X

「国の借金」は増税しなくても経済成長で目減りする!

少子化は財務省の責任:紙おむつにも税を課す非道ぶり

福岡市が子育て負担の軽減を目指し、おむつや離乳食など、毎月2千円分の子育て用品を無償で支給する事業を始めるのだそうです。産経によるとこうした取り組みは兵庫県明石市などで先例はあるものの、「政令市で初めて」だそうであり、これに泉房穂・前明石市長も応援メッセージを出しているようです。ただ、冷静に考えてみると、紙おむつにも10%の懲罰的な税率が適用されている事実を踏まえると、財務省は少子化を促進しようとしているとしか思えません。やはり、各政党は財務省を排除したうえで、専門家を招いて税の在り方を研究すべきではないでしょうか。

福岡市の興味深い試み

『産経ニュースWEST』に先日、少し興味深い話題が掲載されていました。

無償おむつ宅配、8月開始 福岡市が政令市で初、子育て負担軽減

―――2023/07/19 16:40付 産経ニュースWESTより

産経によると福岡市は19日、0~2歳児がいる家庭を対象に、8月1日以降、毎月おむつ離乳食など子育て用品2千円を無償で支給すると発表したそうです(※ただし、生後4ヵ月以降は子供と親が子育て関連施設を利用するなどした場合に限定されるそうです)。

これは、大変に興味深い試みです。

あまり世の中では意識されていませんが、お住まいの自治体によっては、子育てには大変にカネがかかります。

たとえば出産に際しては、加入している健康保険から、出産一時金として50万円(※出産が2022年3月末までだった場合は42万円)が支給されますが、病院などで出産する場合の費用は、これを上回ることが多いようです。

また、出産までの妊婦検診も、基本的には健康保険が適用されず、自己負担ですので(※自治体によっては補助が出ることもあります)、妊娠してから出産するまでに、下手をすると数十万円の費用が必要になってしまうのです。

そして、生まれたら生まれたで、また大変です。

母乳で育てるならば良いのですが、粉ミルクとの混合で育てる場合には、それなりにコストが必要です。(個人差はあるにせよ)たとえば生後1年間、毎日800ml程度を消費すると仮定すれば、800グラム入りの粉ミルクの大缶も、だいたい10日前後でなくなってしまいます。

【参考】粉ミルクの例

(【出所】アマゾンアフィリエイトサイト)

下手をするとミルクだけで毎月1万円前後という費用が掛かります。このように考えていくと、産経記事に記載されていた「2千円の子育て補助」、「たかだか2千円」、とバカにすべきではありません。

ちなみに産経によると、今回の福岡市の事例と類似する事業は、「すでに兵庫県明石市などが実施している」としていますが、これに関連し、泉房穂(いずみ・ふさほ)前明石市長がツイートを発信しています。

泉氏によれば、福岡市の高島市長から昨年の段階で「明石市を参考に(事業を)実施する」との連絡があったのだそうであり、これを福岡市だけでなく、ほかの自治体にも広まってほしいとのメッセージです。

繰り返す!紙おむつの消費税は10%!!

ただ、子育てという切り口からも冷静に考えていくと、日本の税制度の設計が適切なのか、改めて整理が必要です。

ミルクの場合はまだ食品の扱いなので、8%の軽減税率が適用されていますが(※といっても、8%というのは重い負担です)、問題は、それだけではありません。

赤ちゃんを育てるうえで、肌着、おしりふきなどの消耗品に加え、バカにならないのが紙おむつです。大事なことなので強調しておきますが、おむつにかかる消費税・地方消費税の合計税率は、10%です。軽減税率は適用されません。

しかも、同じ「紙」でも新聞紙の場合、一定要件を満たせば8%の軽減税率が適用されます(というよりも新聞は生活必需品でもなんでもありませんので、買わなくてもまったく問題ありません)。

しかし、紙おむつはその性質上、「使用量を節約する」ということができるものではありません。それなのに、子育て必需品であるはずのおむつに関しては、なぜか10%という、まさに「懲罰的な税率」が適用されるのです。これは正直、「日本では子育てをするな」という、財務省からのメッセージでしょう。

税収は足りていないのか?

