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利権死守…受信料の亡者NHKが3世帯に割増金請求へ

いよいよ割増金の支払いを要求し始めたようです。NHKは6日、東京都の3世帯に対し、受信契約の締結と受信料・割増金の支払いを求める民事訴訟を東京簡裁に提起したそうです。「契約を結べ」という訴訟の異例さもさることながら、NHKがカネの亡者のごとく、世間の批判をものともせず、割増金制度に手を出したというのは、興味深いところです。NHKにとっては見せしめのつもりかもしれませんが、長い目で見ればNHK自身のクビを絞めることになるからです。

受信料制度という理不尽

受信料と公共料金

NHKの受信料とは、じつにおかしな制度です。

NHKが映る設備を設置した場合には、放送法第64条第1項の規定に基づき、「NHKと受信料を結ばなければならない」とされており、また、いったん契約を結んでしまうと、その契約に基づいてNHKに対し、受信料を支払う義務が発生してしまいます。

最近流行りのVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスの場合だと、人々は動画を視聴することの対価として、料金を支払いますが、NHKの場合、たとえNHKの番組を1秒たりとも視聴していなかったとしても、地上波が映るテレビを設置したら、事実上、おカネを支払わなければならなくなるのです。

いちおう、NHKは自分たちのことを「公共放送」だと自称していますので、NHKの受信料は「公共料金」の一環だ、とでも言いたいのでしょうか。

しかし、電気代にしろ、ガス代にしろ、水道代にしろ、公共料金というものは通常の、それらのサービスを使わなければ支払う必要がないはずです。たとえばガス管が自宅まで届いていて、ガス器具が自宅に設置されていたとしても、ガスをまったく使わない人は、ガス料金を支払う必要などないのです。

東京ガス「使わないなら解約して」

これについてはひとつ、興味深いエピソードを紹介しておきましょう。

某自称会計士の事例ですが、事務所を構えたばかりのころ、水道、電気とともに、ガスの契約も行いました。

ところが、現実に事務所でガスを使うことがほとんどなく、翌月の検針時に東京ガスの担当者が事務所を訪れ、こう告げたのです。

もしガス器具をまったく使わないのであれば、基本料金だけかかっちゃいますので、いったんガス契約を終了させてしまうことをお勧めします」。

これには正直、驚きました。

サービスをまったく使わないなら、ガスの基本契約を解除したらどうか、などと先方から申し出てくれるわけですから、東京ガスという会社の顧客本位ぶりには驚きます。視聴を望まぬ人からも受信料を半強制的に巻き上げるNHKとは、ずいぶんと大きな違いですね。

ちなみに余談ですが、東京ガスは最近、電力供給も行っていますし、ガス、電力をセットにすればいくばくかの割引も効くようですので、もし東京近郊などにお住まいの方は、是非ご検討ください。

特殊負担金理論とNHK利権

さて、NHK、あるいはそれを管轄する総務省が、なぜ、受信料制度を頑なに守り続けているのかについて、やはり最もすんなり来る説明といえば、「それが利権だから」、でしょう。

受信料は放送の対価ではなく「特殊な負担金」=NHK』、『NHKが「特殊負担金」理論で説明会開催:理解求める』などでも説明しましたが、NHKの受信料に関し、総務省とNHKが長らく行ってきた説明が、「特殊負担金理論」です。

この「特殊負担金理論」とは、「受信料は放送の対価ではなく公共放送を支える特殊な負担金だ」とするもので、いってみれば「この世に公共放送というものは必要だ」、「だから受信料も必要だ」、などとする、現代社会には似つかわしくないほどに雑な「理論」(?)です。

そもそも公共放送というものがこの世に必要なのかどうかという論点もさることながら、なぜNHK「だけが」公共放送を名乗ることを許されているのか、NHKの番組が公共放送に相応しいものであるかどうかを、誰がどうやって担保しているのか、など、疑問は尽きません。

NKHを巡る疑問の数々

ここで、NHKや公共放送を巡る問題提起の事例をいくつか挙げておきましょう。

そもそも公共放送は必要なのか

インターネットが発達していなかった時代ならともかく、ネット上でさまざまな情報を手に入れられるようになっている現代において、はたして公共放送という仕組みは必要なのか。税金を投じた国営放送ではだめなのか。NHK教育の放送内容は文教予算で賄うべきではないか

