結局、ワグネル・クーデターは収束に向かいつつあるようです。ベラルーシ大統領の仲介のおかげか、ワグネル創設者のエフゲニー・プリゴージン氏はモスクワに向けた部隊の進撃を停止するとともに、自身がベラルーシに移るのと引き換えに、ロシア政府はプリゴージン氏らに対する刑事訴追を撤回する、といった内容だそうです。これが事実かどうかもさることながら、そうだったとして、ロシアがそれらの約束を守るのかも興味深いところです。
『ロシアでクーデタ?現時点の情報』、『ワグネルの乱にロシア治安部隊「ほとんど抵抗せず」?』でも取り上げた、ロシアの「ワグネル・クーデター騒動」に関しては、すでに日本時間の早朝ごろから報道が相次いでいる通り、(現時点では)どうやら収束したようです。
ここではロイターの配信記事(※英語版)を紹介しましょう。
Rebel Russian mercenaries halt advance on Moscow, Kremlin says fighters to face no action
―――2023/06/25 10:29 GMT+9付 ロイターより
ロイターの記事の要点は、次の通りです。
ワグネルの創設者であるエフゲニー・プリゴージン氏は、モスクワに向けて前進していた重武装部隊の接近を停止し、部隊を基地に戻すと述べた
ロシア大統領府(クレムリン)のドミトリー・ペスコフ報道官は、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の仲介により、プリゴージンに対する武力反乱を巡る刑事訴追は取り下げられ、プリゴージンはベラルーシに移住することになると述べた
ペスコフ報道官はまた、プリゴージンの「正義の行進」に参加したワグネルの戦闘員に関しても、ロシアへのこれまでの貢献が認められ、なんら処分を受けないと明言した
ロストフ州知事
ウクライナのヴォロディミル・ゼレンシキー大統領は、今回の事態を受けて西側諸国の首脳が相次いでハイレベルの電話会談を行うきっかけとなったものだとしつつ、「ロシアの中枢における混乱を露呈するもの」と指摘した
…。
また、ロシアの『タス通信』(英語版)の記事に基づけば、今回の「ワグネル危機」を受け、ロストフ、リペツク、トゥーラなどで導入されていた交通規制も、すでに解除されたそうです。
Russia’s motor road agency lifts traffic restrictions imposed amid Wagner crisis
―――2023/06/25 08:02付 タス通信英語版より
報道を信じるならば、いちおう、ワグネル危機は、いったんは収束したと考えてよさそうです。ただ、正直、「ワグネルの部隊をロシアは罰しない」、「プリゴージンに対する刑事訴追を取り下げた」、といったロシア側の発表がどこまで履行されるのかは、よくわかりません。ロシアには、約束という概念が存在しないようなものだからです。
こうしたなかで、漏れ伝わる情報によれば、反乱の最中、市民はワグネルの兵士たちに水や食料を差し入れるなど、総じて好意的だったようであり、裏を返せばロシア国内の厭戦気分が垣間見えたようなものでもあります。
また、通常、「民間軍事会社」が国家に対して反乱を起こしたならば、みせしめの意味でもその首謀者を逮捕したうえで厳罰に処する必要がありますが、なぜそれをやらなかったのでしょうか。
もしかすると、「やろうとしてもできなかった」からではないでしょうか?
このあたりはロシアの弱体化の兆候を示唆するものであろうかどうかを含め、興味深いところではないかと思う次第です。
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ツイッターで「御所巻き」なる聞きなれない単語とお饅頭の写真を見ました。おいしそう。
はにわファクトリーさま
ツァーリと農奴の歴史に、御所巻きはそぐわないように思います。
ところで、ブルゴージン氏はベラルーシに移動した模様です。2万人余りの兵士は、今後どうなるか?モスクワ近くまでブルゴージン氏に従った荒くれ者の集団を統制できるボスが、他にいるのか? 第二のブルゴージンが出現するのか。第二幕に、ますます興味が募ります。おーぃ、プーさん、見てる?
https://www.youtube.com/watch?v=gLJiWtmSSjM
(これ、どこのメディア?)
