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不支持率が支持率を10ポイント以上上回る=主要調査

当ウェブサイトで「定点観測」している6つの内閣支持率調査のうちの4つが、現時点で出てきました。いずれも支持率が不支持率を大きく下回っており、時事通信のものを除けばいずれも10%ポイント以上の差がついています。ただ、産経・FNNの調査によると、岸田首相に「今すぐ交代してほしい」と答えた割合は23.9%で、自民党総裁としての任期が切れる来年9月まで首相として在任してほしいとの回答が59.9%に達したそうです。このあたりは有権者なりのバランス感覚なのでしょうか。

今月の「藪医者の健康診断」

当ウェブサイトでは以前から、メディアが公表する内閣支持率については「藪医者の健康診断」くらいには参考にすべきものである、と考えています。

健康診断には、血圧、血糖値、眼圧、骨密度など、さまざまな「数字」が出てきますが、それらの「数字」をもとに、最終的に体の状態を判断するのは医師です。ですが、医師によっては数値の解釈を誤ったり、血圧などの測定を誤ったりすることもあるようですし、その人のその日の体調によっても数字は動いたりします。

したがって、内閣支持率や政党支持率などをもとに、「支持率は危険水域」などとする記事が出ても、そうした記事を鵜呑みに信じるべきではありませんが、それと同時に明らかに支持率が不支持率を下回るなどの状況が生じてくれば、やはり注目しないわけにはいきません。

こうしたなか、日本のメディアは内閣支持率を三々五々公表するという特徴があるようです。

当ウェブサイトで「定点観測」的に眺めているのは読売新聞、朝日新聞、時事通信、共同通信の4つの世論調査と、産経・FNN、日経・テレ東の2つの合同世論調査、合計6つです。

これらのメディアはほぼ毎月、調査結果を公表しているものの、そのタイミングはさまざまであり、一部のメディアは月末に公表することが多いものの、ときどき月のなかばに公表することがあるなど、タイミングはよくわかりません。

今月の調査結果(4つ)

とりあえず今月に関しては、現時点において4つがすでに公表されています(図表)。

図表 内閣支持率(2023年7月)

メディアと調査日 支持率(前回比) 不支持率(前回比)
時事通信(7/7~10) 30.8%(▲4.3) 39.3%(+4.3)
朝日新聞(7/15~16) 37.0%(▲5.0) 50.0%(+4.0)
共同通信(7/14~16) 34.3%(▲6.5) 48.6%(+7.0)
産経・FNN(7/15~16) 41.3%(▲4.8) 54.4%(+5.2)

(【出所】各社報道を参考に著者作成)

少なくともここに挙げた4つの調査は、いずれも支持率が不支持率を下回っており、時事通信のものを除けば、10%ポイント以上の差がついています。また、支持率は軒並み下落する一方で不支持率は軒並み上昇していることも確認できます。

この点、先週の『青木率50%超えも…「維新リスク」依然残る岸田自民』でも触れたとおり、一般に「青木率」と呼ばれる指標がありますが、この「青木率」的に見れば、内閣支持率が「危険水域」とはいえないようです。

岸田内閣の「青木率」は、時事通信の7月の調査においても、依然として50%を上回っています。内閣支持率は落ちたものの、自民党に対する政党支持率は、意外なほどに底堅いからです。ただ、なぜ内閣支持率が低下したのかに関する「本当の理由」に、既存メディアが頑なに触れようとしないのは不思議です。そして、自民党(と立憲民主党)にとっての本当のリスクは、立憲民主党からの大量移籍とボーダー選挙区での大量当選というシナリオでしょう。支持率調査≒藪医者の健康診断当ウェブサイトで不定期に取り上げる話題のひとつが、内閣支...
青木率50%超えも…「維新リスク」依然残る岸田自民 - 新宿会計士の政治経済評論

たとえば朝日新聞の『自民支持率が28%に下落 20%台は20年6月調査以来 朝日調査』という記事によれば、自民党支持率は28%であるため、「青木率」は65%です。

藪医者たるゆえんは「診断が正しくないため」

ただし、一般論でいえば、メディアは「藪医者」のようなものであるとはいえ、これを完全に無視することはできません。複数メディアの調査は(おそらくは)独立に実施されているはずだからであり、また、世論調査自体が有権者の投票行動にも影響を与える可能性があるからです。

というよりも、むしろ世論調査自体、政権に対するプレッシャーとして機能します。

とくに恐れるべきは、時の政権が世論調査を気にすることで、世論に妙に阿(おもね)る行動を取るリスクであり、とくに内閣改造・党役員人事で妙なサプライズを出そうとして大失敗に終わる、といった事態は、ときとして政権の崩壊リスクを高めるからです。