NHKは公共放送に相応しい組織なのか

NHKは毎年7000億円近くに達する受信料を得て、連結集団内に金融資産だけで年金資産を含め1.3兆円もの資産を保有しており、職員1人あたり少なく見積もって1550万円を超える人件費を計上しているなど、明らかに公的企業の在り方から逸脱している

NHKの放送内容は公共放送として適切なのか

NHKが放送している内容のなかには、明らかな違法行為を美談とするかのようなドラマ、特定の政治家を貶めるバラエティが含まれているなど、公共放送として明らかに不適切なものが含まれているが、それでもNHKの番組は公共放送に相応しいものといえるのか

NHKと芸能事務所の癒着など

NHKは自身を「公共放送である」と位置付けているが、そのわりに毎年末の『紅白歌合戦』は大手芸能事務所などに所属するタレントらを大挙して出演させるなど、商業放送の色合いが非常に濃い。とある芸能事務所の創業者による性加害事件が局内で発生したと報じられるなど不祥事も多い

NHKの番組内容の適切性

NHKの番組ラインナップは報道、国会中継、政見放送のみならず、お笑い、バラエティ、ドラマ、歌謡、アニメ、クイズなど、民放と遜色ないものを幅広くカバーしているが、民放と同様のジャンルの番組を「公共放送」が放送する必然性はあるのか

…。

まったく、挙げていけばキリがありません。

カネの亡者

NHK=「カネの亡者」説:亡者に失礼だ!

ただ、NHKの問題点は、それだけではありません。

「何が何でも受信料をかきあつめる」という、まるでカネの亡者のような存在に成り下がっているフシがあるのです。

いや、さすがにNHKを「亡者」に例えるのは亡者に対して大変失礼かもしれませんが、それでも受信料利権にしがみつくNHKの姿といえば、まさに亡者そのものでしょう。

こうしたなかで、NHK広報局は6日、こんな報道資料を公表しました。

未契約世帯に対する受信契約・受信料および割増金の支払いを求める民事訴訟について【※PDF】

本日、東京都内の3世帯について、放送受信契約の締結と受信料および割増金の支払いを求める民事訴訟を東京簡易裁判所に提起しました。<<…続きを読む>>
―――2023/11/06付 NHK広報局より

NHKによると、東京都の3世帯を対象に、放送受信契約の締結と受信料・割増金の支払いを求める民事訴訟を提起したのだそうです。

行政訴訟ではなく民事訴訟、というのがミソです。

契約自由の原則からすれば、「法律で契約しなければならない」という規定自体が大変ナンセンスで、そもそも違憲立法の可能性が濃厚です(※ちなみに日本の最高裁判所は2017年、受信料制度自体を「憲法に違反するものではない」とする判断を下しています)。

ただ、なぜここで民事訴訟を起こしているのかといえば、「NHKと契約に応じてくれない」から、というものです。

ちなみに今回の訴訟は、今年4月から施行された割増金制度に基づくものです。

NHKはこれについてこう述べています。

今回の3世帯は、契約締結をお願いする文書の送付や電話・訪問などにより誠心誠意説明し、丁寧な対応を重ねてまいりましたが、応じていただけなかったため、やむを得ず最後の手段として、割増金の請求を含む民事訴訟の提起に至りました。割増金の支払いを求めるのは初めてです」。

NHKに対する敵愾心を煽ることになる

契約に応じてくれなかったから割増金を請求する。

なかなかに強欲です。

おそらくNHKとしては、法的に見て契約しなければならない状況なのに契約していない世帯に対し、見せしめ的な意味合いでこの訴訟を起こしたのではないでしょうか。

もっとも、今回の訴訟、非常に残念ながら、NHKの意図と異なり、中・長期的に見て、NHKの契約を減らす方向に向かう可能性が濃厚です。

考えられる要因のひとつが、NHKに対する一般の人々の拒絶感、憎悪、ないしは敵愾心(てきがいしん)をかきたてる可能性があることでしょう。

もちろん、世の中は広いですから、NHKの番組が好きで好きでたまらないという人たちもいるはずですし、NHKに好きこのんで受信料を払いたいという人もいるでしょうから、そのような人のなかには、「私たちは払ってるんだから、払ってない人は払いなさいよ!」、などと思う人もいるかもしれません。

しかし、想像するに、こうした人は少数派でしょう。

そもそも自然に考えて、NHKの受信料制度自体が時代にそぐわないなど、相当に無理があるなかで、一般社会にはNHKに対する反発を抱く人が増えるのが関の山です。

テレビを持たなければ良い!

