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新聞がツイッターでファクトチェックされる時代が到来

ツイッターで、ファクトチェックがなされる時代がやってきました。しかも大手新聞社も含めて、です。多くの新聞社にとって、その社会的な寿命は、早ければあと10年前後でやって来ると思われますが、新聞社の権威は、彼らが自覚している以上の速度で失われているのかもしれません。

背景情報とは?

少し前から、ツイッターに「背景情報」なるものが表示されているという事例が増えてきました。

この「背景情報」、調べてみると、2020年9月ごろに実装された機能らしいのですが、この「背景情報」を追加し得るのは、「コミュニティノート」に参加しているユーザーです。

ツイッターによると、この「コミュニティノート」に参加するためには、①そのユーザーが最近、ツイッターのルールをしていないこと、②ツイッターに登録してから6ヵ月以上が経過していること、③携帯電話番号を認証していること、の3点が必要だそうです。

(※どうでも良い話ですが、山手線の駅名を冠した会計士を自称する怪しいツイッター・ユーザーも最近、その登録をしようとしているのですが、これについては続報があればまたお知らせしたいと思います。)

杉尾秀哉氏のケース

いずれにせよ、「コミュニティノート」に参加していると、とあるツイートに関して「背景情報」を追加することができるようになり、ケースによってはこれが大きく注目を集めることもあります。

たとえば、先週の『国会議員、休憩時間中に演説しツイッター上で「炎上」』でも取り上げたとおり、立憲民主党の杉尾秀哉・参議院議員がとある会社で休憩中に演説した姿を自身のツイッターに投稿した際、こんな「背景情報」が付いていました。

ツイッターの仕様上、「いいね」の数を「引用RT」の数が上回っているときは、たいていの場合、そのツイートが「炎上」していることを意味します。立憲民主党の杉尾秀哉参議院議員が先月末、とある会社を訪れ、休憩時間中に従業員の皆さんを絶たせたままで演説した姿を自身のツイッターに投稿したところ、これが良い感じで炎上しているようです。ツイッターの仕様ツイッターの仕様に詳しい方ならご存じかもしれませんが、ツイッターでは現時点において、リプライ(コメント)、リツイート(RT)、「いいね(♡)」、インプレッション...
国会議員、休憩時間中に演説しツイッター上で「炎上」 - 新宿会計士の政治経済評論

このツイート、現時点で確認しても、やはり同様に、「閲覧したユーザーが他のユーザーにとって役立つと思う背景情報を追加しました」とする「背景情報」が付いたままです。

杉尾氏のツイート内容のなにが問題なのかについては、この「背景情報」を読めば、よくわかります。

(「このツイート内容を信頼する限りにおいては」、という前提条件は付きますが、)杉尾氏の「休憩時間中の演説」、もしも会社が従業員に対して聞くことを強要している場合、それは「休憩時間を自由に利用させる義務」(労働基準法第34条など)に違反している可能性が濃厚です。

つまり、国会議員という「法を作る立場」にある権力者が、みずから違法行為に手を染めている可能性があるという問題提起が、図らずもこの国会議員自身のツイートからなされている、というわけです。

これは、大変に有益な機能です。

従来であれば、国会議員は私たち一般人からすれば「雲の上の人」のような存在でした。

しかし、国会議員自身が、ツイッターなど、私たち一般人と同じプラットフォームを使って情報発信する時代が到来したということは、裏を返せば、私たちは「雲の上の存在」であるはずの国会議員とも、共通のプラットフォームで対等に議論できるようになった、ということです。

新聞記者の方のケース

そして、「対等に議論できるようになった」相手は、国会議員だけとは限りません。

新聞記者、そして新聞記事そのものに対しても、こうした「背景情報」が付くというケースが見られるからです。

その具体的な事例がいくつか出てきました。

そのうちのひとつは、著名な新聞記者の方が発信した、こんなツイートです。

これは、国際原子力機関(IAEA)が先週公表した、福島第一原発のALPS処理水海洋放出に関連する包括報告書で「事実上のお墨付き」が出たことに関連し、「日本が巨額の分担金を支払っており、中立性に疑義がある」などとする趣旨のツイートです。

ところが、このツイートを表示させると、やはり目立つように、こんな「背景情報」が付記されています。

国際機関には加盟国の義務的拠出金があり、経済規模に基づくためアメリカ、中国に次ぐ第3位です(2020年)。2021年に派遣された日本人の職員数は41人、全職員2550人のうちの1.6%に過ぎません。幹部以上は1人のみ」。

そのうえで、外務省のURLリンク(※PDFファイル)が示されており、そのファイルの3ページ目には、たしかにIAEAに対する2020年時点の負担金の支払い状況などが記されているのですが、「日本は巨額の分担金を支払っている」ものの、分担金の額は中国が日本のそれを上回っていることが確認できます。

