以降の日韓関係がそうでしょう。
韓国が発生させた自称元徴用工問題を巡り、韓国側が出してきた「解決策」に岸田首相が全面的に乗っかり、日本が事実上、韓国に譲歩するかのような格好で諸懸案が次々と「解決(?)」していった流れを見ると、日韓関係の専門家らは首をかしげました。
韓国の前政権があまりにも酷かったのに加え、韓国の現政権が今のところは「反日シフト」していないがために、日韓関係は前政権時代と比べれば、うまく廻り始めているかに見えていますが、これも日韓いずれかで政権交代が生じれば、話はまったく変わってくるでしょう。
ただ、考えてみれば、原発の再稼働・新増設方針にしたって、防衛費大幅増額にしたって、どれも菅義偉総理大臣や故・安倍晋三総理大臣の時代には実現しなかったものであり、これらがスピード感をもって次々と実施されているというのは、日本にとって間違いなく良い影響をもたらします。
このように考えたら、岸田首相は(良いか悪いかは別として)「思い切った決断」を「思い切ったタイミング」で下していく人物であることは間違いありません。しかも、周囲の批判等をものともせず、です。
もしかすると岸田首相はもう今年9月の自民党総裁選には出馬せず、任期いっぱい、党内調整を無視して好き勝手に暴走するつもりなのかもしれません。
改憲?増税?どうせなら「財務省解散」を!
こうしたなかで、次の展開があるとしたら、それはいったい何でしょうか。
もしかしたら破れかぶれで思い切った政策を打ち出し、国民世論を味方につけることに成功すれば、岸田続投の可能性も高くなるかもしれません。あるいは
逆に、「キング・オブ・利権官庁」の財務省に阿る政策を打ち出せば、それはそれで財務省の支持は得られるかもしれません。
前者としては「憲法解散」(憲法改正を明言しての衆院解散)かもしれませんし、後者としては「増税解散」(増税を明言しての衆院解散)かもしれません。
前者ならば、積年の課題だった憲法改正があっさり(?)成し遂げられ、岩盤保守層からの支持も上昇し、意外と長期政権の道が開かれるのかもしれませんし、後者ならば自民党が選挙で大敗し、岸田首相が退陣する、といった展開もあるでしょう。
もちろん、憲法改正に関しては国会の憲法審査会の議論なども踏まえなければならないため、実務的に見て、9月の自民党総裁選までに「憲法解散」をするのは難しいでしょう。
岸田首相が当ウェブサイトをご覧になられているかどうかはわかりませんが、もしどうせ暴走するつもりなら、財務省や宮沢洋一・税調会長らの意向を無視して、「所得・法人税の大幅減税」、「社会保険料引き下げ」、あるいは「消費税のゼロ%軽減税率区分創設」などを打ち出しても良いのではないでしょうか。
要するに、宏池会を解散したのだから、財務省まで解散してしまえば良いのです。
今回の派閥解消の動きで、下手をすればどうせあと9ヵ月以内に政権が終わるのならば、そのくらいは強引な動きを見せても良いのではないか、などと思う次第です。
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ついでに外務省も解散していただければよいのですが。
派閥が無くなることで高市総理の可能性が若干上がったのでは?
財務省を解散できれば、岸田首相は歴代で最高の首相になるでしょう。
まあ無理でしょうが、せめて再入省と歳出省に分割する事くらいの事はやって欲しいですね。
とある漫画からの台詞を引用します。
「旧時代を壊すことより、新時代を築く方がはるかに難しい」
現行のシステムが問題だからと、いきなりそれを壊したり、大幅修正入れて本番稼働させるのは馬鹿がやることです。
何故なら、それをやると会社の仕事や社会そのものが回らなくなるからです。そして、その損失はごめんなさいでは済まないからです。
更に言うなら、社会というのは人が活動して出来上がるものであり、故に社会もまた生き物のような側面があると考えています。
この薬やサプリを飲む。悪いところを切除すればあら不思議、ぱっと症状が消えて無くなりました。何て事にはならないでしょう。
念入りな調整と予測を立てた上で、慎重に経過を観察しながら治療をしてくれないと恐いです。
自分が患者やお客なら、そんな雑な治療や改修はやって欲しくないですね。他人の生命財産を背負っているという覚悟が何も見えないし、そんな事で損害を被りたくないですから。
なので、仮に岸田総理がそんな事言い出したら、自分なら支持しません。
きちんと事前に調査なり下準備をして、何らか大まかでも現実的に落とし込めそうな計画なり方針を出して説明してきたなら、別ですが。
それも無しに言いだしたところで、調子のいいこと言って、本当に壊しただけで何もならなかった民主党と同じ結末にしかならないでしょう。
岸田首相には、これからの自民党をどのように運営して行くつもりなのか聞いてみたいですね。
過去の日本の政治は、自民党内の派閥があたかも野党のような役割を果たしてきましたので、派閥が無くすと物事が決まらなくなる可能性もあると思います。
自民党に対抗できるまともな保守系の野党が存在しないのが一番大きな問題なのですが。
まともな保守系の野党ができるまでは、また自民党内に派閥のようなものができると思いますが。
>現行のシステムが問題だからと、いきなりそれを壊したり、大幅修正入れて本番稼働させるのは馬鹿がやることです
財務省を解散させて、ただそれだけでバラ色の未来が来るかどうか。
そんなバラ色な未来は来ないでしょう。
本気で財務省解体を実現し、それによって事態を改善させたいというのなら。
現行財務省の問題を洗い出し。解決出来る代替組織案を提案。そのための影響調査。法整備。組織切り替えのための移行計画。必要なものはいくらでも出てきます。
いや、もっとざっくり言ってしまえば時間、人、金が必要です。それらをどうするのかという話です。
そういった話をどう考えているのかと、とある別のまとめサイトで「財務省を解体しろ」とか言っている人に確認したら、「そんなものは知らん。政府が上手いこと考えろ」みたいなこと返してきました。
それまでその人散々、政府を無能だ何だと罵っていた訳ですが、そんな相手に頼るってもはや滅茶苦茶でしたよ。
現行のシステムの問題点を言うことは、それはそれで意味があると思いますが。後先考えずに、無計画にぶっ壊せしか言わないなら、それはただの無責任です。
本当に後先考えずに辺野古の問題をぶっ壊してくれた、民主という存在もいましたけどね。
もっともらしく書いているけども、そんなことないでしょ。
壊して無くなる?
