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ゼレンシキー来日「いいとも悪いとも言えず」=共産党

日本共産党といえば、党代表を直接選挙で選ぶべきと主張した党員を除名し、その志位和夫委員長は20年以上も党委員長として君臨し、選挙で議席を減らしても絶対に責任を取らないことでも知られています。こうしたなか、G7広島サミットではウクライナのウォロディミル・ゼレンシキー大統領が来日するなどの成果を上げましたが、これについて小池晃・書記局長は「いいとも悪いとも言うことがない」などと述べ、論評を避けたのだそうです。日本共産党の好きな「平和外交」の極致のようなものであるにも関わらず、です。

日本共産党は得票数を少しずつ減らしてきた

今朝の『過去数回分の衆参両院選から見る自民vs野党系の力学』では、総務省のウェブサイトに掲載されている過去の選挙データ(参院選については2007年以降、衆院選については2009年以降のもの)を利用し、自民党と野党の獲得議席の実態について、いろいろと調べてみました。

ただ、これに関連し、総務省のウェブサイトでは獲得議席以外にも、さまざまなデータが公表されています。

そのひとつが、選挙区と比例代表における得票数に関するものです。

これについて、総務省のデータは使い勝手が悪く、一次データを加工するのもなかなかに大変です。そして、これをきちんと数値的に比較できるように整理している最中なのですがその作業の途中で、こんなデータが出てきました(図表1図表2)。

図表1 過去の選挙における得票数(衆議院議員総選挙、日本共産党)
選挙区票数 比例区票数
2009年 2,978,354(4.22%) 4,943,886(7.03%)
2012年 4,700,290(7.88%) 3,689,159(6.13%)
2014年 7,040,170(13.30%) 6,062,962(11.37%)
2017年 4,998,932(9.02%) 4,404,081(7.90%)
2021年 2,639,631(4.59%) 4,166,076(7.25%)

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報結果』データを加工)

図表2 過去の選挙における得票数(参議院議員通常、日本共産党)
選挙区票数 比例区票数
2007年 5,164,572(8.70%) 4,407,933(7.48%)
2010年 4,256,400(7.29%) 3,563,557(6.10%)
2013年 5,645,937(10.64%) 5,154,055(9.68%)
2016年 4,103,514(7.26%) 6,016,195(10.74%)
2019年 3,710,768(7.37%) 4,483,411(8.95%)
2022年 3,636,534(6.84%) 3,618,343(6.82%)

(【出所】総務省『参議院議員通常選挙 速報結果』データを加工)

これは、日本共産党の得票数を、衆参・選挙区/比例区の別に集計したものです。

短期的に共産党の議席が増える要素はない

このうち衆院選に関していえば、ここに示した5つのデータで比べると、2021年の選挙では選挙区で獲得票数が最低となる一方、比例代表でも2012年に次いで2番目に低い数値となっています。

また、参院選に関していえば、ここに示した6つのデータで比べると、2022年の選挙では選挙区で得票数が最低となる一方、比例代表でも2010年に次いで2番目に低い数値であることがわかります。

いずれにせよ、日本共産党の得票数には過去から波はあるものの、選挙を経るたびに少しずつ減っている、という傾向は認められるでしょう。

実際、日本共産党は直近の選挙で、たとえば2021年10月の衆議院議員総選挙では、獲得議席は10議席(小選挙区1、比例代表9)で、これは17年10月の選挙と比べて2議席減っています。

また、2022年7月の参院通常選挙では、獲得議席は4議席(比例代表3、選挙区1)で、2019年7月の7議席(比例代表4、選挙区3)、2016年の6議席(比例代表5、選挙区1)と比べ、それぞれじわじわと減っているのです。

