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週刊朝日休刊へ:これに上念司氏は「新規解約月3件」

101年の歴史がある『週刊朝日』が「最終号」の刊行を終えた――。これについて、週刊朝日の公式ツイッター・アカウントが「総勢101人からのメッセージ」を含めたメッセージを発信しています。ただ、このツイートに対して経済評論家の上念司氏が発信した「朝日のなくなる日、平和の日/月に3件、新規解約」というツイートの方が、多くの「いいね」を集めているというのです。

週刊朝日は休刊?廃刊?

株式会社朝日新聞社の子会社である株式会社朝日新聞出版が発行する雑誌『週刊朝日』が、5月30日に発売される6月9日号をもって「休刊」となる――。

以前の『週刊朝日が5月末で「休刊」へ:新聞業界の今後を示唆』では、こんな話題を紹介しました。

雑誌『週刊朝日』が6月9日号をもって「休刊」になるのだそうです。同誌の発行部数は2006年3月期には33.1万部でしたが、2022年3月期には8.6万部と、17年間で約4分の1に減少してしまったのです。ただ、同誌の休刊は、新聞業界全体の動向を予言しているように思えてなりません。早ければ数年後にも、紙媒体の新聞の休刊ラッシュが生じる可能性は十分にあるからです。2023/01/19 14:15追記図表1が誤っていましたので差し替えています。朝日新聞の部数推移(朝刊、夕刊)『過去17年分の朝日新聞部数推移とその落ち込みの分析』では、...
週刊朝日が5月末で「休刊」へ:新聞業界の今後を示唆 - 新宿会計士の政治経済評論

ここで「休刊」、という言葉を使った理由は、朝日新聞デジタル日本語版に1月19日付で掲載された『週刊朝日、6月9日号で休刊』とあるからです。

このあたり、「休刊」と「廃刊」の定義の違いはよくわかりませんが、「公益社団法人全国出版協会」ウェブサイトの『出科研コラム 雑誌の「休刊」と「廃刊」、何が違う』には、こう記載されています。

『休刊』とは雑誌の場合、編集制作上の障害などによる一時的な理由、あるいは経営上の事情や売れ行き不振などのために、継続発行が困難になった場合の措置を指します。つまり、雑誌が『ある期間刊行を休む』ことをいうのです。何らかの機会に、再び『復刊』するという可能性が残されます」。

『廃刊』とは、雑誌の発行が自発的に中止され、以後の発行もまったく予定されない場合を指します。これは、その雑誌が完全になくなり、二度と復活しないことを意味するのです」。

こうした説明通りであれば、週刊朝日も機会があれば復刊する可能性がある、ということなのでしょうか。

見事な直線

もっとも、その可能性は極めて低いように思えてなりません。株式会社朝日新聞社の有報のデータによれば、週刊朝日の部数は減少の一途をたどってきたからです。

2006年3月期に33.1万部だった同誌の部数は、毎年コンスタントに1~2万部程度減り続けた結果、22年3月期には8.6万部へと激減しています。その過程に関するグラフを再掲しておくと、本当にきれいな一直線であることがわかります(図表)。

図表 週刊朝日の部数推移

(【出所】株式会社朝日新聞社・過年度有価証券報告書をもとに著者作成)

社会のペーパーレス化

考えてみれば、これもやむを得ない話かもしれません。

以前の『ゴールデンウィークに考える「社会のペーパーレス化」』などでも取り上げたとおり、「紙」は現在、社会全体から猛烈な勢いで減って行っているからです。

本稿は、ゴールデンウィークの雑感です。先日、とある病院の待合室から新聞と雑誌が消えたという話題を取り上げたところ、知り合いから「人間ドックの待合室」、「家族サービスで訪れたファミリー・レストラン」などに関する興味深い報告をいただきました。社会の隅々にまでスマホが普及し、データのコストが劇的に低下しているためか、IT化の波はあちこちに押し寄せています。なるほど、新聞が売れなくなるわけです。そして、スマートフォンには電子マネーやクレジットカード、ポイントカードなど、なんでも搭載できる時代になりま...
ゴールデンウィークに考える「社会のペーパーレス化」 - 新宿会計士の政治経済評論
  • 私は毎年、都内の某病院で人間ドックを受診しているのですが、待合室から雑誌がなくなったんです」。
  • その病院はすでに紙のカルテを全廃していて、受信記録はすべてデータ化されているみたいですよ」。
  • こないだ某ファミレスに出かけたらメニューの代わりにタブレットが置かれてて、タブレットで注文したらロボが料理を持ってきた」。
  • 僕はとある銀行で振り込みをしたんだけど、待合室から新聞も雑誌も撤去されていたよ」。
  • その銀行ではキャッシュカードさえあれば、もはや紙で出金伝票を書く必要すらないみたいだね」。

