当ウェブサイトでほぼ毎月紹介している、通貨別の国際送金シェアに関するレポートが出てきました。人民元の決済シェア自体はたしかに拡大しているのですが、これは「人民元が伸びている」というよりも、「ユーロのシェア急落を米ドルが補い、人民元(と日本円)がそのおこぼれにあずかっている」、と表現した方が正確ではないでしょうか。とくにユーロ圏除外データでは、ついに日本円が「第3位通貨」に浮上したようです。
SWIFTの9月の決済シェアランキング
国際的な送金市場で、何らかの「変調」が生じている可能性が濃厚になってきました。
国際銀行間通信協会(SWIFT)が毎月公表している、『RMBトラッカー』と呼ばれるレポートによると、国際送金(顧客送金と銀行間取引)の通貨別シェアに、かなり大きな変化が生じているのです。
この「国際送金通貨別シェア」は、SWIFTが2012年8月頃からほぼ毎月公表している『RMBトラッカー』というレポートに含まれるもので(※ただし、まれにデータがない月もあります)、2015年12月以降はユーロ圏を除いた国際送金データについても公表が始まっています。
こうしたなか、SWIFTが日本時間の19日に公表した最新レポートを見ると、2023年9月時点における国際送金シェアは、引き続き人民元が伸びており、ユーロ圏込みのデータで3.71%を占めて5位に入り、ユーロ圏を除外したデータでも2.73%で6位につけています(図表1)。
図表1 2023年9月時点の決済通貨シェアとランキング(左がユーロ圏込み、右がユーロ圏除外)
(【出所】『RMBトラッカー』データをもとに著者作成。以下同じ。なお、黄マーカーはG7通貨、青マーカーはG20通貨を意味する)
人民元のシェアの伸びが激しい!しかし…
過去の『RMBトラッカー』データ人民元の決済シェアは、ユーロ圏込み、ユーロ圏除外のいずれにおいても過去最大です(図表2)。
図表2 国際送金における人民元(CNY)のシェア
この人民元の伸び方は急速で、ユーロ圏込みで4%台、ユーロ圏を除外しても3%台を目指すほどの勢いです。これは、人民元決済がそれだけ世界中に広まっている証拠なのでしょうか。
これについては、「人民元の国際的な地位が上昇した結果」と断定するのは早計です。というのも、これまでずっと2位だった通貨・ユーロの「独り負け」、という可能性も濃厚だからです。
図表3は、国際送金におけるユーロのシェアをグラフ化したものです。
図表3 国際送金におけるユーロ(EUR)のシェア
いかがでしょうか。
ユーロの決済シェアが、足元のユーロ圏においても、7月以来、30%の大台を割り込んでいることが確認できるのです。また、ユーロ圏を除外したデータだと、7月以来、20%の大台を割り込んで10%台前半という、非常に低い割合に留まっています。
米ドルと日本円のシェアも伸びている
さらに注目すべきは、米ドルの送金シェアの高止まりです(図表4)。
図表4 国際送金における米ドル(USD)のシェア
これで見ると、ユーロ圏に関しては8月と比べてやや低下したものの、依然として国際送金シェアは50%近くに達しており、ユーロ圏を除外したデータに至っては60%弱と、前月と並んで過去最大水準にあります。
そして、人民元以上に印象的なのは、日本円でしょう(図表5)。
図表5 国際送金における日本円(JPY)のシェア
日本円はユーロ圏込み、ユーロ圏除外のいずれにおいても、長らく決済シェアは数パーセント台だったのですが、今年3月にいきなりユーロ圏除外データで8%超を記録。その後はいったん落ち着いたものの、ユーロの退潮と軌を一にするように、円建ての送金シェアが伸びているのです。
ユーロ圏除外データでは「日本円>英ポンド」の再逆転も
とくにユーロ圏を含めたデータでは、英ポンド(GBP)の地位は依然として高いのですが(図表6)、ユーロ圏を除外したデータに関していえば、日本円は久しぶりに英ポンドを抜いて3位に浮上しています(図表7)。
図表6 通貨別決済シェア(ユーロ圏込み)
図表7 通貨別決済シェア(ユーロ圏除外)
いずれにせよ、現在、国際的な決済においては、人民元の地位が上昇しているようにみえることはたしかですが、
その実態が本当に「人民元決済の拡大」によるものなのかは微妙です。
むしろ、ユーロが「コケ」て、その他の通貨(とくに米ドル)が伸びているなかで、人民元(と日本円)がその「おこぼれ」にあずかっている、というほうが実態に近いのかもしれません。
そして、なぜユーロのシェアが急落しているのかについても、引き続き、調べてみても面白いテーマかもしれないと思う次第です。
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よ、喜んでいいのかな?
マスメディアでチラ見した範囲では「人民元シェア拡大」「もうドルは終わり」「日本乗り遅れるぞ」的な中国万歳調に終始した短信ばかりのような…
言葉足らず内容中途半端な短信連打してミスリーディング刷り込み作戦かしらん?
掘り下げない短信で印象操作って見出し詐欺より悪質??
プロパガンダメディア考えず流し見はヤッパ危険がアブナイなぁ
ソイヤNHKのガザ病院着弾報道も誤認誘導的報道な気がす
基本的に「スポンサー」と「お客様」を怒らせる訳にはいかないのが客商売です。
中国に”優しい”のがウリなら、それ相応のスポンサーとお客様しかついていません。
逆に中国に”厳しい”スポンサー候補とお客様候補は最初から度外視しているのでしょう。
「ウチは甘口カレーが売りなんだよ!辛口カレーが欲しいんならヨソに行け!
……両方用意しろ?万人向けの味を作れ?……できる訳ねえだろ!帰れ帰れ!」
非常に単純化してしまえば、こういう事情かと思われます。