ことに、メディアが「藪医者」たるゆえんは、その「診断」が正しくないからです。

たとえば共同通信の次の記事を読んでも、支持率が岸田文雄内閣発足以来で最低となったとしつつ、「福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出に関する政府の説明」、「マイナンバーカードの問題」などに言及されています。

内閣支持率34%、最低水準 共同通信世論調査

―――2023年7月16日 20:00付 日本経済新聞電子版より【共同通信配信】

記事を読むと、まるで「マイナンバーカードと福島処理水」が内閣支持率を押し下げているかに読めてしまいます。

しかし、既存メディアが頑なに無視している、もっとさらに重要な課題がいくつもあります。

たとえば、参院選の政権公約に盛り込まれていなかったにも関わらず(おそらくは多くの国民の反対を押し切って)強行されたLGBT法の採決、明らかにパブコメを無視して強行された韓国「ホワイト国追加」などがその典型例ですが、それだけではありません。

所得控除の縮小、通勤手当などを含めた課税対象の拡大などの中間答申(『税の亡者・財務省は国民の敵…次は給与所得控除減額へ』等参照)、日韓通貨スワップの再開、韓国による2018年12月の火器管制(FC)レーダー照射事件を不問に付すなどの措置は、いずれも岩盤保守層を激怒させるものです。

有権者のバランス感覚?

このあたり、時事通信や朝日新聞の世論調査では、「青木率」はまだ50%を割り込んでいませんし、とくに時事通信の調査では自民党の支持率はむしろ前月比小幅で上昇しています。

ただ、それと同時に自民党にとっての懸念材料は、日本維新の会に対する支持率が上昇していることでしょう。

今朝の『数字で予測する衆院選:大量移籍で維新躍進が可能に?』でも取り上げましたが、今すぐ解散総選挙が行われたとしても、日本維新の会が政権を奪取するほどに議席を積み上げるという可能性は高くありません。

これまで当ウェブサイトでは、特定の政党が票を失い、他の政党に票が移っていた場合、選挙結果がどう変わったか、に関するシミュレーションを実施してきました。そのなかで、「維新が前回並みの立候補者数だったとして、最大野党になるためには、自民、立民両党からそれぞれ何票ずつ取って来なければならないか」を計算すると、その答えは2~3万票という、やや非現実的にも見える数値が出てきます。ただ、維新躍進のためにもう少し手っ取り早いアプローチもあります。それが立憲民主党の現職議員や候補者の3分の1程度が維新に移籍...
数字で予測する衆院選:大量移籍で維新躍進が可能に? - 新宿会計士の政治経済評論

日本の衆院選では小選挙区制度が採用されており、維新ないし立憲民主党などの「ライバル政党」が自民党を放逐するだけの議席を獲得するためには、まずは「追い風」が吹くことに加え、これらの政党が十分な候補者を立てることが必要だからです。

「立憲民主党から日本維新の会への大量移籍が生じる」などの事態でもない限りは、いきなり政権交代が発生することは考え辛いところです。

しかし、それと同時に、自民党が現在よりも勢力を後退させたうえ、維新が立民に代わって最大野党になる可能性についても、徐々に高まっています。

ちなみに産経・FNNの調査によると、岸田首相にどのくらい首相を続けてほしいか質問したところ、来年9月までが59.9%と最多であり、「すぐに交代」の23.9%、「できるだけ長く」の14.4%をそれぞれ上回ったそうです。

内閣支持率41% 3カ月連続下落 処理水海洋放出「賛成」56%

―――2023/7/17 11:36付 産経ニュースより

来年9月といえば岸田首相にとっては自民党総裁としての任期が切れるタイミングです。

要するに、この世論調査に応じた人のうちの6割は、「今すぐ辞めてほしい」わけではなく、自民党総裁としての任期切れまで首相職にとどまってほしいとものの、任期が終わったらさっさと退陣してほしいと考えている、ということでしょうか。

首相が1年単位でコロコロ変わるという時代が再到来すると、たしかに政治が再び不安定化してしまいます。

このあたりは有権者のバランス感覚といえるのかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (13)

  • 問題は、岸田総理の不支持率が支持率より10ポイント高いことを見て、自民党議員が、自身の選挙がどうなると考えるかでないでしょうか。(それでいいのか、という気にもなりますが)