こんな証言、そこここで聞くことができます。

こうした社会のペーパーレス化は「暇潰し手段」についても転換を迫っています。

そういえば、某航空会社の場合も、空港ラウンジでは紙の新聞や雑誌を置いていないらしく、多くの機材で無料WiFi接続サービスを展開しており、「機内誌」のかわりに自身のスマホ等で機内エンタメを楽しむことができる、という仕組みが導入されています。

週刊朝日が「休刊」を選択せざるを得なかった理由も、こうした社会全体のペーパーレス化という流れとは無縁ではないでしょう。

「あの界隈」は壮大なチキンゲームに?

もっとも、雑誌業界が全体的に苦戦していることは間違いないにせよ、保守系のオピニオン誌『正論』、『月刊Hanada』、『月刊WiLL』は好調だと聞きます(ただし、これら3誌はいずれも山手線の駅名を冠する怪しい自称会計士の論考を掲載したことがあるため、「いまひとつ信頼できない」と思う人もいるようですが…)。

また、株式会社朝日新聞出版に関していえば、雑誌『AERA』の刊行は続けているようですし、毎日新聞出版株式会社の『サンデー毎日』の刊行も続くようですので、今後、「あの界隈」は一種の壮大な「チキンゲーム」に突入していくのかもしれません。

こうした「チキンゲーム」に関しては、『今度は毎日が値上げ…新聞業界のカギ握るのは日経新聞』などでも取り上げた、新聞業界における状況とも類似しています。最大手の読売新聞が「少なくとも1年は値上げしない」と宣言したことなどが参考になるかもしれません。

朝夕刊セットの月ぎめ購読力を5月に4,900円に値上げした朝日新聞、西日本新聞に続き、毎日新聞も6月から4,900円に値上げします。しかも、値上げ幅は600円です。なんとも衝撃的な話です。このあたり、優良資産を持っていて新聞事業以外からの稼ぎも期待できる場合や、ウェブ戦略が好調な場合などを除けば、新聞業界に待つのは滅亡でしょう。遅くとも13.98年以内に朝刊がゼロになるからです。しかし、見たところ、新聞業界がこの問題に正面から対処しようとしている形跡は見つかりません。株式会社朝日新聞社の場合すでに不動産事業が...
今度は毎日が値上げ…新聞業界のカギ握るは日経新聞? - 新宿会計士の政治経済評論

上念司さん「朝日のなくなる日、平和の日/月に3件、新規解約」

さて、こうしたなかで、週刊朝日の公式ツイッター・アカウントによれば、「101年の歴史」にちなんで、「最終号」で総勢101人超からのメッセージが掲載されたのだそうです。

あれ?

たしか、週刊朝日は「廃刊」ではなく「休刊」だったはずですが、ツイートでは「最終号」となってしまっています。

ただ、それ以上に気になるのは、このツイートに対するリアクションです。

ツイートが出て来たのが5月30日午後4時23分ですが、丸1日経過してツイートの表示回数は9.3万回、リツイート(RT)は引用RTを含めて176件、「いいね」の数は267件です。

これに対し、経済評論家・上念司さんの引用リツイート、表示回数は3.1万回と元ツイートの3分の1程度、リツイートも引用を含めて46件に過ぎないのに、「いいね」の数は353件(!)と、元ツイートのそれを大きく上回っているのです。

ちなみに上念司氏の引用リツイート内容は、「朝日のなくなる日、平和の日/月に3件、新規解約」だそうです。

なんともシュールです。

なお、週刊朝日を「休刊」させ、AERAの刊行を続けるというのが、株式会社朝日新聞出版としての意思なのだと思いますが、なぜAERAの刊行が続き、なぜ週刊朝日が「休刊」になるのかについては、正直、よくわかりません。

いずれにせよ、その判断が結果的に株式会社朝日新聞出版、株式会社朝日新聞社、ひいては新聞・出版業界全体にとって、どういう影響を与えていくのかについては、個人的には大変興味深いと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (34)