ちなみにこの記者のツイートに対しても、2023年7月10日午前10時時点において、「いいね」は1,833件に過ぎませんが、「引用リツイート」はその倍近い3,418件もついており、先ほど紹介した杉尾参議院議員のツイートと同じく「いいね<引用RT」という状況が出現しています。

大手新聞社のケース

こうしたなか、ツイッターの「背景情報」は、ひと昔前ならば「社会的権威」を持っていたはずの、新聞社のアカウントに対しても、表示されるようになりました。その事例のひとつが、毎日新聞が先週5日に発信した、「日本人なのに不法滞在と宣告された」とする記事に関するツイートです。

このツイートだけを見ると、「海外に移住した日本人が家族の介護のために日本に戻って来ただけなのに、不法滞在のような扱いを受けている」、などとするもので、これだけを読むと入管行政の理不尽さが印象付けられるのではないでしょうか。

ただ、このツイートを表示させると、こんな「背景情報」が表示されます。

ツイートに記事内の重要な情報が欠けています。この人物は、自らの意思で2007年に日本国籍からカナダ国籍に移行しています。国籍法11条1項によって『日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失うと規定する。』と定められています」。

つまり、なんと新聞社のツイートに注意喚起を促すという背景情報が出て来たのです。

いわば、自動ファクトチェック機能がツイッターに実装された、というわけです。大手新聞社が発信したツイートにこんな情報が付くというのも、やはり興味深い時代になったものだと思わざるを得ません。

多くの新聞社にとって、その社会的な寿命は、早ければあと10年前後でやって来ると思われますが、新聞社の権威は、彼らが自覚している以上の速度で失われているのかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (38)

  • 新聞記者丸裸時代の到来、即時反撃、足元警告射撃、まことめでたいことと歓迎の意を表します。

    • ウソ、願望、違法行為、意図的な隠蔽、都合のよい言い換えなどは、これまで以上に証拠付きで瞬時にバラされるということですね。別動隊が「背景情報」を荒らして、ウソが多いとか言い始めそう。

    • ジャーナリズム受難の時代との見出しを作る読売新聞、自分たちは被害者だと言わんばかりですが、読者たちは冷ややかな目を向けているに違いありません。知らぬは当人ばかりなり。

      • ジャーナリズム受難の時代は間違いないと思います。
        ただオールドメディアは決して被害者ではなく、自らがジャーナリズムを貶めた加害者であるという認識がないだけなのだと思います

  • 今日は多分この記事が出るだろうな、と思っていました。(笑)

    コミュニティノートの詳細:
    https://communitynotes.twitter.com/guide/ja

    ノートの説明がここにありますが、ノート作成者は志願者で、その正当性はノートの読み手が投入できる「評価」によって担保する考え方のようです。
    さっそく、ここに貼り付けられていた杉雄氏と毎日に付されたノートに、私の評価を遡って投入しておきました。

    ファクトチェックした結果の評価の仕組みのない「日本ファクトチェックセンター」よりずっとシンプルでいいと思います。

  • 暇な時に機能チェックだけでもと思い、休眠垢に電話番号登録して参加はできたのですが、
    「コミュニティノート登録しました。準備ができ次第お知らせします」との通知から数日放置です。登録条件は満たしてるのですが、直近活動実績なんかが必要なのか、大量申請で処理遅れなのか、実は実装されててUIが見つけられないだけのかイマイチ不明・・

    まぁ背景情報追加のハードル低ければWikiのような編集合戦になって背景情報自身の信頼性も落ちるだろうし、なかなかバランス取るのが難しい機能だと思いますが、良い機能ですよね

    Twitterでプロパガンダや風説の流布が難しくなると、Meta社のThreadsに流れるユーザーも出そうですよね。トランプ氏のSNSや一時流行の兆しのあった分散型マストドンなどよりは多数の移住者が出そうな気はしますが

    • 今は立ち上げ後で対応リソースも限られているかもしれないし、有用さアピールのためにラベルを付ける相手を絞ってるかもしれませんね。

      「普段からデマを流しているアカウントリスト」なんてのがあるのかも。(笑)
      もしそうなら、恣意的運用の余地ともなってしまいますが。

      • Twitterのユーザーの力でファクトチェックを行う「コミュニティノート」機能は全体の96%にあたる約3万件のノートが表示されないままになっている - GIGAZINE
        https://gigazine.net/news/20221220-twitter-community-notes-blind-spot/

        昨年のGigazineの記事なので、実運用がどうかはわかりませんが、背景情報の投稿が出来るのはコミュニティノート登録者で、公開された背景情報が公開され続けるには一定以上の左右ポジションのノート参加者からの評価が必要(右翼からor左翼からだけの一方的な評価のみだったら非公開にされる?)という理解で良いのかな?
        記事内でのアルゴリズムがAIなのか人なのか、96%が未公開というのは一旦公開されて評価により非公開化されるのか・非公開でノート参加者の評価後に公開されるのか(非現実的と思う)のあたりが、私では少し理解できませんでした