こうしたなか、いますぐ衆院選があるのかどうかはわかりませんが、少なくとも短期的に見て、日本共産党の議席が増える要素は見当たりません。

民主主義を否定する志位委員長

というよりも、むしろ日本共産党の「異常さ」が、最近になって一般国民に意識される機会も増えて来たのではないでしょうか。

日本共産党という組織は、どうも民主主義を誤解しているフシがあります。『直接選挙が「非民主的」?共産党の志位委員長の謎主張』でも紹介したとおり、日本共産党の志位和夫委員長は、党委員長の党員による直接選挙を「必ずしも民主的とは思わない」、などと述べたからです。

志位和夫氏が20日、BSテレ東の番組の収録で、「直接選挙で党首を選ぶと党首に相当権限が集中する」ため「必ずしも民主的だと思っていない」と述べたのだそうです。なかなかに強烈な認識です。しかも、自身が党委員長として20年以上君臨するなか、その党運営を巡っては「ベストと考えられる人事を集団で検討して提案し、民主的に選出する手続を選んできた」とも述べたのだとか。「アベは~辞めろ~!」著者自身は故・安倍晋三総理大臣が在職していたころ、新宿などの繁華街で、「アベは~辞めろ~」などと叫ぶデモを頻繁に見かけた記...
直接選挙が「非民主的」?共産党の志位委員長の謎主張 - 新宿会計士の政治経済評論

日本共産党といえば、その直前に、「党代表を党員による直接選挙で選ぶべきだ」と主張した党員を除名するという珍事を発生させていますが(『「党首公選制」提唱した党員を日本共産党が除名決定か』参照)、これについては朝日新聞や毎日新聞ですら、日本共産党の姿勢を批判したほどです。

(社説)共産党員の除名 国民遠ざける異論封じ

―――2023年2月8日 5時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より

共産の党員除名 時代にそぐわぬ異論封じ

―――2023/2/10付 毎日新聞東京朝刊より

あまり厳しいことを言いたくはありませんが、やはり、日本共産党もしょせんは「利権政党」のようなものなのかもしれません。

責任を取らない政党

志位和夫委員長自身、すでに20年以上、党の委員長を務めていますが(『独裁20年:志位和夫さん、大変おめでとうございます』等参照)、その志位氏が安倍晋三総理大臣の国葬儀に際し、「安倍政治の賛美・礼賛につながる国葬に反対」と主張したことも記憶に新しいかもしれません。

さらに、日本共産党といえば、議席が減るなどしても、トップが責任を取ることがないという点にも特徴があります。

じっさい、今年の統一地方選では前半戦の段階で、5つの県議会で日本共産党の議席がゼロになるという「議席空白」が生じましたが、日本共産党の内部で志位氏の責任論が台頭しているという報道はありません(『高市氏責任論で「責任取らない志位氏」の異常性際立つ』等参照)。

保守分裂となった奈良県知事選を巡り、高市早苗氏自身が11日の会見で「自身の責任を痛感している」と述べました。いちおう、統一地方選の後半戦もあるため、高市氏自身は当面、自民党奈良県連の会長に留まるそうですが、今後の動向次第では何らかの責任を取ることはありそうです。ただ、こうした話題を目にしていると、5つの県議会で議席がゼロになったにも関わらず、責任問題が一切出ていない「あの政党」の異質さが目立ちます。保守分裂の責任は茂木、森山両氏にあり統一地方選の「前半戦」のうち、日曜日に実施され、「保守分裂」...
高市氏責任論で「責任取らない志位氏」の異常性際立つ - 新宿会計士の政治経済評論

あの立憲民主党でさえ、2021年の衆院選では勢力を公示前の109議席から13議席減らし、96議席にとどまったことの責任を取って、党代表を辞任したほどです。

ゼレンシキー来日にノーコメント

さて、こうしたなかで週末に開かれたG7広島サミットでは、ウクライナのウォロディミル・ゼレンシキー大統領が来日するなど、岸田文雄首相の「平和外交」が多大な成果を上げました。ゼレンシキー氏が対面でG7に参加したことで、G7を中心にロシアの戦争犯罪を絶対に許さないという強いメッセージが出てきた格好です。