まさかベラルーシで「友愛」されないでしょうな。
先達に倣ってFSBも 手が長そう ですし、ネ
ロシアとは、残虐で下品な悪党とその下郎たちからなる国家、あるいは、その下郎たちに支えられた残虐で下品な悪党が支配する国家ですかね。その筋金入りの上下関係。これ、トルストイの「戦争と平和」に描かれた時代から全くかわっていないですよ。プーチンもブリコジもない。全部、同類です。
ワグネルは本来、軍法会議で厳罰に処される必要があります。首謀者プリゴジン氏は勿論、何人が謀議に関わって居たか?叛乱軍の1/10ぐらいは軍法会議で詮議尋問されるのが普通でしょうし、二桁の銃殺があってもおかしく無い。
でも、出来なかったのでしょうね。更にはプーチン氏と同じぐらいに国際手配された犯罪人(容疑者)です。逃亡するにも受け入れてくれる国も限られる事でしょう。
逆にプリゴジン氏が権力を奪取してもロシアは世界的に依然として孤立したままですし、プーチン氏ともども逮捕の危険さえあります。ナチスの高官が逃げた当時の南米諸国の様なパラダイスはもう無い。北朝鮮かレバノンか、隠れるにせよあまり住み心地の良くない例外地域。
それでプリゴジン氏も諦めたのかも。
「厭戦」という言葉にいしいひさいちのこんな漫画を思い出した。
「戦争が終わったというデマが流れています。」
「そのデマはわが国が勝ったというものかね、負けたというものかね?」
「『とにかく戦争は終わった』としか。」
「それ問題だな。」
やまいぬさま
さっそく、マウスをいらって
「戦争が終わったというデマが」
とググってみたらこんな記事があるそうです。うーむ、池上彰氏ではありませんか。
フェイクニュースは70年以上前の日本を席巻していた!
2019/08/11 — 70年以上前、当時は「フェイクニュース」などという言葉は存在していなかったが、すでに日本には、意図的に作り出された嘘のニュースが蔓延していた。
いしいひさいち、
鏡の国の戦争ですね
ソビエト国内で他国の大使館に亡命したつもりが
ここはソビエト大使館です(笑)。
ワグネルの乱の背景には、ロシアの弾薬の不足が原因ではないかと思います。
プリゴジンは、武器弾薬が不足していることにかなり不満を持っていましたので過激なロシア軍批判を繰り返していました。
今回は、プリゴジンが限界にきて実力行使に出たという事なのでしょうけど、反乱を起こした後の計画は無かったようです。
まあ命は助かって良かったねというところでしょうか?ベラルーシにいる限りはまだ助かるかどうか分かりませんが。ルカシェンコはどうするのでしょうかね。
ワグネルの乱でロシア軍、ショイグ国防相の発言力が大きくなりそうですね。プーチン大統領は、ワグネルを利用してショイグ国防相を牽制してきましたが。ショイグ国防相がウクライナ侵略をどう考えているのか気になります。
戦争の長期化はロシア軍の弱体化につながると思いますので、プーチン大統領と対立する可能性もあります。
西側諸国としては、今回のウクライナ軍の攻勢が成功しロシア軍が劣勢になるよう、小出しでは無く思い切った武器供与を早急に実施する必要があると思います。
ロシアの内輪揉めを期待しています。
今回のワグネルの乱で、ロシア政府内部で、「ワグネル以外のロシアの民間軍事会社も反乱を起こすのではないか」という疑念が生じ、また民間軍事会社側も「ロシア政府がそう、我々を疑っているのではないか」という疑念が生じたのではないでしょうか。
蛇足ですが、ベラルーシでプリゴージンが死亡した場合、ロシア政府の関与が疑われるのではないでしょうか。(もちろん、実際にロシア政府が関与したか、それとも違うのかは別の話です。「ウクライナがバフムトでの報復のために暗殺した」という真偽不明の情報が流れるかもしれません)
ふと思ったのですが、プリゴージンには、「いよいよ危険になれば、機密情報を手土産に、アメリカに亡命して、秘密裏に匿ってもらう」と、プーチン大統領を脅迫する手もあるのではないでしょうか。もちろん、そんな凄い機密情報を持ってるかは分かりませんが、「一般人よりは可能性が高い」ということで十分でしょう。
私はプリゴージン氏が部下を見捨てて
自分の命大事の逃亡先が
ベラルーシなのが不思議です
そんなのほとぼりさめたら
しょせんKGBスパイあがりのプーチンの
毒殺部隊の餌食になること必定です。
極悪犯罪者プリゴージンの命などは
どうでもいいですが
司法取引で米国に亡命して
平和を願う世界の人の合言葉
「くたばれプーチン」の実現に
利用価値はなかったかと思います
世相マンボウ様
プリゴジン氏は個人的にプーチンと親しく、その関係もあって厳罰を下さなかったという説もあります。
プリゴジン氏とプーチンとの間で何らかの密約があるのかもしれませんね。
例えば、ルカシェンコに対する見張り役等です。
ワグネルはアメリカの制裁回避できて
プリゴジンに続く裏切り者をあぶりだす
という プリゴジンとプーチンのお芝居だったかもね
「走狗煮らる」です。ワグネルの利用期間は過ぎたのです。
バフムトをワグネルに突破されると国軍の面子が無くなるので弾薬の供給を止める。(或いは、露はバフムトより先に侵攻する意思は既に無くなっていたか?)