        何にせよ世間でも結構好評みたいですね
        Togeter:Twitter新機能『コミュニティノート』相互補足機能がなかなか良さそう
        https://togetter.com/li/2182307

        「やっぱ女体化はタッパも乳もデケェといいよな!!」と声高らかに言うものの、Twitterの注釈訂正機能で「高身長になればなるほど脂肪の付き方は少なくなります」と無慈悲に咎められる回 
        記事内の↑ツイートに笑いましたw

        • 途中送信してしまいましたので再度。

          全く勉強が足りてませんでした。ありがとうございます。
          自動化ロジックを作り込んでいたんですね。twitterオリジナルの情報を当たれるかどうかもよくわかっていませんが、こういう記事を見つけました。

          Twitterの未来を左右する? 投稿をユーザーが評価する「コミュニティノート」本格展開へ
          https://news.yahoo.co.jp/byline/yamaguchikenta/20221211-00327856

          Twitterアカウント名とは分離した、別名ベースの作成者コミュニティを作り、参加者相互の評判システムを作り上げたように見えます。コミュニティの中でよりよい行動を取るメンバーに力を与えるような。
          うまく働くかは別として、恣意性の排除を意識した上での作り込みと運用ですね。

          このコミュニティの中で評価を得るために日々頑張る熱意を持った、「公正な人物」がどれくらいいるか疑問です。
          一方で工作員の熱意は高いので、いたちごっこがどうなるか。実験の行方はとても興味深いです。

          • 元雑用係様

            ご紹介いただいた記事の最後の「役に立つコミュニティノート」を訪問してみました
            https://twitter.com/HelpfulNotesJP

            公式に、公開され評価の高い?背景情報が一覧にされています
            (このIDは「新宿会計士さんにフォローされています」とか早速表示されますwフォローが早いww)

            ただ、7月7日の公開以来追加されている背景情報はさほど多くない(20件?30件?)ので、やはり背景情報は別の場所でノート参加員評議会によって評価され、左右バイアスのチェック後に公開され評価される仕組みのようですね

          • >背景情報は別の場所でノート参加員評議会によって評価され、左右バイアスのチェック後に公開され評価される仕組み

            そのようですね。

  • マスコミにとっては、こんなファクトチェック機能は大問題でしょう。長い間「自分がファクトチェック等受けたことが無い」業界ですので、耐性はまったくないと思います。

    これで、偏向した書き込みをやめるかというと、やめないと思います。多分「背景情報書き込み隊」を育成して、それがばれてさらに信用がなくなるコースだと思います。

    • 毎度、ばかばかしいお話しを。
      新聞記者:「自分の記事がツイッターでファクトチェックされる時代は嫌いだ」
      ということは、新聞記者がツイッターを訴えるのでしょうか。
      蛇足ですが、新聞も人件費節約のため、生成AIに記事を書かせたほうが、よいのではないでしょうか。ツイッターでファクトチェックが入ったら、全自動で記事を更新するということで。もっともそうなれば、日本は、日本以上にIAEAに金を払っている中国より、IAEAへの影響力があるという記事になるかもしれません。(そうでなければ、望月記者も困るでしょう)

  • 6月末から7月初めにかけてTwitterにかなり変化があり利用者に大混乱があったのですが、この装備の実装でやはり見直しました。
    ウーロン・イスク的な名前のかた、やっぱり出来る方ですね。

    月がわりの異変はTwitterとGoogleが結んでいたサーバー契約満期でTwitterがGoogleとの10億ドルのサーバー契約を更新しなかったのも事実のようです。
    このサーバー利用停止にもなにやら焦げ臭いものをタスク氏的な名前の方が排除した結果なのかもしれませんね。
    Googleさん方の各種サービス(特にYouTube)はかなり偏向と嘘情報と他国ヘイトの根城にもなっていますし…

    Twitterが改善されて改めて気づかされたネット界だってかなり悪用されて腐ってるぞ…全体の改善や無法地帯からの脱出になればいいな。

  • BBC が去る 5 月 17 日付けで「BBC Verify」という新たな「ブランディング」を始めました。続く 5 月 22 日には、どのようにしてどんな体制でそれを実行するかを声明しています。
    巷間流布のSNS発言や報道記事を検証して真贋を判定、それを報じる記事にブランドアイコンをつけている模様です。
    ・misleading / disinformation =誤解を誘発
    (煽りタイトルや煽り発言、関係の薄い情報を混ぜ込む)
    ・fake =捏造
    (投稿画像や動画が意図的に捏造されていた場合判断根拠を明示)
    以上を基軸に判定結果を次々と断じています。
    声明文あっては OSINT の手法を採用すると明言。じゃこれまでジャーナリズムは何をしてきたんだ、ザル報道か、とか、編集部に優秀なコンピュータ人材は何人いるんだとの疑義疑問も出てきましょうが、まだ7月ですので始めたばかり。お手並み拝見というところですかね。