では、事実関係を確認しておきましょう。そもそも論として、一般会計の税収は、2010年以降、(一時的に前年比で落ち込むことはあっても)基本的には右肩上がりで増え続けています(図表)。

図表 一般会計の税収の推移

(【出所】財務省『税収に関する資料』。なお、令和3年度以前は決算額、令和4年度は補正後予算額、令和5年度は予算額)

2019年の税収は58.4兆円だったそうですので、(予算ベースではあるにせよ)2023年の69.4兆円という金額は、4年間で税収が11兆円増えたことを意味します。

昨今の円安の影響もあってか、企業業績が堅調であること、あるいは物価上昇に伴い同じ生活をしていても、一般消費者が支払う消費税が増えていることなどもその要因なのかもしれません。さらには、今年10月から開始される消費税等のインボイス制度も、税の捕捉率上昇を通じ、税収を押し上げる可能性があります。

このように考えていくと、もしかして国は税金を「取り過ぎている」のではないか、といった疑念が生じてきます。

国の借金論の大きな間違い

では、なぜ財務省は、まるで亡者のように税率の最大化を図っているのでしょうか。

政府税制調査会、税収は過去最高なのに「税収不十分」税収は過去最高なのに、「国が歳出の拡大に対し、十分な税収を確保できていない現状」を「問題視」する――。とんでもない者たちです。政府税制調査会が先日公表した『わが国税制の現状と課題』と題する資料に関し、報道によれば、岸田首相はこれをすんなりと受け取ったのだそうです。税制調査会のメンバーは基本的には財務省の傀儡と考えてよさそうですが、税収が過去最高の現状でさらに所得控除を削るなど、増税に邁進する財務省は、さながら税の亡者であり、国民の敵の総本山その...
税の亡者・財務省は国民の敵…次は給与所得控除減額へ - 新宿会計士の政治経済評論

旧・大蔵省時代を含め、財務省の言い分を眺めていると、消費税に関しては言い分がコロコロ変わっています。たとえば消費税が導入された前後の言い分は「直間比率の是正」でしたが、最近はもっぱら「国の借金を返すこと」などに主眼が置かれています。

しかし、拙著『数字でみる強い日本経済』などでも議論してきたとおり、そもそも「日本は国の借金を返さなければならない」とする言説自体が、じつは大きな事実誤認です。

【参考】『数字でみる強い日本経済

(【出所】アマゾンアフィリエイトリンク)

ちなみに一部メディアがしきりに唱える「国の借金」なる概念は、経済学的には誤ったものであり、正しくは「政府債務」です。そして、適正な政府債務の規模は、その国の経済が置かれた諸条件により全く異なってきます。

以前の『数字で見る「対外純資産400兆円超」のカネ持ち日本』などでも説明したとおり、日本の場合はそもそも巨額の対外純資産国であり、たとえば政府や一般企業などが、「外国金融機関から外貨建てで返済しきれないほどの巨額の債務を負っている」、という事実は確認できません。

家計資産が相変わらず2000兆円を超え、対外純資産は437兆円にも達しました。こうした「カネ持ち国家」である日本では、しかし、相変わらず「国の借金」論などの誤った言説を信じる政治家らが、増税を画策しているようです。国債の大部分は国内で消化され、しかも国債の発行残高は家計資産の額を大きく下回っています。「現在の日本が財政危機だ」、「日本には増税が必要だ」というのは、財務省が作り出した幻想なのです。最新資金循環統計とは?日銀は27日、2023年3月末時点における「資金循環統計」を公表しました。この「資金循環統...
数字で見る「対外純資産400兆円超」のカネ持ち日本 - 新宿会計士の政治経済評論

というよりも、少なくとも国債(国庫短期証券、財投債を含む)はすべて円建てであり、しかも日本国内で消化されています。過半は日銀が保有していますが、その日銀は国内金融機関からおカネを借りており、その国内金融機関は家計や企業などからおカネを借りています。

わかりやすくいえば、「国の借金(?)」とやらは(定義にもよりますが)だいたい1200兆円程度ですが、その半額の600兆円弱を日銀が保有しています。そして、その日銀は国内金融機関から500兆円弱を日銀当預のかたちで借りており、国内金融機関は家計から1000兆円近い預金を預かっています。

また、残り600兆円についても国内外のさまざまな機関投資家によって保有されており(※といっても、海外投資家の保有分は200兆円にも満たない額です)、たとえば保険会社が300兆円弱を保有していますが、その保険会社も家計から500兆円以上を借りているのです。