これなど、「外交上の成功」と言わずして、表現のしようがありません。

以前から、「戦争反対」だの、「外交的解決」だのと唱えてきた日本共産党にとっても、最大限、満足のいく結果になったのではないかという気がしてならなかったのですが、これに関連し、ちょっと信じられないような報道が出てきました。

共産・小池氏「ゼレンスキー氏来日で何か解決するわけではない」

―――2023/5/22 19:00付 産経ニュースより

産経ニュースによると、日本共産党の小池晃書記局長は22日の記者会見で、ゼレンシキー氏の来日を巡って「とくに、いいとも悪いとも言うことがない」、「それによって、何か問題が解決するということではない」などと述べ、論評を避けたのだそうです。

ゼレンシキー氏が、日本の、しかも被爆地でもある広島にやってきたこと自体、大変大きな政治的メッセージとなり、大変意味があることだったはずですが、これを「いいとも悪いともいうことがない」というのは、ちょっとあんまりではないでしょうか。

もちろん、日本は自由・民主主義国ですので、個別の政党がいかなる政治的主張を持とうが、その自由は尊重されるべきではあります。しかし、それと同時に社会のインターネット化が進めば進むほど、私たち日本国民の常識からかけ離れた政党は徐々に議席を減らすしかないのではないか、などと思わざるを得ません。

いずれにせよ、衆院選が行われるのかどうかはわかりませんし、私たち日本国民の側としても、やはり賢くあらねばならないことは間違いないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (20)

  • 共産党も立憲も、結局は自民党しか見ていない。自民党がやる事を脊髄反射で批判することが生存理由。とてもじゃないが、自民党の成果を褒めるなんて出来ないでしょう。ゼレンシキー大統領のG7参加、特にインド首相との会談は国際支援強化とロシアへの圧力、ウクライナ国民の士気高揚に絶大な効果ありです。これを良いも悪いも評価できないなんて、政治家として、国政政党としての能力欠如の証明でしかない。残念な政党です。

    • 普段主張するキレイごとに合致するがが、ロシアや中国を批判したり、自民党を利するコメントができず、大変困った状況ですね。
      共産党の本音が日本の武装解体にあることが、また1つ裏付けられたと思います。

  •  ここらへんが、不破哲三こと上田健二郎が小池晃を後継には軽すぎるなどと評しているとされる理由かなと。「共産党が居ても何か解決するわけでもない」と返されたらどうするつもりかまで頭が回っているのか?(我々は○○で役に立っている、と返しても、じゃゼレンシキー来日だってそうじゃないか、とされてしまう。しかも役に立っていない。)
     共産党自体が欺瞞にまみれた集団なので(私見)、欺瞞を使いこなせなければならない。小池氏は、つい口を滑らせて党見解と逆(の正論)を言ってしまったり、考えが浅いためにこのように「必ずしも~とは言えない」という、どんな無能でも言える批判のための批判のセリフが出てしまう。
     まぁ現書記局長も大差無いですが。なんかキレもので侮れない左翼の人物、て全然思いつきません。キレてばかりいるのは居ますが。

  • 日本にまだ生き残りやがってる独裁政党の共産党。
    はっきりしてることは、共産党の存在でいいことがさっぱりなく、悪いことしかない。
    それを自覚していないシーとかコイケ。
    他国の来日についてとやかく言う暇があるなら、消滅しとけ!

  • イジメラレてる亀を見かけて、
    ①浦島太郎が助けたら、世紀の美談。
    ②岸田首相が助けたら、なにも言うこと無し。

    ①共産圏の国が武力侵攻しても、なにも言うこと無し。
    ②日本がそれに反撃しようとすると、軍事大国化だ!と大騒ぎ。

    まあ、分りやすい人たちですね。
    どうせなら、ゼレンスキーは無駄な抵抗せず降伏しろ!とか、広島のプレスセンターで叫んできたらいいのに、悪党としての矜持すらないのが、情けない。