そして、NHK自身が割増金制度などを実際に行使するに至ったことで、もし本気でNHKに受信料を払いたくないという人にとっては、「テレビを持たない」という選択を取るのが最も合理的です。

内閣府の『消費動向調査』などを読む限り、現時点においてテレビの世帯普及率は依然として高く、単身世帯を除けば、どの年代においてもおおむね90%前後かそれ以上という水準を維持しています。

しかし、NHK自身があまりにも受信料に関するアクションを取り過ぎれば、人々に受信料制度の理不尽さが改めて意識されることは間違いなく、これが将来の家電等の購入行動に対しても、影響を与えないはずがありません。

さて、こうした割増金制度とともに、現在の受信料制度を揺るがす、もうひとつの大きな転機が訪れつつあります。以前の『政治家よ、ネット課金機にNHK改革の必要性に気付け』などでも指摘した、いわゆる「ネット課金」の問題です。

NHKの受信料問題とは、究極的には、「NHKが映る設備(テレビなど)を設置しているけれども、NHKの番組を見たいと思っていない人たち」が強い不満を持っている、という点につきます。

そして、これに対しNHK側は、「受信料制度はNHK職員の貴族的な生活を支えるための特殊な負担金」だから「理解してほしい(=つべこべ言わずに支払え)」、というスタンスで一貫しています。

ネット課金で②と③のバッティングが問題となる

ところが、ネット課金が実現したら、どうなるでしょうか。

ここで参考になるのが、4つの象限の議論です。すなわち、現在のルール上は、自宅にテレビを持っていれば、NHK視聴を希望しようがしまいが、NHKと契約を結び、受信料を上納する必要があります。

しかし、ネット課金の議論とは、テレビを持っていないけれどもNHKの番組を視聴したいと思っている人たちにNHKのネット視聴を認める代わりに何らかの名目のおカネを巻き上げようとする議論です。ということは、テレビを持っているかどうか、NHK視聴を希望するかどうかという2つの軸で、次の4象限が成立します。

NHK受信料巡る4象限
  • ①テレビあり、NHK視聴を希望する
  • ②テレビあり、NHK視聴を希望しない
  • ③テレビなし、NHK視聴を希望する
  • ④テレビなし、NHK視聴を希望しない

(【出所】著者作成)

このうち④の象限については、とりあえず現時点では考える必要はありません。

問題は②と③の折り合いをどうつけるかです。

従来であれば、②の象限の人たちから受信料を巻き上げる理屈は、「そもそもNHK受信料は、放送の対価ではなく特殊な負担金だ」、とするものだったはずです(正確にいえば、「NHK職員の貴族のような生活を支えるための」、でしょうか?)。

しかし、③の象限についてNHK視聴を認めることとなれば、それは明らかに、NHKの番組そのものの対価という性質を帯びてきますので、②の象限に受信料を負担させている「特殊な負担金」理論が立ち枯れを始める可能性が濃厚なのです。

そこに来て今回の「割増金請求事件」です。

NHKを巡る一般人からの疑念は、今後、強くなることはあっても弱くなることはあり得ません。

強欲でTV業界道連れに滅亡するNHK

いつも当ウェブサイトで指摘している通り、利権には得てして3つの特徴がありますが、その「第3法則」に基づけば、利権というものは保有者自身の怠惰や強欲で自壊する傾向にあります。

利権の3法則
  • 利権の第1法則…利権とは、得てして理不尽なものである。
  • 利権の第2法則…利権とは、外から壊すのが難しいものである。
  • 利権の第3法則…利権は保有者の怠惰や強欲で自壊する。

©新宿会計士の政治経済評論

おそらく、NHK利権も、遅かれ早かれ、これと同じ道を辿るのではないでしょうか。

いや、NHK自身が自壊するだけならまだ良いのですが、NHKの受信料を払いたくないという人が社会に増え始めれば、あっという間に世の中からテレビが亡くなってしまうかもしれません。そうなると、NHKが民放各局を道連れに滅亡する、ということでもあります。

恐らくその見立てはさほど間違っておらず、早ければ10年以内にテレビ業界の衰亡が見えて来るのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

新宿会計士:

View Comments (17)