    • 建前上公正中立を売りとする報道機関なら、真贋判定は次の収益源とか権威アップの手段として当然トライしそうだと思うんですが、日本のマスコミはやろうとしないですね。

      そんなもん誰も求めてないしやれば叩かれるって肌身でわかっているのか。出来上がった立派な業界に「入った」人々が占めると思われる社内で、新規ビジネスを立ち上げるなんて雰囲気ができづらいのか。
      日々売上が減少するグラフを見ていたら考えることは逃げることばかり、になるのではないかとも思ってしまいます。
      もちろん、いろんな人がいるとは思いますけど。

      BBCがうまくやったら真似しようとするかな?

    • >BBCがうまくやったら真似しようと

      CV(履歴書)に将来 2023 年から BBC Verify チームに参加してこれこれの成果をもたらしたと書き記したい人材は世界中にいるでしょうし、OSINT はロケーションフリー活動ですので親和性も高い。
      日本語しか使えず使うつもりのない「ドメな報道産業界」に敢えて自ら飛び込んでいくような(ピント外れ)人材がいるとは思えないことです。時給換算の問題です。みな計算高いですから。

  • ふと思ったのですが、新聞社は、記事がツイッターのファクトチェックで問題になった場合、その記者個人の問題として、その記者を切っていくのでしょうか。

    • ふと思ったのですが、新聞記者にとって、ツイッターのファクトチェック自体よりも、それをネットで拡散する某会計士の方が許せないのではないでしょうか。

  •  国際的に公正中立な立場に立って運営されるのが目的のIAEAの中立性が信用できないというのであれば、非常に残念ですが日本は負担金を辞退させていただかなければなりませんね。つーかどこの国も公平性のために負担金は禁止ですね。さっすが望月氏。
     どうやって運営するのか知らんけど。

  • ご紹介いあただいているツイターの
    この試みは素晴らしく期待が持てると思います。

    これまでにさんざん自分たちこそが
    「ファクトチェック」や「公正中立」を
    自己申告で唱える団体が出てきてました。

    しかしそれらの中には
    SEALs以来の立憲共産党の
    コラボだったCLPにしても
    叩き出されたツイッターの
    どぶサヨキュレーションチームにしても、
    虚偽や偏向をファクトとお墨付きを与えるような
    ものがむしろ目に付きました。

    まあ、考えてみれば、
    偽ダイヤを販売する一味は、まずは
    偽の鑑定書づくりから始めるものですから
    その手のどぶサヨ方面がやっきになるのは
    当然なんだろうと感じます。

    その点このツイターの仕組みは
    特定の集団のファクト判断や中立を
    押し付けるのでなく広く世論で判断できる
    仕組みであるのが良いと感じます。

    • >偽ダイヤを販売する一味は、まずは
      >偽の鑑定書づくりから始めるものですから
      >その手のどぶサヨ方面がやっきになるのは当然

      それが新聞編集部の正体であり、彼らなりのエコーチャンバーだとの認識が例えばネットにうつつを抜かす高校生の間にも広まるころには、新聞社のほとんどは清算廃業しているに違いありません。

      • はにわファクトリーさま
        レスありがとうございます。

        そんな偽ダイヤの鑑定書みたいな
        記事を印刷するために巨大輪転機回し
        紙資源を浪費する新聞社という存在は、
        環境問題の観点からも消滅待たず
        退場勧告するべきかもしれません。

        それにしても、
        これまで新聞では跋扈できていた
        記者章は付けてはいても、ただの
        どぶサヨ活動家に過ぎない望月はんや
        ならず者とは友愛結ぶ鳩ポッポさんなどが
        ツイターで もたげた首にすかさず
        フェイクニュースの首輪をぶら下げられる
        今回の「背景情報」の仕組みは
        あらためて素晴らしいと感じます。

  • ネットは第五の権力になると、エリック・シュミットが言った事が現実化してきたと言う事でしょう。

    しかし、マスコミだって最初から全てが悪かった訳でもなく、志を持ってこの世界に入った人もあるかと思います。

    ネット自体も腐らないとは言いきれないわけで、ネットは手段であり、ネットであろうが、リアルであろうが、それを作るのは人間である事は代わりないわけです。

    そう考えた時、未来の人間は今以上に進化するんでしょさか?AIに負けてますとならない様に気をはって生きないといけませんね。

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