次に、民間軍事会社及び兵士の国軍との契約を義務化、年金を特典として。これの期限は、7月1日。
更に、米国が、ワグネルの資金源であるアフリカでの金利権を押さえる寸前。
プリゴジンは、資金、弾薬、兵士、の3つを取り上げられる寸前だった。その期限が、7月1日。
今回の反乱と見えるものは、窮鼠猫を噛む、ようなものだった。だから、ベラルーシへの移住?という場所を用意して収めた。この後、プリゴジンが平穏な老後を全うできるかは、未知数ですが。
尚、ロシアが、現在の占領地をロシア領と認めさせることで、終戦しようとしている事は、航空戦力を今まで、温存していたことから推測出来ます。
一瞬ワクテカしましたが、この話題に乗っかる気にならなかったのは、だいたいこんなオチになると見え見えだったのと、プリゴジンに置き換わっても状況はより悪くなるだけ(むしろプーチンのほうがマシ)というか、結局どっちも好きになれない(サタンとデビルの内輪もめ?)という個人的な感想によるものです。
SNSコメントにあった「カネ返せ」が秀逸でした。
内部瓦解からの崩壊とか見られるのでしょうか。
こちらのサイトに集まる皆さんは、中韓問題ではマスゴミのデタラメ報道を一切信じていないと思います。
しかし、ウクライナ紛争になると、CNNやNYタイムズ、日本のマスゴミなどの報道を、なぜか全面的に信じてしまうようで、不思議でなりません。
いまやアメリカでは、あのCIAですらウクライナ紛争から手を引きたがっているそうです。
自分のようなただの一般人の話は信じてもらえないと思うので、チャンネル桜に昨日アップされた、伊藤貫さんと水島聡さんの対談をぜひ見てほしいと思います。
もはやウクライナに勝ち目がないというのは、アメリカの軍事専門家の間では共通認識になっています。
ロシア擁護ではなくて、現実の戦争では悪が勝つことだってあるという話です。
第15回 伊藤貫×水島総特別対談
https://youtu.be/Afu8QgvzWQI
読電波。
……?全面的に信じている様に見えるのですか?
私はCNNもNYタイムズもチャンネル桜もどれも等しく信用せず、
「とりあえず結果が出るのを待とう」と言うスタンスですが……
逆にあなたはチャンネル桜や「アメリカの軍事専門家」を
全面的に信じているのでしょうか?
普通は、自分で見に行くわけにもいかないものは報道内容を尊重して思考するしかありません。その中で自分や周囲の知識をもとに真贋を判断するのが基本です。
中韓の報道内容は素人目に見ても内容が破綻したものばかりなのでほとんどが一笑に付されるのみで、しかし当然ながらただの事実だと判断できるものもあります。欧米発だから全て真実などということが無いように、中韓だから全て嘘というわけでもありません。
CIAが手を引きたがっているというのも「まぁそうかもね」という範囲です。アメリカが世界の警察をやめたがってすっかり久しいですし、ひとくちにアメリカといっても様々な思想や優先順を内包しているので、ある人・組織は徹底的にロシアを糾弾し、ある人・組織は戦争そのものを否定したりもします。そしてウクライナが負けそうなどというのは至極当然な話で、ここまでの善戦が予想外というのは、開戦前から今に至るまでずっと変わりません。あの超軍事大国ロシア様がこんなザマな方が不思議なのです。
あとそもそも戦争は善悪のぶつかりあいでもないのですが、「悪が勝つこともある」というのは、ロシアを見ずともアメリカを見ればわかりますね(笑)
「ウクライナに勝ち目」
なにを中2みたいな寝言を。(笑)
ウクライナは最初からプレイヤーではなかったでしょ。
旧ソビエト連邦同士の内戦なのですから、西側(=NATO)のベストシナリオは
「戦争が終わらず百年でも泥沼の殺し合い」
「最終的に両者が消滅」
ロシア側が優勢になるとゲームチェンジャーが供与される。
ロシア側が不利になると補給は止められる。
めっちゃ判り易い代理戦争ですがな。
戦術的には一進一退があるでしょうが、戦略的には
米国
西側
ロシア
共産党中国
産油国
あたりのパワーバランスで行方が決まるように思われます。
ロシアや共産党中国は、内戦で分裂することが現実的なエンディングの1つですから、今回の騒動は(空騒ぎだったとしても)注目しておいて損はないと思いますよ。
なかなか良い問題提起をして下さいました。
情報の解釈とその情報から何かを判断しようとするときには、何が必要か?
