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福島処理水で満たすコップの水論

またしても、コップの水理論です。韓国メディアによると韓国の外相は岸田文雄首相の訪韓を前に、自称元徴用工問題を巡り「日本の誠意ある呼応が続くとみている」、「コップは満たされるだろう」などと述べたそうです。岸田首相にはその「コップの半分」に福島処理水を満たすくらいのことはやってきてほしいものです。こうしたなか、尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領の訪米に関連し、鈴置高史氏の最新論考も出てきたようです。

松川理論

最近、非常に残念なことに、メディア、政治家などを中心に、「日韓関係を改善すべきだ」などとする主張が目立ち始めました。

「尹錫悦(イン・シーユエ)政権の間に日韓関係を改善しなければならない」だの、「日本は韓国に配慮しなければならない」などとする詭弁を述べる輩は、外務省出身者でもある松川るい参議院議員(『「徴用工解決で安保協力が進む」という松川議員の詭弁』等参照)を筆頭に、日本国内にも散見されます

「あの議員」の詭弁が再び出てきました。「朝鮮半島生命線説」とでも言えば良いのか、自称元徴用工問題を「解決」することが、日韓・日米韓の安全保障連携にも寄与する、といった主張です。端的にいえばお粗末と言わざるを得ません。「日本が韓国に譲歩したら日韓・日米韓連携が円滑になる」という主張自体が、そもそも理論的に間違っているからです。国益こそ重要著者自身がここ10年ほど取り組み、いまや一種の「ライフワーク」と化しているのは、「日本にとって円滑な日韓関係が国益である」とする主張の誤りを理論的に証明する作業...
「徴用工解決で安保協力が進む」という松川議員の詭弁 - 新宿会計士の政治経済評論

ちなみに驚くべきことに、松川議員は立憲民主党ではなく、自民党・安倍派の所属です。

また、オールドメディアに加えて一部「まとめサイト」なども、最近では「日韓関係の改善は必要」という潮流に言及しているようです。2018年の自称元徴用工に関する違法判決問題、火器管制レーダー照射事件を筆頭に、日韓諸懸案がなにひとつ解決していないにも関わらず、です。

対韓輸出管理緩和

そして、こうしたオールドメディア世論に乗せられる形で、最近になって、対韓輸出管理緩和措置も発表されました。これについては「韓国の輸出管理がしっかりしていることが確認できたから当然の措置だ」、などと言いだしている人もいる始末です。

なかには「韓国による輸出管理を巡る不適切な事案」を巡って、「なにか具体的な証拠でもあるのですか?」などと開き直っている人もいるようです。

(※もっとも、当ウェブサイトとしては、現状の政府による国民への説明の乏しさに鑑み、「韓国に対する輸出管理を緩めて良い」という意見には賛同しません。例のパブコメの書き方については『パブリック・コメント大募集!入力方法を解説します!』などをご参照ください。)

本記事は2023年5月31日まで当ウェブサイトトップページに掲載し続けます電子政府の総合窓口(e-gov)トップからパブリック・コメントを入力する方法についてまとめました。手順が大変わかり辛いのですが、本ページを参考にしながら、是非ともパブコメに積極的に応じていただきたいと思います。また、実際に入力したコメントにつきましては、本記事の読者コメント欄にて入力していただいて構いません(※その際、個人情報などについては消してください)。2023/04/29 20:00追記本記事に関するバックグラウンド等について追記しています...
パブリック・コメント大募集!入力方法を解説します! - 新宿会計士の政治経済評論

このあたり、当ウェブサイトとしては、日韓諸懸案が解決していないのに日韓関係「改善」を急ぐ必要はないし、そうしてはならないという議論を展開してきたつもりですが、やはり話が通じない人には、どんなに丁寧に理論を構成したところで意味がないということを痛感してしまいます。

結局のところ、当ウェブサイトは当ウェブサイトで、「可能な限り理論立てて説明する」ということを継続する以外にほかないのだと思う次第です。

コップの水理論

もっとも、当ウェブサイトに4月22日付で掲載した『高市氏ら靖国参拝で予想される隣国「コップの水理論」』の末尾では、こんなことを記載しました。

おそらく今後数日以内に、例の『コップの水』理論に関する記事・論説が、韓国メディアに掲載されることでしょう」。

この「コップの水」理論は、『韓国裁判官「日本は残り半分の水をコップに注ぐべき」』でも紹介した韓国の詭弁のひとつで、「韓国がコップに水を半分注いだから、残り半分を日本が注ぐべき」などとする、いわば「日本の誠意ある対応」を要求するものです。

韓国メディア『ハンギョレ新聞』(日本語版)に今朝、自称元徴用工問題を巡る韓国政府の解決策を巡り、「韓国がコップに半分の水を注いだ」、「残り半分は日本が注ぐべき」とする趣旨の寄稿記事が掲載されています。その内容そのものにも驚きます。なぜなら典型的な「ゼロ対100」理論そのものだからです。ただ、それ以上に驚くのは、この寄稿記事、韓国の現役判事の方が執筆したものである、という事実です。二重の不法行為正直、長年のコリア・ウォッチング経験があると、たいていのことには、あまり驚かなくなるものです。ただ、それ...
韓国裁判官「日本は残り半分の水をコップに注ぐべき」 - 新宿会計士の政治経済評論

