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自民税調会長「税逃れ減資防止」→某新聞社の反応は?

資本金を1億円以下に減資すれば「税務上の中小企業」となり、外形標準課税が適用されないなど、いくつかの恩恵が受けられます。現実に数年前、とある新聞社が「節税目的」でこの「1億円への減資」を行っているのだそうですが、こうしたなかで、自民党の宮沢税調会長が日経新聞に対し、「税逃れ防止策」を考えていると明らかにしたそうです。まさに税の亡者そのものです。

外形標準課税と1億円の壁

現代の日本は、とにかく隙あらば増税しようとする、「税の亡者」によって支配される国となってしまったかに見えます。

もちろん、その「隙あらば増税」を仕掛ける悪の組織の総本山は財務省ですが、それだけではありません。

ふるさと納税の使い勝手を悪くし、地方自治体から独自財源を奪おうとする総務省、「税」の名目を使わずとも社会保険料などの形で事実上の税金を従業員と雇用者から強制徴収している厚生労働省、「受信料」名目で視聴者から半強制的にカネを奪い取るNHKなども、罪深い組織といえるでしょう。

こうしたなかで、東京都の石原慎太郎・元知事が2000年2月、突如として大手金融機関に限定し、5年間に限って「外形標準課税」を導入すると宣言。

課税した東京都と課税された銀行側との訴訟沙汰となったものの、最終的には和解が成立したほか、これとは別に、2004年には全国的に、資本金1億円超の法人を対象とした事業税の「外形標準課税」、つまりその年度の所得以外の要因に応じた課税という仕組みが導入されました。

これが「1億円の壁」です。

ちなみにこの「1億円の壁」、「外形標準課税が適用されない」という点以外にも、軽減税率、交際費損金算入、繰越欠損金、還付金制度などのさまざまなメリットを受けることができます。

「1億円の壁」のメリット
  • ①法人税について、所得800万円までの部分については15%の軽減税率が適用される(800万円を超える部分については23.2%)
  • ②法人税について、年間800万円まで交際費の損金算入が認められる
  • ③過去10年内に発生した税務上の繰越欠損金について、100%の損金算入が認められる(大法人の場合は50%)
  • ④欠損金の繰戻還付、つまり課税所得がマイナスとなった場合に、前事業年度に納めた法人税の還付を受けることができる
  • ⑤地方税の一種である法人事業税について、外形標準課税が適用されない

(【出所】著者作成)

この「外形標準課税を避けるためには、1億円以下に減資すれば良い」、というのは、節税テクニックとして最近、かなり有名になってきました。

税の亡者・宮沢税調会長「税逃れ防止策講じる」

このあたり、正直、資本金基準で大企業と中小企業に分け、中小企業を優遇する(=大企業を冷遇する)税制自体が公平性を欠いているのではないか、という気がしてなりませんし、無駄に複雑化した法人税制も、税率は15%で一本化するのが筋ではないかとは思いますが、この点は本稿では割愛します。

こうしたなかで、日経新聞に7日、こんな記事が掲載されていました。

「1億円以下に減資で税逃れ」防止 自民税調会長が意向

―――2023年11月7日 18:59付 日本経済新聞電子版より

記事によると宮沢洋一・自民党税調会長は7日、日本経済新聞社の単独インタビューに応じ、外形標準課税の適用基準を拡大し、大企業が資本金を1億円以下に減資して税制上の中小企業になるという説税を防ぐ意向を明らかにしたのだそうです。

また、増税です。

正直、岸田首相にとって、宮沢洋一氏は従兄である、という事情もあるのかもしれませんが、いいかげん、この人物を税調などの要職から外した方が自民党のためではないでしょうか。

某企業の事例

ただ、この増税が実現した場合、数年前に1億円に減資した某企業も、大変に困ったことになるのかもしれませんが、大丈夫でしょうか。それが、資本金を1億円に一気に減資し、取り崩した資本金を資本剰余金に振り替えるなどの処理で有名になった、某新聞社の事例です。

他人事ながら、若干心配になります。

ちなみにこの中小企業、直近5年間で売上高が40%以上減っており、しかも2023年3月末時点において、繰延税金資産(30億円)、貸付金(短期貸付金が34億円、長期貸付金が14億円)など、一般論として「資産性が疑われる可能性がある項目」が散見されるのも気になるところです

さらにいえば、この会社は総資産が1342億円もあるにもかかわらず、純資産の部はわずか66億円しかなく、仮に資産の部でいくつかの資産項目の回収可能性などが否認されようものなら、あっという間に債務超過に陥ってしまうかもしれません。

このように考えていくと、せっかく1億円に減資して中小企業になったのに、その恩恵が受けられなくなるというのは、大変に困った話といえるのではないでしょうか。

なお、どうでも良い話かもしれませんが、税制といえば、新聞業界も多大な恩恵を受けています。消費税の軽減税率などはその典型例でしょう。このように考えていくと、新聞社は税制に関する記事を下手に書かない方が良いのではないか、という気がしてなりません。記事自体の中立性が疑われるからです。