本当にわかりやすい図式です。

なんのことはありません、日本国内に足りていないのは「おカネの借り手」であって、「おカネの貸し手」ではないのです。こういう状態で、通常、財政再建は必要ではありません。むしろ政府債務規模を拡大するか、いっそのこと減税して財源を国民に返すことが必要です。

経済成長をすれば債務負担は自然に低下する

もちろん、政府債務の規模が大きすぎると、景気を引き締めなければならなくなった時や金利が上昇した時の「重石」になる、といった指摘があることは事実でしょう(※そうした状況が現在の日本で生じるとも思えませんが…)。

ただ、仮に「国の借金(?)」とやらを「減らさなければならない」のだとしても、それを圧縮する手段が「増税のみ」だとする考え方も、間違っています。

NHKのように、金融資産だけで1.3兆円(※年金資産を含む)という資産を蓄え込み、1万人以上の職員に1人あたり年1550万円を超える人件費を計上している組織を解体し、残余財産の国庫返納を命じれば、「国の借金(?)」とやらを圧縮できます。

あるいは1兆ドルを超える外貨準備を有効活用し、たとえば管轄を財務省から日銀に移管させ、それを円換算した金額を日銀が政府口座に振り込んであげれば、「国の借金(?)」とやらは一瞬で100~200兆円ほど圧縮できるでしょう。

ただ、それ以上に重要なのは、「経済成長を通じた債務の圧縮」です。実際のところ、経済が成長すれば、名目債務価値は下がっていくのです。

たとえば、GDPが500兆円の国において、「国の借金(?)」が1000兆円だったとすれば、GDP公的債務比率は200%ですが、この国が経済成長し、GDPが1000兆円に増えれば、「国の借金」がそのままであれば、GDP公的債務比率は100%に低下します。

これは、けっして非現実的な値ではありません。

たとえば、毎年の経済成長率が1%ならば、30年後に経済規模は1.35倍になります。

しかし、これが2%になれば、30年後の経済規模は1.81倍であり、3%なら2.43倍、4%なら3.24倍…、と、級数的に増えていきます(ちなみに毎年10%の経済成長を30年続ければ、経済規模は17.45倍になります)。

あるいは、GDPの規模が倍になるために必要な年数は、1%だと約70年ですが、2%だとちょうど35年、3%だと24年弱、5%だと14年あまりです。

毎年の経済成長率とGDPが2倍になるために必要な年数
  • 1%…69.66年
  • 2%…35.00年
  • 3%…23.45年
  • 4%…17.67年
  • 5%…14.21年
  • 7%…10.24年
  • 10%…7.27年
  • 15%…4.96年
  • 20%…3.80年

(【出所】著者作成)

すなわち、「国の借金(?)の負担を減らしつつ、経済成長を図る」という、日本経済にとっての処方箋があるとしたら、そのひとつは、今すぐ減税して国民負担を減らし、経済成長を促進することにあるのかもしれません。

勉強会、実施しますよ!?

宮澤喜一以来の「宏池会政権」を率いている岸田文雄首相本人に、このロジックを理解する知性があるかどうかは別として、少なくとも財務省改革は待ったなしです。

財務省は国税庁、主計局という、国のサイフの「入口と出口」を一手に支配し、国会議員を大きく凌駕する政治的権力を不当に握り、この30年間、ひたすら増税を続けて来たからです。

そして、財務官僚は自由・民主主義のプロセスに反して不当に大きな権力を握り、それを使って日本経済を破壊してきたという意味において、「国民の敵」の総本山ともいえます。

あるいは、日本にとっての最大の脅威は、じっさいのところ、中国でも韓国でもロシアでも北朝鮮でもなく、内側から日本経済の破壊工作を推進している財務省そのものなのかもしれません。

この点、故・安倍晋三総理大臣は霞が関関係者以外からさまざまなヒアリングを行っていようですが、本件に関してもできれば自民党や日本維新の会の関係者あたりが財務省関係者を排除したうえで、経済学や会計学に詳しい専門家を招くなどし、改めて勉強会を実施してほしいと思うのですが、いかがでしょうか?

