鈴木俊一財相が「ポンコツ」であるゆえん
昨年より多少は落ち着きを取り戻しつつあるとはいえ、トリプル安の発生回数、ウォン安水準などの状況を見ると、韓国経済は依然として危機的状況が続いています。通貨危機を防ぐためには利上げをするのが手っ取り早いのですが、やはり利上げをし辛い状況にあるのが現在の韓国です。こうしたなか、「多重債務者(3箇所以上の金融機関から上限までおカネを借りている債務者)」の人数が、人口の1割弱に達しているとするデータが出てきました。
目次
トリプル安の韓国
先日の『韓国「トリプル安」発生状況と家計債務不安の現状整理』などでも触れたとおり、私たちの隣国・韓国の経済状況が最近、なにやら怪しくなってきています。
久しぶりのショートレビューです。自国通貨安は日本経済には大きな恩恵をもたらしますが、韓国経済に対しては必ずしも恩恵をもたらすとは限りません。なぜなら、韓国は外貨建で巨額の債務を調達しているのに加え、主要産業の基幹部品などを日本やドイツに大きく依存していて、輸入代替効果が働きづらいからです。2023/10/06 10:40追記図表2のトリプル安・トリプル高に関する摘要の記載が抜けていましたので修正しています。円安メリット享受する日本まさに、「悲喜こもごも」、といったところでしょうか。日本では円安は企業業績の上... 韓国「トリプル安」発生状況と家計債務不安の現状整理 - 新宿会計士の政治経済評論 |
ここで、「トリプル安」とは、株価、債券価格、通貨が同時に下落する現象を意味します。
仮に「株安」を「KOSPIが前日比下落」、「債券安」を「3年債利回り上昇」、「通貨安」を「韓国ウォンの米ドルに対する為替相場(USDKRW)の上昇」と定義するならば、各年1月から9月までの「トリプル安」の回数をカウントすると、圧倒的に多かった昨年に続き、今年は過去2番目の多さです(図表1)。
図表1 韓国における1月から9月までの「トリプル安/高」の発生回数
(【出所】韓国銀行データをもとに著者作成)
トリプル安は「国外への資本逃避」の証拠
この「トリプル高」、「トリプル安」は、なかなかに興味深い現象です。経済学の教科書的には、ある国の中では通貨の供給量が同じだとすれば、株高になったときは債券安(=金利上昇)に、債券高(=金利低下)になったときには株安になる、という現象が知られているからです。
なぜなら、機関投資家は日々、アセットアロケーションの一環として、資産を「安全資産」とされる債券や「リスク資産」とされる株式などに振り向ける動きをしており(とりわけインデックス型投資ファンドなどの場合はそうです)、市場のリスク選好に応じて株高なら債券安、債券高なら株安、という現象が生じるからです。
もちろん、この説明に関し、市場関係者の肌感覚には若干合致しない部分もありますし、相関関係と因果関係の説明が不十分ではありますが、ただ、現実に生じている「株安なのに債券安も生じている」という現象は、何らかの「異常事態」を示唆するものでもあります。
そして、この株安と債券安が生じているのと同じタイミングでその国の通貨が下がるというのは、比ゆ的には「その国から資本が逃避している現象」、と解釈することも可能です。
とりわけ韓国ウォンのように、通貨の国際的な信用度や通用度が極端に低い国では、企業が国際的な事業展開を行う上で、「ハード・カレンシー」と呼ばれる外貨(たとえば米ドルやユーロ、アジア諸国の場合は日本円など)を調達することが何よりも必要です。
これらの通貨を貸している側(たとえば国際的な金融機関)としても、為替相場の動向については慎重に見守らざるを得ません。ウォン安は外貨建ての債務弁済負担を上昇させることを通じ、韓国企業の債務償還能力に悪影響を与えることが多いからです。
利上げしたい、けれどもできない韓国
こうした「マクロ」的な視点に加え、もうひとつ重要なのは、より個別の論点ではないでしょうか。
当ウェブサイトではこれまで、韓国がウォン安を防ぐために、ホンネでは利上げをしたがっている(あるいは通貨暴落に際して緊急利上げできる余地を残しておきたがっている)のではないかと考えてきたのですが、話はそこまで単純ではありません。
利上げをすれば、これにより過剰債務を抱えている債務者の破綻が相次いでしまう可能性が高まるのです。
ちなみに米韓両国の金利差は、昨年9月のFRBの利上げにより逆転しているのですが、韓国銀行としては今年1月に3.5%に利上げして以来、利上げに踏み切れずにいます(図表2)。
図表2 政策金利米韓比較
(【出所】The Bank for International Settlements, “Download BIS statistics in a single file”, Policy rates (daily, vertical time axis) をもとに著者作成)
