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レーダー照射事件解明抜きの日韓防衛協力はありえない

日韓安保対話が5年ぶりに開催されました。これについて外務省や防衛省は内容をほとんど明らかにしていませんが、松野博一官房長官によると、2018年の火器管制(FC)レーダー照射事件も議題に上ったのだそうです。FCレーダー照射を有耶無耶にしたままで、日韓の防衛協力が進むとも思えませんし、進めてはなりません。もっとも、外務省の報道発表に注目すると、1箇所、奇妙な事実関係にも気づきます。

事務方中心に5年ぶりの日韓安保対話

日韓両政府は17日、ソウルで5年ぶりに日韓外交・安全保障対話を開催しました。外務省ウェブサイトに17日付で掲載された『第12回日韓安全保障対話の開催(結果)』によると、参加したのは事務方が中心です。

参加者
  • 日本側:船越健裕・外務省アジア大洋州局長、安藤敦史・防衛省防衛政策局次長 ほか
  • 韓国側:徐旻廷(じょ・みんてい)外交部アジア太平洋局長、禹慶錫(う・けいしゃく)国防部国際政策次長 ほか

また、これまでの対話は第1回が1998年6月に開催されて以降、1年おきないし2年おきに実施されてきましたが、前回の第11回目が2018年3月に東京で開催されて以来、じつに5年ぶりの開催となりました。

ただ、これに関し、外務省や防衛省のウェブサイトには、あまり詳しい内容が掲載されていません。

外交上のやり取りの詳細を公表することが難しいというのはその通りなのかもしれませんが、とくに岸田文雄政権が発足して以来(あるいは安倍晋三総理大臣が暗殺されて以来)、外務省の「秘密主義」が加速したかに思えるのは、気のせいでしょうか。

何が言いたいのかといえば、また「国民から見えないところで、裏でコソコソ画策しているのではないか、」といった疑念が払拭できないのです。

松野官房長官「FCレーダー照射も議論」

こうしたなか、ほかになにか政府発表がないかと探していると、松野博一・内閣官房長官の記者会見がありました。松野長官は17日午後の記者会見冒頭で、NHKの記者からこの日韓安全保障対話、さらには2018年の火器管制(FC)レーダー照射事件について尋ねられ、次のように答えました。

本日ソウルにおいて第12回日韓安全保障対話が開催された

今回の対話は先月の日韓首脳会談において、日韓両首脳が安全保障対話を早期に再開することで一致したことを受けて約5年ぶりに実施されたもの

今回の対話においては日韓両国を取り巻く戦略環境について意見交換を行い、日韓それぞれの安全保障、防衛政策について、お互いに理解を深めた

また、北朝鮮への対応や、インド・太平洋における協力を含む日韓・日米韓協力の強化等について意見を交わした

そのうえで日韓安保・防衛協力の強化に向けて、緊密に意思疎通していくことで一致した

先般の日韓首脳会談で共有された、現下の厳しい安全保障環境についての認識に基づき、韓国側と引き続き緊密に意思疎通し、具体的な連携協力を進めていく考え

火器管制レーダー照射事案について、今回の対話では、本事案を含む防衛当局間の課題についても議論を行ったが、外交上のやり取りであり、詳細は控えたい

北朝鮮の核・ミサイルを巡る状況を含め、日韓両国を取り巻く安全保障環境が厳しさと複雑さを増すなか、日韓・日米韓の連携はますます重要となっている

現在、日韓防衛当局間にはご指摘の課題があるが、最近の日韓関係を健全な関係に戻す大きな流れのなかで、防衛当局間においても、引き続き韓国側と緊密に意思疎通を図っていく考え

「日韓・日米韓の連携が重要だ」、とする趣旨の発言は、岸田首相・松野長官だけでなく、菅義偉総理大臣なども繰り返してきた見解であり、とくに目新しいものではありません。

FCレーダー照射で韓国がウソツキ国家だと判明した

ただ、松野長官はFCレーダー照射事案については「外交上のやり取り」としたうえで、「詳細は控えたい」と逃げましたが、じつは、日韓防衛協力を進めるうえで、日本国民に対して最も説明しなければならないのは、このFCレーダー照射事件を含めた日韓諸懸案の進展状況でしょう。