(※不肖、山手線の駅名を冠した怪しい自称会計士も、もしも自民党、日本維新の会、国民民主党などの皆様方から招かれれば、喜んでレクチャーをしに行きますので、よろしければ是非ともお申し付けください。)

新宿会計士:

View Comments (14)

  • 子育てにお金がかかるってことが少子化の原因なら、対策には、お金がかからないようにするってことと、必要なお金を支給するってことがあると思うのです♪

    紙おむつの宅配とか消費税の免除とかは前者だし、児童手当は後者の対策だと思うのです♪

    個人的には、前者よりも後者を拡充して、使い方はそれぞれにお任せってのが良いのかな?って思うのです♪

    ただ、子育て中の方にお金を渡すって政策だと、単に出産とか育児に必要な物とかサービスの値段が上がるだけで、子育てしてる方の負担軽減には繋がらなかったりするのかな?

  • なんとなく不安だった通りこども家庭庁は迷走中

    使途は決まってないのについた予算5兆円の使い途には要注意です。

    • 公務員はほっておくとどんどん増えるという「パーキンソンの法則」というものがあります。
      政治家は、時々行政改革をやって、肥大化したり効率が悪くなっている組織の見直しを行う必要があります。
      岸田首相は、行政改革どころか逆に公務員の仕事を増やすというパーキンソン病を悪化させる方向に力を入れています。
      組織を作っただけで課題を解決した気になっている人の見本のような方です。

    •   早速この件でミスリード見出し記事に脊髄反射で飛びついてコミュ砲食らった野党議員がいますね。
       https://www.honmotakeshi.com/archives/%e3%80%90%e3%83%95%e3%82%a1%e3%82%af%e3%83%88%e6%82%b2%e5%a0%b1%e3%80%91%e3%82%8c%e3%81%84%e3%82%8f%e6%94%bf%e7%ad%96%e5%af%a9%e8%ad%b0%e4%bc%9a%e7%b5%8c%e6%b8%88%e6%8b%85%e5%bd%93%e3%80%81%e3%83%9f.html

      • なんとな〜く、万博のチケットが全国の子どもさんに配布されたり修学旅行的なものが組まれたりもしそうな…気がします。
        嫌だなぁ

  • 増税って「経済の種もみを食すること」なんだよね。
    「採取から栽培への変革」って思想はないのだろうか?

      • やり切れぬ思いから、財務省の応援歌?を貼り付けます。(後悔はありません)

        https://youtu.be/7rlPtJxyfpI?t=127
        (NHKみんなのうた「へんなABC」より)

        ♩たたんでおしまい!ゼ〇ッ〇ー〇ト!!(たたんでおしまい・・ゼ〇ッ〇ト)

        ・・。

  • 私は消費税には否定的です。
    直間比率の改善などと言っていましたが、何故直接税を増やさなければいけないのか理由が分かりません。
    また、国の借金とやらは個人の借金とは全く異なるものですので、その国の経済状態によって対応策は全く異なると思います。
    消費税は、本来課税すべきでない人からも容赦なく税金を取り立てる仕組みです。
    また、不景気の物価高の場合には減税こそが正しい政策なのですが、消費税の場合は物価が10%上がれば税金も自動的に10%増税されます。

    私は、消費税は、人が生きている限りは課税される人頭税のようなものではないかと考えていますので、人口が増えない原因の一つが消費税ではないかと疑っています。

  • 野党とオールドメディアと財務省の利権構造が鉄壁なのか、与野全ての政治家に危機意識が無いのか、財務省に挑む勇気が無いのか、挑むだけの理論武装ができてないのか。もはやアメリカからノーベル賞学者を招聘するしか、財務省を変える術は無いのかもしれません。シャウプ勧告、じゃないけど、外圧的なものでしか、日本の幹の部分は動かない気がします。憲法改正と財務省改革、どちらが先か?このままだと議論ばかりで、法解釈のその場しのぎと選挙目当てのバラマキの繰り返しで終わりそう。

  • (実質的な)経済成長しなくてもインフレだけで国の借金は目減りしますよ。
    成長なきインフレは増税並みに国民の生活を苦しくしますが。

  • 少し前に持て囃された「日本は経済成長する必要はない」論者も財務省の仕込みっぽいですよね。
    財務省の高級官僚もやっぱりパナマとかケイマンに資産移してるんですかね中国みたく?

  • 次期選挙では紅池会は全員落選させ
    莫大な国家予算を浪費している
    官庁の改革をしていただきたいです