再び1400ウォン台を目指すウォン安、外貨準備もジリ貧
これにより韓国の通貨・ウォンは昨年秋口に金融危機以来のウォン安水準となる1ドル=1450ウォン前後にまで下落していますが、その後はいったん1ドル=1300ウォンを割り込むウォン高に振れたものの、現在は再び1ドル=1300ウォンを超え、1400ウォンを視野に入れている状況です(図表3)。
図表3 USDKRW
(【出所】The Bank for International Settlements, “Download BIS statistics in a single file”, US dollar exchange rates (daily, vertical time axis) をもとに著者作成)
こうしたなか、ウォン安を牽制するための韓国銀行による為替介入も常態化しているようであり、韓国銀行データによると、外貨準備は(危機的水準ではないのかもしれないにせよ)ジリジリと減少している様子がうかがえます(図表4)。
図表4 韓国の外貨準備高
(【出所】韓国銀行データをもとに著者作成)
多重債務者が448万人で「歴代最大」
金融市場、とりわけ為替市場を中心に、このような不安定な地合いが続くなかで、ちょっと気になる話題が出てくるとしたら、韓国の国内経済の状況に関するものかもしれません。
韓国メディア『中央日報』(日本語版)の16日付の記事によると、韓国では「多重債務者」が約450万人に達するとの統計資料が出てきたのだそうです。
韓国、多重債務者が448万人に…歴代最大
―――2023.10.16 15:35付 中央日報日本語版より
中央日報によると「多重債務者」の定義は「3箇所以上の金融機関で上限いっぱいまで借り入れている債務者」のことだそうです。
韓国銀行が野党議員に提出した『家計貸出現況』と題した資料によれば、こうした多重債務者は4-6月期で448万人に達し、前四半期比2万人増加。統計を作成し始めて以来最多で、こうした多重債務者が全家計債務者に占める比率も22.6%と史上最大に達したそうです。
韓国の人口といえば、2021年基準で5183万人ですので、ざっと人口の8.64%(つまり1割弱)が多重債務者、ということでしょう。
なかなかに恐ろしい状況です。
DSR6割!
これについて、中央日報はこうも指摘します。
「実際、多重債務者の平均総負債元利金償還比率(DSR)も約62%で、最低生計費程度を引いてほぼすべての所得を元利金償還に当てなくてはいけない状況と推定される」。
DSRの定義にもよりますが、一般論でいえば、債務の元利金弁済に廻さなければならない資金が収入の3部の1を超えると、その人の生計は破綻することが多いです。とりわけ低所得者層の場合、まじめに借金を返すと食うや食わずの状況に追い込まれることもあります。
こうした多重債務者が負っている債務の額自体は、前四半期と比べて3.3兆ウォン減少して572.4兆ウォンとなったそうであり、1人あたりに換算すると1億2785万ウォン(113万ウォン減)だったそうですが、それでもDSR60%超というのは、かなり厳しい水準です。
こうした状況を見ると、韓国銀行としてはなかなか利上げに踏み切ることが難しく、したがって、「利上げして通貨危機回避」を選べば金融危機、「利上げせず金融危機回避」を選べば通貨危機、という非常に危険な状況が続いていると考えて良いでしょう。
ポンコツ財相の通貨スワップ
余談ですが、こうした韓国の危機を回避する手段がないわけではありません。
それが、外国との通貨スワップです。
こうしたなかで、鈴木俊一財相は6月、韓国側と日韓通貨スワップの再開で合意したものですが、どうして韓国が自ら招いた危機を回避するために、日本が貴重な外貨を融通してやる必要があるというのでしょうか。
いちおう、合意されている通貨スワップの規模は100億ドルで、正直、韓国が本格的な通貨危機に巻き込まれたときに役立つレベルではありませんが、それでも通貨スワップで融通される外貨の出どころは、私たち日本国民の血税を原資とした外貨準備です。
こうした合意をうかつに取り交わしてきてしまうこと事実自体、この者が財相として、いや、それ以前に「政治家として」、ポンコツそのものである証拠と断言できるでしょう。
【参考】鈴木俊一財相
(【出所】首相官邸HP)
もっとも、非常に不思議なことに、6月末で日韓通貨スワップの再開に合意していたはずなのに、財務省や日本銀行のウェブサイト上、日韓通貨スワップの契約条件等の詳細については一切掲載されていません。