そもそも、情報との接し方とはどういうものであるべきか?
情報の解釈とその情報から何かを判断する時は、ある物事が起こってから、その物事の情報を収集していても、何も理解できないし、判断が出来ないということです。
これについては長くなりますので、ここで一つだけ言えば、何故、その物事が生じて来るのかの「背景を解釈」できることが必要です。
これを、良く「コンテクストを読む」、或いは、「コンテクストを理解している」という言い方をします。
昔の新聞では、論説主幹が書く社説や論評にはこの言葉が良く使われていましたが、最近は、余り聞きません。
このサイトのコメント投稿でも、このコンテクストを理解していて、そのコンテクストからコメントを説き起こす方は、一人だけです。
その方のコメントは必ず読みますし、やはり読んでも感心することが多々あります。
そのチャンネル桜は見ていませんが、そういう所からの解釈・解説・見通しであればいいですね。
伊藤貫さんねえ・・・。一句啓上します。
「伊藤さん、毎度毎度のミヤシャイマー。」
伊藤貫さんは、定期的に帰国しては、国際政治についてご高説をお垂れになるが、中身はアメリカで読んでいるアメリカ政治学者の著作の読書感想文に過ぎない。いつも同じ話ばかり。ロクに現地の取材もしていない感じ。あっても多分、現地で偏狭な同類の学者たちと雑談してるくらいだろう。この人、ユダヤ人だけが世界を動かしてると思っているみたい。あの元駐ウクライナ大使と同じ星座を見ているのだろう。まあ、こんな人の話をありがたがって聞く奇特な人は、C桜の水島さんくらいだろう。
とく様
おっしゃりたい意図は理解できます。
ですが、以下農民様がおっしゃっているように、限られた情報量で主観的に各人が判断せざるを得ず、従って各人の意見は異なって当然です。
>普通は、自分で見に行くわけにもいかないものは報道内容を尊重して思考するしかありません。その中で自分や周囲の知識をもとに真贋を判断するのが基本です。
日本のマスメディア、特にTV局のウクライナ戦争の報道に関しては、かなり偏ったものだと私も感じますが、西側の一員としての立場、及び米国の強い影響下(総務省管轄)、ポジショントーク的な報道にならざるを得ないのでしょう。
一方ネットでは、ちゃんねる桜のみならず、かなり多様な意見が存在し(安倍さんを暗殺した真犯人は別にいる等)、各人がそれら情報を吟味してより広い視野で判断することができます。
私もロシアが一方的に国境超えてウクライナを侵略した当初は頭に血が上り、ロシア批判一辺倒でしたが、戦争が長く続くにつれ、戦争を続けたい勢力が欧米の中にもいることに気づき、ロシアとウクライナの歴史的経緯を勉強することで、かなりロシアに対する批判意識が弱まってきました。
同時に多額のウクライナ支援、衰退しつつある日本がそこまで負担しなければならないのかと疑問を感じはじめています。
>また、通常、「民間軍事会社」が国家に対して反乱を起こしたならば、みせしめの意味でもその首謀者を逮捕したうえで厳罰に処する必要がありますが、なぜそれをやらなかったのでしょうか。
>もしかすると、「やろうとしてもできなかった」からではないでしょうか?
一度大人しくさせた後で、何時もの毒を盛るというやり方で葬らるのでは?