いずれにせよ、この宮沢税調会長の「増税原理主義」に、某中小企業がどのような反応を示すのかについては、ちょっと興味深いところだと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (12)

  • 自民党税調と某新聞社が、タヌキとキツネのばかしあいをしている、ということでしょうか。

    • 素朴な疑問ですけど、日経の記者(あるいは経営者)は、この宮沢税調会長の発言を、どんな気持ちで聞いたいたのでしょうか。

  • >節税目的の企業に限って適用する考えも明らかにした。

    どうやって節税目的かそれ以外か見分けるのか。
    減資は破綻した企業の再生でもよく使われる。

    ビールはおいしいけど値段が高い。高い理由は税金がたかいから。
    そこでホップの量をビール未満にして、その分税金を安くし、ビールに近い味で安い値段で売り出す。これが発泡酒だ。これは経営の工夫だと思うけど税務当局は気に食わないらしい。
    第三のビールも同じ。

    似た例に「武富士」の息子が香港に移住して海外にある財産の贈与を受け日本の贈与税を回避した事件。税務当局はたぶん「けしからん」と思ったのだろう。追徴処分を行ったが裁判になり最高裁まで行き武富士側が勝った。つまり当時の税法では税金はかかりませんよということ。
    話はここで終わらない。武富士側は1000億円を超える追徴税額を供託していた。
    国税は裁判に負けたことによりこの供託金にたいして還付加算金を支払わなければならなくなった。その額ナント400億円。

    • この武富士の件、争点は、海外居住証明だけという、凡そ財務省らしからぬもの。
      年間、何か月以上かを海外で居住していなければならない、という条件をクリアしているか?という点のみ。
      これって、外務省でパスポートを調べれば分かることなので、何故、態々裁判に?というのが、ニュース記事を読んでいて感じたこと。
      案の定、敗訴してしまった。しかも、控訴をしたりしてしつこくやったものだから、期間が延びて、多額の利息を払わなくてはならなくなった。

      多額の財産があって、それを子供に残したいものだから、死ぬまでの5年間以上を海外で居住していれば、日本の相続税法に引っかからないからと、必死の思いでタイなどの海外に住んでいる老夫婦がいるということも聞きます。
      我々庶民とすれば、老後をゆっくり日本で孫たちと過ごして、沢山相続税をお支払いください、という感じですが。(持てる者の悩みは解からず。)

  • ビートルズのTaxman。あなたの取分は1,私の取分は19。全部取られないだけでも感謝しなさい。
    途中も無茶苦茶な課税を例示して、
    あなた方は我々の為に働いているのですよ。って歌ってましたねぇ。
    ヤケクソ感のあるコーラスといい、あの曲がアルバムの1曲目って凄い。さすが英国。
    歌詞付きで聴いて下さいませ。

    • 作者のジョージが何度やっても間奏のギター・ソロを上手く弾けなくて、しびれを切らしたポールが代わりに弾いたと言うエピソードを思い出した。

      はっ!?ここでこんな投稿する日が来るだなんて!

      全ては新曲が出たせいです。御免なさい。

  • 減資は経営再建の一つの手段ですが、バランスシートの見た目は良くなりますが、実態が変わるわけではありませんので、当該企業が苦境にあることに変わりはありません。
    このような会社からも制度を変えてまで税金を取ろうという姿勢は、まさに悪代官ですね。
    そもそも中小企業と大手企業を任意の基準で分類して、中小企業を優遇しているのが問題だと思うのですが。
    そもそも税制が経営を歪めているのではないかという視点は、財務省には無いようですね。

  • 某新聞社の反応よりも国民の反応の方が気になるンじゃないのだろか。新聞離れが激しい今、昔ほどの影響はないとおもう。ただ庶民感情としては益々自民党には一票を投じない決心はたかまった。警察や検察は動かないのか。国会中はダメなのか。だいたい不正追及をする組織の長の任命権があるのがおかしい。不正を働いたら牢屋にはいれ!クソ自民が!

  • >税の亡者・宮沢税調会長「税逃れ防止策講じる」

    講じるのは良いとして、それで幾ら増収になるのか?ちゃんと計算しているのか?
    投入コストとリターンのバランスは考えられているのか?
    こんなことをやって、本当にギリギリでやっている中小企業が潰れたのでは、元も子もないのではないのか?
    経営は、ギリギリでも、世の中に無くてはならないという中小企業もあるはず。
    そんな中小企業を潰したのでは、国家的な損失ということもあり得るのではないか?

    それから、こんな重箱の隅を突いて、僅かな税収増を考えるのではなく、GDPを大きくすることを考えた方が、国の利益になるのではないか?

    「税と国の経済の発展」の関係は、微妙な匙加減が必要なこともあるのだから、こんな税の事しか分からない人に、専横をさせるのはどうなのか?
    ここは、首相がリーダーシップを発揮するべき所だと思うが。