「韓国が飲む水をどうして日本が注がなければならないのか」という反論はともかくとして、この「予言」は数日遅れで的中したようです。

韓国外交長官「岸田首相の訪韓、決まったことない…日本、コップ半分を満たすはず」

―――2023.05.01 07:52付 中央日報日本語版より

記事タイトルでもだいたい想像がつきますが、韓国の朴振(ぼく・しん)外交部長官(※外相に相当)が岸田文雄首相の訪韓を前に、自称元徴用工問題を巡り、「日本の誠意ある呼応が続くとみている」、「コップは満たされるだろう」などと述べた、とする話題です。

これに対しては即座に、「どうせ満たすなら福島第一原発のALPS処理水でも注げばよいのに」、といったツッコミを入れてみたいと思ったのは、著者だけでしょうか?

くどいようですが、本来の日韓関係は、日本が法的な義務がないことに応じる必要などまったくありませんし、それに応じたとして、韓国が日米のいうことを聞いてくれるというものではありません。むしろ逆に、韓国は日本の譲歩を「食い逃げ」することは明白です。

いずれにせよ、連休明けの岸田首相、「コップの半分」を「福島処理水」で満たすくらいのことはやってきてほしいと思う次第です。

最新鈴置論考

こうしたなかで、尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領の訪米に関し、韓国観察者の鈴置高史氏が最新論考を寄稿したようです。

尹錫悦を国賓として招いたバイデン 韓国を引き戻すニンジンは…半島波乱の幕開け

―――2023年05月01日付 デイリー新潮より

これに関しては興味深い視点があれば別稿にて紹介します。

なお、デイリー新潮には読者コメント欄も設けられたようですので、もし興味があればぜひ、読者コメントを投稿してみても良いのではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (15)

  •  コップの半分には処理水よりも半島近海の糞尿まみれの海水を注いだ方がいいのでは?

  • ニンジンは岸田君が運ぶのかな?
    そして感謝の代わりに
    お代わりの要求を土産にもらう

  • >連休明けの岸田首相、「コップの半分」を「福島処理水」で満たすくらいのことはやってきてほしいと思う次第です。

    ALPS処理水で満たされた水を飲むことができるかは、「感情」と「理性」を切り分けて判断できるかの良い試金石になるかもしれません。
    コップ一杯にどれほどのトリチウムが含有されていて、体内でどれだけの影響を与えるかを理性的に理解できていれば飲むことは可能だし、
    感情的に、処理しようが原発の汚染水だ、日本やIAEAの発表は信頼できないとの思い込みがあれば飲むことはできないでしょう。

    私は感情的に気持ち悪い・違和感がある・抵抗があるという気持ちは理解できますし、直感的には私もそう思う部分も否定はしません。理性と感情はバランスよく制御すべきだとは思いますが、感情はどうしても個人の主観的になり、客観性を要する議論の論拠には難しい部分はあると思います。

    感情的な主張をする人は、宇宙飛行士が尿などの排泄物を再処理して飲用している事は許容できるのでしょうか?
    または現実の水道水や飲用水が、排泄物や各種汚染の再処理(人工・自然双方で)後に提供されて自身も利用してる事との差異に、どのへんのレベルでバランスを取って折り合いをつけているかの興味はあります。

  • なんか最近「政府のやってる事は正しい。それを理解出来ないのは素人だから。陰謀論レベル。」みたいな流れを作り出そうとする雰囲気がネットの一部にあると思う。もしかして既得権益層による世論誘導がネットでも行われはじめてるのかも。
    勿論、これも単なる私のアホウな妄想だったらいいんだけど。

    • それは普通にあると思いますよ。ラジオだろうと、新聞だろうと、テレビだろうと、
      情報工作や印象操作は行われ続けてきたはずですから、インターネットの時代だって
      そういう行動が消える事はないでしょう。ネットの”次”ができた未来でも。

      ウイルスとファイアウォール、詐欺師と警察のいたちごっこが永遠に続く様に、
      人類が存在する限り誰かが誰かをだまそうとするのは日常茶飯事なのでしょう。

    • >政府のやってる事は正しい。それを理解出来ないのは素人だから。陰謀論レベル。
      政府だから正しいのではなく、科学的・論理的・客観的に正しいかを幅広く議論で検証し、個々人で判断することが重要と思います。よく聞く言葉ですが、誰が言ったかではなく何を言ったかが重要ということですね

      ※私感では「政府が」や「権力者や上流階級w」はどちらかというと陰謀論で否定され、マスコミが恣意的に登用するエセ教授やエセ知識人の方が陰謀論的な感想すらありますが。
      個人の感想ですw