当然、無くすなら無くすで、無くす時期と次の組織の準備期間を設けるはずですよ。
国税が機能しなければ国が困りますからね。
要は、制度疲労を起こした組織や、国家国民の為にならない組織を、既得権者の強い反対を押し切って潰す胆力があるかどうかじゃないですか?そんなこと、きっと誰も出来ないでしょうけどね。
>当然、無くすなら無くすで、無くす時期と次の組織の準備期間を設けるはずですよ
それが、本気でほぼノープランをやってくれた民主党という存在がいたんですよ。
しかも、その内容のスカスカっぷりは、政権交代前から指摘する人もいたのに、代えたら良くなるという期待に酔った国民達が支持しました。
当の民主党は、スカスカなことに自覚もありゃしませんでした。国民達は、スカスカなことを楽観視し、また無視しました。彼らにしてみれば理想を批判されて気分は良くなかったでしょうしね。
繰り返しになりますが、現状に問題を感じて、その解消方法の最適解が組織の刷新であり、それを現実的な計画に落とし込めるならいいんです。
ただ、当時の民主党政権やその支持者達と同じになりたくないなら、計画はきちんと詰めて、確認しましょうというだけです。内容がスカスカだと言われて腹が立つくらいなら、計画詰めて説明しなさいという話です。
理想に酔い、認知バイアスで自分に心地よい情報だけを取り入れると、ついついそういう都合の悪いところは無視しがちになります。
現実に落とし込んだものが説明出来ない。確認出来ないというのなら。残念ながら、そんな方法は当時の民主党政権(他、世界史によくある失敗革命)と同じだと認めるべきです。
馬鹿は無責任に「やれます」と言うし、責任を感じない外野は「早く何とかしろ無能」とせっつく。しかし、普通以上の見識と責任感を持った当事者なら、早々簡単にはゴーサインは出せないでしょうね。
きちんと話を詰めるか、あるいはどう詰めていくのかを明らかにして提案してきたというのなら、まだ期待も出来ますが。
岸田総理には、自分は派閥がなくなっても、(元の派閥に関係なく)自民党議員や自民党党員から支持されるという、根拠なき自信があるのでしょう。
蛇足ですが、自民党内部がガラガラポンしたことで、年齢、当選回数に関係なく(どうやって判断するのかは分かりませんが)能力のある人が上にくれば面白いのではないでしょうか。(これは、歴史ある日本の企業にも、同じことが言えます)
政治資金報告の運用をしっかりする為に派閥を解散するのは斬新な手法ですね。
自民党の歴史の中でも上位の剛腕っぷりだと思います。
派閥解散は派手だけど意味は無いですよね。
人は群れる者だから集まりは自然と出来る。
今回は欲を出しすぎただけ。
誰かが「確定申告」すれば良い。
と言ってましたが財務省が作った税法でしっかり管理するのが一番かな。
脱税すれば議員が「公民権停止」とすれば尚よろし。
凡人の議員様に特別法の「政治資金規正法」で脱税し放題にさせた我らも悪い。
世の中、何が起こるか分からない、の典型のようなことが起こるものですね。
自民党と言えば派閥、派閥と言えば自民党みたいな固定観念が出来ていたけれど。
この習いで行けば、財務省も解体あり得るかも。
奢れるもの久しからず、余り、国民の望まないことをゴリ押ししていると、力の均衡が崩れてどこへその力が向かうか?
それにしても、派閥無しで、どうやって大所帯を回して行くのか?
ただ、今回のことは、安倍派が派閥会長をいつまでも決めないものだから、その隙を突かれた感じですね。小粒な存在の集団指導体制、小粒な存在の合従連衡なんて、上手く行ったためしが無いことは、少し考えれば分かること。
そのとばっちりを、他の派閥も受けた訳で、いつまでも、組織内の弱い部分を他人事として知らん顔しているからですね。そういう意味では、自民党内に、指導力のある大物がいなくなったことを示しているのでしょうね。
麻生派は素知らぬ顔でピンピンしてる辺りがザイムショーの仕掛け臭くて嫌やわぁ
まぁタマタマでしょうけどねェ
財務省は金を動きを一番掴んでいるところです。
今回のパー券事件も財務省が一枚絡んでいる。と一部に言われたことも。
キンペーの汚職摘発もキンペー一族だけは捕まりません。
もしかしたら一部の意見は正しかった! かも
本来なら真っ先にがさ入れされる、募金詐欺疑惑のどっかの野党が何もがさ入れされてないのは「取引」したからでしょうか。
>もし自身の再選を諦め、残りの任期で「好き勝手」するつもりなら、
首相を評価すると言うより、単なる人間観察という矮小な視点ですけど関心があります。
岸田氏がほんとにやりたかったことは何だったのか。
ポジティブなサプライズが出てくるといいんですがね。