これについては以前の『日韓通貨スワップはどうなった?』でも指摘したとおりですが、「現時点においてまだ協定は発足していない」と見るべきなのか、「日本政府が国民から情報を隠蔽している」と見るべきなのかについては、よくわかりません。
どなたか、国会議員の方がこの「ポンコツ」に対して、質問していただきたいところですが…。
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毎度、ばかばかしいお話を。
韓国人:「赤信号、みんなで渡れば怖くない。多重債務、みんなでやれば怖くない」
これって、笑い話ですよね。
ちょっと前に、jp.investing.comの掲示板を見てたら、どなたかが書いてました。
財務省に直接電話して日韓スワップについて聞いたそうです。
財務省職員の回答としては、「スワップの金額等に関する協議」を開始することを決めただけで、実際にスワップを取極したわけではない、という事だったと思います。
真偽は不明だけど、財務省の発表との整合性は取れていると思いました。
私の感想は:「よくそこまで貸すね」
>なたか、国会議員の方がこの「ポンコツ」に対して、質問していただきたいところですが…。
国会の質問主意書でもいいんですよね。
どなたかここを見ている議員先生、あるいは秘書様、どうですかね。
しかし、実際にスワップ締結したら「スワップ締結したので財源確保の増税します」がくっついてきたりして。
さらに関係ないんですが、「増税めがね」は「財務省のポチ」の置き換えを狙って流布させてるのではないかと勘ぐってます。ポチよりまだマシと。(笑)
いつも思うのですが、日本にとって韓国を助けるメリットって何かあるのでしょうかね?
歴史的に見ても、韓国があって良かった事など無いように思うのですが。
疫病神にしか見えないのですが。
一応一つだけ、「韓国があった方が良い事」はあります。
数千万人単位の「難民爆弾」を防げる。
たったこれだけですが、私としては韓国がギリギリ飢え死にしない程度に
援助するのはなんとか我慢できます。
後はまあ、一応、北朝鮮相手の肉壁として使えなくもない?くらいでしょうか?
この写真。ニッコリわらって気持ち悪い。そりゃ写真だからブッスとするわけはない。だけど経済の知識があるとは思えない。財務官僚のレクチャーがあれば、なんとかはなる。少くとも麻生太郎は韓国とのスワップには応じなかった。スワップが本当にまだ決定していないのは慶賀の至りではある。で、韓国が繰り出してきたのが「韓日経済協力」である。これに応じたら終わりである。韓国のねらいは日本の準備金だからである。日本から韓国に経済分野で協力を求めることはない。
下下下の危地太郎君
キモ入り人事の成果です
「スワップはするが、時と場所の指定まではしていない。日本の気分次第では
スワップは10年後かも知れないし、20年後かも知れない」
もし日本側が某賭博漫画の様にこれ位用意周到に韓国を”ハメ”ていたら拍手したい物ですが……
岸田政権にそんなしたたかさがあるとはちょっと期待できないかな……
サイト主様が以前に指摘されていたが、韓国の銀行の資金量は経済規模の割に異様に小さい。
古い本だが室谷克実氏もそのことに言及し、それを補うものとして「私債」「私金融」の存在を挙げていた。その本のなかで「日本の金融事情に慣れすぎてしまうと私債の存在そのものがなかなか合点がいかない」と述べている。
日本のようにカネの唸っている国からは理解しがたい金融システムがあるのだろう。
1997年のアジア初通貨危機の
引き金を引いたのは、
見栄を張って豪語してた韓国外貨準備高なるものは
実は嘘っぱちでのウォン崩壊だったっことは
グリーンスパン議長の回顧録で詳細に書かれています。
今の状況はそれと酷似してきており
韓国はまたぞろ その韓流ゆえに
世界に迷惑をかけるのかとの懸念が高まっています。
韓国や韓流の人たちが今やるべきは
『実質G8ニダ』(笑)だとか
『世界が羨む先進国韓国』(笑)だとか
『日本など足元にも及ばない』(笑)だとか
そんなしょもない見栄を張った
韓流画策をしているときではなく
見栄を張って取得した
サムスン現代などの海外投資と資産を売り払って
自国通過経済防衛に9あててウォン崩壊防いで
世界に迷惑かけ無いまじめな努力をすべきです。
まあ、韓流故にそれができない特性が
有史以来ほぼ中国の属国で、文化でモラルで国力で
他のアジアの国に劣後してしまってきた歴史を
繰り返えしてしまってきたのだとは思います。
そんな韓国みたいなものの救済に
感謝もされずどぶに捨てるような
日韓通貨スワップを進めてしまいそうなので
反省が無いという点では、
韓流とウッシッシをする日本の日韓スワップ推進派も
韓流と同罪なのかもしれません