  • こんなタイトルの雑誌記事を読んでみたいです。

    「ニュースペーパーレス社会の実現まであと〇〇〇日
     活字に飢えた善良なる読者の心に去就する諦念
     真理へ至る道標はいずこ」

  •  コメント失礼します。

     101年も続けたなら、もっと続ければ良いのにと思います。勿体無い事をする。
     サヨクさんは日本国破壊に夢中になるあまり、国際常識(長く続いてるものに敬意を表す)を忘れてしまったのかな?歴史は力。
     電脳に移行して、年に一回ちゃんとしたのを記念号として印刷すれば宜しいかと。
     私は一度も読んだ事有りませんが、101年も続いたのなら、さぞかし素晴らしい内容だったのでしょうね。知らんけど。

  • >なぜAERAの刊行が続き、なぜ週刊朝日が「休刊」になるのかについては、正直、よくわかりません。

    個人的な印象に過ぎませんが。

    AERAの方は、たまに「これ朝日が書く記事なの?」というのが載ることがありますからね。
    世間の反応を気にしての、風見鶏的位置づけになっているのでは(笑)。

    • >>>AERAの方は、たまに「これ朝日が書く記事なの?」というのが載ることがありますからね。

      同じ感想ですね。まあでも、その記事一本ですから、わざわざ買わないですけど。
      勿体ないし、コスパ悪いですから。
      中吊りで、見出しが気になったら図書館で読むとかしています。

  • 衰退産業におけるダメージコントールのありかたとは

    「新聞業界に4つの不可
     1.身を切るコスト削減断行
     2.読者の期待に応える決意努力
     3.売り上げV字回復
     4.無名の全国新聞配達人たちをねぎらう謙虚さ心の清さ」

  • ネットで調べると週刊朝日の発行部数は2021年に10万弱。今はたぶん8万くらいだろう。週刊誌の返本率は4割だそうなので実際に売れているのは4-5万くらいか。
    返本4割ということは売れた4-5万部で8万部の紙代、印刷代、運賃(返本については往復)を負担するということ。1冊5百円程度じゃあ採算とれるわけないよね。

    一方「三万人の情報誌」と堂々と部数を明かしている月刊誌の「選択」。
    これは予約購読のみ。1冊1100円でも採算にのってるみたい。

    • 予約購読のみで、3万人ですと、年間約4億円の購読収入。
      定期購読で直送とすれば、卸ではないので、丸々年商となる?
      それに、広告収入が同額レベルとすれば、年間8億円。
      仕入は、ライター・寄稿者への原稿料だけ、とすれば、結構いい商売ですね。

      出版業でも、お客は誰か(顧客像)?どこにいるか?という経営の基本を押さえて行けば、自分のポジションを見つけてやって行けるということですね。
      このサイトの顧客像は、どんなイメージなのかな?

  • 毎度、ばかばかしいお話しを。
    週刊朝日:「週刊朝日は休刊になります。来週から週刊赤日を発行します」
    これって、笑い話ですよね。

      • もしそうなれば、週刊朝日編集長からシン週刊朝日編集長になるのでしょうか。

    • 来週発売 後ろの百太郎責任編集 虚構ホールディング系列週刊誌 はにわタイム
      「広がる地下出版
       インテリゲンチアの虚栄心を満足させる新メディア続々登場
       官庁に潜む体制不満層から密かな支持」

  • 週刊毎日「週刊朝日が休刊したようだな?」

    AERA「ククク…奴は反日雑誌四天王では最弱」

    週刊金曜日「四天王の面汚しよ…」

  • こんな見出しの記事が読みたいシリーズ

    「新聞業界淘汰圧高まる
     局所的氷河期日本に出現
     地球温暖化に逆行
     読者の心を掴む DX/GX 宣言は周回遅れ」

  • 週刊朝日、未だあったの?って感じです。昔、他に読むもの無くて待合所などで手に取った事があるが、読むべき記事なしで、誰がこんなもの読むの?と思ってました。サンデー毎日もそんな部類。
    AERAは、偶に読んでもいいと思う記事があったように思います。しかしながら、多分自分のお金で買った事は無いと思います。その価値無しですね。
    一方、文春新潮は、一時期毎週購読していて発売日が待ち遠しかったが、今、新潮の頑張りが弱いので寂しいですなぁ。

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