  • 新聞=>テレビ=>NHKの順序で滅びていきそうですね。
    お仲間が減っていけばNHKも国民の怒りにおびえる様になるでしょう。

    先日の「エビデンスなしじゃダメですか」と言い、今回のNHKの訴訟と言い、
    オールドメディアのヒステリーと恐怖はますます悪化していると感じます。

    • 無理じゃネすか
      議員出して以降NHK問題に邁進でもしておればマダシモ、結党の一丁目一番地はまーナオザリにしか見えてまへんさかいに
      もー有権者も乗ってこん気がしま

  • >NKHを巡る疑問の数々

    は、問題点が網羅されているように思います。
    ただ、一つ。
    「公共放送とは何か?」を先ず問いかける必要があります。
    つまり、「公共放送」なるものがそもそも存在するのか?ということです。
    これを掲げて、これを争点として争って欲しいものです。

    1.「公共放送」なるものが存在するのか?
    2.存在するとすれば、それはどのようなものか?
    3.NHKは、「公共放送」と言う内容の番組を放送しているか

    この3段論法で、裁判を争うことにすれば、NHKはかなり苦しいのではないか?

    この裁判を、国民的な裁判として、カンパを募ってでも争って欲しいものです。
    これは、結構勝てそうな感じがしますが。

  • 今回の行動は、「民事裁判による取り立ての ”定例化” 」に道を開いたものですね。
    「訴訟費用を受信料で賄う愚行」に世論の賛同は得られないと思うんですけどね。

    いばらの道に踏み出したNHK。見せしめのつもりが、”店閉め”なんてオチも・・。

  •  みせしめですね

     時代遅れの放送法を強制から任意にすれば「公平性」はたもたれる

     放送法自体も憲法違反と判断される可能性もある

  • NHK利権崩壊へのスパイラル

    若者がテレビを見なくなる

    受信料が高齢者世帯頼みとなり将来に不安を覚える

    少しでも受信料を得るために、ネット事業拡大や未契約世帯への割増金を強行する

    受信料徴収のことしか考えられなくなる

    番組の質が落ちる

    若者がテレビを見なくなる(上へ戻る)

  • 「カネの亡者」、確かにそうかも。

    顔さえ知らぬ、何代も前のご先祖が書いたと称する、借用証を立てに
    「払えねぇってんなら、その布団、剥いで持ってくから、そう思え!」ってスゴむ
    芝居なんぞに出てくる悪徳高利貸しの所業に、似てなくもないような(笑)。

  • 私は、むしろ、未契約を貫いた3世帯、
     それは、何故なのか知りたい気持ちです。

    ・NHKの不祥事が目につくから?
    ・理不尽だから?
    ・歴史の流れに沿わないから?
    ・その他?

    訴訟になれば、勝てないでしょうに。

    私は、NHK放送のスクランブル化に向かって欲しいと願っています。
     スクランブル化は、簡単なはずです。

    但し、本文中にも有りましたが
    > NHK教育の放送内容は文教予算で賄うべきではないか

    課題として挙げられている
       教育TVの他に
       NHK技術研究所
       NHK交響楽団
       などなども
     俎上に上げて、民営化? 独立行政法人化?
     政治として話して欲しいと願っています。

    会社員時代に、NHK技術研究所 携わった経験から
     これからの日本にも、日本に、ここにしか無い研究所が必要だと思っています。
     (TV放送には限らず、公共財の電波の利用方法の研究もここなので)
     NHKの冠を取り、放送技術研究所と名称を変えても良いので。

    • 匿名様

      私も何故を知りたいです。
      私も不払いを30年以上続けています。
      まぁ、不払いシテ最終的に困る(可能性)のは、相続人である子供達です。1年でいくらの支払いになるかは、知りませんが、時効の10年と延滞金を考えても、30万円ほどかと思います。
      で、ワタシの銀行口座をNHKがしらんかったら差し押さえが出来ません。そして、NHKが主張する30万円の債権でワタシの持ち家を差押えする事は出来ません。法律用語でナントユウカ知りませんが、債権と持ち家の価格差が不均衡過ぎるカラデス。と、弁護士が言っていました。

      蛇足です。
      ワタシは逃げオオセルき満々です。
      コレはワタシの負けだと自覚したら、バンコクにロングステイに行きます。

  • 有無を言わさずスクランブル放送にすればよい話。政治がそれをできないのが問題だが、なぜ野党はそこを攻めないのかホントに不思議、すぐに議席が増えるのに。

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