じつはこのFCレーダー照射事件については、『レーダー照射事件でウソをつき続けることを選んだ韓国』でも指摘したとおり、韓国政府としては「レーダー照射はなかった」、「日本側が低空威嚇飛行で挑発した」と言い続けることを選んだようです。

尹錫悦政権でも「三不の誓い」維持する韓国は信頼に値しない!自称元徴用工問題に限定すれば、韓国は岸田「宏池会」政権をまんまと騙すことに成功したのかもしれません。しかし、日韓諸懸案があまりにも多すぎるためでしょうか、ここに来てボロが出始めました。韓国の李鐘燮(り・しょうしょう)国防部長官は事実上、「三不の誓い」を守ることを宣言してしまったのです。つまり、韓国が中国側から米国側に戻ったというのは見せかけに過ぎません。そして、やはり韓国はFCレーダー照射事件を改めて否定したうえで、「日本が低空威嚇飛...
レーダー照射事件でウソをつき続けることを選んだ韓国 - 新宿会計士の政治経済評論

端的に申し上げて、あり得ない対応です。

日韓を取り巻く現下の安全保障環境が「非常に厳しく複雑である」ことについては、たしかにその通りなのですが、それと同時に、FCレーダー照射は形を変えた攻撃のようなものであり、時と場合によっては「戦闘行為そのもの」とみなされる、大変に危険な行為です。

しかも、日本政府の発表とこれに対する韓国側の反応を客観的に振り返るだけで、韓国が「信頼のおけないウソツキ国家である」という事実が明らかになります。

日本政府発表によると、事件が発生したのは2018年12月20日午後3時ごろ、場所は石川県能登半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内ですが、当時の岩谷毅防衛大臣がその事実を公表したのは、翌・21日のことでした。

ところが、この日本政府の発表の直後から、韓国政府は韓国メディアに対し、「当時、韓国海軍駆逐艦『広開土大王』は悪天候の中、北朝鮮の漁船を捜索しており、艦に搭載しているすべての探査用レーダーを稼働していた」とする「言い訳」を発表。

最初から日韓双方の見解が食い違うという異例の展開となりました。

その後、日本政府は28日に、哨戒機から撮影した当時の様子を動画サイト『YouTube』に公表したところ、韓国側の当初の言い分である「悪天候」が大ウソであるということが判明。今度は韓国政府は「日本側が低空威嚇飛行を仕掛けてきた」と言い分を変えました。

海外も認める韓国の「支離滅裂さ」

ただ、韓国側がFCレーダー照射を仕掛けてきた証拠は日本側に存在しますし、また、韓国側の「低空威嚇飛行」云々の言い分も、端的に言えば根拠を欠いた支離滅裂なものでした。さらには、海外の専門家や経験者らの間でも、韓国の言い分がメチャクチャだということは、早くから指摘されています。

このあたりについては「JSF」というハンドル名でツイッターや『Yahoo!個人ニュース』などに解説記事を精力的に投稿している軍事ライターの方がレーダー照射事件の直後に執筆した次の記事を読んでいただけると、情報ソース付きでその一端に触れることができるのではないでしょうか。

海自哨戒機が危険な低空飛行? 動画を見た複数の海外の識者は「普通の飛行」

―――2019/1/29 12:00付 Yahoo!ニュースより

いずれにせよ、FCレーダー照射事件を有耶無耶にしたままで、日韓軍事協力の進展はあり得ません。

本件については最低でも、韓国が①FCレーダー照射事件を事実と認め、②日本に対し真摯に謝罪し、③関係者を処罰し、そして④再発防止策を策定・実施することを日本側に約束することが必要です。

もちろん、日韓諸懸案はこのFCレーダー照射事件以外にもいくらでもありますので、日本が韓国との協力を進めるかどうかは、これらの諸懸案の進展状況を見極める必要があります(わかってますよね、岸田文雄さん?)。