  • 無作為にかけた電話の結果で支持、不支持が4社でなぜこんなに違うのか。
    時事、朝日、共同は不支持の方が高く、産経は支持の方が高い。
    支持と不支持を合計すると時事70.1%,産経95.7%なぜこんなに違うのか。
    考えられる可能性の1つは、産経は支持不支持の2択なのに時事は2択以外にどちらかと言うと~というのがあり全部で4択なのではないか。
    もう一つは「誘導」の可能性。
    最初にマイナンバーの不手際についてどう思うか聞く、次に首相の長男秘書官の不祥事についてどう思うか聞く、最後に支持しますか、支持しませんかと聞く。

  •  「できるだけ長く」と回答した方は、維新支持者かもしれません。

     支持率もさておき、処理水放出に反対が37%も居ることに驚きました。他に画期的な手段があるとも思えませんし、「よくわかんないけどダメだ、他に手が無いなら誰か考えろ。」という事なのでしょうか。
     マイナンバーカードにしても、こちとらマイナ保険証どころかマイナ運転免許証にしてとっとと統合(かつ携帯不要に)してくれというくらいですが。支持率低下がマイナ関連が主因とは考えづらいものの、マイナンバーカードに関しての一般イメージの悪さはちょっと想像以上でした。何がそんなに気に食わないんだ。

     今だに国政に関して「他人任せ」「イメージ優先」な国民がまだまだ多いのかなと感じてしまいます。

  • 藪医者がマイナンバー問題だけに執心するホラーな展開は遠慮して貰いたいところでありますが、ものの数ヶ月で目新しい問題に飛びつくだろうことはマイナンバーに飛びついたことからも容易に予想されます。
    それっぽいエサを投げればホイホイ食いつくでしょう。
    マッチとポンプ方式で行くなら自分たちで積極的に問題を作るかもしれません。選挙でバランス感覚派がやるであろう選挙区で自民に比例では立憲に投票する。アクセルとブレーキを同時に踏むような行為に多少似ています。

  • 「立憲民主党から日本維新の会への大量移籍が生じる」などの事態でもない限りは、いきなり政権交代が発生することは考え辛いところです。

    しかし、それと同時に、自民党が現在よりも勢力を後退させたうえ、維新が立民に代わって最大野党になる可能性についても、徐々に高まっています。

    完全に同意

  • >「すぐに交代」の23.9%

    岸田首相の次に有力な候補が居ないからでしょうね。
    私としては次の選挙で終わりにして欲しいのですが、次が問題です。
    岸田首相に次を決める能力も資格もありませんし。
    清和会と二階派が候補者一本化で合意できるのでしょうか?
    候補者選びが難航すれば菅さんの出番もあるかもしれませんね。

  • 自民党への不支持ではなく、聞き流す力はあっても聴く力が無い、岸田氏への不支持なのだから、岸田氏が辞めて、取り敢えず、菅氏に代われば良いのです。
    彼が居座れば、自民党はぶっ壊れます。
    故安倍首相が盛り返した自民党を壊しちゃいけません。

  • 岸田さんが後一年以上居座る事が党内バランスを損ねると個人的偏見で。結局、自分のやりたい事って「ノット安倍政治」自体が目的みたいだし

    • やはり、そう見えますか?
      故安倍首相への怨みなのか、劣等感なのか、本当に能力が無いのか、何れにせよ、日本国の利益に反することばかりやってますね。
      だから支持率が下がるのに、その理由は何だと思っているのでしょうかね。

      • 岸田首相は、安倍さんの一周忌で遺志を引き継ぐとおしゃっています。
        ご本人は、遺志を引き継いでいると思っているのでしょう。
        支持率が下がった原因は、マスコミと同じく、マイナンバーカードと身内の不祥事だと思っているのでしょう。
        何が問題なのかは理解していないと思われます。
        どこまでも無〇な方ですね。

  •  >記事を読むと、まるで「マイナンバーカードと福島処理水」が内閣支持率を押し下げているかに読めてしまいます

     マスゴミは来年の総裁選挙まで不支持の理由をこの二つで押し通すつもりでしょう。

  • 私マンボウは、これまでおそらくはいわゆる
    自民岩盤支持層の一人だったかなと思います。

    しかし、岸田の
    韓流政党立憲民主党のお株を奪う
    半島とウッシッシの今は
    岸田自民にNO!です。

    それゆえ、岸田支持率低下は
    そりゃそうだろうと思いますが
    オールドメディアにかかっては
    マイナンバー日々にかこつけての
    韓流政党立憲民主党の政権批判に
    歪められて一緒にされて語られるのには
    大いに異議を唱えます。

    韓流政党立憲民主党も岸田も
    あんな半島とウッシッシをする政治家は
    当たり前にNO!なのです。

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