    • 「政府」をパヨク、マスゴミ、活動家、特亜などと置き換えても十分通用しますね。実に汎用性が高い。

  •  慰安婦合意の時はなんでコップの水とか言わなかったんだろうなぁ。大差ない状況に思えるし、結局彼らの言うことは思いつきでなんか上手いこと言った気になっているだけっぽい。
     慰安婦合意は、韓国側が今後問題にしないという水を半分注ぎ、日本側は拠出金と反省シテマースという水を半分注ぎ、それが韓国が飲んでも(自国民に叩かれ)捨てても(アメリカに怒られる)毒になるよう仕組んだ水でした。今回もどうせ水を注ぐなら、なんかもうすごいヤツを忍ばせてほしいところですが。

  • >このあたり、当ウェブサイトとしては、日韓諸懸案が解決していないのに日韓関係「改善」を急ぐ必要はないし、そうしてはならないという議論を展開してきたつもりですが、やはり話が通じない人には、どんなに丁寧に理論を構成したところで意味がないということを痛感してしまいます。

    そう言った人達にすれば、韓国を、尹錫悦大統領を本気で信じる事が出来なくとも信じるフリをすれば良い、ってところかもですね。

    岸田文雄は韓国を、尹錫悦大統領を本気で信じておらず、信じているフリをしているだけ、と主張する場合でも韓国に実利を与えたら基本的にアウトだし、スワップなんて締結した時には完全アウトですが。

    • 何はともあれ、今の段階で韓国を信じるフリをする人は危ない橋を渡ってる状態でしょうし、フリではなく信じている人は同じ詐欺に引っ掛かった馬鹿でしょうし。

  • まあ、何というのか、日本人はディベートが下手ですね。
    というか、ディベートということすら知らない。

    こんなガキみたいな「コップの水理論」とか持ち出されて、いちゃもん付けられるなんて、いちゃもん付けられる方が、愚かしい。

    そもそも、こんなの黙らせるの簡単ではないのか?

    一つの手は、韓国の原発処理水の放射物濃度と、日本の処理水の濃度を、併記してどこかに掲示すればいいだけのことじゃないのかな?

    どこかの新聞社が記事にしてもいいし。

    それでも、黙らなければ、次の手を打てばいい。その手は、斜めから、後ろから、いろいろ考えられる。

    日本人は、本当に交渉下手、交渉とは、その半分がディベートです。
    こんなのは、そこそこ有能な営業マンなら、毎日やっていること。

    交渉に行き詰まったら、土俵を変えろ、ということも一つの主要な方法。
    相手が持ち出してきた土俵で相手を叩けるなら、それでいいが、そうでなければ、自分で新しい土俵を設けて、そこで、戦えばいい。
    その土俵とは、相手が苦手又は不利な土俵で、自分が有利な土俵。

    これは、マーケティングの定石の一つでもあるのだが、日本人は、世界で一番マーケティングが下手。
    何故なら、マーケティングの必要性を認識していないから。

    • >韓国の原発処理水の放射物濃度と、日本の処理水の濃度を、併記してどこかに掲示すればいいだけのことじゃないのかな?
       
       2019年末 安倍晋三元首相が行いメディアも報道している
       思いつきのコメントを否定はしないが経緯・経過も知らないのではお話にならない

      >いろいろ考えられる。

       なら 具体案を提示すればよろしい

      • わんわん様

        返信ありがとうございます。

        一度やって反響が無ければ、別の角度から提示するとか、土俵を変えるとか。諦めずやる事。実務の経験があれば、この感覚が理解できるのだが。
        過去に提示したから、経緯経過を知らない人間が言うな、とは?
        国民が、経緯経過を目を皿の様にして注視していなければ分からないようなインパクトの弱い行動では、何事も殊更に大騒ぎする相手に勝てる訳が無い。

        いろいろある、とは、実際の交渉の中で状況や事態の局面を見ながらやって行くこと。
        机上の理屈ではない。
        これも実務の経験があれば、感覚が分かるのだが。

        難しい交渉が成功する唯一の方法は、交渉の熟達者に、窓口を一本化して
        彼に全権を与えること。彼以外は、勝手に相手と接触しないこと。
        これは、交渉学、交渉術のイロハのイです。

        •  以下処理水問題のみ

          各国のトリチウム排出量は再三再四にわたり報道されている
          つまり 基本情報
          基本情報を把握できない→情報収集能力に問題あり→お話にならない は当然かと思います
           
           日本はIAEAの協議のみで充分
          ディベートなどをしかけて相手の土俵にのる必要など当然ない 
          国益を損ねるプロパガンダのみ潰せばよい

           求めているのは「具体的対策」であり抽象的回答は論点のすりかえにもひとしい
           

  • 「わたしは喉が渇いていません」

    「水ではありませんが、以前に日本は韓国へ5.56mm弾薬1万発を提供したことがありますが、覚えておられますか?」

    「日本が民主党政権下でスワップ拡大したときには、たしか日本がスワップしてくれと頭を下げてきたからだったそうですね。
    今回も日本がコップに水を注がせてくれと頭を下げてきたことになるのですかね。」

    うーん、気の利いた返答を思い付きませんわ。

    観察してると、どうやら韓国はマゾっ気があるみたいなので、バイデンみたいにクラブケーキを食らわせるよりも、習近平みたいに無視して一人飯食らわせるのが一番効果的だ!と思います。