安保対話は頻繁に中断している

もっとも、冒頭に挙げた外務省の報道発表を眺めていると、少し奇妙なことに気づきました。

これまでの日韓安保対話を眺めていると、第1回から第5回までは1~2年ごとに開催されているのに、第5回から第6回までの間に約3年半の断絶があるのです。同様に、第9回から第10回の間にも5年以上の断絶が認められますし、第10回と第11回の間にも、やはり3年の断絶が認められます。

これまでの日韓安保対話
  • 第1回 :1998年6月 (ソウル)
  • 第2回 :1999年7月 (東京)
  • 第3回 :2000年12月(ソウル)
  • 第4回 :2002年2月 (東京)
  • 第5回 :2003年11月(ソウル)→その後、3年半の中断
  • 第6回 :2007年5月 (東京)
  • 第7回 :2007年10月(釜山)
  • 第8回 :2008年11月(福岡)
  • 第9回 :2009年12月(済州)→その後、5年以上の中断
  • 第10回:2015年4月 (ソウル)→その後、3年近くの中断
  • 第11回:2018年3月 (東京)→その後、5年以上の中断
  • 第12回:2023年4月

(【出所】外務省『第12回日韓安全保障対話の開催(結果)』を参考に著者作成)

こうした事実を見ると、日韓間の安保協力がこれまで果たして円滑だったといえるのか、極めて疑問です。

時期的に見て、1998年6月といえば金大中(きん・だいちゅう)政権時代ですが、その後は政権次第で日韓対話が滞っているのです。

具体的に、尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権以前の韓国の歴代政権を振り返っておくと、こんな具合です。

韓国の歴代政権
  • 1998年2月~03年2月…金大中(きん・だいちゅう)政権
  • 2003年2月~08年2月…盧武鉉(ろ・ぶげん)政権
  • 2008年2月~13年2月…李明博(り・めいはく)政権
  • 2013年2月~17年3月…朴槿恵(ぼく・きんけい)政権
  • 2017年5月~22年5月…文在寅(ぶん・ざいいん)政権

(【出所】著者調べ)

すなわち、過去11回については、金大中政権時代に4回、盧武鉉政権時代に3回(うち1回は3年半の中断)、李明博政権時代に2回行われて5年以上中断し、朴槿恵政権時代に1回行われて3年近く中断し、文在寅政権時代に1回行われて5年中断しているのです。

政策対話が重要だ、などと述べるわりには、韓国との政策対話は頻繁に中断しているのです。

韓国が信頼に値するかどうかを見極める場…なのかな?

対話が数年断絶すれば、通常、外交・防衛担当者も人事異動や政権交代などで頻繁に代わりますし、前回までの対話の経緯を覚えている人も引退するなどしてしまうでしょうから、正直、こんな頻繁に中断するような協議体を開催したところで、日韓間の防衛当局間の意思疎通を促進する効果があるのか疑問です。

著者自身、防衛省内に知り合いはいないため、あくまでも憶測だけで申し上げると、今回の安全保障対話も、防衛省としては「岸田首相と外務省に言われたから仕方なしに応じた」というのが実情ではないか、という気がしてなりません。

なにより、半島有事のリスクが日増しに高まっていることは事実ですが、それ以上に重要なのは、日本にとっての生命線は朝鮮半島ではなく台湾海峡である、という事実でしょう。

そして、台湾有事の際に、韓国が日本や米国のために動いてくれるというものでもありません。それどころか、むしろ台湾有事にかこつけて、韓国が対馬への軍事侵攻などを仕掛けて来たとしても、著者としては何も驚きません。

あるいは、「日韓安保対話」とは、「日韓が安保協力をするための対話」ではなく、「いざというときに韓国がどう行動するかを日本側が見極めるための場」と見たほうが正確なのかもしれない、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (20)

  • 対話している事実だけが欲しいなら、対話など止めるべきです。
    すれ違いの対話は時間の無駄!