  • 共産党は、何をしているのか、何を目指しているのか、外からはさっぱり分からない政党です。外から分からないということは、本人達にも分かっていないということが多いです。
    ですから、今回のような現実世界の喫緊の課題の前には、思考停止して立ち尽くすしかないでしょう。

    • > 共産党は、何をしているのか、何を目指しているのか、外からはさっぱり分からない政党
      ちょっと前まで私は、この様に言われると必死で日共の方針を公式発表に即して説明したものです。しかし自分たちの預かり知らない所でどんどん変な日共系の連中がワラワラと出てくる。沖縄県の教職員組合がチュチェ思想系が握っている。北朝鮮とは対立して個人独裁を批判していたはずだが。どこでどの様に「和解」して共闘を認めたのか?サッパリわからない。しばき隊とか男組とかツイフェミ界隈なんて本当に知りません。知らない奴らに乗っ取られて、韓国ベッタリやられても責任なんて取れません。
      正に「何をしているのか、何を目指しているのか」党員自身が語れない状態だと思います

  • ベトナム戦争時に、中ソ論争に巻き込まれて、ベトナム支援が滞ってはならないと中ソに意見を突きつけた頃の日共の発想からは考えられないテイタラクです。
    去年だが一昨年だか?ウクライナ侵略戦争に対して「ハンターイ」と言いつつ「日本ガー軍拡ガー」みたいな変な事を付け加えてアピールする変なデモを見かけた事がありました。あれも日共なのでしょう。
    そして多分多数の現役日共党員は上記ベトナム戦時の頃の日共のスタイルを信じて居て、現にこの様に変節してワケがわからなくなって変わり果てた日共の今の姿をありのままに見る事が出来ずに居るのだと思います。だから話が通じない。
    それから以前からの私の持論なんですが、志位和夫さんを辞めさせてももう日共は民主的討論で何か活力が復活する事にはならないと思います。主力が70代ぐらいであり、ごく少数の20代30代はその70代の主力を牽引するだけの力量は無い。なのてこのまま志位和夫さんに最後の最後まで党首でいて貰って良いと思います

    • なるほど、志位和夫は「日本共産党の福島みずほ」なんですね。

  • 「報道しない自由」ではなく「批評しない自由」と言った所ですかね?
    間違いなく自民政権の成果と言って良い功績だからこそ、褒めるのは論外。
    しかし批判するのはさすがに無理筋すぎるので、言及を拒否するしかない。

    いやはや、共産党もなかなか大変な様で。

  • 日本共産党なら「ロシアの原爆は旧ソ連の正当な後継者たる《美しい原爆》であり、地球上から一切の悪を消し去る《良い原爆》である」くらいは言わないと、やっぱ駄目ですよね。

    「ロシアの原爆は悪を滅ぼす!」でも良いですが。

    • 中国が原爆実験を行ったときも同様に
      「中国の原爆は良い原爆。放射能は問題無い」
      と聞いたような。
      昔のことです。

  • 日本共産党はロシアを批判してるはずなのに、なぜこういう態度なんだろうか?
    https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2023-02-23/2023022301_05_0.html

    ウクライナはロシアに攻められても、他国からの支援は受けてはいても、集団的自衛権を行使せずに、単独で専守防衛に徹しているんだから、日本も見習うべきだと褒め称えても足りないくらいだと思うんですけどね。

  • 日本共産党も良い人材が入ってこないので、組織の弱体化が進んでいるのではないでしょうか?

    昔の日本共産党は、良くも悪くも「東大」が幅を利かせていたように思います。

    宮本顕治氏、不破哲三氏、志位和夫氏はみな東大卒です。

    最近の幹部や議員には、東大卒はめっきり減っています。

    恐らく若い党員の獲得に力のあった「民青」の弱体化が、このような状況を生んでいると思われます。

    また、統一地方選挙での候補者も、私が自分の県の状況を見る限り高齢の新人が目立ったように思います。

    若者が入ってこない「限界集落」のような状況になりつつあるのではないでしょうか?

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