  • > 松野長官はFCレーダー照射事案については「外交上のやり取り」としたうえで、「詳細は控えたい」と逃げましたが、じつは、日韓防衛協力を進めるうえで、日本国民に対して最も説明しなければならないのは、このFCレーダー照射事件を含めた日韓諸懸案の進展状況でしょう。

    結局これに尽きるのでしょうね。韓国の説明は正に国民に公表すべき事柄の最優先事項でしょうが。情報操作のつもりでしょうか?
    外交上のやり取りだから詳細は控えたい?
    この官房長官もやはり岸田内閣ですな。国防を重要視するのであれば、その趣旨を貫徹せよ。実際はこの件は日本側から全く触れなかったのかもしれませんね。さもありなん。

  • 面白い?記事を見つけました、日経です。

    日韓、安保対話5年ぶり再開 レーダー照射再発防止探る
    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM172DQ0X10C23A4000000/

    「日本の政府高官によると18年のレーダー照射に関する事実関係を今後は争わない可能性がある。どちらか譲歩した側の国内世論が反発する公算が大きいためだ。過去の事案を不問にする代わりに再発防止策の検討を進める案が浮上している。」

    事実関係を不問にして、どうやって再発防止策を検討するんだろう???
    レーダ照射は無かったけどレーダ照射の再発防止策を策定しましたって、この「政府高官」は馬鹿なのかな???

    • この高官とやらはうん十年も考えるのでしょう。そして時間切れと。

  • 金大中氏拉致事件、半世紀も経ちますか。後味の悪さよく覚えています。
    日韓関係ってやましさを押し隠すわいせつさを感じさせます。今も昔も変わりません。外交力ってこうゆうこと?!

  • 理屈が通じない相手と会話しても時間の無駄。
    ぶん殴ればいい。

    • この件を「宣戦布告」と捉えて人道的配慮なし(死者が出ても気にしないレベル)の経済戦争を仕掛けられないかとか言っても「中二病ラノベですか」と言われるのがオチだろうけど、せめてそういう脅しはかけられないものかね。

  • 岸田文雄ならば『火器管制レーダー照射事件の白黒をつけようとしたら日韓協力が進まない。有耶無耶にして日韓協力を進めるべきだ』と考えて行動しても不思議ではないです。

    岸田文雄は既に尹錫悦にベットしました。

    あとは、降りない以上は賭け増すだけです。

  • FCレーダーの件は、そもそも韓国軍最大級の軍艦が北朝鮮の漁船と何やってたのかという根本の問題に突き当たります。

    北朝鮮と何か裏の連携していたと思われますが、FCレーダーの件を認めることで「北朝鮮と韓国は完全にグルだ」ということまでバレてしまう。多分それは一番まずい。韓国にとっても日本やアメリカにとっても。

    北朝鮮が好き勝手やりつつ存続しているのは韓国が責任持って統一しないから。話し合いだろうと武力だろうと余裕なのに、その後にかかる膨大な経費を負担するつもりがないのが韓国。日本やアメリカがお金出すというのを期待してるんだろうね。

    北朝鮮のミサイル技術は最終的には我が民族の技術になるわけだから、表向き非難しつつも実は心強く思ってる。そんなくらいにズブズブな関係なのが韓国と北朝鮮。

  • 一番危険な存在は 明確な敵より、 裏切る味方なのです。なぜ 歴史上 韓国を仲間に入れてしまったチームが負け続けるのか よくわかります。

  • >韓国との政策対話は頻繁に中断している

    政策対話は、自国が窮したときにだけ発現する韓国特有の擦り寄りによるもの。
    彼らにとっての ”協力” ってのは、するのではなく させるものなんですものね。

  • 3年も5年も中断しながら岸田首相、尹大統領は揃って何が「シャトル外交」だ。韓国人は反日民族で、日本には平気で嘘を吐くというのが、何故分からんか?ましてや防衛面での日韓協力なんて、あり得ない。

    松野長官はFCレーダー照射事件について、「詳細は控えたい」というが、韓国が日本に謝罪する気無し、と受け取ります。

    日本の排他的水域(EEZ)で広開土大王・駆逐艦と警備艦は、北朝鮮小型船と何をやっていたのか?人物の引き渡しか?ブツの瀬取りか?要するに絶対に見られたら困る事だ。だから韓国政府はレーダー照射しながらも「レーダー照射はなかった」、「日本側が低空威嚇飛行で挑発した」と嘘ついた。この時点でアウトです。軍のアウトとは戦線布告、攻撃開始!です。該当の艦長、司令長官、火器管制主任、レーダー手、全員拘束して日本に引き渡せ。

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